8.鬼灯の冷徹
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ねぇねぇ!茂ちゃ~ん!鬼と亡者の相撲大会が終わったんだから次は僕たちの番でしょ?いつやるのぉ?」
「え?」
今日は桃源郷の雲を千切って持ってきたよと籠に入った雲を差し出しながら白澤が話しかけてきたので、手を止めて上を向く。
そこには初めて見る神々も、常連の、いつものようにお結びを買いに来ている海亀、もとい海の一柱である
「皆さんもあの大会を楽しんでくださっていたんですね。もしも開催したら参加していただけそうですか?」
神様の中には、見るのは好きだが参加するのはそんなに好きじゃない方もいると思ったんですけどと言うと、とりあえずその場にいた数名は参加したいと強く主張してきた。
「ありがとうございます。でも、鬼のみんなと同じ事してもつまんないですよねぇ。内容をもう少し考えてから再度お声がけしますね」
「やったー!僕知識の方が得意だけど、これでも体力あるよ!」
「わしらも知り合いに声をかけてみるか」
「ここのお結びを馳走してる奴もおるからな。嫌とは言わんじゃろ」
「参加してくださる方が多いと盛り上がるので助かります。ただ、お米とかお塩とかもらっても神様って嬉しいですか?」
神様たちが喜ぶ景品は何があるだろうかと考え、いいものがあったとがま口バッグから瓢箪を取り出す。
「神様ってお酒が好きな方が多いですよね!」
「そうじゃな、特に神気を多く含んだ酒は人気じゃな」
「養老の滝もその一種だしね」
「ならこれとかどうでしょうか」
現津が持ってきたお猪口に注ぎ、味見をしてくれと差し出すと塩椎も皆とともに口を付けて固まった。
「和ちゃんと一緒にいる神様たちも気に入ってくださっているんですけど、どうですか?こちらの神様のお口にも合いそうですか?」
もしも美味しいと感じるのなら他にも果物の盛り合わせと、お食事券でどうだろうかと言うと、全員が絶対に参加して勝つとすごい意気込みで詰め寄ってくる。
「気に入っていただけたようで良かったです」
お食事券の内容を満と相談したいし、他にも細かいことを皆で話し合って決めると言われ、大喜びで交換したお結びを持って帰っていった。
「運動会、ですか?」
「そうだよ。黄泉の国の神様同士でチーム分けをしてもいいんだけど、そうなると後々ケンカの元になったりもしそうだから、和ちゃんにお願いしようかなって」
「和さん。みのり屋のお一人ですよね?神々と戦える程強い方なのですか?」
「強さ以外の能力を持ち合わせているんですよ」
「?」
首を傾げる鬼灯の頭を撫でながら笑う。
「鬼灯くんがうちの子になったっていうのは知らせてたけど、まだ会った事ないもんね」
多分気が合うだろうからすぐに仲良くなれるよと言われ、頭を撫でられる心地よさに目を閉じて頷いた。
それから数日後、和が大量の土産を持って帰ってきた。
「ただいま」
「おかえり、色々狩ってきたんだな」
「うん、これとか結構強かったし、もしかしたら美味しいかもしれないよ。見た目がすごいけど」
「どれどれぇ、うん!食べられるよ!」
「どんな味がするか想像もつかないから、とりあえず味見をしてみようか」
「今回も調理法が特殊な食材ばかりだね。満ちゃん、捌くの手伝うよ」
「我々もお手伝いいたします」
「いつもありがとうございます」
「あ、新しい子だ。この子が鬼灯?」
「そうだ。妖精種の妖族っぽいが、こっちの世界だと鬼って呼ばれてる」
「鬼なんだ!角とかあるしね」
「人間族にも色々いた世界もあるし、その世界に合わせて進化とかしてんだろうな」
「初めまして、鬼灯と申します」
近づいてきた鬼灯の頭を撫で、抱き上げて健康そうで良かったと微笑む。
「妖精種で、鬼って事は体が丈夫だったりする?」
「すると思うぞ。とりあえず人間よりは何十倍も丈夫だ」
「そっか!なら一緒に冒険とか行けるかもね!」
体が脆い人間族でも気を付ければ一緒に冒険も行けたし、そういうのが好きなら一緒に出かけたりもしようかと笑って地面へおろす。
「冒険?現世へですか?」
「う~ん、現世ではあるかな?異世界だけど」
「異世界、面白そうです!」
「ただ、私人の住んでる地域には行かないから、本当に私たちと冒険するだけになっちゃうけどね」
それでもいいなら一緒に行こうかと言われ、鬼灯の目がどんどん輝いていく。
「和、茂さんからお話があったと思いますが、運動会の件、受けてもらえますか?」
「うん!大丈夫だよ!みんなも参加してくれるって!」
「みんな?」
「私と一緒に冒険してるみんなの事だよ」
「ですが、相手は神ですよ。大丈夫ですか?」
「うちのみんなも神様だし、大丈夫じゃないかな?蜻蛉切、利刃、二人も参加する?」
「そうですな、久々に皆と共に前線へ立つのも楽しいでしょう」
「俺は警備に当たろう。人手はあるが、こういった祭りは何が起こるか分からんからな」
「そっか、じゃぁそっちのフォローはよろしくね」
二人と話している和を見て、首を傾げながら豊の下へと向かう。
「豊さん」
「どうしたの?」
和が持ってきた土産を仕訳している手を止めて、鬼灯と目線を合わせるためにしゃがんだ。そんな豊に、なぜ蜻蛉切は和に対して敬語なのかと聞いてみる。
「ああ、それは蜻蛉切さんを呼んだのが和だからだよ」
「呼んだ?」
「和は召喚術っていう、遠くにいる人を呼び出す術が使えるの」
その召喚術で呼んだ付喪神達の中に、蜻蛉切がいた。
「だから、蜻蛉切さんにとって和は召喚主なの。それに自分を振るってもいい主って認めてるから、だから敬語なんだろうね」
「そうだったのですか」
では何故利刃は違うのかと首を傾げると、近くにいた優が教えてくれた。
「利刃は至が買ってきたサーベルなのよ。その付喪神を顕現したのが和なだけで、主は至なの」
きっとその違いねと微笑まれ、まだまだ知らないことばかりだと手伝いに加わり、解体した肉を持って満の後について行った。
「参加してくれる神様って何人くらい?」
「それはこれから確認しないとねぇ。最低でも五人は参加してくれるって言ってたけど」
「四人ではなくですか?」
「前に白澤さん達が来てくれた後に、イザナミさんが噂を聞いて来てくれてね」
『わらわも参加してやらんこともないぞ!』
「って言ってくれたの」
「キャラが立ってるよねぇ~」
「素直に皆と騒ぎたいと言えばいいものを」
「この国を創った神様だからねぇ、気位が高くなって当然だよ」
実際に偉い神様なんだしと笑い、和と運動会の内容について話しを詰めて行く。
そして、お結びを買いに来てくれた皆に決まった種目のルールが書かれた立て看板を示す。
「今回は神様対みのり屋ですが、皆さんもよかったら見に来て下さいね」
「すげー!相撲とは全然違うことすんだ!!」
「この二人三脚?ってどんなのだ?」
「棒倒しですって!面白そうね!」
「俺は追いかけ玉入れ?がやってみてぇ!」
参加する神は勿論だが、今回は出場できない鬼や亡者達も面白そうにルールを見て騒がしくなっていく。
「勉強が終わったらやってみようぜ!」
「俺もやるー!」
「怪我は治してはあげらますが、痛い思いをするのは自分ですから気を付けて下さいね」
「オヤツにドーナツでも用意しておこうかな」
「やったー!!」
さっそく遊びに行った子供たちを見送る後ろでは、白澤を始めとした神々がルール表を前に額を突き合わせていた。
「いっきに難易度が上がったな」
「まぁ、僕らは得意分野が分かれてるからね。ただ相撲を取るよりこっちの方が向いてるのは確かかな」
でも相手が「みのり屋」っていうのはどうなんだろうと首を傾げる。
「みのり屋って、あの浅黒い肌の者たちも含まれてるみたいだけど・・・。それでもやっぱり”人”でしょ?」
雰囲気が半神と言えなくもないが、神とは言い難い存在。そんな存在が自分達と渡り合えるのか?と言葉にせずに呟く。
それとも現津たちが出てくるのだろうか。茂達は”人”と言っているので出て来ないと踏んでいるのだが、そこは言い張り続けて本来の力を見せてくるのか。
それとも、接待として負ける事を前提に大会を開くのか。
最後の考えに、白澤は一人顔をしかめる。それは少々、残念だ。
長く生きていると新鮮な気持ちと言うものが薄れていく。
けれど、みのり屋がここで店を開くようになり毎日驚きと喜びが溢れていた。そんな日々をくれたみのり屋から一線を引かれたような、虚しさのようなものが胸に広がったが、見ないふりをして目を閉じた。
どこの神かは分からないが、気まぐれに店を開いて新しい風を吹かせてくれただけでもありがたい。
それに、接待とは言え皆で騒ぎ、美味しい食事が出来るのだ。それだけで十分じゃないかと気持ちを切り替えて笑顔で顔を上げた。
「うはー!すげぇ人だかり!!」
「黄泉の国中から集まってるんじゃないか?」
「二人共ー!こっちです!」
「お!鬼灯ー!」
「子供用の席はこちらですよ。大人たちに紛れては踏まれてしまいますから」
「席作ってくれたのマジで助かるぜ!」
「父ちゃんと母ちゃんも昨日から張り切ってたからな」
きっと今頃お結びと交換して席を探しているだろうと話しながら、火の民の子供たちと同じ席に座ってこれから始まる”運動会”に心を躍らせていると、参加する神々が全員揃ったと放送がかかった。
『では!今日の対戦相手の入場です!』
マイクという声を拡張する事ができる宝具を通して聞こえる茂の声。その声に合わせて、今日だけ整えられた地面に光輝く植物の描かれた紋が広がる。
『冒険が大好きで普段は別々に行動しているのですが、今日の為に戻ってきてくれました!』
「みのり屋の召喚術士と言えばこの人!和ー!」と紹介がされたのは、布面で進の様に顔を隠した、どこか幼い雰囲気を纏う人だった。
バクンと、自身の心臓が大きく跳ねる音を自分で聞く。
一瞬で神獣としての本能がかき立てられた。
離れているのにハッキリと感じられる乳の様な甘い香り。
生まれた時から神獣であるため、母乳で育てられたという経験はない。
それでも、もしも母から生まれる経験があったのならこの香りで包まれたのかと胸が高鳴った。
「結構な人数が集まったんだね。これなら一種目ごとにメンバーを入れ替えてみんなで遊べるかな?」
そう笑い、幼子の手遊びのように時空に穴を開ける。
世界を歪め兼ねないその穴は、時空を切り裂いた等と言う表現には当てはまらず、まるで世界と世界をひと時だけ繋ぐ美しい窓のようだった。
そして、和の後ろに百を優に超える付喪神が現れる。
何故、自分はそちらにいないのだろうか。
「賞品にお食事券があるから、取ったらカイドウとかワノ国のみんなを誘って宴しようか」
これは接待ではない。本気で勝ちに来ていると誰もが理解する。
両隣にいる神獣仲間の二人も、多分獣の姿を持つ他の神々も、皆が駆け寄りたいのを我慢していた。
貴女だ。
「行くぞー!!」
付喪神を鼓舞する為に発せられたその声が、耳に、頭に響いて空気を揺らして支配していく。
ああ!貴女だ!!
この世の頂点に座すに相応しい者が、貴女以外にいる訳が無い。
この日、まるで我を忘れたかのようにその力を振るう神々と戯れる、子供の様に楽しそうに笑う声が響いた。
茂の解説は、競技が変わる度にルールが説明されたので分かりやすかった。
見物に来ていた鬼や亡者がルールを理解し、自分では思いつきもしない手を打つ戦いに、そんな事が出来るのかと驚きながら見惚れていた。
智謀に長けている何柱もの神を更なる知略で抑え込む。
それがどれだけ凄いかは分からずとも、神が本気で楽しんでいる事だけは理解した。
最初は参加するつもりのなかった神々も、客席から飛び下りて乱入に近い形で競技に加わっていく。
特に、獣の姿を持つ神々が付喪神には目もくれず和へ向かって行き、その知略で絡めるように抑え込まれた時の嬉しそうな顔が忘れられない。
「ああ最高だ!!」
この直感は間違っていないと、何人もの神が満足そうに負けていった。
貴女だ。この世を統べるのに相応しいのは貴女だ。
マイク越しに勝利を宣言した茂の声を聞きながら、麒麟が膝を付いて頭を下げた。その姿に、驚くどころか共に膝を付いて礼をとる神獣たち。
「みんなすごく強いね!また一緒に遊んでよ」
この堪らなく愛おしい戯れを貴女が望んでくれるのならば、それはきっと永遠になる。
熱に浮かされ、とどまる事を知らない歓声を聞きながら、これから現世も黄泉の国も、和のその知略でもってより良い統治が成されていくのだろうと目を閉じた。
こんなにも素晴らしい王を見つけられたと、神獣たちの胸が温かな満足感で満たされていく。
「今日はありがとうございましたぁ!」
「みんな気を付けて帰るんだぞ」
「ご参加くださった皆様はこちらへどうぞ」
「本日はご参加いただきありがとうございました」
「細やかですが、お土産です」
神々に土産の包みを渡していくみのり屋と、付喪神たちに抱きつかれている和。
「主、今日は家に戻るかい?」
「うん、そうしようかな。フーもカイドウ達も今は遠征中だし」
「瓢箪のお酒は前にものすごく美味しいって言ってたから、お土産に持っていけば喜んでくれるよね」と笑っている和に、神獣たちも「そうか」と話しかけた。
「やはり直ぐにとはいかんか」
「もしかして、もう何処かの国を拠点にしてるの?」
「拠点、はないね?いつも移動してるから」
友達が住んでいる国はあるがと言われ、ではまずその国を足がかりに始めるかと頷く。
「何を?」
「もちろん統治だよ」
「我ら皆が認めた王だ。時間はかかろうとも必ず全てを統べることが出来るだろう」
「統べるって、国?私国とかお世話出来ないから王様になったりしないよ?」
阿鼻叫喚の叫びを上げながら和を説得している神獣たちを見て、転弧が口を開く。
「和さんって
「今のところまだお会いしていませんが、獣の民と会ったらどうなるんでしょう」
「進さんは
「森の民はみのり屋全員がぶっ刺さるだろ〜」
もしも個人じゃなくて里とかのレベルでバレたらみのり屋へ移住するか、天の民の様に自由に行き来させてくれってしがみついて離れなさそうと圧紘が言うので、「怖」と呟いてしまった。
11/11ページ
