7.学園生活(続き)
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夕食は盛り上がり、終始賑やかに村人たちの笑い声が響いていた。その中にはシリウス達もいて、ワットとイーサンが今回もついてきたんだなと無言で頷き合い、それとなく誰かの近くにはいてくれている。
この村の宿屋はまだ誰が経営するか決まっていないため、必要な時は神官の誰かが指揮を執ってくれる事になっているらしい。
「お使いになられる方はいらっしゃいますか?」
「いえ、我々は今回支援の為に来ておりますので」
「みのり屋の車に泊まろうと思います」
「あ、誰か宿屋を開きたい方とかいるんですか?」
それなら練習台になりますよと茂たちが申し出るも、誰も手を上げなかった。
「皆自分たちの家や畑を持てたことを大変喜んでおりますので」
「商売で宿屋を開こうと思うのは、次世代以降になりそうです」
「それもそうか」
「では、しばらくは教会の管理下に置かれるのですね」
神官もやる事が沢山だなと話しながらお開きになった。
次の日も物資は足りているかと声をかけながら村の中を見回る。今までの環境が環境だったためそれほど高齢の者は一人もおらず、体が不自由でも外で働くことを苦にしていないようだった。
「やっぱり階段とか段差とかはどうしても出来てしまうので、転んで怪我をした時は教会で回復してもらうかポーションを飲んだりして下さいね?」
「医者も常駐できるといいんですけど・・・」
「そもそもお医者さんの数が少ないからねぇ」
その辺はやはり錬金術師と教会が兼任しながら一緒に成長していくしかないかと話し合っている茂たちの向こうでは、騎士科と魔法士科の教師、生徒たちが村人たちの中から志願者に訓練を行っていた。
「これから自分たちで村を守っていくとなると、やはり巡回も必要になってくるな」
「畑仕事もある中で開いた時間に、となると、交代制が良いと思いますが」
「子供たちにも、外部から来た者には警戒心を持つようにある程度知識を持ってもらわなければな」
この村の状況、発展具合は他国から見ても取り入れたい部分が多いと言われ、やはりそうなのかと納得する者と驚いている者に分かれていた。
「女、子供などは特に攫いやすいからな」
「知識を得るだけでも利点だが、この村には長命種が多い。エルフは魔力量の多い子供を産むことができるし、ドワーフは知識だけでなくそれを再現する技術もある」
「獣人などはその二つの種族と子供をなした時、エルフやドワーフの特徴を兼ね備えた上で肉体的にも恵まれた子供が生まれれやすい」
王国の貴族たちもそのように家系を繋いできたと説明をする。愛情だけでその中から相手を選んだとは決して言えないのが貴族の世界だが、今も領地や国を支える強固な柱としてしっかりと役目を果たしている現状を見る限り、先祖がしてきたことが間違いだったとは決して言えない。
「我々も授業で習っただけだが、枢機卿や火の民と話をする機会はあった。その上で言えることだが、精霊種と人間種は多分根源的に認識の差異が埋まりはしない種族なのだ」
精霊種は元々肉体が強靭であり、恋愛結婚以外で子供をなすことがない。それでも国や里といった規模で人口や生活圏の維持が可能であり、内部での争いが起こりにくい。
しかし、肉体が弱く恋愛感情がなくとも結婚をする事が出来、尚且つ寿命が短い人間種は自然環境に合わせて変化をし続けなければ種として存続することが難しい。
「国や街、村を人間種が維持していくというのは綺麗ごとだけでは成しえない。文明の流れを途切れさせない為なら、戦争も辞さないのが人間種だ。しかし、そうすることで子孫の繁栄は守られる。悪意だけでなく、人の力ではどうすることもできない物から逃れて生きていくために事を構える。構えられても自衛が出来る。その準備を怠ってはいけない」
だからどんなに内側が平和であっても兵士や防衛力は維持しなければならないと、騎士科の教師が参加者に説明をしている後ろでは、魔法士科の教師も頷いていた。
「これからこの村は聖国でも他国との関わりが多くなっていくでしょう。立派な道があるのもそうですが、国境から一番近い村でもあります」
それはいずれ街になり、王国でいう辺境伯家が治める領地になってもおかしくないという事だと分かりやすく教えてくれた。
「他国と面している、もしくは国境に近いというのは、それだけ重要な拠点になるという事です」
「今まで聖国の王都にいたあなた方には信じがたいかもしれませんが、人間種の中でもエルフやドワーフ、獣人というのは私兵を集める時に真っ先に声をかけるべき種族とも言われているのです」
「獣人はフィジカルの面で人間族の中では群を抜いている。エルフは魔力量、魔法もそうだが寿命が長いので経験則が桁違いだ。だから参謀に据えられることも指揮を執る事も多い」
「ドワーフは兵士として戦うのももちろんですが、私兵を作るうえで武器の用意は必要不可欠になりますから。鍛冶師としてはもちろん、生産面で間違いなく重宝されます」
軍事面でなくとも、日常生活の必需品を生産してくれるのだから、一般市民としても工房を開いてくれるというのはそれだけでありがたい事なのだと、基礎的な話も交えながら説明をする。
「エルフや獣人は種族的に森の中での活動が得意だ。変化にも気づきやすい。そういう意味でも、この村に皆がやって来たのは良かったのかもしれないな」
「手つかずの森は慣れるまで何かと大変だとは思いますが、我々人間族よりも早く馴染む事が出来るでしょう」
人間族よりも優れている部分があるとハッキリ口に出して言われたことがほぼない皆からすると、誇らしさを感じるよりも困惑が先に来てしまうようだが、そこは時間が解決してくれるだろう。
子供たちの中には、村に残ってくれていた錬金術師から勉強がてら話を聞いていたらしく、自分の得意分野に気づいていた者も多かった。遊びの延長で森へ入り、どんぐりなどの木の実を集めながら色々と試していたらしい。
「とはいえ、やはり人数が少ないですね」
「ああ、今は良いにしても、これから巡回用の衛兵団をとなると、やはり国外からの移住かギルドへの要請が必要だな」
この村だけではなく、聖国自体があまりにも人口が少ないのだ。いくら妖精種や精霊種と関りが出来たからと言って、今まで他国との外交などあってないようなものだった事を考えると多方面で弱小国となってしまう。しばらくはサラが作った茨の防壁で凌げるだろうが、それはあくまでも時間稼ぎにしかならない。
それを本当の意味で理解している者が、どれだけ今の聖国にいるのだろうか。多分、和が顕現した付喪神ただ一人と言っていいレベルだろう。
「王国でも、何か話が持ち上がっているのだろうか」
「上がっているだろう。教師の我々まで回って来ていないだけだ」
「私個人としては、これからギルドも参入するようですし、これだけ下地が整っていながらまっさらな村です。学園の跳ね返りに卒業後の進路として勧めてみたいものですよ」
学園、もしくは王国の中では爪弾きにあっている生徒の顔を思い浮かべる。
「性根が腐っている訳でもなく、感性が歪んでいる訳でもない。単に王国とそりが合わない者というのもおりますし」
「・・・いいですね」
「大多数を相手にしても折れないのですから、丁度よいのではありませんか?」
貴族には、家督を継がない者以外は家を支えるという名目の部屋住みか、家で持っている爵位をもらって自身で事業を起こしたりする者もいる。
しかし、全員が全員そうはいかない。
部屋住みなど特にそうだ。家督を継ぐ者より秀で過ぎると家督を奪われると御家騒動に繋がりかねないし、かといって目立たないようにしていれば居候だの無駄飯喰いだの肩身の狭い思いをすることもある。貴族には領地を持っている者ばかりではないのでなおのことだ。そういった不安定な貴族、特に男子にとって、家を出ても大いに大成できる可能性のある場所というのは希望になる。
「我が校の卒業生ならば、いつでも騎士爵を賜れるだけの実力も、遠征経験も積んでいる。貴族家出身の場合、他国の情報にも明るい。双方にとって悪い事ではないな」
「現在の在学生に至っては、市井へ下るつもりでいる者も多いようですし」
「平民としての生活にも、苦痛を感じる者はそもそも在学中に卒業後の予定を立てているものです」
「ですな」
教師陣で話が纏まりだしたのをみて、
「王都の学園は我が国の宝でもある。出来るだけ有望な人材は確保しておいてくれ」
「もちろんだ」
「人材の流出は可能な限り抑えたい所ね」
そんなやり取りを聞いたワット達は、肩をすくめながら無理だってと口を開く。
「好奇心には叶わねぇって」
「それならいっそ、グロスター辺境伯とか騎士団とかと連携して巡回しながらここに定期的に滞在とかにした方がお互いに良くね?」
「一般人とかギルドとかにも声をかければ、その時期だけでも一緒に来たがるやつとかいると思うけどな?」
聖国の森には面白いくらい色んな素材があるが、鉱山が無い。金属の加工に必要な木材が豊富に取れるが、炉を作るための石がない。ならばどこから持ってくるか。山も森も鉱山も採掘も盛んな王国に目が向くのは当然。
「今の聖国なら資源も財源もたっぷりあるし、物々交換でも十分だろ」
「王国と微妙に風土も違うし、育つ作物も違う。商売相手にもいいんじゃね?」
「おまけにみのり屋が持って来たシゲル先生の品種改良されが作物だ。魔力が潤沢で人間族が耕すより畑を広げるのも早いし、一回全部潰れたの見てるから森を残しつつ畑を広げるのも考えやすい」
「ここの人たち戦うのとか嫌うけど、仕事は休まずって感じだしな」
これならば食料の売買でも十分やっていけるだろという二人の意見を聞き、大人たちが「それだ!」と叫んだ。
「双方に利益があるのならば他国から見ても侵略行為だと横やりを入れられることもないでしょう!」
「遠征も、何もダンジョンへ潜るのだけが全てではない!」
というか森に入る事の方が多いのだから、この村までの移動だけでも十分な訓練になると教師たちも頷き合う。卒業生だけでなく、在学生にも経験させることが多いと賑わっている王国民を見て、村の皆が顔を見合わせる。王国の者からは、悪意のようなものを感じない。
むしろ、話を聞いている限り自分たちの事も気遣いながら今後を考え、一緒に発展しようとしている雰囲気を感じる。
「いくつか案が出て良かったですね」
これから聖国の王都へ向かうのだから、そこで聖王国陛下にも挨拶がてら今後の話をできるかもしれないと茂が笑った。
少し前、この関所を通った隣国の者たちからは感じなかった穏やかな空気に、皆が心底安心していた。
やって来た使者たちの身元や身分証を神官たちと確認し、迎え入れた時とはまったく違う。あの時、ひと月ぶりくらいに感じた悪意。こちらを品定めしているかのようなあの視線。村人全員が、一瞬でこれはダメだと判断した。子供たちも久方ぶりに感じた悪寒に家から出てこられない者もいたほどだ。
けれど、逃げ込める家がある安心感からか、次の日には怯えながらも外へ出てくることが出来たのだから強いものだ。刻まれた恐怖に、今なら向き合う事が出来る。当たり前のように行われる略奪に、これからはもう、怯えなくても良いのだ。
寝る前に思い出す、光の粒が漂い自分の一部になっていくあの光景。
もう、どんな理不尽で踏みつぶされても、折れてはいけない。この村だけは奪われてはいけない。助け出され、清潔な服と温かな食事を与えられ、導かれた先に用意された安住の地。そこに住むことを許されたのだ。生きるすべを授けられたのだ。こうしてまた、会いに来てくれたのだ。
もう、思考を放棄して全てを諦め、折れて良い訳がない。
守るために、強くならなくては。
また笑顔で賢者たちを歓迎する為には、強くならねば。
村人たちの決意が固まった事など露知らず、それから四日ほど支援のため滞在した一行はまた道をたどって聖国の王都へと向かっていった。
「まさか滞在中に村の名前が決まるとはな」
「良い名前が決まって良かったわね」
「ピア村って、響きが可愛いよね」
「
「みんなにとっての理想郷なのは本当だよね」
車の中で錬金術師達が楽しそうに話しながら、支援物資の追加を作って行く。
「衛生用品と常備薬はいくら作ってもいいですよね?」
「いくら人数が少ない村だといっても、あの人数の薬と衛生用品をたった二人で・・・」
「さすが先輩たちだよな!」
「・・・そういうものなんですか?」
「ワットさん達の学年は一番人数が少なかったですから、自然と仕事が早くなったんだと思いますよ」
「イーサンくんは発想力もですが、行動力もある子ですからね」
たった二人、ワットとイーサンの前には三人がいたとはいえ、新しくできた村の全員に満遍なく衛生管理の知識を教えながら薬の調合をして配布し、今後の為にお金でのやり取りも教えるなど出来るものなのか?と学生だけでなく教師たちが首を傾げる姿に笑う。
「神官さんたちもいらっしゃいましたし、」
「あれだろ、ワットさん声デカいから遠くにいても聞こえんだよ」
「獣人の人たちは耳もいいし、どこにワットさん達がいるか分かりやすかったんじゃないですか?」
「ワットさんなら土属性だから畑仕事とかでも手伝ったり答えたり出来るだろうし、イーサンさんは水属性だから手荒いとか風呂を手伝ったり?」
「二人ともホムンクルスとゴーレムがいるから、二手に分かれてもかなり出来る事多いよね」
「これから大変だって言ってたよ。一応全部の家に暖炉はあるけど、各部屋にはないから火鉢を作らなきゃって」
「季節の変わり目は、病人も増える」
「カタリナさん宛ての手紙預かって来たし、炭焼きもみんなで手分けして始めるってさ」
もしも一冬分が間に合わなかったらカタリナとそのホムンクルスのエイダンに頼んで一気に作っちゃいたいんだってとメイナが言う。
「私たちも火種くらいなら魔法で出せるけど、炭を作るのに均等に熱してとかのコントロールだと魔法士の領分になっちゃうし」
「エルフも多いから魔法は使えるだろうけど、まだみんな使い始めたばっかだしな」
「エイダンなら一小屋分くらいなら一瞬で炭に出来ちゃうしね」
「ポポ」
「リリーは子供たちに大人気だったわね」
森の妖精だ!と追いかけられている姿が何度か目撃されていたのを思い出しながら笑えば、リリーはまた声を出して頭から花を咲かせると揺らして見せた。
「触られるのは嫌だけど、子供たちの相手をするのは嫌じゃないんだよね」
「リリーちゃんは学園で生まれたからねぇ、子供の声とか気配とかはあって当たり前なのかもね」
「ププ」
返事をする姿に、
それから二日後、王都が見えてきた。
「はやー!」
「前は四日はかかったのに!」
「あれは道を作りながらだったからだよ」
「早馬よりも早く進んでいるからだろ」
「道の調子とかも見たかったから少しゆっくり進んでもらったんだよ」
窓からも景色が追えるスピードだったでしょと言われ、そうなんだがと小さく返す。
「お待ちしておりました!」
「お久しぶりです。これから真っすぐ聖王教会へ向かっても構いませんか?」
「はい、皆さまをご案内するよう仰せつかっております!」
馬に乗った聖騎士たちに誘導されながらゆっくりと街の中へと入っていけば、そこには活気のある声が溢れていた。
「わー!全然ちがーう!」
「こんなにもう活気づいてるんだ!」
港から海へ出ている船の数も、最後に見た時よりもずっと多いと叫ぶ錬金術師達に他の皆も窓の外へ視線を向けて眼を輝かせている。
「あれは、漁をしているのですか?」
「今海へ投げ入れたのは、網でしょうか・・・」
「グロスター辺境伯領での漁業の方法とは違いますよね」
笑いながらグロスター辺境伯領との海域の違いについて説明をする茂に、生徒だけでなく教師、王族の皆も興味深げに耳を傾けた。
「グロスター辺境伯領は海域的に荒れやすいのですが、その代わり魚介類が大きく成長する傾向が強いようです。そうしなければ生きていけないというのが大きいのでしょうが。なので釣漁法が主流で、船で沖へ出ても巨大魚なんかと銛で戦って引き上げるのが主流の様ですね」
「変わって聖国の海は沖へ出ても荒れることが少なく、小さな魚が群れで生活をしやすい環境が整ているんですよ」
「なのでああやって大きな網を投げ込み、魚の群れの一部を捕まえて引き上げているのです」
「漁業にもそのような違いがあるのですね」
「こういう漁なんかは生態系にあった方法が地域ごとにあったりしますよ」
「漁師さんもそうですが、森に囲まれている村のはずれなんかには木こりの方や猟師の方が住んでいたりしますしね」
その地域で出没する魔物や動物が違うのだから、狩りの方法が変わるのも必然なら受け継がれていく中で独自の進化をしていくのも必然。だからこそ地域ごとの違いがあって面白いと笑っていれば、みのり屋の車に気が付いた住民たちが道の端に集まって来たので、手を振るとさらに歓声が上がった。
「キャー!」
「悲鳴まで上がっているのだが、」
「あれの大半は進に向けられている好意です」
「わしなのか?」
「自国を救ってくれた恩人だぞ。もう英雄として歓待されるだろう」
「それはわし個人だけじゃないだろ?」
「みのり屋の未婚はお前だけだからな」
結婚はしていなくても婚約に近い関係の者がいるのだから、特定の相手もいない進に殺到するのは当たり前だろうと言われ、分からなくもないがと苦笑する。
「和の所にも、助けに来てくれた他のみんなもいるんだ。好意の分散は十分できているだろ」
「・・・」
目隠しで顔の半分が隠れていても間違いなく整っていると分かる顔面と誰もが認める実力。なによりみのり屋の一員どころか創設者の一人だというのに、あまりにも無防備な事を言いながら笑っているので、車内の男女関係なく皆が口を閉じた。
「聖国でみのり屋の影響力は大きいどころじゃないし、王国でも人気なのに・・・」
「あいつ、大丈夫か?」
「既成事実とか・・・」
「・・・本人にその気が一切ないのがな」
錬金術師達が額を寄せ合いながら話している反対側では、騎士科の生徒たちも同じ内容の話をしていた。
騎士科にも女生徒がいるのだが、この三年間と数ヶ月で進の事を夫にしようと本気で考えている者はわずかになっていた。そのわずかに残っている生徒たちも、今回は参加していない。もしもここにいたら王国と聖国、どちらが先に既成事実を作ってみのり屋を取り込むかで泥沼の争いが行われただろうが、それを配慮して選抜されたと言われてもおかしくないメンバーがそろっている。
「よく来てくださいました」
「お久しぶりです、クリストファー陛下」
玉座に座るクリストファーにギルバートが挨拶をして、その隣にはスカーレット。後ろにはファビオラとアンドリューが共に挨拶をする。
「また皆さまをお迎えすることが出来てとても嬉しく思います。我が国の為に支援物資まで、本当にありがとうございます」
戴冠式を終えて正式に聖王となった事で顔つきも変わったようだが、以前の様な強迫観念に押し潰されそうな、緊張感が抜けているその表情にギルが目を細めて笑った。
「お姿を拝見できて、安心いたしました」
王族同士の和やかな挨拶を交わす光景を見て、貴族や神官たちの緊張もほぐれたようだ。この後は歓迎のパーティーもあるので用意した部屋で休んでいてくれと言いながら、ギル達だけでなく支援に来てくれた学園の皆にも声をかけるあたり、クリストファーは下に慕われるタイプの王様になりそうだと玉座の間を後にした。
「夜まで時間あるし、和の所にでも行ってくるかな」
「和達って、どこにいるの?」
「一応賓客じゃないの?」
「賓客ではあるんでしょうが、その対応を喜ぶかは別ですからね」
「前に王国で会った時は森の近くにスペースもらったって言ってたけど・・・」
「ああ、前にみんなで来た時教会の裏庭に下りただろ。あの庭をさらに広くしたらしくてな」
その庭と森の狭間に森番の小屋を建てて、キャンプ場にしている一角があるみたいだと窓から外を見て言う。
「和も茂が造ったテントで暮らしているからな。城で迎え入れられてもフー達が一人で行かせる訳がないし、敷地内って事で手を打ったんだろ」
「・・・賓客を持て成すって大変なんだな」
「みのり屋が特殊な例過ぎるんだ」
アディの呟きにギルが笑っていると、窓から進と天心が森へと出かけて行った。
「せめてよその国では扉を使え」
「どんどん求めるハードルが下がって行っていますね」
笑いながらアランが聖国の者に声をかけて進が一人で和の所へ行ってしまったと声だけでもかけに行くのについていき、現津が魔族たちとも仲がいいので放っておいても問題ないと付け加えていた。
