7.学園生活(続き)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
キリルが質問攻めに合っているのを横目に出かける準備を進めていれば、フェアグリンが孤児院の子供たちと遊びに来たのでこれからスラム街へ行ってくると言うと落ち込んでいた。
しかし、和が召喚術でこれから希望者と”遊ぶ”と聞き、皆で参加すると張り切りだす。
「わたしもー!」
「おれもー!」
「みんなは何で戦いたいの?」
本気で参加する気でいる大人たちは各々の武器や杖を持って来るとテントや自室へ向かっていったので、残った子供たちと何が出来るのか、したいのかと相談していた。
こうして始まった和との手合わせ改め”遊び”だったのだが、何故か昼を過ぎる頃には冒険者や魔法士などの街でギルドに登録している戦闘職たちが集まっての大騒ぎ、というかお祭り騒ぎとなった。
「疲れたーっ、ちょっと休憩させてー」
「お疲れ様」
「皆さんもお昼にしませんか」
昨日倒した魔物の解体も終わったので、ギルド、学園、王宮に均等に分配するので後の事はよろしくと一筆書いた手紙とリストをひなた達に渡し、学園に押し寄せて来た皆に声をかけていく。ずっと出ずっぱりで疲れ切った和は、倒れ込むようにフーズ・フーの膝の上で伸びていた。
「さすがに疲れたか」
「んー」
「こっちに来い、昼寝してる間に回復もしといてやる」
「あっちでパンでも啄んでろ!」
ドレークがケンカをしている二人に肩をすくめ、昼食が食べられそうなら持ってくるぞと言って顔を覗き込むが、寝息が聞こえてきたので苦笑して満に和の分の取り置きをお願いしに行く。
「ドレークさんっていい人だよね」
「うん、間違いなく」
「魔族だけど他の人みたいにケンカっ早くないし」
「性格?血の濃さ?」
「サラさんもケンカとかしてなかったよね」
「あれは単に穏やかな性格ってだけかな」
聖国に行った時の事を思い出しながら話していると、榊に昼食を食べさせていた圧紘が笑って口を開く。
「血の濃さで言ったらなかなかだよ?純粋とは言わないけど、その一歩手前くらいには魔族の血が濃いのが分かるから」
だからもともとそういった気質なんじゃない?と言われ、転弧もそう思うのかと聞いてみると考える間もなく頷かれた。
「ドレークさんはあれだから、百獣海賊団の良心みたいな」
「ものすごく納得」
「人間種にも優しいしね」
「どの種族にも優しいんじゃない?ブチギレてるとこ見たことないけど、多分和さんとか仲間とかに何もしなければ普通以上に優しいと思うぞ」
「何かしたら?」
「そりゃ他の魔族と同じで殺戮の限りを尽くすだろ。多分」
「そこは同じか」
本当に「そういうもの」なんだなと話しながら、午前の遊びで見つかった魔導武器の改善点について話し合い出した。
こうして和は押し寄せて来た皆とチームを編成し、何度も沢山の作戦を成立させ、参加したチームは勝率100%の実力を見せつけるだけ見せつけて夕方になると楽しそうに帰っていった。
「またねー!」
「これから少ししたら私たちも聖国に向かうから、そっちでもよろしくね」
「うん!」
「お土産の料理、みんなで食べてね」
満たちにお土産をもらい、手を振って光る紋と共に姿を消した。
「まさか召喚術と空間魔法にそのような関係性があったなんてっ」
「俺このまま召喚術極めるまで使い続ける!」
「魔法ってこんなに楽しかったのね!!」
泣いている魔法士と目を輝かせている子供たちに笑い、明日からは各学年初級ダンジョンへ向かう準備もあるのだから早めに解散しようと声をかけていく。
「学園に入ったらダンジョンにいけるの!?」
「初級のダンジョンならね。もちろん入ったら怪我をしちゃいそうな人は行けないよ?」
ダンジョンに入っても大丈夫だと学園の先生たちを納得させられた生徒だけだよと、金剛や優とスラム街へ戻っていく子供たちにも念を押して手を振った。
「日持ちする果物をおいていくから、みんなでお腹がすいたら食べるのよ?」
「せんせーたち、また来てくれる?」
「ああ、学園が休みになった日は会いに行くよ」
スラム街の子供たちの成長も、信頼できる大人がいるという精神的安静が加わり上手く作用しているようだ。
「私たちはこのままテントでダンジョンに行く準備をするけど、みんなは寮の部屋に戻る?」
「どうしよう、この闘技場も使っていいなら残りたいかも」
「校庭では威力を抑えた実験しか出来ないからね」
「元の状態に戻しての返却なら使っても構わんよ」
「ありがとうございます。それなら今回特級ダンジョンへ向かうみんなに開放という形でも構いませんか?先生たちも、確認し合いたい事などあるでしょうし」
こうして、特級ダンジョンへ潜るために聖国へ向かうメンバーは闘技場の使用許可が下りたため、合同訓練の様なものが行われることとなった。
「リチャード、改良した武器の使い心地はどうだ?腕も可動域を増やしたが、強度は問題ねぇか?」
相棒であるゴーレムの肩や新しく造った武器の強度確認をしているガークの隣では、ポーも水晶を量産して形を整えていく。
「ルーカスも体のパーツをいくつか用意してから行こう」
「お前ら二人のゴーレムとホムンクルスは、粘ってるよな」
ジンが魔導武器である毛皮の手入れをしながら、まだ生まれてこないルーカスとメイナのホムンクルスであるデイヴィッドの卵を見て言う。
「今までのを見た感じ、生まれるのが早いとか遅いとか、表現力?に結構影響あると思わない?」
最初から相性が良いと言われていたアランのホムンクルスであるテオは除外したとしてと、リックがジョージとアイテムバッグに入れるポーションや爆弾などの使い方のおさらいをしながら言っていた。
「造り始めて比較的早めに生まれて来たのって、僕らの中じゃリリーとザック、ラウラがダントツでしょ?」
「ああ、アンも、アラン先生程とまでは言われてなかったけど向いてるみたいだったしな」
「アディはどうだったんだろうね?ファビオラ様もいたし、血筋?」
「ギルさんも早めではあったよね」
「早くに生まれたみんなって、なんか動物的っていうか、まぁジョージが猿の外見をしてるから人みたいな表現をするのかなって思うのかもしれないけど」
「よい着眼点だと思いますよ」
リックの言葉に、聖国遠征で使う経費を書類にまとめていた現津が顔を上げないまま会話に入って来た。
「ビオラはゴーレムとして生まれるまで数十年の間魂のままで成長していましたし、その状態で訓練を共有していたというのは茂さんも仰っていましたが、」
その段階で人らしい感情の動きや表現方法も覚えて来たのだろうと言う。
「魂は器の影響を受けやすいものだしね」
「手のない形の奴に器用になれって言や、手以外の部分を使うしかねぇんだ。そりゃそうだろ」
「ザックは、器用だな?」
鳥の形をしているので手の代わりに翼があるが、その分嘴や足で物を掴むこともできるとアディが止まり木に停まっている自分のゴーレムを見た。
「あるもので出来るように工夫するのが、肉体を持ち使いこなすという事です。魂の状態でいるのが短い場合、肉体の形になれるのが先で感情表現を伝わりやすいようにするの一歩分遅くなるのは必然です」
「肉体を使う事になれる頃には、その形で出来る表現に偏る。そう言われると納得しちゃうな」
ギルが胸ポケットに刺さっている花の姿をしたホムンクルスを撫でると、花弁が揺れて色が変わる。
「とはいえ、これも場合に寄りますよ。造ることに一番向いている茂さんから生まれた桃之丞が器のままですからね」
「アアア」
「桃は私がそうなって欲しいって思ったからだと思うけどね?」
抱っこができるサイズにも、乗ることができるサイズにもなれて、尚且つ甘えん坊なところが可愛いと頭を撫でると、抱っこをせがんでくる。
「食いしん坊になったのは予想外だったけど、お腹いっぱいになって満足そうに寝てる所とか可愛いし、これでいいんじゃないかな」
「ブブブ」
「抱っこ紐付けたらまんま赤ちゃんだもんね」
「可愛いよねぇ!」
「見たい!」
何人かが見たいと言うので、収納バッグから抱っこ紐を出して桃之丞付けてみると、お尻の支えから尻尾が出ていて可愛さに拍車がかかった。
「可愛い!!」
「可愛い!」
「そうだ、出店した時もこの抱っこ紐人気だったから追加で造っておかなきゃ。こっちの包むタイプも売れたんだよね」
「金具の所とかは私じゃ作れないから。よろしくね」
赤ちゃんが落ちてしまわないように強化と保護の付与を付けなければと豊が呟きながら桃之丞の頭を撫でていた。
「懐かしいわぁ、子供の頃ビオラをこんな風に抱っこやおんぶをして遊んでいたわねぇ」
「こくん」
「子供って意外に本格的な遊びしたりしますからねぇ」
「ぐはっ」
「悪気はなかったはずなんです!」
ディーノの襟首を掴んで持ち上げている現津に、ディーノ以上に真剣に謝っているウィリアム。それを遠巻きに眺めている三年生たち。一、二年生たちは近くにいる術師団や教師たちの後ろへ隠れていた。
「あいつも懲りないな」
「いやまぁ、しょうがないよ。可哀そうだけど」
四年生たちはディーノに呆れながら、現津をなだめに入る。そんなやり取りを見ていた他学科の生徒や教師たちは、あれが日常なのかと錬金術師科にちょっと引きながらこれからの遠征に向けて準備を進めていった。
「という事で、うちの学科は三、四年生全員で参加する事になったけれど、それは国王陛下と学園長から聖国の復興を手伝うように依頼をされたからでもあります。移動中は授業の他にもポーションや日用品、消耗品、衛生用品、ありとあらゆる物を造りながらになるから心しておくように!」
「はい!」
クアンドロから三年生へ指示が出され、それぞれすでに造れるようになっているアイテムバッグに自分たちの専用武器や器具を入れて数を数えていた。
「くそー!!」
「行きたかったー!」
特級ダンジョンはもちろんだが、他国に国の依頼で行けるなんてまずない事だと悔しがっている下級生たちに笑いながら、面白いものがあったらお土産に持って帰って来るねと言って茂たちも移動用の車を出して準備を進めていく。
「シゲル先生、今よろしいですか?」
「はい、どうしました?」
「王宮より使者がいらっしゃいました」
「陛下より書状を受け取ってまいりました。グロスター辺境伯より今回のスタンピードを鎮圧した事実、並び聖国、王都を繋ぐ道を作った事への感謝を伝えたいとお声がかかっているとのことです」
王宮からやって来た使者が書状を読み上げ、手渡してきたので現津が受け取った。
「みのり屋だけでなく、これから聖国へ支援に行く学生たちにも感謝を伝えたいと書かれていますね」
「パーティーで歓迎?でも私たちダンジョンに潜るからドレスとか持って行かないつもりだったんだけど」
「向こうも事情が分かっているんだ。さすがにドレスを着る程の正式なパーティーではないだろ」
書状も内容も急だし、制服で十分だと言うアディにギルとレティも頷いている。ファビオラも、自分も制服(ローブ)で参加するのでそこは問題ないだろと言うので、皆にはローブの綻びがあった場合すぐに豊に繕ってもらって来いと声をかけていく。
「多分、感謝と歓迎のパーティーも本当だけど、聖国にいるカイドウさん達にも友好的な事を示しておきたいんじゃないかな?」
「ああ、使者の人たちが怖がってたね、そういえば」
「後は、小国にもだな。聖国へ来ていた使者がどうなったのかは分からないが、多分途中からあの道を使って聖国へ入ったのだとしたらみのり屋を囲み込みたくなるのは間違いないはずだ」
小国郡側から来た場合王国へ入る為にはグロスター辺境伯領を通る必要がある為、みのり屋を招待したことがあるという事実が欲しいのも頷けると言う。
「なんでですか?」
「みのり屋は王国に数百年は諸外国に対抗できるだけの技術と知識を惜しみなく与えてくれている。そして聖国にもみのり屋の一人がいて、これから定期的に訪れる事が決まった」
王国と聖国は元々友好国で同じ宗教を国教としていて、これから同盟国になるかもしれない。
「今回道まで作ったし、何かあっても助けに行かないよって言ったとしても信じられないんじゃないかな」
実際なにかあったらグロスター辺境伯領から援軍を出すだろうし、王国とも連絡をしやすくなったので更に援軍が来るのも時間の問題。
「食料や塩なんかの取引がしやすくなるのもそうだけど、王国がこれからも聖国と仲良くしたい理由はいくらでも考え付くしね。もしかしたらこれから聖国であのラデンっていう工芸品とかが出来たりするかもしれないし」
特級ダンジョンを持っているという一点でも援軍を送る価値はある訳だしというギルに、レティも友好国でい続けることは王国の為になると同じ意見だと頷いた。
「ヤマト達がいない内に戦争が始まったとしても、王国には負けないだけの力と連携が取れているって示しておきたいのよ」
「グロスター辺境伯領って、ついこの前まで呪われた聖国と隣接してるって事でそんなに栄えてなかったんだよね」
森も海もあるので資源としては豊富だが、それ以外にうま味が無いって言ったらいいのかなと眉を垂らしながら苦笑した。
「表現が難しいんですが、そんな感じなんです」
「資源が豊富なのに?」
「錬金術師か優秀な執政官なんかがいるのなら、その資源を上手く使って急激に都市化してくれると思うよ」
「あそこの海って聖国と違って荒れやすくて、塩を作るのは良いけど漁業がいつも安定してるって訳じゃないのよ」
「そうだったんだ」
「だから、グロスター辺境伯領としても聖国と貿易がしやすくなるのは願ったり叶ったりなんだよ。多分」
これから発展の希望が見えた時に、小国から戦争を吹っ掛けられてそちらに力を割かなければならないなど考えたくもないだろう。
「だから、”正体不明の賢者”って言われてたみのり屋を招待するくらい仲良くしてるって示しておきたいんじゃないかな」
「後は、王都まで道が繋がっているだけでなく、王族本人が来たというのも大きいな」
「それもただの王族じゃなく、みのり屋に錬金術を直接教わった王太子と王太子妃です。呼べるチャンスがあるのなら呼ぶ一択でしょう」
「アディさんは?」
「私は王位継承権を捨ててまで錬金術に傾倒した変わり者だからな」
「不良から変わり者にランクアップか。よかったな」
「アップかな?」
「結果を出してるんだからいいのよ」
ファビオラも同じような評価をもらっているらしいが、すでに後宮へ退いた王太后なのでそこまで言われている訳ではないらしい。
「私も昔”変わり者”って言われた事があるし、アディは隔世遺伝したとかその位の話のネタよ」
笑いながら、グロスター辺境伯へのお土産の準備も一緒に始めたのだった。
「それでは、行ってまいります」
「気を付けての」
「みんなも、初級ダンジョン頑張って来てね」
「もちろんです!」
「絶対いつか特級ダンジョンに潜りに行きますから!」
「初級からちゃんと段階踏んで行けよ」
学園の方は榊と圧紘たちに任せ、みんなに見送られながら三国に引かれた車で王都を出発する。
「で、やっぱり一緒に来たんですか」
「当り前だろ」
本人が言う通り、当たり前のように学生たちと一緒に車に乗っているシリウス達にアディがため息を吐いた。
「こちら、紹介が遅くなりましたが私の養い子たちです」
クミーレルが教師陣にそう言って子供たちを紹介していく。以前オークの群れを倒した時にも参加していたので顔は覚えていたらしい。自己紹介をしながら首を傾げる。
「もう何名かいませんでしたか?」
「その、」
「あいつらは今回は留守番です」
「研究中で手が離せないものがありまして、」
「そうでしたか」
「学園へ通っていないと思っていましたが、すでに家で研究をする段階だったのですね」
「・・・はい」
クミーレルが適当に笑顔を見せられるようになってきていると、その成長を感じている後ろではリッチとアイラの幼い二人が大はしゃぎで窓の外を眺めていた。
「すごいぎゅんぎゅん進む!」
「窓は開けるなよ」
「この気圧で空気を一ヵ所から入れたら破裂並みの暴走が起こるからな」
「そうなの!?」
ここにいる全員が死ぬので絶対に窓は止まっている時だけ開けるようにと他の皆にも声をかけ、一刻もしない内にグロスター辺境伯領へと到着したのだった。
「やはり道が整っていると早いな」
「はやすぎぃ・・・」
「帰りはゆっくり帰る予定ですが、ダンジョンや街での時間を多めにとった時は駆け足になるかもしれませんね」
「駆け足の概念が崩壊しそうだ」
移動に時間を取られないのは、それだけダンジョンや聖国にいる時間が長くなるのでありがたいがと呟きながらも、腑に落ちない顔をしている教師陣に笑って前を向く。
「関所が見えてきましたね」
「いいですか。もう知っている子もいるでしょうが、基本的に国を跨ぐ時は入国料が必要になります。同じ国内でも各領を移動した時も入市料がかかりますよ」
「人だけではなく荷物、家畜、馬車の種類によっても変わって来るわ。特に私たちはホムンクルスやゴーレムを連れていることが多いから、国によってどう扱われるのか確認が必要よ」
「我が王国では陛下たちが早急に税と法律を改めてくださったので、ホムンクルスもゴーレムも人と同じ税にしてくださいましたが、錬金術師のいない国では家畜か荷物と同じ扱いをされる場合もあります」
その事に腹を立てたりしないよう、あらかじめギルドに登録しておくのが一番スムーズだとクアンドロ達教師が生徒たちに説明をする。
「錬金術ギルドはもちろんだけど、冒険者や魔法士ギルドでも認識のすり合わせをしてくれてるみたいだよ。みんなの中にはスクロールを書くのが上手な人も、いろんなギルドに素材を卸したり解体を手伝って欲しいって人もいるでしょ?」
だから必要に応じで様々なギルドに顔を出してみると良いと笑いかける。
「私も錬金術ギルドと商人ギルドの二つに登録してるし、うちの中にも興味のある子は冒険者ギルドとかに登録してたりするしね」
「ギルドに登録すると登録費や収入の3%を税として納めなければいけなかったり、沢山のギルドに登録するとそれなりに出費もかさみますから。無理のない程度で、ですけどね」
望にも念を押されつつ、関所の兵士に書状を見せてまたゆっくりと進みだす。
「ものすごいこっち見てるね」
「そりゃそうだろ」
「国王陛下と領主のサインが入った書状を見せられたらな」
「・・・一応言っておくが、みのり屋の知名度と影響力は貴族にも市民にも分け隔てなく絶大だからな」
”正体不明の賢者”は元々スラムなどの貧困層から噂が広がったのだから、市民に崇拝のレベルで慕われているのは言わずもがな。子供だったとその正体が判明してからも扱う商品もさることながら、みのり屋に名を連ねているのがこの大陸では伝説とされる精霊種や妖精種など他種族までいるのだ。どこを切り取っても人間種からすればみのり屋は話題や発言力のトップに躍り出る。
「そう言って持ち上げてくれるのは嬉しいんだけどねぇ。私たち行商をやめるつもりないし、それなりに知見が広い自負もあるけど、そこで住んで治めてる人たちからすると結構厄介な部分もあると思うんだよね」
流行病や原因不明の風土病、環境への対応方法など、どうしても被害が一定以上にならなければ対応が出来ない事、解明できない事柄というものがある。そんな発展途中の場所にどこからともなく現れて、救済という一番美味しい所だけ攫って行くというのは、見る者が見れば邪推してしまうほど上手くできた話だ。
「今までのだって行商だからこそいろんなものを沢山見てきたから出せた解決策だけど、行商の私たちは同じ場所で生き続けてる人たちの責任とかとは無縁だからね。”正体不明の賢者”を慕ってくれるのは嬉しいけど、手放しでお礼は言えないかな」
今回、平民として身分階級の上位に位置する者たちと学園で出会えたことはとても喜ばしいと微笑む。
「何世代にも渡って長い時間みんなで守って発展させて、安定させようと努力してきた結果が国で貴族なんだから、いつ来るのか、本当にいるのかも分からない賢者よりも重要でしょ」
「・・・」
「今までも、これからだって無数の賢者も剣聖も魔女が生まれてこの国に居つくだろうから、貴族のみんなはその人たちの手綱をしっかり握れるようにならないとね」
「・・・握れるかなぁ」
「ギルくんは言い切らないとマズいんじゃない?」
「ふふ、立場上はね」
それでも、自信をもって握れるとは言い切れないと穏やかに笑って肩を揺らす。
「本物を見ちゃうとね。・・・それでも、賢者も剣聖も魔女も、その卵くらいは纏められるようにならないとね」
笑いながら深く頷いていた。
関所を通り過ぎ、賑わっている大通りを進んだのだが、まるでパレードを見学に来たかのように住民たちが顔を出していた。
「ものすごいこっち見てるね」
「そりゃそうだろ」
さっきもしたような会話が、車内のあちこちから聞こえて来る。
「車にもみのり屋紋入れてるからかな」
「それもあると思いますよ」
「他は?」
「どう考えてもあれが原因だろ」
梅智賀が顎で示した前方をよく見てみると、まだまだ小さくしか見えない領主館、魔物や人を遠ざけるように建てられたであろう城があった。
「城だな」
「すごい、堅牢って感じ」
「遠目にも分かるよね」
錬金術師科の四年生は一度近くで見たことがあるので、三年生たちの呟きに頷きを返す。
そしてゆっくりと近づいて行っても、特に変わった部分は見当たらない。
「原因ってなんだったの?」
「ああ、梅智賀は五感が鋭いので遠くにいてもある程度は状況が分かるんですよ」
「こっちも人数がいるから、パーティーの準備にもそれなりの物資が必要になる。それを出入りの商人にいうでもギルドに集めさせるにも人数が必要になる」
その過程で賓客が来ると噂が流れて野次馬が来たんだろと目を閉じた。
「人数は乗ってるけど、豪華な馬車でもないし隊列とかも組んでないから、がっかりさせちゃったね」
「そうでもなさそうですよ」
「?」
示された窓の外へ顔を向けると、皆が大声で歓迎を叫び始めた。
「隣国とはいえ、いつも隣にあった茨の壁を取り除き王都とも繋がる道を作ったんだ。歓迎されないはずがないだろう」
アディにそう言われ、嬉しそうに笑いながら窓の外へ向かって手を振るとより一層歓声が上がった。
「せっかく歓迎してくれているのですから、少しお返しをしましょうか」
「ふふ、お願いできる?」
現津が頷き、手を上にあげると移動している車を中心に街の空に巨大な魔法陣が展開される。一瞬皆が上を見上げてすくんだようにも見えたが、その魔法陣から色とりどりの花弁が降って来た事でまた一層大きな歓声が上がった。
「こんなに巨大な魔法を無詠唱で、それも一瞬で魔力を練り上げるなんて。相変わらず、」
「
「私も土属性を持っているからできなくはないけれど、あれほどの物をとなると、一瞬では無理ね」
「準備をしたらできるという事かい?」
「はい、アンドリュー殿下のように魔石に自分の魔力を蓄えて置いたり、土属性と相性の良いスクロールで補助をしたり、事前に準備が出来れば可能です」
「君は錬金術師を目指している訳ではないのかな?」
既に成人しているようだけれど、今からでも学園に通って魔法士を目指してみないかと魔法士科の教師に誘われているのを見て何人かが噴き出した。
「っふ、さすがだなっ、ふっ」
「マイケルも騎士科に推薦していただけると良いですね」
笑いながらからかってくる
「前にみんなで出かけたりもしてたけど、お家の方は大丈夫だった?」
「何も問題はなかったな。まぁ、俺たちがいなくても陛下は宰相が支えているんだ。心配はないだろう」
「宰相さんってエラちゃんのお父さんだよね?」
「ああ、陛下と騎士団長の三人は幼少期からの仲だ」
昔から三人で過ごしてきたので、お互いの性格もどこを目指しているのか分かっていると笑う。
「宰相がいれば陛下が半年いなくても内政は滞りなく回るだろう」
「懐かしいわねぇ、毎日三人で走り回っていたのよ」
「そうなんですか?」
見上げて来る
「
「止める?」
「ほら、先王のエリオットが早くに倒れてしまったでしょ?だから王太子になれるのがオルギウスしかいなかったのよ」
大公や公爵家には色濃く王家の血が混じっているので王位継承権はあるが、あくまでも継承権第一位は当時幼いオルギウスただ一人だった。
「だから周りも大事にしようとしていたんだけれど、それが窮屈だったんでしょうね」
遊び相手として伯爵家の三男であるミッシェルと公爵家四男のアーロンを呼んでから、水を得た魚のように活発さに拍車がかかったと頬に手を添えて小さくため息を吐く。
「ミッシェルと二人で騎士団の訓練に紛れてみたり、遠征についていこうとしたり、アーロンがいなかったらどうなっていた事か」
「さすがアディの親だな」
「血の繋がりを感じるよね」
「行動力すごすぎ」
「エリオットも狩りには行ったし訓練にも参加していたけど、常識の範囲内だったし。本当に、誰に似たのかしら」
(間違いなくファビオラ様だよね)
(うん)
聞いていいのか分からない現国王陛下の幼少期の話を聞いてしまった面々は、グロスター辺境伯領の領民たちに見送られながら城館へと向かっていった。
