7.学園生活(続き)
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「今年の一年生も全員が身体強化が出来るようになりましたね」
毎年すごい子たちばかりが入学してくるのは流石王国一の学園だと笑っている茂に、森で空を飛ぶ適性があるかを確認されている士団員たち。
「キャー!!」
「ヘレンさんは高い場所もスピードを出すのも苦手みたいですね」
「意外だな」
「戦闘中でもこんな悲鳴を聞いた事は無いぞ」
「お仕事中はスイッチが入っているのでそういった恐怖とかは度外視なんじゃないですか?」
「オンオフがハッキリしてる人って結構いるよね?」
「仕事はテキパキできるけど、家では力を抜ききってる人とか」
「榊などその極論みたいなものでしょう」
「・・・そうかな?」
首を傾げながら話していると、進の顔面に全身でしがみついたヘレンが戻って来た。
「ほら、もう目を開けても大丈夫だぞ」
「ひっ、ひぃっむりぃっ」
「情けない声を出すな」
「大丈夫だって、下ろすだけから力を抜いてくれ」
ミッシェルにも手伝ってもらいながらヘレンを引きはがして地面へ下ろすと、満と至が労う。
「あっちで温かいお茶でも飲みましょう」
「つむぎにアニマルセラピーも頼みましょうね」
やって来たつむぎに抱き着き、モフモフの毛に埋もれながら連れていかれた。
「ヘレンさんが乗るなら、スクーターよりもっとスピードの出ない物がいいでしょうね」
「一応、馬車や乗馬では悲鳴を上げていたことはないな?」
「はい、あのように怯えたお姿は見たことがありません」
「ならばゆっくり走るとして、同じような方と共に移動出したらいいでしょう」
「いいね!魔法士は元々後衛してることが多いし、周囲から影響を受けないようにして前線で戦ってる人たちも逃げ込める休憩所兼用にして、」
なんなら魔法障壁を展開しながら移動できるようになれば今まで結界が張れる魔導具が少なくて魔法士頼りだったのが変えられそうだという茂に、クミーレル達がメモをとりながらそれはいいアイディアだと目を輝かせる。
「いわゆる”拠点”ごとに移動するという事ですね!」
「面白い考えですね!あのテントや馬車を造れるシゲル殿ならではの考えですっ」
「我々が同じような物を造るとなると、」
「これはまだできませんから、」
「ならばこちらで、」
錬金術師たちが話し込んでいるのを見ていると、茂がトゥクトゥクという三輪の乗り物を出して説明を始めた。
「こちらは以前造ったものです。この乗り物はスピードが出ないのですが、人や荷物を運ぶという点ではとても優秀ですよ」
スピードが出るという事は、それだけリスクも高くなるので良いこと尽くしという訳にはいかない。その点、このトゥクトゥクは荷馬車と同じくらいのスペースしか必要としていないにも関わらず、大型馬車と同じかそれ以上の積載量と安定した移動を誇ると説明しながら扉を開けた。
「これは敢えて壁を作らず、柱だけのデザインになっています。今日みたいな天気のいい日はこのままの方が気持ちがいいですし、天気の悪い日や夜にはこうして幕を張って中の空間を守ります」
「これは、今使っている普通の馬車にも取り入れたい仕組みですね」
「この幌は何を使っているのでしょうか。蝋を塗っている訳ではないのに水をはじいていますね」
「こちらも”救急車”に使われていたものと同じ素材で造ったのですか?今までのテントとも違う様ですが」
「はい、あのベッドとは布が違いますが基本的には同じだと思ってください」
今出しているのは三人乗り用だが、六人乗り用にも出来るともう一台を出して中を案内した。
「これ以上も大きくできましたが、それは使用方法に合わせた方がいいと思いますよ。人を乗せるのと荷物を乗せるの、家畜を運ぶのなどで変わってきますから」
大きくして何人も乗れるようにするなら三輪に拘らない方がいいとも思ったと言いながら、少し落ち着いたヘレンを呼んで一緒に乗って走ってみる。
「これなら問題ありません!」
「普通に馬車に乗っている時と変わらんスピードだな」
「乗り心地は雲泥の差ですよ」
「これだと馬が不要になるのと、御者台、と言うべきか?も車内なのだな」
「壁が無い分視界を遮られることもありませんね」
「これならば配置する兵を少なくしても問題ないかと」
「士団員の移動であるならばこちらの方が反応しやすいか」
「上からの襲撃には気づくのが遅れるかもな」
「それならうちの車みたいに見張り台を付けたら喜ばれますかね?」
みのり屋の車は大型馬車と同じくらいの大きさなので馬で言うなら二頭引きになる。その為天井の面積もあり見張り台としても使えるのだが、このトゥクトゥクは小型馬車よりも小さい。なので、せいぜい荷物置き場としてラックを付けるくらいに考えていたのだがと言われ、一般に販売するならそれで十分だと現津が言う。
「ですが、軍事利用を考えた時は見張り台にもなる用足場を設けるのもよいかもしれませんね。もしかしたら冒険者の中にも欲しがる者もいるかもしれません」
「冒険者、確かに」
必要としている人はそれなりにいるのかと呟きながらバインダーを開いて、思いついた構想をメモしていく。
「今年のバザーでも”錬金術師の部屋”を開いたら賑わいそうです」
「城に戻ったら手紙を書く準備をしておいてくれ」
「かしこまりました」
「私たちはお茶会とそれぞれのサロンで話題に出しましょうか」
「招待状のリスト作りのお手伝いをさせていただきます」
オルギウスとマリー達王妃が今年のバザーも目が離せないと盛り上がっているのを横目に、錬金術師科の四年生にどういうことかと下級生たちが小声で質問を始めた。
「貴族も一枚岩じゃねぇからな」
「王国も500年は続いてるし、王位継承権があるのは王族だけじゃねぇし、国王には王族以外もなれるって事だよ」
「え?」
「陛下が、それこそ一番の被害者だろ」
オルギウスの父親である先王エリオットは公にされていないが毒殺されている。その犯人はすぐに捕まり処刑されたが、間違いなくトカゲの尻尾切りで黒幕は別にいただろう。
「ギルの元婚約者だって伯爵家なのに選ばれたんだろ?本人がものすごい優秀か何かの後押しがなきゃ他の高位貴族が許さねぇって」
「ギルも引きずってないところを見ると、好きだから婚約者にしてたって訳でもなさそうだし」
「どんな人だったのかは知らないけど、説明してくれた時も落ち着いてたよね」
「こくん」
「茶会で違法薬物バラまいてたって言うし、どう見ても最後はギルを殺して王国を乗っ取る気だっただろ」
「うわ~」
「まぁ、俺たちみてぇな市民にんな事いちいち全部教える方が混乱だの暴動だの起きるから、貴族にも階級があって情報を絞ってんだろうけどな」
「
ちなみに、国のトップを取り換える時の争いを人は「革命」としか言わないとジンがスラム街出身の子供たちに言う。
「教会での炊き出しの回数を多くするとか、ギルドに登録する前の仕事をもらうとか、ああいうのも貴族の援助ありきだ。そういうのを増やすとか減らすとか考えてる王様を殺して税金を重くする新しい王様が出来ることも革命なら、そういう王様を殺して教会とかギルドとかに仕事を回す王様がトップになるのも革命。どっちも革命だってんなら、肩入れするのかしねぇのか、邪魔するのかしねぇのかもしっかり考えてからにしろよ」
「うん!」
「お前も
「スラム出身の冒険者に爵位なんか持たせてどうすんだよ」
ガウェインに言い返しながら、すっかり懐いているスラム街出身以外の子供たちにも囲まれているジンに笑っていた。
「ジンってもしかして貴族の血が入ってたりしない?」
「どうでしょう。本人にも出自は分からないと言っていましたが」
「頭がいいのは間違いないですけどね」
それで言えば全員だがと笑って、王族は王族で今後の予定を話し合っていた。
「学園長先生、実は先日和ちゃんから連絡が来たのですが、少々ご相談よろしいでしょうか」
「和、聖国で何かあったかね?」
連絡があったという事は、特級ダンジョンから出て来たという事だろう。攻略を終えて出て来たのか、途中退却してきたのかは分からないが、そのことについてだろうかと茂と現津に席を勧めて向かいに腰を下ろした。
「先日ダンジョンの攻略を終えて地上へ戻って来たと連絡があったのですが、」
「攻略、他種族の援軍があったとも聞いておるが、まさかこんなにも、たった数ヶ月で攻略してしまうとはの」
「とても楽しかったそうですよ」
電話で話していた内容を思い出して笑いながら、今年の一年生が全員身体強化が使えるようになったためこれから初級ダンジョンへ向かう準備が始まると今度の会議で話す議題に触れる。
「一年生は前年通り初級ダンジョンへ向かうのが良いと思います。何事も初めは不安になるでしょうから。そして、上級生の中には学園を卒業後騎士団、魔法士団、どこかの私兵団、冒険者になる方もいらっしゃいますよね?」
「そうじゃな。今年はどこも卒業生を自陣へ何人迎え入れられるかと競い合っておる」
「そういう子達は今後、きっと戦場へ出向くことも、魔物と向かい合う場面に出くわすこともあると思うのです」
「ああ、
進が言うところの、自然のルールだ。スラム街の者たちでさえ城壁の中でしか生きてきたことが無いというのに、成人したての子供にとって、まず一番初めに対峙する常識の通じない相手という壁にもなるだろうと言って頷く。
「私たちも今年で四年生。残された時間も限られております。ですので、上級生の希望者だけ、聖国にある特級ダンジョンの第一階層のみ散策するご許可をいただけませんでしょうか」
「・・・それは、みのり屋、ならびに特級ダンジョンを攻略した和殿のご助力も込みでの話かね?」
「もちろんです。圧紘くんに協力してもらい学園での授業も続けながら、みのり屋全員で補助、監督、支援をしながら一階層だけを散策して戻ってきます」
「なるほど、・・・なるほど」
もうすっかり白くなっている髭を撫でながら考え、肩に停まるタルパのオーロラを指の背で触れて口を開く。
「アツヒロ殿のご助力は、どこまで可能かな?」
「そうですね、榊ちゃんがまだ王宮の本を読み切っていないみたいなので、本人は今回も王都に残ると言っていますし、もしも作ったコピーに何かあってもすぐに再度コピーを制作して対策に回ってくれると思います」
「自分自身をコピーして学園にも何人か残しておくと言っていましたから、
「頼もしい限りじゃな」
そう笑い、オーロラを掌に乗せて背中を撫でれば気持ちよさそうに目を閉じた。
「明日の会議では、そのことも踏まえて議題にさせてもらっても良いかの?」
「はい、もちろんです。その方が先生方も親御さんも安心できるでしょうから」
「はっはっは、保護者への気遣いもしてもらえるのはありがたい」
次の日、学園長の口から特級ダンジョンへの散策が教師陣に発表され、その半数以上が一緒に行くことがその場で決まった。
「特級ダンジョンだし、生徒もそんなに集まらないと思うんだけど」
「単純に行きたいだけじゃない?」
「ここの教師って貴族だけど一回は冒険者を目指して説得とか権力とかで押しつぶされて屈折した奴が多いみたいですよ~?」
「どういう事?」
「どんな立場であれ、当人が望んでいなければ権力があろうがなかろうが足かせになるという事だ」
とくに貴族は生まれた時からきちんと教会で出生届を出されているので、急に居なくなれば家門に傷が付くし泥にもなる。その為目に余れば除名として平民へ落とすのだが、そんな子息に平民として生きて行く上で必要な物資や知識を与える訳がない。
「敵対したんだから塩は贈らんわな」
「っていうか、平民に”落とす”って言ってる時点で平民の暮らしを下に見てるのは明らかだし、必要なものとか知らないだけじゃね?」
「贅沢三昧っていうのは語弊があるけど、思う存分勉強できて文字の読み書きと計算を最初からマスターしてるんだから実は結構イージーモードなんだけどね~」
「生活水準の違いと、精神的ショックでその考えにも至れないんだろう」
そして、どうしたらいいのか分からないままさ迷っている間に追手に殺されるか、運よく冒険者になっても実力を測り損ねて死んでしまう。
「学園で研鑽しましたって言ったって、初級ダンジョンでさえ行くようになったの三年前でしょ?」
「身体強化が使えないなら潜らない選択をするのが普通だが、家族だと思っていた者が自分を捨てたんだ。成り上がって見返したいと思い結果を焦るのも至極当然の流れだな」
それこそ冒険者を生業としている者は出自不明でならず者として生きる以外、その生き方しか知らなかった者が多いのだから、貴族として蝶よ花よと育てられた者たちには道理の通じない相手に見えても仕方がない。
「冒険者の売り文句は”自由”。貴族社会は規則規律家門血統伝統」
「そんなしがらみの中で育てられた子供たちが憧れるのは必然なら、いつ命を落とすか分からない職に就きたいという我が子を止めるのは親心よね」
「こればかりはな」
何が幸せなのかはその時になってみなければ、過ぎてみなければ分からないと金剛も頷く。
「で、前の学園長がやらかして教師も入れ替わりが起こったから貴族主義の教師が減って、一度は本気で自由を夢見た少年少女の心を燻ぶらせた大人たちが大半を占める結果となりました。めでたしめでたし」
「・・・めでたしか?」
「分からん」
「まぁ、とりあえず困ってはないかな」
「うん」
「こくん」
肩をすくめるリックに頷くポーとノア。アンとメイナはお茶を飲みながら首を傾げた。
「だからほとんどの先生が特級ダンジョンに行くの?」
「特級ダンジョン、結構ハードだよ?」
そこは初級で満足しとくべきじゃないと?言われ、ギルが笑った。
「そこはほら、みのり屋への信頼とかだから」
「嬉しいんだけど、生徒が集まらなかったら先生たちと錬金術師科の旅行になりそうだよ」
「集まらない訳ないだろ」
「他種族との交流と国外遠征だよ?何が起こるか想像できなさ過ぎて可愛い我が子を行かせたくないんじゃないの?」
「魔族との関わり方は授業でも習ったし、ホーキンスさん達が事細かに質問に答えてくれている。王族の私たちが行くのに家臣の貴族が行かないのは、それこそ家門に傷がつくし今後に関わる」
「あと、王権派にばかり力が集中しちゃうのもあんまり良くないしね」
「良くないんだ?」
「何事もバランスが大事って事だよ」
王家がワンマンになればそれは独裁国家。賢王がトップならいざ知らず、そうでない人間の方が圧倒的に多い中で王家だけが権力を持つのは国を傾ける結果に繋がる。
「だから嫌味でネチネチしてて文句言って邪魔してくる貴族もいた方がいいんだよ」
「王宮でなんかありました?」
「べっつに~?」
「アツヒロさんが温厚な魔族で良かったよ、本当」
「聖国が何故呪われたのか説明しても理解できない奴が多くてな・・・」
「ま~あ~?榊さんがみのり屋だって知ってるから暴言吐いて来る奴はいないのは良いんだけどさー」
「みのり屋は重婚しないって言ってんのにな」
「書いてた小説を読んでファンになんのは?分かるよ?絵描いてる時の榊さんは可愛いだけじゃなくて神秘的だし?見とれちゃうのも分かるよ?」
しかし、義手を外して足で絵を描いている時に前かがみでトイレに駆け込んだ奴は許さないと眼を黒くして呟いた。
「貴族って素足を出したりしないんだろ?マナーとかで」
「私の格好も驚かれましたし」
モンステラは火の民では当たり前の格好をしているのだが、翼を出すため背中が大きく空いている服を着ているのでそれも目立つそうだ。
「文官も忙しいと王宮で寝泊りしてるっていうし、疲れてたんだって」
「榊様も圧紘様以外は殿方として見ていませんよ」
「うん」
「だよね!それでも許しはしないけど!」
「・・・王宮大丈夫?」
「女性文官と近衛騎士と侍女で固めたんだけどね」
「派閥同士の戦いが激化してる」
「大変だな」
「実際に動き出すのはしばらくしてからだろうけどな」
みのり屋はまだ王国にいる。恩恵に預かれる期間が迫っている今、その叡知の伝授を邪魔すれば針の筵ではすまされないと馬鹿でも分かるとアディがため息を吐く。
「皆さんの恩恵に素直に預かった結果、潤っている領地も多いですからね」
「すでに?!」
「領地の単位で!?」
「ポーションのレシピにマジックバック、他にも数えきれないほどの魔導具と書物が出回っているんだ。当然の結果だろ」
「”錬金術師の部屋”もそうだけど、前に”冒険者の部屋”もやったでしょ?そこで武器とかスクロールとかも今までの比じゃないって大騒ぎだよ」
「教会を通して医療の発展も目覚ましいぞ。地方になるとまだ影響は薄いようだが、それも時間の問題だ」
「!」
ノアが目を輝かせて嬉しそうに顔を上げたので笑って声をかける。
「ねぇノア、村に戻って医者になるなら、たまにでいいから近くの村も回ったり、小さな教会とかにも行って様子を見たりできないかな?」
「錬金術師で医者志望は少ないし、純粋に医者を目指すってそもそも地位とか環境とかが揃ってないと難しいのよ」
それこそ回復魔法の素質があったら教会で修行をすることになるのだが、その教会が田舎過ぎて情報の更新が出来ていないと話にならないのだと言われ、構わないと頷いて見せた。
「僕だけじゃ、無理だけど。イヴがいれば」
クラゲの足を撫でれば嬉しそうに擦りついてくる。そんなノアの姿に、もしもその貢献が認められたら貴族にでも教会預かりの高位神官としても迎えられるのだが、この話は本人が望んでからで良いかとギルもレティも口を閉じた。
ファビオラは国の未来は明るいと、クミーレルと笑いながら束の間のティータイムを楽しんでいた。
『でね、学園で募集したらほとんどの生徒が参加することになっちゃって、あまりに多過ぎるし、実力的に心配って子もいたみたいでトーナメント戦で人数絞ったらすごい不満が出ちゃったの』
「へー、学園の子供たちも冒険好きなんだね」
聖国にある森の一部、町との境にある一角を切り開いて広場とし、大きなテントを拠点に休憩していた和が電話に向かって頷く。
『それで、もし良かったら一回顔見せも兼ねて実際にどのくらいの実力が無いと危ないのかを教えて欲しいってお願いされたんだけど、学園に興味ある?』
「それってあれ?前に雄英高校に授業しに行った時みたいな事するやつ?」
『うん、そんな感じ』
もしも来たら
「みんなとどうするか話し合ってみるね。あ、行くならなんかのお肉も持って行くから宴もしよ!」
『ふふ、満ちゃんにも伝えておくね』
受話器を置き、居間へ向かいながら紋を出して話し出す。
「王都にある学園で臨時講師みたいな事して欲しいって、今茂から連絡が来たよ」
行くなら全員で行くのか、それとも部隊を分けるのか、宴をするお土産はどのくらい持っていけるかの話し合いをしようと言う声を聞き、刀剣達とフーズ・フー、カイドウから話を聞きつけた海賊たちがテントへと集まってきた。
「和ちゃんが来てくれることになりましたよ」
「本当か!!」
「これで暴動を抑えられるぞ!」
「保護者からの抗議文にも返信が出来ます!!」
歓声に湧く会議室。和が教師としているのは一日しか無いので、上級生との授業しか出来ないかも知れないが下級生の見学はさせたいと案が出る。
「学園祭で使用する競技場の使用許可を!!」
「もちろんじゃ。ですが先生方、和殿は聖国、並びに我が国もスタンピードから守ってくれたみのり屋の御一人。更には血の騒いだ魔族と結婚している事を忘れてはなりませんぞ」
失礼はもちろん、魔族の特徴もいま一度勉強し直してお迎えしましょうと言う学園長に、全員が賛成の返事を返した。
「気合入ってるな」
「生徒以外にも見学に来そうですね。フーが暴れる事態になれば一瞬で王都が消えますから、満の結界を張ってから呼びましょう」
現津のセリフに、教師たちの団結が強くなった。
そして、アディがザックに手紙を持たせた事で王宮でも同じ事が起こっていた。
「これから臨時講師として来てくださるみのり屋の和殿は魔族と結婚している。授業でも習ったと思うが、妖精種が結婚しているということはそれだけ強い感情を向けているということだ」
それだけではなく、血の騒いでいる相手でもある為絶対に敵意を向けないようにと各教室で教師から改めて説明がされた。
「そして、夫の魔族はゾオン系。獣人族のように鼻が利く。家族のみのり屋であろうと男の匂いが付くことを嫌がると聞いている。挨拶であっても握手をしないように」
貴族には敬意を持って挨拶をする時、男性側が女性の手の甲へキスをする場合もあるがその挨拶は絶対にするなと何度も真剣に繰り返す。
「フェアグリン様曰く、感謝の意(跪いて手の甲に額を当てる)でさえ嫌がったそうだ」
「和殿はシゲル先生方の様に生活魔法でさえ使えないという。その代わり唯一適性のあった召喚術を極め、今では特級ダンジョンを攻略する実力の持ち主だ!授業内容はまだ発表されていないが魔法士を目指す者は見学中でさえ気を抜かず注目するように!」
「和殿の主力武器はカタナという異国の剣だそうだ。本人は剣士と名乗ってはいないそうだが、その実力は騎士団長のアールブロン卿のお墨付き。魔法士としてだけでなく騎士科も心して挑むように!」
「先生!何故そのような実力者が何処のギルドにも登録せず今まで無名だったのでしょうか!みのり屋の他の方々もそうですが!」
「それについては我々教師陣も不思議だったのでススム先生に聞いてみた」
『みのり屋の代表は茂だからな、錬金術師ギルドと商人ギルドに登録してるし十分だろ』
「だそうだ」
そんな説明が行われた日の昼食時、テラス席へ他学科の生徒達が来て詰め寄ってきた。
「何も十分じゃなくないですか?!」
「個人的な知名度とか!欲しくないんですか?!」
「え、欲しいか?」
「別に?」
「みのり屋にいると毎日事件なみの出来事が起こるのでな、忙しくてそんな感情が湧いてくる暇が無い」
ホーキンスが真顔で言うと、妙な説得力があると納得をする者が数名出てくる。
「ドフィーさん達も目的があって悪名高めたんでしょ?」
「ああ、アイツらはそうしなければ逆に危険な立場だったからな」
「ドフィーさんって誰?」
「今は別々で行動してる家族だよ」
「使徒族の二人兄弟と幼馴染の闇の民と、魔族の弟で一緒にいるわよ」
「弟は放浪癖があるから、一人だったり友達だったりとフラフラしてたりするけどな」
みのり屋ってまだ他にもいるんだ!と驚きの新事実が一瞬で王都中に広まった。
