7.学園生活(続き)
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「シゲル先生、学園長先生が応接室にてお客様とお待ちです」
「お客様ですか?なんだろう、ちょっと行ってくるね」
「記録をするの代わりますよ」
「ありがとう」
バインダーを望に託し、茂は現津と共に教室を出て応接室へと向かった。
「失礼いたします。シゲル先生とアキツ先生をお連れいたしました」
「急に呼び出して申し訳なかったね」
本舎付きの侍女に案内された応接室へ入ると、学園長の向かいに座っていたのは冒険者ギルドの職員だった。茂達の姿を見るとすぐに立ち上がると背筋を伸ばして頭を下げる。
「お忙しい中ご対応いただきありがとうございます」
「お久しぶりです。最近ギルドには顔を出せていませんが、忙しいのはそちらも同じですね」
最後に顔を合わせたのは、オークの群れを討伐した後処理でだったかと笑いかけると肩の力が抜けたのが分かる。
「私を覚えていて下さいましたか」
「勿論ですよ。現津さんが制作してくれたとはいえ、あの膨大な量の書類をたった数日で処理して下さったんですから」
ずいぶん優秀な職員がいるんだなと感心していましたと言うと、綻ぶように表情を変えて改めて挨拶を口にしながら頭を下げた。
「本来ならばギルドマスターがお伺いしなければならないのですが、今回の発案が私と言うことでギルドマスター、サブギルドマスターの許可をいただき、厚かましくも直接お願いに参りました」
学園長に着席を促され、侍女が用意してくれたお茶を飲みながらどんなお願いだろうかと話を振る。
「実は、冒険者たちの中でこれからの仕事に対して不安が出ていまして、」
「不安ですか?」
進からここの住人たちが対応できない様な魔物の気配があるとは聞いていないが、何か兆候でも発見したのかと聞くと全くそう言う事ではないと、申し訳無さそうに緩く首を振った。
「あのオークジェネラルの討伐に参加していた生徒達は、確認できただけでも全員が身体強化を体得していました。今までは上級冒険者の中でも神に選ばれた、もしくは愛された者だけが体得すると言われていたのにです」
教会からも、あの討伐が起こった後にギルドへ来て説明してくれたのでどういう原理なのかは皆が理解した。
しかし、それでもやはり身体強化の域へ辿り着けた者は少ない。
「確かに、追いかける役も逃げる役も本気じゃないとなかなか難しいですよね」
「はい。それに、・・・恥を晒すようで本当に不甲斐ないのですがっ、冒険者たちにもその、性格の不一致や問題行動が多く、嫌煙されていた者たちがいまして」
「ああ、立場が逆転しましたか」
「っ、はいっ」
嫌いだから追いかける時に本気になり、逃げる側も恐怖を感じて本気で逃げる。結果、嫌われていた者たちだけが身体強化を身に着け、依頼も多く熟して経済的にも経歴的にも格差が生まれてしまったらしい。
「皆さんにはオーク討伐の時に破格の報酬で依頼を出していただいただけでなくその後のケアまでしてもらい、新学期前にはポーション用の薬草採取の依頼も冒険者ギルドに任せ、新人からベテランまで本当に感謝しているんです」
だからこそ、こちらの問題にまで助けを求めるなど恥以外の何物でもないと組んだ両手に額を当てる。
「皆さんの助力を発案したのは私です。マスター達は私がここに来ることを許しては下さいましたが、最後まで、いえ!今もギルド内で解決すべく動いているんです!」
それでも、自分は限界を感じてここに来たと言う。
「今までの卒業生は、全員貴族家出身でしたから冒険者になる方はほんの一握り、年に一人いるかどうかでした。ですが、」
「今後はスラム出身の者たちも多く卒業していく」
「、はい」
現津の言葉に、神妙な表情で深く頷いた。
「若い芽が育つのは喜ばしい事ですが、今まで繋いできてくださった方たちが追いやられるのは違いますね」
茂も頷いて少し間を開けて考え始める。
「んー、どうしよう。騎士団の人達を見てて思ったけど、普段から命の危険を感じてるとコツを掴むの早いんだよね」
生徒にしたのと同じ訓練をしたとしても七日もかからず終わるだろうし、負担も少ないだろうと現津を見上げる。
「それも良い手段だとは思いますが、同じ様な問題は少なからず今後も起こると思いますよ」
だから自分達で解決させるのが良いと思うが、その策が冒険者ギルドだけで出すことが出来ないのも理解できると微笑む。
「どうせ魔法士ギルドでも錬金術ギルドでも同じ様な問題が出ているでしょう。どうにも出来なくなってから個別で相談されても面倒です、全てのギルドを巻き込みましょう」
しかし、今から和が来るまでの間に地方のギルドから王都へ押し寄せられても困る。
「茂さんの言う通り、今までの統計と、ギルドでも訓練をしているという事を加味して三日もあれば冒険者全員が身体強化を使えるようになると思います」
けれどいつまでもみのり屋が面倒を見てあげられる訳ではない。
「なので、我々が訓練をするのはギルドに登録している者たちではなく、ギルド職員です」
「そっか、そうすればこれから新しい人たちが来ても訓練できるし、他の支部に出張してもらえればいつかは王国以外にも広がってみんなが身体強化を使えるようになるね。うん!そうしようか!」
まずは王都にある全ギルドへ連絡をして参加の有無を確認するところからかと茂が頷いた。
「和ちゃんが来るまでっていう限られた時間しかないし、すぐに手紙を書かなくちゃね」
「はい、それがよろしいと思います」
「え、え!?」
相談に来たギルド職員に少し待っていてくれと声をかけ、目の前で収納バッグから出したレターセットにペンを走らせる。
「どうかな?」
「はい、問題ありません。錬金術ギルド、魔法士ギルドにも同じ内容で良いと思いますが、商人ギルドには服飾部門の責任者を連れてくるよう一文を加えましょう」
「そうだね、身体強化を使えるようになると一瞬でもすごい負担がかかるから服の消耗が早くなっちゃうもんね」
後で豊にも声をかけて相談しようと呟きながら手紙を封筒へ入れると、みのり屋紋の封蠟で閉じると差し出してきた。
「返事の期限が短くなって申し訳ありませんと皆さんに謝っておいてください」
そして、よかったら訓練にも参加してくれと微笑む茂から、受け取った手紙を見下ろして深く頭を下げながらその手を取って額をあてる。
「ありがとうございますっ」
ギルド職員が身体強化の訓練ができるのなら冒険者同士の問題にも割って入ることができると、泣いてしまいそうな表情で何度も礼を口にしながらギルドへと走って帰っていった。
「研究で忙しいだろうに、よかったのかい?」
「このくらい問題ありませんよ」
むしろ困っていると教えてくれて良かったと、学園長を見上げて笑う。
「元々足と目がない私には、それが当たり前です。ですが両目両足が揃っていた方が一つでも失えばどう生きていけばいいのか分からなくなってしまう程の絶望を味わうのでしょう」
みのり屋の創設者九人全員、肉体の一部、機能の一部が存在していない。
「私たちには当たり前のことが他の方たちには非常識に思われるのと同じように、私たちには何に困っているのか言ってくれなければ分からない事があるんです」
代用が可能なものなのか、それとも本当に唯一無二だったのか。
「代用が利くならいくらでも手を貸せますから、今回のような相談は問題ありません」
ギルド員たちを迎え入れる為の準備を始めてしまおうかと、現津に手を引かれながらゆっくりと錬金術師科の塔へと歩いていく茂を見送る。
「では、わしももらった力で出来る事をしようかの」
一緒に茂たちを見送っていた侍女に、教師陣へみのり屋が新しい仕事を請け負ったので話がしたいと連絡を頼んだ。その指示に微笑みながら一礼すると、応接室を出てすぐに侍女やメイド達を集めて各塔へ向かっていった。
「今回は私たちの個人的な仕事にご協力いただき、誠にありがとうございます」
各ギルド職員が半数ずつ、新一年生のように森で身体強化の訓練をする為に連れてこられる中、茂が協力を申し出てくれた教師、王宮の士団員たちに頭を下げて礼を言う。
「感謝は我々がしなければなりません」
茂が挨拶をしていると、各ギルド長がやって来て隣に並び、同じように頭を下げた。
「本来ならば私たちが内々に成果を上げなければならない事態に、みのり屋の皆さまだけではなく学園、王宮の皆さままでご助力いただき、本当にありがとうございます」
情けなくも、今はその優しさに縋る外ない不甲斐なさも含めてと言うギルドマスターの中でも冒険者ギルドの関係者が全員眉間に皺が寄っている。
「それは重く考えすぎですよ」
茂が笑って頭を上げるように促し、まっすぐに目を見て口を開く。
「私たちがこの国で自由にさせていただいているのは、一重に国王陛下、枢機卿、学園長先生たちのご厚意です」
今までも各ギルドには顔を出していたが、商人ギルドでは登録できる年齢でない時からみのり屋として登録していたという事実もある。ギルドとしては諸手を挙げて歓迎とは言えない関係だ。
「ギルドは国を跨いで、どこの国にも所属しない組織。そして私たちは学園を卒業したら行商人に戻る一介の商人です。この国に頂いた御恩と同じだけのお返しを、皆さんにさせていただくだけですよ」
国を守るとは違う苦労も沢山あるだろうから、互いの連携も大切だろうと眉を垂らして一礼する。
「皆さまの組織がいかに重要なのか、その事実を知っているからこそ今回これだけの方々が集まってくださったんです。今後も、末永く国と国を繋ぎ、その地で生きる人たちの助けになってあげてください」
ギルドには、規定の年齢になれば誰でも登録する事が出来る。文字の読み書きが出来なくても、計算が出来なくても、その出自がなんであっても。そんな無法者の集まりになりそうな組織を、時には国と協力して魔物の討伐が出来るだけ統率を取れる状況に整え続けるという事が、どれだけ大変か。
「いち会員として、少しでも貢献できれば幸いです」
こうしてギルド職員への訓練は感動から始まり、阿鼻叫喚の叫び声とすすり泣き、美食と暴食、知識、技術への貪欲さ、そしてまた感動と団結の中終わりを迎えた。
「なんか、最初と顔つき変わってない?」
「一人か二人
「七日で詰め込んだのが負担だったのかな?」
「単純に、今まで事務仕事がメインだったからだろ」
商人はあの顔アウトなんじゃない?と言いながら、バインダーを片手に後ろ髪を引かれながら帰っていく錬金術ギルド職員達に手を振っていた。
「あの人たちも手伝ってくれたから結構楽できたよね」
「最初とか疲れすぎて手震えてたけどな」
「不味い方のポーション飲んで気付け薬にしている時の眼がやばかった」
「キマッてたよね」
「こくん」
ギルド職員って大変なんだなと、ちょっと引いている子供たちに笑いながら、それだけ責任と遣り甲斐がある仕事なんだろうとテントの片づけに入る。
「でもギルドの人たちが来てくれてちょっと助かった面もあったから、私としては好都合だったなぁ」
手伝ってくれたみんなには申し訳ないがと言いつつ、嬉しそうにバインダーに今後の予定を書き込んでいく。
「今年のバザー、思いついた企画の規模が大きかったから、相談しても通ら無さそうって思ってたんだけど、」
あの様子なら大丈夫そうだとホクホク顔で現津にメモを見せた。
「あちらにも十分過ぎるだけの利益が見込めますから、問題はないでしょう。商人ギルドなど、絶対に準備を間に合わせると張り切っていましたし」
「各ギルドが参加してくれたら出題とか幅が広がって見ごたえもあると思うんだよねぇ」
「学園としても参加したいのじゃが、そうすると日程が被っていて子供たちが参加できんのが残念じゃな」
今年だけ日数を増やすか、それとも減らすか。子供たちも頑張って準備するだろうから減らすのは避けたいと呟いている学園長と、王宮としても参加したいが、外面的にどのように参加するのがいいかとオルギウス達が額を寄せ合って話している。
「その辺も学園祭が終わったら話し合いましょうか」
「今年も忙しくなりそうだな」
「忙しくない年なんてなかっただろ?」
「和ちゃんが来て臨時講師してくれるのも、何を準備したらいいのか分からないけど心積もりだけはしっかりしておかなきゃ」
ギルとレティが意見を出し合っている姿に、あの二人は上手くやっているようだなと国王両陛下が嬉しそうに微笑みあって王宮へと帰っていった。
王都にある各ギルド職員の身体強化訓練という予定外の行事も含まれたが、子供たちも学園外の大人と触れ合う良い機会になったと、教師陣からは前向きな言葉をもらえた。
「去年から平民はもちろんだが、スラム街からの入学者が増えてきていたのでな」
「卒業後の就職先をどうするかと話し合ってはいたのだ」
全生徒に紹介状を書くことはないが、授業態度や成績を見てもこれならどこかの屋敷へ紹介してもやって行けるだろうと思える子たちが多かった。
しかし、行儀見習いをしたこともなければ後ろ盾もない。これでは学園を卒業したというアドバンテージを行かせるだけのステージにはまず立てないと思っていたという。
「だが、今回の事で各ギルドでも顔を覚えられただろうからな」
「バザーでももう少し関わることができれば、悪いようにはされんだろう」
「そこまで考えてくださって、本当にありがとうございます」
貴族の中には出自問わずの私兵を雇う者もいるが、そういった貴族は仄暗い噂も付きまとう者も多いので何も知らないのを良いことに磨いてきた力だけを奪われるなどさせたくはないと眉間に皺を寄せた。
「教師をしているが故、各派閥から手紙が来ることもあるが、」
「こうして改めて子供たちと向き合う時間が多くなると、」
「ええ、本人が望むのなら後押しはしたいですが」
貴族には貴族のルールがあり、そこで生き抜くにはある程度のずる賢さが無ければ手の平で踊らされるだけの駒になってしまう。駒を演じつつしっかり美味い蜜を吸いに行くだけの胆力が無いのなら、顧客として関わるくらいの関係がお互いの為だと言うのが教師陣の総意らしい。
以前から権力主義を掲げていた教師たちも、土属性である事へのコンプレックスや家柄、同派閥の圧力などで色々あったらしいが、今はとりあえず大人しくしておく方針の様だ。
これが、アディが言っていた「今みのり屋の恩恵を受けるのを邪魔したら針の筵じゃ済まない」の答えだろう。
「そう言っていただいて、子供たちの未来の事を真摯に考えて頂き本当にありがとうございます。ですが今回の訓練は私たちの我がままでもありましたから、せめてものお礼はどうかお受け取り下さい」
スタンピードで手に入った最上級の素材で、それぞれの教師が扱いやすいだろうと考えたアクセサリー型の魔導具を一人ずつ手渡していく。
「和ちゃんが来たらきっと宴をすることになるでしょうから、その時も是非参加してくださいね」
和の召喚した神様たちは、宴会好きが多いので賑やかになるだろうと笑いながら会議を終えた。
そうして、和が臨時講師としてやって来る日を迎えた。
「学園祭以上じゃねぇか?」
「あ、ギルドマスター達が挨拶しあってる!」
「全員来てんの?!」
「戦争が起こる時でも勢ぞろいなんてまずないって聞くぞ」
国王の招集でもない限り自発的に集まるなんて事がない集団を見つけ、用意された学科の席で騒いでいる生徒たち。
「今日は俺らは見学だけか」
「特級ダンジョンに潜らない子たちが優先って言ってたもんね」
「あいつらガチガチじゃねぇか。大丈夫か?」
「まぁ、しょうがないよ」
特級ダンジョンの一階層にいる魔物を連れてきて戦わされるんだからと、錬金術師科四年生たちがフィールドに集まっている三、四年生たちを見下ろしながら肩をすくめる。
「一年生は初級ダンジョンもこれからだしね」
「ちょっと可哀そうだけど、本人がこの授業受けたいって言ったんだし、止めるのは違うよね」
「ポポ」
アンに同意するようにリリーが声を上げた。
「大丈夫かな」
一応、学科の総力を上げてポーションのストックを増やしたけどと言う言葉に、全員が頷いた。
「満、結界の準備をしてください」
「もう全員席に着いたかな?驚かせちゃうかもしれないし、一応放送でお知らせしようか」
茂が造った
『これよりみのり屋の召喚術士である和が行う臨時授業を始める為、皆さまの安全と王都のために結界を張らせていただきます』
茂のお知らせが響いてから、満が結界を張ると初めて見た者たちが頭上を見て驚いていた。
結界術は魔法障壁の上位互換の魔法なのだが、魔法障壁の熟練者が辿り着く極地と言われているのだ。そんな魔法をこんな短時間で競技場を覆うほどのサイズで展開するなど、見たことが無い。魔法士ギルドのギルドマスターを始め、ギルド員だけでなく登録している魔法士、冒険者ギルドの者たちがざわつきながら光る壁を見上げた。
「和?結界張ったからもう来ても大丈夫だよ」
満が黒電話で和に知らせると、電話を切ってすぐにテント近くに魔法陣のようにも見える紋が光りながら現れ、小さな人影が出てきた。
しかし、競技場に集まった全員の視線は小さな影の後ろに立つ大きな影に集まっていた。
「休んでる時に来てもらってごめんね。疲れてない?」
「うん、みんなに休めって言われてゆっくりしてたから少しも疲れてないよ」
「フーさん達も、今日は来ていただいてありがとうございます」
「臨時講師って言ってたが、今日はずい分人数がいるんだな?」
「特級ダンジョンの魔物なんて普通に生きていてなかなか見られるものではないですからね」
やって来たフーズ・フー達と挨拶を交わした後、出していたテントを仕舞ってから学園長と国王を紹介して客席に席も用意しているので観戦はそちらで一緒にしようと誘う。
「マルコも一緒に来たんだな」
「和を一人で人間の街に来させるなんざ耐えられねぇからな」
「一人じゃねぇんだからテメェは大人しく待ってりゃ良かったんだよ」
転弧と圧紘が小さくなったとはいえ2mの大男たちを見上げていると、フーズ・フーが舌打ちをしながら煙を吐く。
「念のためドレークも来てんだからそれで十分だっつーんだよ」
「白ひげ海賊団からはビスタさんが来てくれたんだ。こんにちは」
「おお、転弧か。大きくなったな」
挨拶に来た転弧に笑いかけて頭を撫でると、にらみ合っているマルコ達を振り返って肩をすくめた。
「みのり屋が長居している国だと聞いたんでな。二人が暴れた時の為に俺たちが選ばれたんだ」
「決まった時からこうだったから、あまり気にしないでくれ」
マルコは置いて行っても飛んで来られるので、それはそれで人間の国を騒がせそうだと最初から連れてくることになったんだと説明をしながら腕を組んでため息を吐くドレーク。
「あー、確かに。この国がある大陸って妖精種とか精霊種がいないからなんかあったら魔物だって騒ぎが起きるみたいなんだよね」
「そうなのか、やはり一緒に連れてきて良かったな」
「サッチさんは?なんかマルコさんを抑えるのってサッチさんのイメージがあったんだけど」
「今コックと四番隊総出で次にダンジョンへ潜る為の食料調達と食事作りをしているんだ」
「ここの学生たちが来るまでの間は潜らないにしても、皆が面白がって三階層までは遊びに入っているからな」
聖国民に迷惑をかけない為に自分たちで食料を調達、倒した魔物の解体などで手が離せないのだという。
「カイドウは来ないにしても、キングは来させようとしていたんだがな」
「そうしたら数日前に王国とは別の、隣接しているという国から何人か使者が来たんだ」
聖国が悪魔の呪いから解放されたという事で様子を見に来たのだが、明らかに国力が低迷している様を見て舐めてきているのが分かったので睨みを効かせるために残ったのだそうだ。
「聖国のことはよく知らんが、これから数十年の間隔で遊べる場所だからな。俺たちも横取りは遠慮願いたい」
「この前国王が死んでクリストファーが新しく王位に就いたんだが、若すぎる王はそれこそ舐められるみたいでな。キングが特級ダンジョンを奪われる訳にはいかないと話し合いの場に参加しているんだ」
「わー、この国じゃないって事は小国群のどこかでしょ?小国終わったじゃん」
「買い貯めしとく物あったっけ、あの辺」
転弧と圧紘が顔を見合わせているのを見て苦笑している魔族の二人。
今日は特別な授業という事で、学園祭の時のようにフィールドにいる人物の声は拡声魔法で聞こえるようになっているので、観戦席にもバッチリ響いていた。
「まぁ、キング達を見たら怖くて何もしてこないんじゃないかな?セレスもいるし、大丈夫だよ」
そう笑い、今日の授業に参加する生徒はどこにいるのかと和が茂に近づいていく。
観戦席にいた各ギルドマスター達が、一緒に来ていたギルド職員を一人呼んで小国群にあるギルド支部へ聖国へちょっかいをかけようとしている国があったら全力で止めろと一筆書いて渡していた。
今の会話で更に緊張がピークに達した生徒たちを紹介された和が、自己紹介をして個々の能力を把握している間、観戦席に座った魔族たちに対しても緊張が高まっていた。
しかし、そんな恐ろしい魔族たちに国王のオルギウスが話しかけ、軽食や飲み物も用意されているので観戦を楽しもうと和やかに笑いながらダンジョンボスと戦った時の話を聞いていく。
そんな自国の王の姿に、勇敢さとユーモラスさを合わせ持っていると貴族たちを含め全員が眼を見開いていた。
「初対面じゃないしね」
「一緒に三階層まで潜った仲だしな」
「みんなは
「拠点置いてる国の王様も平民の格好して一緒に出かけたって言ってたよ」
「だからすんなり受け入れてるのか」
「どこの国にも城を抜け出したがる王族がいるんだな」
錬金術師科でそんな話がされていたが、他の学科でもギルドでも、オルギウスを尊敬と畏怖の眼差しで見つめていた。
「みんないろんな事が出来てすごいね!これなら連れて来る魔物とも戦えるよ」
今日の夕飯美味しいの食べられるねと言われ、特級ダンジョンへの遠征メンバーから外れてしまった三、四年生たちが少し肩から力を抜く。夫の魔族が怖いだけで、和本人は他のみのり屋のように温厚な性格をしていると全員が胸を撫でおろしていた。
「えーと、今日戦ってもらうのは鶏みたいな奴だから、空を飛んだりしないし武器で戦うみんなが前で大丈夫だと思うよ。魔法を中心に戦うみんなは四班に分かれて、こう、囲む感じでいこうか」
武器を持った生徒たちは二班に分かれてもらい、配置を説明しながら周囲を見回す。
「学園って、結構人がいるんだね?何匹くらい倒せば足りるかな?」
「一匹じゃ足りないのは確かだな」
一匹倒したらカリブーに回収してもらい、次の魔物を召喚すればいいんじゃないか?と、補助の為に後ろで控えている進に言われ、「そうしようか」と頷いてカリブーに回収を頼み前を向く。
「じゃあみんな配置について、さっき言ったみたいにいつでも魔法を打てるように準備しててね」
騎士科のみんなは武器を構えててと言い、魔法士科の一つの班と一緒に移動すると一番前に出て作ってもらった足場に座った。
