7.学園生活(続き)
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「こっちに着いたんだね」
「ああ、さっきな」
和たちがキャンプ場として使わせてもらっているのは、森の一角を切り開き草原のようにした場所だった。森番の小屋に近い場所に水場がある以外は本当にだだっ広い芝生の絨毯があるだけの場所なのだが、今は大きなテントとタープが設置されていて人の出入りも多く賑わっている。
空に向かって手を上げる和に他の皆も顔を上げ、進を見つけると嬉しそうに手を振り始める。
「他の皆さまはお城ですか?」
「ああ、とりあえずわしだけで来た」
「クリストファー達もパーティーの準備だって張り切ってたしね。夜になったら私もそっちに呼ばれてるよ」
「みんなで食事をするのは楽しんだが、わしは宴会の方が気楽に参加できるな」
「ちょっと分かる」
短刀たちに囲まれている進の言葉に笑い、タープの下に用意されたシーツの上に胡坐をかいて座る。薪割りなど仕事をしている刀剣たち以外に囲まれながら、ダンジョンを攻略してた時の話をしていると火の玉が猛スピードで進に突撃してきた。
「進ー!!来てたのか!!」
「おお、エース。数か月ぶりだな」
エースが飛び込んでくる前に一瞬で避難していた為、短刀たちは誰も火傷を負っていない。むしろ和を少し遠ざけるくらいの余裕を見せている。
「そういえば、三日くらい前に”家”に戻ったんだけど、天の民が来てたよ」
「そうだったのか、果物でも食べたくなったのか?」
基本的に成人した天の民は飲食をほとんどしないのだが、みのり屋と関わるようになってから自分たちの居住地である空島で畑を耕す事に意欲的になった。今では空島特産の中身がジュースになっているカボチャだけではなく、果樹や野菜を多く育てていて、子供たちだけでなく大人たちも楽しみの一つとして食事をしているらしい。
「ううん、進に話があったんだって。ジャータとダールタとパガヤが来てたよ」
「パガヤもか?珍しいな」
天の民の王族であるジャータとダールタが来るのは毎度のことだが、空島の郊外で暮らしているパガヤがみのり屋の”家”へ来る事はあまりない。
「パガヤってあれだろ?進が前に助けた子供の父親」
「ああ、わしが空島に行く時は毎回会ってたが、うちに来るのはずい分久しぶりじゃないか?」
向こうで何かあったのだろうかと呟くも、和もなんの用があったのかは知らないと首を横に振る。
「切羽詰まってるって感じでもなかったけど、進には直接会いたかったんだって」
「そうなのか。なら電話してみるかな。向こうで話がしたいならわしが行けばいいしな。一応今は聖国の客みたいな感じで扱われてるし、いきなりいなくなったら王国の奴らを困らせそうだ」
「その辺の分別は、みんなあるんだがねい」
マルコが苦笑しながらやって来て和の隣に座ろうとすると青い炎が軌道を描いて吹き飛んでいく。
「なにナチュラルに隣に座って腰を抱こうとしてんだテメェはっ」
「おお、マルコもフーも元気そうだな」
「いや、うん。そうだね。元気だったよ」
お茶とお菓子を持ったサッチと歌仙は特に何も言わず、和と進の間にトレーごとお茶を置いて騒いでいる獣二人にため息を吐いた。
「今日のパーティーにカイドウとニューゲートも呼ばれてるんだけど、二人ともダンジョンに入ってて今いないんだよね」
「ああ、気配がないと思ってたが、ダンジョンの中だったのか」
「ダンジョンの中って進ちゃんの感知外なんだ?」
「わしも中に入ればそんな事はないんだがな」
「ダンジョンって生き物みたいなものだし、生き物のお腹の中の気配って感知難しよね」
「妊婦とかなら分かるんだけどな」
そんな話をしながらフーズ・フーとマルコが殴り合っているのを眺めてから、電話を取り出して天の民に渡してある電話へかけるとすぐに受話器を持ち上げられたのか通話が始まる。
「あ、エネルが。ジャータかダールタって今話せるか?いや、なんか和に伝言残して言ってくれてたみたいなんだが」
「あいつ絶対能力フル活用して電話出たよ、今」
「だろうね」
「ん?コニス?ああ、分かった。だが今人間の国でちょっと救援物資を配ったりしないといけなくてな」
それから少し話をしてから、受話器を置いた。
「なんかコニスの事で話がしたかったらしい。こっちでもやる事があるなら火の民に言って連れてきてもらうから、そこで話をしようってさ」
「それならすぐに来られるね」
「ダンジョンに潜るのは明後日からだし、明日来てもらう事になった」
城に戻ったら伝えておこうと言いながらお茶を飲む。
「これ枇杷のお茶じゃないか?向こうから持って来たのか?」
「ううん、アラマキが生やしててくれたみたい。森で見つけたからみんなで摘んで煮だしたやつ」
「そうなのか。いろんな果樹を植えてくれてたんだな」
「ね」
そんな話をしながらお菓子を食べ始めた。
「明日知り合いが来ることになったんだが、泊まるのかも分らんし、急な事だからこっちで全部揃える。そっちに迷惑をかける事はしないから安心してくれ」
「そうでしたか、分かりました。こちらで用意するものなどがあれば遠慮なくおっしゃって下さい」
クリストファーに天の民が来ることを伝えると、向こうが嫌でなければ歓迎すると頷いてくれた。
「以前石像として飾られていた天の民のご遺体を王家も使っている墓地へ移動致しました。あれで本当に良かったのか不安でしたので、お時間がある時にそういったご相談もできたら、」
「ならわしから聞いてみるか。明日来る奴らはこの大陸に精霊種がいない事も、聖国で何があったのかも知らない。償おうとする姿勢は尊敬できるが、いつまでも自分を許さないで傷つき続けるのは自傷行為と何も変わらん。特にお前は考えすぎるきらいがある、わしらと話してる時と同じ感じで接してやってくれ」
「、はい」
久しぶりに進と話し、少し嬉しそうに力を抜いて笑ったクリストファーに微笑み返した。
「ティアナにも、後で声をかけてやってください。ススム様が来るのをずっと楽しみにしていましたから」
「そうか、パーティーには参加してるんだよな?ならその時にでも話しかけるよ」
「・・・ええ」
変わらず笑っている姿に、妹の恋も叶いそうにないと苦笑して返事をした。
夜になり、歓迎会が行われたのだが、王国民が想像していた歓迎会とは大幅に違っていた。会場は大きなパーティーホールではなく、国の住民なら誰でも使用できる教会の大広間と庭園。そこを開放して王都の表通り全体を使用しての歓迎会に、みのり屋や海賊たちも驚いていた。
「皆さまにはこちらの方が喜んで頂けると思いまして」
「国民も皆さまに感謝を伝えたいと進言してきましたし、全員が参加できるなどまだ人数が少ない今だけだと思いますので」
綺麗に着飾ったティアナがクリストファーの隣で笑いながら歓迎会の合図で一緒にグラスを掲げる。こうして始まった歓迎会では、王侯貴族の身を守るための護衛が囲む一角と市民たちとも関われる一角とに分かれていたが、皆が楽しそうに盛り上がりだす。学園の教師たちも最初は驚いていたが、去年出店をした時に感覚が似ていたのか抵抗は少ないようだった。
この数ヶ月で海賊たちと国民たちは距離が近づいていたようで、最早角があっても牙があっても誰も怖がっている様子はない。フーズ・フーの膝の上にいる和にも、子供たちが親しげに話しかけては手を振っている姿に、みのり屋の皆が微笑んでいた。
「ススム様、お料理は足りていますか?」
「ああ、聖国の料理は海産物がふんだんに使われていて美味いな」
ティアナが差し出す料理もありがたく受け取り、がつがつ食べていく進。その様子を見ていた周囲は、明らかにティアナからの好意が一方通行である事に居た堪れなさを感じていた。といっても、進が思わせぶりな態度をとったこともないし、善意だけで国を助けてくれたことも知っているので文句も忠告も言えない。
むしろ少しでも下心があってくれよと心底嘆いている。
下世話な話、神官たちも本気でそう思っていた。
「今日のティアナ様、すごくきれいだね」
「そうね。聖国の正装なんですって」
「モネさんってすごい美人だよね」
「うん」
「スタイルも良いよね」
「そうだな」
「全盲の前では一切関係がありませんね」
「残酷っ」
現津の一言に王国から来た者たちが顔をそむける。
「実際のところ、どうなのだ?」
「その、まだ成人前だが・・・、”偉人も溺れる欲”という言葉もあるくらいだ」
教師たちが王国で使われる諺を小声で囁かれた蜻蛉切たちみのり屋の男性陣が顔を見合わせ、なんとも言い難い苦笑の様な表情であいまいに笑う。
「進は食欲と睡眠欲で手一杯のようですな」
「親愛の情の比重が大きすぎるといいますか、」
「異性への関心という以前の話です」
「王国には”プラトニック的”という言葉に近しいものが何かありましたかね?」
ガーフィールが首を傾げた。
「私が生まれた場所(世界)で使われていたのですが、色欲のない愛情を向けあう関係を指す時に使われていました。ですがこの言葉は現代に近づくにつれてそう変化したにすぎません。その語源は古代の言葉で、本来は”人は美しい物を見ると癒される”という意味です」
「美しい?」
「ええ、進さんはみのり屋の女性陣も含めた全員から”最も美しい”と認められている方です。皆が惹かれ側に侍ろうとする。進さんもそれを受け入れ尊びます。ですが、それ以上の関係の変化は訪れないのかもしれません」
「しかし、それでは」
「その変化を起こす唯一の突破口が、”勝つ”事ですな」
「本人がそう明言したのですから、反故にすることはないでしょう」
そういう所はきちんと責任を取るのでと言われ、ティアナと共に進にまとわりついているエースを見て深い溜息を吐いた。
街を上げての楽しい歓迎会は無事終わり、今日一日ゆっくり休んでから街へ支援物資を配布する班と、海賊たちと共にダンジョンの一階層を散策する班に分かれて行動することが告げられる。
「班分けは事前に通達していた通りだ」
「村での支援活動とは規模が違う。教会からも手伝いが来ることになっているので、連携を心がけるように」
みのり屋もいつも同じメンバーで二手に分かれるというが、厳密に言うと三手に分かれている。ダンジョンに潜らない者も数名居るので、支援にのみ参加という事だ。
「私たちがダンジョンに潜っても、戦えないしね」
「うん、足は引っ張らないと思うけど、選べるならこっちでの作業の方が好きだから」
「こればかりは能力ではなく性格ですな」
「皆さんが手伝いに来てくれて助かりました」
茂にも笑顔でそう言われ、和や海賊たちと共にこれから向かうダンジョンの話をしている一団を見る。
地上に残る半数の錬金術師たちは町中の広場にテントを張らせてもらい、そこで消耗品を作ることになっているのですでに機材を並べて賑やかな声を上げていた。
「あのっ、邪魔しないので!近くで見ていてもいいですかっ!」
緊張しながら大きな声で話しかけて来た子供たちを見て、もしかして錬金術に興味があるのか尋ねれば何度も首を縦に振って頬を赤らめている。
「ポーションとかっ、初めて見たんです!」
「聖国は回復魔法が主流だからな。それもそうか」
スタンピードの時に初めて見たというのも頷けるとアディが納得しながら皆と子供たちを見ていると、茂がテントの入り口を開放してカウンターを境に木で出来た囲いを設置し始めた。
「ここまでだったら近づいて見ても良いよ。ポーション以外にも、錬金術って火を使ったり、知識が無いと触って怪我をする物も沢山あるから、このサークルから手は出さないようにね」
「ありがとうございます!」
子供たちの他に大人も一緒に眺め始める者もいて、やはりどこにでも錬金術に興味を持つ者はいるのだなと笑って作業に入った。
これから和たちとダンジョンへ潜る皆が手順を確認していると、進が顔を上げて口を開く。
「関所を通って来たんだな」
「では一度地上へ下りてからまたこちらに向かっているのか」
「そこから空を飛んで来るのなら、十分とせず王都へ着くか」
「門までお迎えに上がった方がよろしいでしょうか」
「あー、そうだな。ダンジョンへの通り道でもあるし、出迎えに行くか」
進の言葉にモネとカリブーが頷くので、和たちと共に生徒たちも歩き出す。
「今日来る天の民はどんな方々なのですか?」
「そうですね、天の民の王族と以前進が助けた子供だと聞いています」
「王族!?」
「天の民の王族は、人間族のいう王族と少し違いますね。感覚として近いのは教皇猊下や枢機卿といった感じでしょうか」
その説明を聞き、聖騎士たちが慌てて「お出迎えの準備を!」とざわついたが、進がしなくていいと苦笑する。
「人間に当てはめると立場はそんな感じってだけで、天の民も精霊種も、責任を背負ってもそれを権力とは思っていない。だから尊敬はされても崇められるとかされるのは困ると思うぞ」
「け、権力とは、違うのですか?」
「違うな。特に天の民なんかは生活環境が他の種族と被らない分、人数が多かったとしても人間でいう村人と村長くらいの違いしかないと思って生活してる」
そういう認識の違いがあると、こちらからすると歓迎であったとしても相手が重く受け取ってしまうものだと振り返った。
「村長が隣の村に挨拶に行ったら国王並みの歓待を受けたらどうなると思う」
「・・・嬉し、くはないかもしれません」
「というか、そんなことされたら居心地悪いを通り越して恐怖じゃない?」
「・・・」
「もしも王族と同じような待遇で迎えたいなら、功績を上げた奴に対してとか、助けられたからとか、そういう理由がある時くらいにした方がいいな」
それならばこちらの感謝の気持ちが伝わるから向こうも喜んで歓待に応じてくれるだろうと言われ、納得しきれないような表情ではあったが頷く。
「ふふ、こういうのは関りが深くなれば理解できるようになっていきますよ」
「今日は人が家に遊びに来たくらいの感覚で迎えればいいさ」
そんな話をしながら広場を通り過ぎて門が見えて来る所まで来ると、丁度火の民たちが市入料を払っている姿が見えた。
そして、火の民とは違う、背の高い者たちに視線が向く。
「進様!モネさん!」
「コニスさん!まさか直接いらしたんですか!?」
「はい!私ももうすぐ成人しますから!ようやくお許しがでました!!」
ようやく進様のお側でお仕えすることが出来ます!と、モネと手を取り合ったまま嬉しそうに見上げてくる。
「お仕え?」
「コニスならスーちゃんたちの事も十分知っているし、良いだろうってね」
「おお、前に誰か寄こすとか言ってたけど本気だったのか」
「当たり前だ」
「ふざけんなー!!」
エネルに掴みかかるエースを止めるサッチだが、エネルだけでなく一緒に来ている天の民たちを見て他の皆のように驚いてはいてた。
「お仕えって、まだ成人前なのに島から出すのか?」
「さすがにそれはねぇ、成人した後だとしてもすんなりとはいかないよ」
ダールタが笑って肩をすくませ、幼い子供にするような仕草でモネとコニスの頭を撫でる。
「だから、成人する前から少しずつ慣れさせた方がいいんじゃないかって。ね?」
「はい、以前みのり屋の皆さまが学生と呼ばれる子供たちが社会に出る前に職場体験をさせているというお話を聞いて提案させていただきました」
ダールタの隣で微笑むジャータに、エネルも頷く。
「コニスはすでに青海の恐ろしさは知っているだろうが、かといって恐ろしさだけを知っていてもお前の侍女にはなれまい。だからこうして成人前に、」
「お前の都合だろうが!」
「私だけではない。本人経っての希望だ」
「はい!誠心誠意お仕え致します!」
その真っすぐな笑顔に、「あー!」と叫びながら地面を叩くエース。
「・・・成人前、なのですか?」
聖騎士の一人がコニスを見て思わずといった感じで呟くと、コニス本人が「はい!」と元気よく返事をした。
「まだ400歳にもなっていませんから、本当に進様の側仕えになるにはもう100年ちょっと必要になります」
「400・・・」
「モネもコニスと同い年くらいだけどな」
「そうだったの!?」
「じゃあ成人してないじゃん!」
驚愕した表情で固まっている王国民の隣では、聖騎士を含める聖国民がモネも成人していなかった事に驚いている。
「実は私とコニスさん、もう一人魔族の男の子が一緒に誘拐された事件がありまして」
「その時に進様が助けてくださったんです!」
「それも家まで送ってくださいまして、本当に感謝してもしきれません。はい」
コニスの父ですと自己紹介したパガヤを見て、「父なの!?」と更に驚いていた。
「父です、すみません」
「パガヤも、初めて会った時よりなんか若返ったらしいぞ」
「そうなんだ?」
和も今の姿しか知らないと笑いながら、久しぶりと挨拶をしている姿を見てようやく我に返ったティアナが聖国の王族であり王女ですと挨拶をするとジャータが一歩前へ出て微笑みながら挨拶を返す。
「スカイピアを収めております王族のジャータと申します。本日は突然の訪問をお許しください」
「スカイピア、」
「天の民たちが住んでる空島にある、人間でいう所の国の事だな」
「私たちこれからダンジョンに潜るけど、コニスはどうする?モネと一緒に進が戻って来る準備してる?」
「その方がよろしいかと。進様にはカリブーが同行いたしますし、夕方には戻って来られますから。今後の相談をした後食事の準備に取り掛かりましょう」
「はい!これからよろしくお願いいたします!」
みのり屋の誰もコニスを受け入れないという発想がなかったため、崩れ落ちているエースはサッチ達がなだめていた。
「しかし、まだ成人前だしな。社会科見学にしてもこのまま一緒に生活するのは考えものだろ」
利刃の言葉にみのり屋の男性陣が数名頷くのでティアナが眼を輝かせてコクコク頷く。
「それはそうだな。コニスもそうだが、パガヤだって心配するだろう」
「お気遣い頂きありがとうございます。すみません」
「俺たちもいくらスーちゃん達が相手でも子供を放任したりしないよ」
「成人するまで経験を積ませるくらいのつもりだ。それを早とちりしおって」
「成人したらそのまま侍女にする気だろ!」
「当たり前だ」
「何も早とちりじゃねぇじゃねぇか!!」
「どうどう」
「とりあえず最初は一年で良いんじゃない?」
「私たちも後半年ちょっとで行商に戻るし」
「その後一年家でゆっくり休んで、またこっちに来ても良いと思えたら一年。そうだな、それを五回繰り返してコニスが大丈夫そうなら五年ごとに帰省、それも大丈夫なら十年ごとに帰省。それならパガヤも安心するだろ」
「ありがとうございます!」
「侍女っていっても、わしは食うか寝るかしかしてないが、それでいいのか?」
「はい!精一杯尽くさせていただきます!」
「本人がこう言っているんだ。どこに問題がある」
「コニスを通してテメェが下心を伸ばしてくるからだよ!」
「みのり屋のお仕事は侍女というか女中ですが、大丈夫ですか?」
「はい!助けて頂いてからずっとお側で仕えていたいと今日まで修行をしてきましたから!炊事洗濯、沐浴のお手伝いにお部屋を整えることなど、進様が快適に過ごせるようにお手伝い出来る事はなんでも!」
「ガチの女中さんだ!!」
「そんな事してたのか。うちはただ家族で商売やってるだけだが、それでも良いっていうならわしに断る理由はないな」
「誠心誠意お仕えしたします!!」
笑顔で言い切ったコニスに、ティアナが貧血を起こしたかのように顔色を悪くしてふらつくのを慌てて支える女性神官たち。その姿を見て、色々と察した出来る王族のジャータとダールタは空気を変えようと進たちがダンジョンへ潜ったら街の復興を手伝うと話しかけた。
「あまり詳しいお話は聞いておりませんが、今は復興の真っ最中だとか」
「俺たちに出来る事なら手伝うよ」
「あ、ありがとうございます」
「では私は共にダンジョンとやらに潜るとしよう」
「なについて来ようとしてんだ!」
「あの穴から何かと騒々しい”声”が聞こえるのでな。戦力が増える分には構わんだろう」
「まぁ、今日は生徒たちの実地訓練だから来てくれるなら助かるが」
「見ろ、進もこう言っているだろう」
「あー!!」
叫びながら燃え上っているエースを見て、教師の一人が蜻蛉切に小声で話しかける。
「もしかしなくとも、あの方も」
「はい、進に求婚している一人です」
「・・・そうか」
小さく一言だけ返し、モネ達にコニスの事を任せてとりあえずダンジョンへと潜っていった。
「夜にでも採寸させてね」
モネとお揃いのメイド服がいいか、それとも天の民の伝統衣装をアレンジした方がいいかと豊がテンションをあげていた。
「コニスさんは、普段お父さんと一緒に暮らしてるんですか?」
「はい、父と二人暮らしですよ」
「娘が独り立ちしたらパガヤさんも淋しくなりますねぇ」
「休日もありますけど、コニスちゃんも環境が変わって心細いでしょうし、いつでも会いに来てあげてくださいね」
「すみません、ありがとうございます」
これからお世話になりますと恐縮しながら錬金術師たちが造った衛生用品を箱に詰めてテントの外に並んでいるリヤカーに乗せた。ジャータとダールタはクリストファーに挨拶をした後天の民たちの墓地を見に行ったので今はいない。
「パガヤさんは、っていうか、天の民って食事をしなくても生きていけるって聞いたんですけど、普段仕事とかあるんですか?」
「畑はありますよ。確かに人間の方々のように広大な土地が必要になることはありませんが、」
子供たちは食事が必要だし、何より大人も娯楽として食事を楽しむのだから畑は必須。とはいえ、人間種に比べれば格段に農作業に費やす時間が違うので、一日の大半を趣味や祈りに使っていると笑いながら教えてくれた。
「私は
「トーンダイヤル?」
「それってなんですか?」
「え?」
「え?」
「え?」
この後、天の民から授けられた新技術、貝船「ウェイバー」を模倣して造られた魔石船「ウェイバー」が聖国と王国の海域で使われるようになり、更には生活に根付き当たり前の技術となるのは約百年後の事だ。
