7.学園生活(続き)
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フィールドに和の紋が光り、巨大な影が現れた。その姿に生徒だけでなく全員の目が見開かれ、手に持っていた武器を落としそうになった者もいた。
「一、二班構え!」
その声が響いた時、考えるよりも先に体が動きだす。
「四班発射!」
水属性の魔法が得意だと割り振られた班からでたらめに水属性の魔法が放たれるが、個別に和の紋が現れるとその魔法を別の場所で召喚し直し、巨大な魔物へと的確に命中させていく。
「三班発射!」
火属性の魔法が、一斉に放たれた。
「こ、コカトリスっ!?」
「鶏ってっ」
幼体であってもA-ランク。和が連れて来たのはどう見積もっても成体であり、尻尾の蛇に至ってはいったい何十回脱皮をしたのかと思うほどに太くなっていた。こんなものは学生の、子供の相手をさせてよい魔物ではない。
すぐにでも止めようと動き出すギルドマスター達だったが、太い尻尾が地面を叩いたことで動きを止められた。
「黙って見てろ」
そこにいたのは、大きな牙を二本生やしたサーベルタイガーで、獣人にも見えなくはないが、決して同じ人間だとは思えない威圧感を覚える。まるで、魔物と相対した時の様な戦慄。
「はぁ~、最高だ・・・」
「何度目であっても、感動してしまうな」
あの声を聞きながらまたダンジョンへ潜るのが楽しみで仕方がないと、ビスタが瞬きさえ忘れてため息を吐いているマルコに独り言のように返す。
「・・・」
一緒にいる時間が増える程に、大きくなる願望が口から出てしまわないようにドレークは腕を組んだまま沈黙を貫いていた。
支配者として、世界の頂点に君臨して欲しい。
けれど、和の性格がその王座に座るにはどうも似つかわしくない。
だからこの願望がいくら大きくなろうとも、言葉になることはない。
ずっと、子供のように無邪気に笑って、大好きな冒険をしていればいい。
そうしている時が一番、支配者としての力を発揮できているような気がする。表情を緩めて、指示を出している和を見つめていた。
「六班発射!」
和の後ろにいた土属性の魔法士を集めた班から、無数のストーンバレットが発射された。
しかし、その
そう思っていたのだが、
「一班走れ!そのまま蛇に集中!切る時は根元から!二班は足を切り落とせ!」
放たれたストーンバレットは一班として分けられた騎士科の生徒たちの足場となり、二班として正面からコカトリスの足を切り落としに向かう皆の援護射撃となる。大きく口を開けて噛みつこうと、丸のみにしようとしてくる蛇の頭が生徒の一人へと届く前に、剣を持った生徒は召喚紋を通って蛇の背後へ現れた。正面から斬りかかろうとしていた剣が、頭部の硬い鱗にはじかれる。
騎士科の生徒に下された指示は一つだけ。自由に動いて全力で武器を振りぬくこと、ただそれだけ。
「五班発射!」
風属性の集められた魔法士が放ったウインドカッター。それが何重にも重なった召喚紋から現れると一つの巨大なウインドカッターとなって足場として使われていた石礫を巻き込みながら放たれ、蛇の舌をほんの少しだけ傷つけた。
「ナイス!!」
たかが一撃。人間でいえば指先を少し切ったくらいのその傷を見て、まるで勝利を確信したかのような声が頭に響く。
勝てる。
勝てるんだ。
この化け物に、引けを取らない力が自分たちにはある。
まるでこちらの力を信じて疑わない和の声が、熱を帯びたかのように体に流れ込んでくる。
「三班発射!」
「四班発射!」
「二班構え!」
和の声だけが頭に響く。
他は何も聞こえない。
世界がとても静かだ。
頭がさえわたる。
まるで時間が止まったかのように、魔物の動きがよく見える。
鱗の、羽根の一枚いちまい、その境目までがはっきり見える。
そして腹の底から、どこかも分からない深い場所から力がみなぎって来る。
「全班全力攻撃!!」
「ああああーー!!」
騎士科の四年生が、ただのいち生徒が、コカトリスの蛇を胴体から切り離した。
「おおおおーーー!」
それに続くように鋭い爪の攻撃を掻い潜った剣が太い足に深く刺さり、四属性全ての魔法が一転集中した鶏の様な頭は、気絶したのか口から煙をあげながら巨体を横たえた。
「蛇の頭を塞ぐように串刺しにして!まだ生きてるかもしれないから二班全員で一気に首を切るよ!」
身体強化のおかげで重い大剣を扱えるようになった騎士科の生徒が、数人がかりでコカトリスの頭を切り落とした所で「お疲れ様」と柔らかく笑った声をかけられた。
「私の出番ほとんどなかったね。みんなだけで倒せるなんてすごいよ」
少し高くなっていた足場から下りて来た和に見上げられ、そこでようやく全員が勝利の雄たけびを上げたのだった。
「そんな、」
「子供たちだけで、」
驚いている客席の声を聞きながら、オルギウスがミッシェルにだけ聞こえるように口を開く。
「あれは訓練では手に入らんだろうな」
「天性のものでしょう」
進いわく、ギルバートも支配者の性格が一番強く出ているそうだが、きっとあの”域”には到達しないだろうと静かに笑いだす。
「”みのり屋”。正体不明の賢者を引き入れられた幸運を、私は一生嚙み締めるだろう」
出来る事なら国王が何世代経っても、ずっとこの幸運を感じていて欲しい。そう思わずにはいられなかった。
「みんな元気だけど、そうとう疲れてるよね?」
まだ一匹目だけどどうしようと呟く和に、「生徒は他にもいるし、参加者を募ればいいんじゃないか?」と進が首を傾げる。
「今日は生徒以外も見に来てるし、生徒じゃなくても参加したい奴はそれなりにいると思うぞ」
「あ、そうだったんだ。学園ってこんなに沢山人がいるんだと思ってたよ」
今回用意していた魔物だけで足りるか心配だったけど、そんな事はなかったのかと笑って子供たちに声をかけた。
「みんなは一回休みね。望たちに診てもらって、それでも大丈夫そうならまた参加してよ」
「そんな!!」
「まだ行けます!」
「大丈夫です!!」
「ハイになってるな」
「アドレナリン出たんだね」
一度休むのも次の狩りを成功させる秘訣だぞと言ってなだめながら控え席で待機していた望と神官、医者志望の者たちへ預けに向かう進を見て、和が会場に向けて声をかける。
「これからもう一回鶏みたいなの倒すけど、参加したい人いる?」
「コカトリスなぁ~?鶏って聞いて気ぃ抜いてた奴いただろ~?」
今倒したコカトリスを体に仕舞いながらツッコミを入れるカリブーだが、会場で真っ先に手を上げた魔族たちに肩をすくめてそれ以上は言わなかった。
『妖精種、精霊種は最後のトリを飾っていただくとして、人間種の中で参加してみたい方はいらっしゃいませんか?』
マイクを使って現津が声をかけると、生徒を含めた学園関係者の他にも、見学に来ていたダンマルタン辺境伯が手を上げていた。
「お父様ったら」
目の前で迫力ある決闘を見て血が騒いでいるとレティが自分の父親を見て恥ずかしそうにしているが、他にも手を上げている貴族の中に別の辺境伯が混ざっていたので悪い事ではないのかもしれない。
「今ギルドにいる奴を片っ端から集めてこい!」
「うちもだ!スクロール職人でもいい!全員だ!!」
自分たちももちろん参加すると手を上げながら、ギルドに残っている冒険者と魔法士を呼びに行かせるギルドマスター達。
こうして、希望者全員にコカトリス、バジリスク、バイコーンを倒させて、和は臨時講師としての役目を終えたのだった。
「お疲れ様」
色んな作戦を考えられたし実行にも移せて楽しかったと笑っている和に声をかけ、今日倒した魔物は後で解体して皆で分けるので今日はスタンピードで手に入った素材で宴会にしようと言う。
「ありがとう!お土産も持ってきたし、他のみんなも呼んでいい?」
「いいよ、全員?」
「ううん、全員じゃない方がいいって道誉が言ってたから半分だけだよ」
「じゃあ料理だけでも先に持っていく?」
一緒に宴会はできないが同じ料理は食べたいだろうと満が料理の準備をしている間に、紋を出して刀剣の皆に声をかけた。
「あ、セレスがちょっとでいいからクリストファー達にも食べさせたいって」
「今って小国群の使者の人たちと会談中なんじゃないの?」
それなら食器も少し良いものに変えようかと、宴会用として普段から使っている食器とは別の皿に盛り付けられていく料理。
「これは、国力の低迷など考えられんな」
「むしろ自国が低迷していたと嘆くことになるでしょうね」
「?」
「あ、お品書きも必要だよね?お肉に見える料理もあるし」
あの小国群ではイアグルス教を信仰している訳ではないので、食事での戒律はなかったはず。なので普通に用意していた宴会用の料理で問題ないはずだがと言いながらバインダーを出してお品書きを書き始める。
「教会の皆さん用に沢山作っておいてよかった。はい、この金縁の食器はイアグルス教の皆さんが食べて大丈夫な物で、こっちの
デザートなどのガラスの食器に盛り付けてある物はどちらが食べても大丈夫なものだと説明され、お礼を言いながらセレス達にも伝えてくるとお品書きと料理を持っていなくなった。
「どっかの小国終わりじゃん」
「いろんな意味でな」
「プライドバッキバキだよ」
怒らせたら物理的になくなるし、食事の面でも文化の面でもなと言い合う圧紘。
「なんて美しい食器なの!」
「蜻蛉切さん達の国で作られてたんですよ」
「綺麗ですよね、
「茂さんと豊が手を加えていますので、他の食器同様頑丈ですよ」
「フジミヤ達も気に入って作らせてたよな」
「これを見せられた職人たちが血反吐吐きながら習得していたな」
「こういう美しい物を見るだけではなく作りたいと思うタイプの人間は、狂ったのかと聞きたくなるほど狂気じみている時がある」
百年も生きられないからなのか、一つの作品を作り出すのに心血注ぎまくっていて、ちょっと胸が苦しくなってくるというドレークに苦笑するビスタ。
「だからこそ”作品に魂が宿る”と言うんだろう」
「宿るっつーか、絶対ぇ宿らせるっつーか、執念じみた気迫だな」
「人間種が怖い」
「人間種って寿命短いくせに自分から削りに行くよね」
「いや、本人たちも別に削りたくて削ってる訳じゃないだろ?」
「な?」と転弧に言われ、何とも言えない表情になったギルドマスター達にオルギウスが笑いだす。
「人間種の中でもドワーフがその傾向にあるかもしれんな!」
「人間族でもそういった者は一定数おりますよ」
「私の目から見れば、魔法士と錬金術師がその傾向にあるように思います」
「騎士も”身”を削っているでしょう」
やいのやいのと皆で騒いでいると和が刀剣たちと戻ってきたので宴会となったのだが、王侯貴族もいるというのになんとも粗野で稚拙な、野蛮さと侮辱を与えかねない空間で誰もが笑っている宴がくり広げられていた。
「本日はお忙しい中ご参加いただきありがとうございました」
「みのり屋が全員揃っているのが次はいつか分らんからな」
とても楽しい宴だったと言って帰りの馬車へ乗り込む王族たちを見送っている隣では、当たり前のように引きずって連れていかれるクミーレルがいた。
「ほらほら、俺も一緒に行ってあげるから。コピーだけど」
「すまないクミーレル」
よろしく頼むとアディに物凄く申し訳なさそうに言われ、圧紘のコピーと一緒に城へと戻っていく。
そして、茂たちは他の貴族たちが帰るのも見送り、夜には学園関係者だけになったのでそのままテントで夜を明かした。
次の日、朝に戻ってきたクミーレルは一度屋敷に寄ったと、養い子たちを連れてやってきた。
「やっぱりテントで泊まりたかったなぁ」
「私も」
「昨日はもう夜も遅かっただろう?」
「おはよう、朝から元気がいいな」
「和が持ってくる酒は次の日残らないのが良いな」
「んな安酒と一緒にすんじゃねぇよ」
みのり屋産のワインも最高だったと笑っているのは、モーニングティーを優雅に飲んでいるビスタ。あまりの優雅さに貴族かな?とも思うが、彼はスタンピードでも前線でバリバリ戦っていた海賊である。
「おはようみんな」
「おはようございます。朝食はお済ですか?」
「すみません、バタバタと屋敷を出てきてしまって。スープなどで余っているものはありますか?」
「今日の朝食はホットサンドだったんです。同じものでも構いませんか?」
みんなもどうぞとロビー兼食堂の席へ案内すると、幼い二人が嬉しそうに走り出してそれぞれ自分で椅子を引いて座りだす。
王侯貴族としては完全にアウトな事をしているのだが、オルギウスも自分で椅子を引いて席についているので王妃たちは走るなと注意する程度で済ませている。
なにより、今は王族ではなく元平民の貴族の養い子だ。
『おまたせいたしました』
『熱いですので、お気を付けください』
ひなたとつむぎが運んできてくれたワンプレートの朝食を見て目を輝かせ、食前の祈りを唱えて食べ始める。
「今日は学園がお休みだけど、みんなも一日いられるの?」
「和が帰るまでいる!」
「和に魔法教えてもらうの!」
「私召喚術しか使えないよ?」
魔法なら優か豊、望に聞いた方がいいんじゃない?と首をかしげている和に、昨日見たあれやりたい!と身振り手振りで昨日の試合について語りだす。スープやグラスを倒しそうだと、二人から少し遠ざけながら相槌を打って話を聞く。そんな和の姿に、結婚しようとプロポーズしてくるマルコを払い除けるフーズ・フー。
「そういえば、昨日魔法士のギルド職員だと言っている者たちが酔っぱらいながら騒いでいたな」
召喚術士だと聞いていたのに、あれは最早空間魔法だろうとかなんとかとビスタが言うと、フーズ・フーとマルコの喧嘩が和を巻き込まないようにガードしていたドレークも頷く。
「その話は俺も聞いたな。魔法士だという者たちがずっと泣いていた」
「泣いてたの?気づかなかった」
「多分フーズ・フーが怖くて近寄れなかったんだろう」
「怖いの?」
「フーさんがっていうか、血が騒いだ魔族が、かな?」
「サラ達のこともありますしね」
自分のせいで王国が滅ぼされたら責任重すぎて背負えないって思ってるんですよと笑いながら言われ、納得したように頷く。
「でも私召喚術しか使えないし、そもそも他の魔法をちゃんと知らないんだよね。だからその空間魔法ってどういうのかも知らないや」
「そういう知識は間違いなく優先生に聞いた方がいいよね。俺もニュアンスはなんか分らんでもないけど、どう違うのって聞かれたら同じじゃね?ってなるし」
といっても、これもゲームの知識からそう思っているだけでこの世界でも適応されているのかが分からないと転弧がコーンスープを飲む。
「優ー、空間魔法ってどんな魔法なの?」
隣のテーブルで朝食を食べていた優に振り返ると、ナプキンで口を拭きながら考え始める。
「そうねぇ、私から言わせると、召喚術と空間魔法は使い手によって変わるってところかしら」
「使い手によって?」
「何を目的に魔法を使うかって意味よ」
アイテムボックスと呼ばれる亜空間に荷物を仕舞っておける者がいるのと同じことだと笑う。
「あれも一種の空間魔法よ。でもそう思ってる人って少ないわよね」
「使える人がそもそも少ないからっていうのもあるのかな?」
「だから昨日見た和の召喚術が空間魔法に見えたっていうのは間違っていないのよ」
「じゃあ召喚術と空間魔法は全部同じなの?」
「それは最初にも言った”使い手によって変わる”って答えになるわね」
笑いながら、アイテムボックスに手を入れてフルーツの盛り合わせを出して見せてから、和のように自分の紋を出して触れるとカップとティーポットを出して見せた。
「空間に物を仕舞うことも空間に穴をあけて物を通すことも、結果は同じでしょ?」
「すごい!」
「優もできるんだ!」
「出来るわよ。ただ和みたいには使えないわね」
「どうして?」
「だって和は支配者ですもの。調停者の私とじゃ使う目的が同じにはならないわ」
だから和のように召喚術は使えるが、同じだけの出力を出せるようにはならない。
「その分他の魔法で補助をすれば同じようには見せられるとは思うけど、本当の意味で”同じように”とはならないわね」
「それこそ召喚術を磨き上げた和さんは、先生たち同様その道では他の追随を許さないだろうな」
「一口に魔法って言っても、僕たちみたいに種族が持つ特有の能力みたいな所もあるしね」
優と同じテーブルを囲んでいたホーキンスとキリルが笑いながら頷いて食べ終わった食器を重ねると、お茶を持ってきたひなたに渡して礼を言いながら頭を撫でた。
「空間魔法を使って自分の生活を豊かにするか、召喚術を使って誰かと力を合わせて戦うか。心の在り方で大きく左右する魔法とも言えるわね」
六属性の魔法は誰が使っても威力の違いはあれど同じ現象を引き起こし、扱いやすく想像がしやすい魔法でもあると幼い二人だけではなくこちらを見ている皆に笑いかける。
「空間魔法を使うのが難しいと言われるのは、空間そのものの捉え方が人によって変わるから。和が直感で召喚術を極められたからと言って、その直感を言葉にしても同じように考えて展開できる人は少ないでしょうね」
「ふむ、しかし錬金術師科の皆はアイテムバッグを作れるようになっているな?」
「ふふ、そこは化学と魔法の違いね」
結果は同じように見えても、たどる道は同じではない。だから魔法士には魔法士の理解できる方法でしか魔法を展開できない。
「茂たちが懇切丁寧にアイテムバッグ仕組みを魔法士に教えたところで、いい刺激にはなるでしょうけど空間魔法が習得できるとは限らないわ」
「難しいものだな」
「僕たちもアイテムバッグは造ることができるけど、あの仕組みを魔法に置き換えるってどうするのかって所でまずつまずいちゃうかな」
「私もできる自信はありませんね。空間の捉え方と言われましたが、アイテムバッグの時とはきっと違うでしょうし」
「和は?」
「どうやって空間?をとらえてるの?」
「ごめん、その捉えるっていうのがちょっとよく分かんない」
そういうものだとしか思ったことがないから深く考えたことがないと首を傾げた。
「みんなが言ってるアイテムバッグって、茂が造るあの鞄の事でしょ?」
その中を広くしていたり重さを感じなかったりするって話でしょ?と言って少し上を向く。
「うーんと、家の壁とか国とか、大陸とか?の端っこを鞄の許容量って考える、のかな?もしそうならだからじゃない?」
「?」
「普通そうじゃないの?」
「本当に普通はそうなんだ」
「こいつにそういった疑問が答えられると思うな」
それこそ頭の構造と常識が違いすぎていると言って、マルコと喧嘩をしていたフーズ・フーが和を引き寄せて膝に乗せた。
「優も言ってただろ、こいつは直感型だ。おまけに人間じゃねぇ」
キリルの言っていた種族が持つ特有の能力みたいなものだと思えと言うフーズ・フーに、皆が人間じゃなかったのかと驚きだす。
「うん、違うよ。sモガ」
「召喚術もお前らが使ってる魔法だのなんだのとは違うんだろ。何かしらの参考にはなるんだろうがな」
「んー」
「和、お前さんも構ってやるのはいいが、種族だのなんだのは言わねぇ方がいい」
フーズ・フーに口を塞がれている和にマルコが笑いかけ、つむぎからカップを受け取ってお茶を飲む。
「当事者と部外者じゃ考えの根底が変わる。もう知られてることを隠す必要はねぇが、新しく情報をやる必要はねぇよい。ま、これからも聖国のダンジョンに来る時は和の力を使ってになるんだ。人間じゃねぇ事は外見だの何だのですぐにばれただろ」
「なるほど」
じゃあ種族は内緒でと、フーズ・フーの手を放しながらシリウス達に言い、朝食が終わったら外で遊びながら魔法を見てみようかと幼い二人に笑いかけた。
「私たちはホットサンドを持ってスラム街に行ってくるわね」
「あの子たちも、勉強に意欲的だ。きっと成長すれば学園へ入りたいと言い出すだろう」
「ふふ、楽しみね」
金剛は食べなかった自分の分の食事と、満が用意してくれていた他のホットサンドを収納バッグに仕舞い、優たちの食事が終わるのを待っているようだ。
「お前さんらの作った食事食って、そいつら普段の飯で腹壊したりしてねぇか?」
「大丈夫みたいよ。みんな体も頑丈なのよね」
「人間族も多いが、獣人族の血が入っている者も多い」
「やっぱり混血って強くなりやすいんですね?」
「それはそうよ、いろんな種族のいい所が凝縮していくんですもの」
笑いながら、多分表立って活動はしていないが、どこかに妖精種などの先祖返りなどもいるだろうとカップに口をつける。
「耳が少し尖っていたりすれば
「?エルフはエルフでしょ?」
「森人族には二種類いるのよ」
「そうか、二人はまだ世界樹の本を読んでいなかったか」
「世界樹?」
アディが口を開いたザックに礼を言ってアイテムバッグになっているそこから一冊のノートを取り出すと、国に贈呈されたみのり屋からもらった精霊種たちが神と崇める不思議な木ついて書かれた本の写しを開く。
「本来、森人族には二種類いるらしい。私も直接エルフの国へ行って見た訳ではないから何とも言えないが、ダークエルフという種族もいるみたいなんだ。もしかしたら大陸から他の種族と一緒に逃げたのかもしれないな」
この本によれば、エルフは風、水、光属性を受け継ぐ事が多く、ダークエルフは火、土、闇属性を受け継ぎやすいそうだとノートを見せた。
「そうなの!?」
「ダークエルフってどんなの!?」
「エルフと違うの!?」
「外見的には肌が浅黒いな。火の民の褐色肌とは違い、本当に黒だ。キリルみたいな感じだな」
「僕のご先祖様に、ダークエルフがいたのかもね」
両親は普通に光の民だったからただの憶測だけどと笑っているキリルに、全員が驚いた声を上げる。
そんなみんなと、バインダーを開いた錬金術師たちに質問攻めにあったことで、スラム街へ出発するのが少し遅れたのだった。
