7.学園生活(続き)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
錬金術師たちもダンジョンへ潜るようになって二日も経てば、王国から来た者たちは全員海賊とも打ち解け次に潜る時は違う事を試したいとテントの中だけでなく、街のいたるところで話している姿が見られるようになった。
「おーい!今日もこの肉焼いてくれ!」
「いらっしゃいませ」
「今日も大量だったんですね」
街にある食堂では顔見知りになった海賊たちが酒の肴に食材を持ち込み調理してもらっている姿もある。聖国では今まで見たことも考えたこともない無い光景が広がっていると言うのに、すでに怖がっている者はいない。むしろ子供たちはどんな魔物と戦ったのかと、海の向こうはどうなっているのかと話をねだるために酒を飲んでいる男たちを囲み、眼を輝かせていた。
海賊たちも海賊たちで、酒はみのり屋が用意したものと自分たちで持っていた物で十分な量があり、毎日刺激的で楽しいので持参した肉やダンジョンから持ち帰った物を気前よく分け与えていく。
その為、聖国は息を吹き返したかのように潤い、活気が溢れてきていた。
「こんな国の姿を見ることが出来るだなんて・・・」
父王にも見せてあげたかったと感極まっているクリストファーに、護衛の聖騎士達が目を潤ませて頷いている。
「今は良いでしょうが、和も我々が王国へ戻るとともにダンジョンをもう一度攻略したら戻ると言っていますから、その後について今から動いていた方が良いですよ」
「そうですね、和殿たちがまた我が国のダンジョンに来て下さるまでの間、我々も自分たちで国を守れるだけの力を付けなければなりません」
「いえ、それもそうですが、今はその話ではありません」
「?どういう事でしょうか?」
「妖精種は、見れば分かるでしょうが皆一様に機嫌のよい時や気に入ったものは大切にする性質があります」
「はい、その恩恵を受けていると私も思って、」
「そして精霊種と違い性に対しても奔放です」
「、ぇ」
「結婚をしている場合を除き、成人した妖精種は食事をする事と同じように、恋愛も一夜の過ちも多いに楽しんで一生を謳歌しますので、来年には聖国から妖精種が生まれて来る可能性があります」
「つーか、確実に生まれて来るだろうな」
「娼婦街にも望と共に様子を見に行きましたが、この国で王族よりも一番財産を持っているのは娼婦たちだと思いますよ」
「あいつらこの大陸で使える金を持ってねぇからな。全部素材だの宝石だので支払ってるぞ」
「・・・ぇ」
「食料以外にもダンジョンで見つけたポーションも持ち込んでいるようで、皆健康的でした。明日には商人ギルドの支部のため
「来年生まれた妖精種が成人するまでの二百年で先に娼婦が死ぬ。その後そいつらがどうやって生きていくかは知らねぇが、恨みを買うようなことはすんなよ」
「というか、すぐにでも寿命の違いについての情報を広めた方が良いですよ。今までエルフがいたとはいえ、皆奴隷かスラム街で暮らしていたため寿命を全うしていた者などいないでしょうから」
この国の住民は、クリストファー達のように国外へ出たことが無いのでそもそも大陸の常識から隔離されていたと言っても過言ではない。
「そんな中初めて見た妖精種、精霊種がサラであり、あの毎日上機嫌で気前のいい海賊たちです」
絶対子供たちや娼婦たちの心証は人間種よりも海賊たちの方が上だ。
「今後、聖国は数百年の単位で大陸でも最先端で変化を求められてきます。そのための施策を今から行った方が良いと思いますよ」
現津と梅智賀の言葉に、クリストファー以外も全員が顔色を悪くしてセレスタンを探しに行った。
「これは王国も必要になる事だな」
「間違いないでしょうね」
「今日も使ってよろしいのですか?」
「いいぞ。まだ教会の風呂は完成してないんだろ?」
王国からやって来た大工たちが聖国に到着し、茂たちと話し合いながら建設を始めているが生活に必要な家などが先でどうしても嗜好品という位置づけになってしまい、風呂は後回しになっていしまっている。その為、教会内にはまだ王侯貴族が個人で使える風呂が無いのだ。
いや、以前使っていた物はあるのだが、みのり屋の用意する風呂とはかけ離れていているのだ。
ならば自分がいる間はそちらを使い、新しい風呂が完成したら自室の物を使えばいいと進から提案してティアナはありがたく甘えさせてもらっている、というのが現状だ。
進に礼を言い、専属の世話係となった女性神官を連れて風呂へと向かい、身支度を手伝ってもらいながら浴槽へと繋がる扉を開ける。
天の民の王族が来ていた時に直接聞いたのだが、天の民は全員が漏れなく風呂好きらしい。親睦を深める、それだけ心を開いていると伝える親愛の意味で風呂の時間を同性同士で共有するのは当たり前なのだと。
そんな天の民からすると、見ず知らずの子供を助け怪我一つなく送り届けてくれた進は恩人であり敬愛して仕方のない存在で、大切な風呂の時間を共有する相手である。
そして、そんな進も風呂が好きで、普段豊が用意した服と、満が用意した食事を食べ、これといった拘りなく毎日を過ごしているが風呂だけは茂に頼み特別に作ってもらったらしい。
(きっと、ススム様と天の民は気が合うのでしょうね)
コニスの顔を思い浮かべ、痛む胸を押さえながら肩から温かな湯をかけてもらっていると、扉越しに声をかけてからガラガラと戸が開いた。
「今日は私もお手伝いさせていただきます」
微笑みながら入って来たコニスに、ティアナも女性神官も硬直してしまったが女性神官が手元にあったタオルでティアナの肌をすぐに隠してくれた。
「も、申し訳ございませんがっ、ティアナ様は落ち着いて入るのがお好きな方でしてっ」
それに王族といえど支度も自分で出来るように幼少期から訓練されているのでと、コニスを下がらせようとするのだが、コニスはティアナを見て目を輝かせて「そうでしたか!」とすぐに頷く。
「聖女という役職は”神に近い”という事だったんですね!」
精霊種でも痣がある者はそうそう生まれてこないのだから、人間種で痣があるのなら相当大変な訓練や修行もあっただろうと納得して持って来た桶を神官に渡した。
「こちらの容器に入っているのは空島で採れた香油です。こちらはこの香油から作った石鹸ですね。使い方は分かりますか?人間の方々も香油や石鹸を使って体を洗うと聞いたのでそんなに大きな違いはないと思うのですが」
「え、あ、は、はい」
「良かったら使ってください。進様もこういった落ち着いた香りがお好きなようでご用意したものなんです」
「え、そ、それを私が使って良いのですか?」
「はい!進様からティアナ様にお分けしたいと言われてお持ちしたものですから」
「、」
そうだったんですかと呟き、自らコニスの差し出す桶に入った香油と石鹸を受け取る。
「ありがとうございます。後程、私からも直接ススム様へお礼を申し上げたいと、お伝え願いますか?」
「はい、お伝えしておきますね!」
「・・・あの、」
桶を持つ手が、震えないように力を籠めた。
「天の民の方から見て、この痣は、・・・この痣も、”神に近い”者に現れる痣に、見えるのでしょうか」
「もちろんですよ」
間髪入れずに即答され、顔を上げると笑みを深めた。
「他の種族がどうしているのかを知らないのですが、私たちの中では痣を持った子供が生まれた場合、”神に近い”力を持つとして強い力をコントロールする為の訓練をするのです」
他の子供のように一緒に遊ぶこともあるが、何かあった時に対処できるように年の近い子同士よりも、少し年上の子供たちと一緒にいる事がどうしても多くなっていく。
「訓練がありますので、成長すると必然的に神官や王族になる方が多いのだと聞きますが、中には地上へ降りて修行をしている方もいると聞いたことがありますよ」
「地上へ、」
「はい」
金剛の姿を思い出し、見たことはないがもしかしてイアグルスもそうだったのかと思いを馳せた。
「ティアナ様の痣は全身に広がっていて、進様の痣ともまた違ってとても美しいですね」
「・・・美しい、ですか」
コニスが本心でそう言っているのが分かる。嫌味の一欠けらもなくそう言ってくれているのが分かるのに、何をどう見れば美しいと思えるのかが理解できない。
「私は、ススム様のような、何が描かれているのか分かるような、あの優美な痣の様であったならと、思うのですが・・・」
「確かに進様の痣はハッキリ月と雲が描かれていますから、そう思うのは私も同じです。ですがティアナ様の痣も素敵ですよ」
まるで満天の星空のようですと言われ、見開いた目から自然と涙が出てきた。
「そう言っていただいたのは、初めてです・・・」
泣いているティアナに困惑しているコニスを何でもないと笑って見送り、神官と二人きりになった風呂場で目を閉じた。
「良い香り」
「・・・どんな花から作った香油なのでしょうね」
溢れて来る涙が止まるまで湯につかり、今日はずい分長湯をしたのだなと、モネが入れてくれた冷たい果実水をもらって口を付けた。
「お兄様、今お時間よろしいでしょうか」
夜にやって来た妹を私室へ通し、仕事をしていた神官も、護衛も扉の前に立っていてもらうという事で部屋から出てもらった。
「どうした?」
「私、痣がある事を公表しようと思います」
「、は?」
妹からの突然の宣言に、どうしたと目を見開いて聞き返すが決意を固めたような表情を変えはしなかった。
「痣が”神に近い”ものとして力の象徴なのなら、その力を持った私が聖女である事の裏付けにも、今後聖国が他国と関わっていくことへの付加価値にもなるでしょう」
「それは、そうかもしれないがっ、急にどうしたんだ?」
「今日、コニスさんに言われました」
天の民の中で痣を持った者が生まれたらどう過ごすのか、人によっては地上へ降りて修行をする事もあるのだと。
「教会は、いえ、大人たちは、痣の意味を知らずに生まれてからずっと私に対して王族とは思えない扱いをしてきました」
「、そうだな・・・」
「そして光属性であると知った途端聖女と崇めて祭り上げて、教会の力を取り戻すための道具として使ってきました」
「・・・」
言葉を選ばずに言えば、まさにその通りだ。呪われた国に生まれてしまい、国から出ることも生活もままならない中で教会は市民からの信頼も求心力も失っていた。
そんな中に王族から強力な回復魔法が使える者が生まれ、これこそ神のお導きだと、ティアナの人生を思うがままに弄んできたと言っても過言ではない。
「お兄様。聖王陛下は、これから国を、生まれた種族や身分で差別をしない、あの過去で見た聖国に戻していくと、そう言っていましたよね」
「ああ、街で皆が様々な種族のいる海賊たちと笑い合っている姿こそが、私の望む聖国そのものだと思っている」
「私も、少しでもそのお力になりたいのです」
「・・・だが、」
以前までいた教皇たち、保守派とも言い難い、信仰が暴走していた者たちは退いたとはいえ全員ではない。それにまだ、みのり屋がいなくなった後についての不安が消えていない。この不安に押し潰されていつ暴動が起こっても、何もおかしくはないのだ。
「違うのです。これは、正義感やイアグルス様への罪悪感、教会への嫌悪、恨み、沢山の感情があるのですが、私の為なのです」
「ティアナの?」
「はい、今日コニスさんにこの痣を美しいと言っていただいたのに、私はそうは思えませんでした。モネさんにも、みのり屋の皆さんも、痣を素晴らしいものだと言っているのにです」
過去の、何度も何度もかけられてきた言葉が、自分を縛っているのだと気が付いた。
「私の痣を、痣の意味を知らなくても気味悪くないと言ってくださったのはお兄様と、お父様だけでした」
寝たきりの父が、最期に父親らしく守ってやる事も、導いてやる事もできなくてすまなかったと、これからも私たちを想っていると、残していった言葉を思い出す。
「私は、私を利用してきた者たちの言葉ではなく、お兄様やお父様、出会ってからずっと、優しくしてくださった方々の言葉を信じたいのに、陰で私を噂していた者たちの、あの小さな声が耳から離れません」
回復魔法も、優しい兄と父の役に立ちたいと願っていたら、気が付いたら使えるようになっていた。これでいつも庇ってくれる二人の役に立てると喜んだその力さえ、利用されて自分を辱めるものになってしまった。
何も知らずに助けを求めて来て、”聖女様”と感謝を伝えて来る国民たちに苛立ちを覚えたことも一度や二度ではない。
「お兄様、私は聖女として教会を変えていきます。もしも私以外の痣を持つ者がいたのなら、教会で教育し、本人の了承が得られたのなら”聖女”、もしくは”教皇”になれるように訓練をしたいと思っています」
これは過去の自分を救う戦いだと、言い切った。
「無知がいかに残酷で浅ましい行動を取らせるか、その証明は私がします。イアグルス教を国教としてくれている他国にも、本気で信仰し、救いを求めている者たちにも、今後聖国に訪れた方々にも、ピア村の者たちにも、私たちは変わったのだと示したいのです」
ティアナの言葉に、クリストファーは涙をにじませながら組んだ両手を額に当てる。
「お前は本当に、素晴らしい王女だっ」
「、ふふ」
兄の言葉に思わずといった風に笑い出す。
「強い女はモテるそうですよ」
いつだったか進が言っていたと愛らしく笑う妹に、本当に強くなったと笑い返した。
「兄をよろしくお願いしますね」
部屋を出ていく時に、扉の前で立っていた護衛達に声をかけて歩き出す。共に王国で多くの経験を積んできた者の一人だと分かっていてそう言った。
聖国で過ごすのも後数日となったある日。
この日は王国から来てくれた皆への感謝を示す慰労会を開くために、街中で準備が進められていた。
「街を上げての祝いの席というのも良いものだな」
「そうね、王国では生誕祭か成婚の時くらいだものね」
「規模が違うというのもあるが、こういった小規模国家ならではだな」
クミーレルを引き連れた養い子たちが町を見て回っているのを眺めながら、みのり屋は聖騎士達に注文された武器を納品していた。
「こちらが全てのリストになります。お納めください」
「急な依頼だったと言うのに、ありがとうございました」
「いいえ、これからも聖国の皆さんを守ってあげてくださいね」
微笑む茂に深々と礼をして、聖騎士達は武器を持って武器庫と練習場へと移動していく。
「やっぱり、いろんなギルドが支店を開くと一気に活気が増すね」
「本当ですね。大工たちが早速木材の調達の為に森へ入ったようですが、」
住民たちからどんぐりとクルミ、果樹のなる木はやめてくれと訴えが入った為少々揉めた。というのも、王国の者は見たことの無い樹木が多かったせいだ。間違いなく大陸には無い植物も多く生えていたため、錬金術師は印をつけるために奔走している。
「仕事っていくらでもあるよね」
「聖国の者も教えを受けていますし、これで生活に困ることはないでしょう」
宮廷錬金術師団の中には、いくつか採取して王国でも育てようとしている者もおり、どんどん荷物が多くなっていく。
「王宮には庭師も畑番もいる。ここ数年で土属性の魔法も研究が盛んになっているのでな、どうにかなるだろう」
術師団たちが採取に勤しんでいる理由の一つに、王族が気に入った果物が成るのと、好奇心でなんか気になるから持って帰りたいという無茶ぶりも含まれている。
「王宮勤めって大変だな」
「そうだな」
そんな姿を見て、まだ学生の錬金術師たちは呟きを漏らしていた。
こうして全員が一度はダンジョンへ潜り、支援物資を配り終えた後は思う存分聖国を楽しみ尽くし、開かれた慰労会のパーティー。
皆がドレスではなく、普段着に近い格好で楽しんでいるのをみのり屋もクリストファー達に礼を言っていた。
「こちらからもお礼を言わせてください。スタンピードの時もそうですが、終わった後もその前からも、数えきれないご助力を、本当にありがとうございました」
「私たちがして来たことが少しでも今後の聖国に役立つのなら本望ですよ」
「我々も、友好国として今後は以前にもまして交友を深めていきたいと思っております」
茂だけでなく、ギルバートとスカーレットにも笑顔でそう言われ、安心して聖国も外交の輪を広げられると笑顔を見せる。
「クリストファー陛下、ティアナ様の準備が整いました」
耳元で声をかけて来た神官に小さく頷き、茂だけでなくギルバート達に向き直った。
「実は、この場をお借りして皆様にご報告があるのです」
「報告ですか?」
「はい、皆様のおかげで聖女イアグルス様が天の民であった事、精霊種が神と崇める存在が母代樹というものである事。そして、痣を持つ者が”神に近い”と言われている事を、聖国の全員が知ることができました」
だからようやく、安心して公表することができると微笑む。
「ティアナ」
「はい、お兄様」
クリストファーが差し出す手に伸ばした小さな手には、貴族らしく手袋がはめられてはいたのだが、今日のティアナが身に着けている物はいつものように腕全体を隠すものではなかった。
手首から二の腕までがあらわになったその細い腕には、無数の痣が浮かび上がっている。
「いつもススム様に個人のお風呂をお借りしていた理由でございます」
王侯貴族という身分の枠を超えて、皆と大風呂に入ることが出来なかったのにはこのような訳があったのだと、ティアナ本人が笑顔でカーテシーで頭を下げた。
「やっぱりそうだったんですね」
「気づいてたの?!」
「人間種の成人前の子供があれだけ広範囲の回復魔法を複数回連発しているのですから、気が付かない方がどうかしていますよ」
「え!あれってそういう事だったの!?」
「王族だから魔力量が多いとかそういう事かと思ってた・・・」
「人間種でそこまでいってしまうと、魔力増強症になってしまいますね」
「あ!」
「そういうっ!」
望も笑って頷くので、ソフィアの診断を間近で見ていた錬金術師たちが口を押えて納得しながら驚いていた。
「へー、ティアナも痣があったんだね」
「ありゃなんの痣だ?」
「インクなら、榊系か?」
「インクか?あれ」
というか小説を書くのは榊の趣味であって能力とは関係なくないか?と魔族たちがティアナの両腕を見ながら首を傾げていた。
「え、これインクじゃなくて流星群でしょ?」
「流星群?」
「うん、星が一斉に流れていくやつ」
たまに天気のいい夜空で見られるよと和が言い、ティアナに綺麗な痣が出て良かったねと笑いかける。
「百獣海賊団だとカイドウが鱗の痣があるけど、たまに痣が小さいか少なすぎてなんの形しているか分かりにくい時があるらしいよ」
「へー、ティアナは流星群の痣なのか。すぐに分かるって事は結構しっかり痣が出てるんだな」
和にどんな風に痣が出ているんだと聞いている進を見ながら、肯定的な反応を示す魔族たちに驚いていた人間たちもそんなにすごい物なのかと怯えが消えて行く。
「みんながインクって言ったのも分かるんだけど、星との違い、えっとね・・・。あ、進の目みたいだから私は分かりやすかったよ」
「目?」
「あ」
声を漏らしたのはサッチで、間髪入れずにエースとエネルを闇に引きずり込んだ。
「なんでいきなり!!?」
「なんだこの闇は!離せ!」
「お前ら絶対ぇ騒ぐからちょっと闇に入ってろ」
「うるさそうだな。進の部屋にでも閉じ込めとけよい」
「え?」
何故か争い出した魔族たちを遠巻きに眺めていると、進がだからかと少し納得したように笑ってティアナを手招きをする。柱で他の者には見えないように影に入り、不埒な真似をしている訳ではないと証明する為にティアナには柱の前にいるだけで、さらにコニスとモネに後ろに立ってもらう。
皆からは柱に向かっているティアナ達三人しか見えない状態になってから、目隠しを外した。
「ティアナはわしによく声をかけてくれてただろ?きっと波長が合ったんだろうな」
天の民を崇める国の王族に流星群、星の痣が出たのも面白い巡り合わせだと笑っている進の声が聞こえる。
しかし、皆の視線はティアナに向いていた。目を見開いて一気に顔を赤くし、腰でも抜けたのか一人で立っていられなくなったのをコニスが慌てて支えた。
「進様、目隠しをしてあげてください」
「ん?」
「ティアナ様がオーバーキル状態になっています」
「・・・ん?」
奇声を上げないように口を両手で抑えているティアナだが、その感情は全て表情に現れている。
目隠しをした進が柱の影から出て来てティアナに大丈夫かと声をかけるも、「はひぃ~」と返事なのか空気の抜けるような音しか返ってこなかった。
「え、え?」
「どういう事?」
「いや、しょうがねぇよ。あれは」
「え?」
「無自覚な顔面凶器は怖ぇな」
「え!?先生ススムの顔見た事あるの?!」
「マジで!?」
「あ」
生徒たちに「いつ見たいの!」「どんな感じだったの!」と質問攻めに合っているアランをよそに、椅子に座らされたティアナを介抱しているコニス。
「進様の目はとても綺麗ですから、驚いてしまったんですね」
「驚いたのは間違いないのだと思いますが、」
人間種は妖精種や精霊種と恋愛の仕方が違うという事をいまいち理解できていないコニスに、どう説明をすべきかと困っているモネ。
「このように、痣がある者は種族の枠を超えた力を代償無しで使う事が出来ます」
「ススムの目も!?」
「ススムの目隠し取った顔見たらあんなになるのも!?」
「あれは単に、あらゆるフィルターが重なり感情が許容量を超えた者は皆もれなくああなるというだけです」
悲鳴を上げないだけ素晴らしいと言って説明を再開する現津に、どういう事?と全員が首を傾げたいのを我慢していた。
「何はともあれ、聖国は別に神様に恨まれてる訳でも呪われてる訳でもないって事が分かって良かったね」
「そうですね。今後も種族間の違いを学び、サラやライアンの様な被害者を出さないようにすれば国としての発展も見込めるでしょう」
笑っているみのり屋と、ティアナに進の顔について質問をしている者たちに分かれ、最後のパーティーも賑やかに過ぎて行った。
