4.海賊と一緒
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「大変長らくお待たせして申し訳ございません。皆様にお泊まりいただく宿が選別できました」
「なんだか気を遣わせてしまって」
やって来たフジミヤに頭を下げながら、当面の予定を話し合う。
「この町にも学び舎があるのね!」
「はい、皆様のおかげで町の子供はほとんど通う事が出来ています」
よかったら子供たちにも顔を見せてやって来れと言われ、優と金剛、ホーキンス達が嬉しそうにどの学び舎から周ろうかと予定を立てていく。
「あ、でもまずはお城にご挨拶に行かないとね」
「そうだよね。フジミヤさんにだってお世話になるんだから何か贈らないとね」
「そんな!既に多くの物を頂いているというのに!」
「お前、先に何が必要か言っとかねぇとドエライもん寄越されんぞ」
「想像の範疇を超えるもん寄越されたら、持て余すどころか隠すのに心血注ぐことになんだからな」
「いらねぇもんはいらねぇってハッキリ言えよ」
ちょっと疲れている海賊達に、数日来なかった間に何があったんだと戸惑っているフジミヤは置いておき、楽しそうなみのり屋メンバーを連れてワノ国へと向かった。
「和もワノ国は初めてなのか?」
「うん、みんな鬼ヶ島に会いに来てくれてたからね」
「こいつ一人で人間の国に行かせるわけねぇだろ」
「それもそうか」
「同じ世界にいるし、助けに行くにしても直ぐにいけるから大丈夫かな?」
「捕まるのが前提で話を進めないでくれよい」
「ははは」
笑いながら渡し船を降り、改めてワノ国を見上げる。
中央に見える大きな城を包むように咲き誇るのは、薄紅色の桜の木。そんな城の左右には、さらに大きな胡桃とどんぐりの木がそびえ立っていた。
「こっちもちゃんと成長してますね!良かったぁ!」
「ちゃんとっつーか、まぁ、ちゃんとか」
「和ちゃんから話は聞いていたので大丈夫だったのは知ってるんですけど、やっぱり自分の目で見ると安心しますよ」
「ネズミがしわしわになった時は驚いたけど、うちの湧き水飲んだら戻ってたし、その後はキングが植えてくれたから誰も怪我とかしなかったよ」
「そうだったんだ、ありがとうございました」
もう夏の終わりになっていたと聞いたから早く収穫できる方がいいと思って成長速度を限界突破させたのはいいが、早すぎて植えた後に走って逃げなければならなくなったと笑っている茂に、キング達が遠い目をする。
「満腹地蔵も造ってからどのくらい経ったっけ。三百年くらい?不調とかないか見て周りたいなぁ」
「うちでも毎日のように使ってっけど、不調の兆しもねぇぞ」
「本当ですか?良かったです」
ニューゲート達ともそんな話をして城へと向かっていく。
しかし、途中で先に宿へ行っていると二手に分かれ、みのり屋だけが城内へと入った。もちろんフーズ・フーもみのり屋として付いてきている。門を潜った所から何人いるんだと数えるのも諦めるほどの人数が整列して頭を下げながら出迎えた。
「おお〜」
「フジミヤってこんな大人数と一緒に住んでたんだね」
「お土産の果物もっと持ってくれば良かったね」
「数的には足りるけど、御代わりはいくらでもあるからね」
立派に国主をしているんだなと、何故か母目線で見上げられて照れながら本丸の大広間へと入った。
「改めまして、ワノ国を代表して皆様にお礼申し上げます」
広間で向かい合い、一段高くなっている上座から降りて礼を取るフジミヤに笑ってしまう。
「ご丁寧にありがとうございます」
「本当に礼儀正しい方ですね」
「オデンとそっくりだよ」
「オデンとは似てねぇだろ」
「そうかな?」
オデンだって飢饉が起きそうだからってお米の品種改良を頼んだ時電話越しに頭下げてたよと言われ、それはそうですよとフジミヤが苦笑する。
「皆様のお陰で、我が国ではどんなに気候が乱れても飢饉にはなっておりません。年貢を納めても皆が満足できるだけの収穫がございます」
お陰で国民の人数も増え続けていると言う。それだけではいずれ国から溢れてしまうが、子供たちが皆学び舎でしっかりと学問を修めているおかげで職にも困ってもいないと笑顔を浮かべた。
「国外へ出ていく者が多くなったと問題視する声も上がっていましたが、一度外界を見て戻って来た者達がまた国を盛り上げてくれておりす」
「若い内に色々見ておくのって大事ですよねぇ」
ワノ国を見るのがとても楽しみだと話したあとに、今後どのようにワノ国を見て回るか皆で話し合ったのだがと茂が代表して口を開いた。
「満腹地蔵のメンテナンスもしたいので、まずは地蔵が設置された場所を順に巡ってみようと思っています。私たちが世界樹だっていうのは内緒にしていた方が良いみたいなので、種族は特に明言せずただの”みのり屋”として」
「”ただのみのり屋”がどこまで成り立つかは俺らにも未知数だがな」
とりあえず、何でも屋の商店なのだと言っておけば外海から来た者には誤魔化しが効くだろうと、この世界の常識を知っているフーズ・フーがフジミヤと向き合う。
「お前らがやる事は、とにかくこいつらから目を離さねぇ事だ。俺ら(百獣海賊団)もある程度は着いて回る予定ではいるが、世界政府だの海賊だのを追い払うのに手が割かれる事も多い」
それこそ、最近は収穫祭の噂とその祭りに振る舞われる料理を目当てに出入りする外海の者が増えてきた。中にはどんな食材なのかと探りを入れてくる者が強行突破を画策しているのだ。相手が四皇だと分かっていても、その独占している経路へ割り込んでおこぼれにあずかろうとする者が後を絶たない。
「どこからこいつらと繋がるか分からねぇ。それでなくともこいつらは存在してるだけで無自覚に尋常じゃねぇ力を振りまいてんだ。妖精種はもちろんだが、精霊種は絶対に必要以上に近づけんなよ」
特に光の民は周囲にも分かりやすく反応してしまうので気を付けろと言われ、深く頷いて茂たちに向き直る。
「僭越ながら、皆様の旅路には私も同行させていただきます。本来なら全てを共に見て回りたいのですが、私が同行できない期間もございます。その場合も土地勘のある者が必ずお側に居りますので何なりとお申し付けください」
「お気遣いありがとうございます」
こうして挨拶も終わり、表向きにはワノ国御用達の何でも屋として貫き通す事が決まり、どの順序で満腹地蔵をメンテナンスしていくかも大まかに決めていく。
「この城下町だけでも百台はあるし、ゆっくり一つずつ見て行こうかな」
「それなら、私はいつも使ってくれてるお礼にトッピングをおまけしてあげようかな」
「それいいね。満腹地蔵の滅菌付与が終わったら手伝うよ」
「私はどうしようかなぁ。地域特有のお話とか聞きながらまとめて行こうかな」
「私たちは学び屋と孤児院を見に行きましょう。子供たちが気になるわ」
城下町の学び屋を見終わった後は、各地に行くという優に、それなら一緒に移動して子供たちにどんぐり蕎麦を食べさせてあげたらいいんじゃないかと茂が言う。
「もう食べ飽きてる子もいるかもしれないけど、満ちゃんがトッピングとか乗せてくれたら味も新しくなって新鮮さも出るだろうし」
「それはいいわね。子供たちも勉強だけじゃなくて体も動かさないと成長に関わるし」
「私も一緒に行こうかな。フーだけじゃなくて百獣海賊団の誰かがいるなら安心だよ」
「わしも最初は見て回るかな」
そう言って進が顔を上げる。
「ここは海が広いな。大陸もほとんどなくて島が独立して国を作ってる」
「たまに遠征に連れて行ってもらってるけど、文化っていうか文明っていうか、全部違ってて面白いよ」
和の言葉に、本当なら冒険に行きたいのだろうが無人島に行こうと思っても行ける訳ではないことを知った進が笑い返した。
「なら、ニューゲートに船に乗せてもらえるか聞いてみるかな」
百獣海賊団の縄張りから出ないほうがいいと自粛している和に、その外には何があるか先に行って見てこようと頷く。
「ドフラミンゴ達にも会いに行きたいしな」
「私も会いに行きたいわ。あの子たち成人したらすぐに独り立ちしちゃったから」
「ヴェルゴも一緒にいるんでしょ?まだ成人してないし、心配だね?」
「あいつは心配しなくても大丈夫でしょう」
「精霊種に生まれ変わりましたし、ドフィーとロシーもいますしね」
ただ、この世界にはいない精霊種なので、それがバレないようにだけ気を付ければと笑っているキリル。
「後でこの世界に来たことを知らせておくわね」
「向こうから会いに来るんじゃないですか?」
「そうかもしれないな」
みのり屋で育った使徒族の二人は現在、ヴェルゴと三人で海賊として名を挙げている最中だという。
「ある程度名を上げてからじゃねぇとここに来れねぇからな」
「そうなんですか?」
「あいつらも監視されてるようなもんだからな。下手に手出しできねぇくれぇまで目立った方が安全なんだよ」
「そういや手配書が出てたぞ」
「まぁ!もうそんなに活躍していたのね!」
後でニュースクーから買わなければと眼を輝かせている優たちに、フジミヤ達が笑っていた。
今後の打ち合わせも終わり、本当なら城で歓迎会をしたいのだがと名残惜しそうにみのり屋を見送る。城には海賊たちが入ることはできないし、鬼ヶ島で宴会もできたので気にしないでくれと宿へと向かった。
「あ!本屋さんがある!」
「ああ、お前が書いた漫画だの小説だのも売ってるぞ」
「和殿にお貸しいただいた小説の写しでございます」
「念のため”M”としてじゃなく”みのり屋”の名前でワノ国でだけ出版してるが、他の国にも知られては来てるな」
といっても”M”とは結びついていないので、ここでも新しく書いたらみのり屋の名前で書籍化しろよとフーズ・フーに念を押される。
「外海から入って来ている本もございますので、気になりましたらどうぞお手に取ってみて下さい」
「漫画は貸し本として扱っておりますが、触発されて自分でも漫画を描いている者も多くなってきました」と笑いながら宿屋までの道なりにある店を紹介していた。
「あ、あれが満腹地蔵の置いてある屯所ですか?」
「はい、そうでございます」
「ここは城下町の中でも中心地に近いので数は少ないですが、それでも皆毎日のように利用しております」
「そうなんですね」
無駄になっていないようで嬉しいと笑って宿屋の暖簾をくぐり、先に寛いでいた百獣海賊団と白ひげ海賊団に先ほど決まった今後の予定を説明した。
「満腹地蔵に滅菌付与か、通りで今まで食中毒が起らなかった訳だぜぇ~」
「人間種はすぐ腹壊したりするからな」
「今までの分は付与が切れそうなのか?」
「いいえ、元々強めにかけていたので、かけ直さなくても付与が切れたりすることはないと思いますよ」
「というか、地蔵本体じゃなくて器とかお箸とかにしたらいいんじゃない?」
しかし、そうなると数が多いのでそちらの方が大変になるのかと首を傾げる。満腹地蔵関連で体調不良になったという話は聞いていなかったなとブラックマリアが言うと、他の面々も頷いて同意を示す。
「っつーか、あの器と箸ってどっから出てきてんだ?」
「うちでもそうだが、町の奴らも地蔵に戻さねぇで使ってる奴が多いぞ」
「それでも毎回新しい器で出て来るよな」
「あ、それは満腹地蔵同士繋がっているので、お蕎麦を作る時に残る殻とか灰汁、
その食器が必要な時に必要な分それぞれの地蔵の腹から出てきているだけなので、どんぐりやクルミを入れれば無限に作られるのだという。
「回収する仕組みにしたのは、食器とか食べ残しの汁とかが道に投げ捨てられたりしたら嫌だなと思っただけですし」
戻って来た食器もまた粘土に戻されて新しい食器になって滅菌されて出て来るので安心してくれと見上げられた。
「この食器軽くて丈夫だから使いやすいよね」
「そうなんだけどねぇ。漆とかでコーティングできたらよかったんだけど、
「オーバーテクノロジー!!」
ページワンの叫び声が宿屋に響いた。
「わぁ!豪華な夕食!」
「すごい食材の数ですね」
「ここは将軍様のお膝元ですから」
仲居が近くの港町や山、農村地から沢山の食材が集まってくることや商人の行き来がある事を教えてくれたので、礼を言って頭を撫でてお心付けを渡す。
「微妙にずれてんだよなぁ」
「チップは良いにしても頭を撫でんな」
「外見が若ぇだけで行動がババアなんだよ」
「失礼な、子供を可愛がっているだけです」
「お前らからすりゃ全員ガキ扱いになるわな!」
反論している現津に笑いながら酒を持ち、大人数での賑やかな夕食が始まった。
「美味しい、これ全部ワノ国で採れるものなんだよね。きっと」
トッピングもそうだが、その土地でしか味わえない食材を使ってどんぐり蕎麦やクルミの焼き菓子をアレンジするのもアリだなと満が呟く。
「それ面白そうだね!」
「明日は市場に行ってみるとして、そこで色々見て回ろうか」
どんなトッピングやアレンジにするか決めてからメンテナンスをすればいいと言う茂に、フーズ・フーがネズミを呼び寄せた。
「うちのコックに明日から満について回るように言っとけ」
「かしこまりました」
「お前抜け駆けすんなよ!」
「レシピは共有しろおらー!」
「クイーン、厨房の連中に誰か付くように言っとけ」
「もちろんだぜカイドウさん!!」
「よし、いけサッチ!」
「うちの
「俺一人で背負いきれるか!!」
四番隊とコック達で連携を取らせろと言い返しながらも笑って明日からが楽しみだと言い、白ひげ海賊団の食料調達とは別で動くことを話し合う。
こうして賑やかに過ごした次の日、お忍びとして商家の用心棒の恰好をしたフジミヤが護衛の侍を四人連れて合流をした。
「おはようございます」
「おはようございます。これからよろしくお願いします」
表向きはワノ国、将軍家御用達の何でも屋であるみのり屋なので、用心棒を何人連れていても悪目立ちすることはない。というか海賊と楽しそうに行動を共にしているのだからワノ国の侍も何人かいないと逆に辻褄が合わなくなってしまうので、このくらいが丁度いいのだ。
「、すでに出かけた後でしたか」
「朝市は開店が早いですからね」
「美味しそうな食材が沢山買えましたよ」
「ただの買い出しだと思って油断したっ」
「着いてって本当に良かったっ」
「これからも交代で毎日行くぞ!」
「おー!」
力強く返事をしている海賊たちに何があったのかと驚く。
「今回は収納バッグとかこっそり使わないとダメなんだね?」
「そういえば、フーも人前では使ってなかったかも」
「クイーンさんが四次元の実用化はまだだとおっしゃっていたじゃないですか」
「和のはいいのか?」
「明らかに能力使ってんのとは話が違ぇんだよ!」
朝市で買った商品を、物量を無視して鞄へ入れようとしている茂を止めながら店の者の気をそらすために騒ぎ、急いで移動するという事を何度か繰り返したらしい。
「荷物ならいくらでも持つから!」
「サッチは闇に入れられるから大物を買った時は声かけてくれい」
「ありがとうございます」
「よろしくお願いします」
前途多難なスタートを切ったのだった。
「厨房をお貸しいただいてありがとうございます」
宿の厨房に立って頭を下げる満に、料理長が挨拶をして使い方の説明をしてくれるが、料理長を含め料理人たちから不満の視線を向けられる。
本来なら外部の人間を入れるはずのない部分さえ明け渡さなければならないのだから当たり前の反応だ。しかも、その命令をしたのはこの国の将軍。いち宿屋の料理人に反論などできる訳がなかった。
おまけに、その納得のいかない命令でやって来たのはまだ大人になり切れていない子供。御上のご用達商店と聞いてはいるが、だからと言って同じ庶民の子供に頭を下げてわがままも有り難がれとはこれ如何に。
そんな空気を肌で感じているだろうに、満は変わらず柔らかい笑顔のまま買ってきた食材を調理台へと並べていく。
「先ほどいただいた昼食もとても美味しかったです。夕食の準備もあるでしょうから手早く終わらせますね」
これから滞在中はこの時間帯だけお邪魔しますと、どこまでも低姿勢で道具も全て自分の物を使うので場所だけ貸してくれと最低限の事だけを要求する満に、どんなわがままなお嬢様なのかと思っていた料理人たちの棘も少々抜けていた。
そして、すぐに満が厨房を使うこの時間を心待ちにするようになる。
「今日は何を作るの?」
「とりあえず、トッピングとしては王道の天ぷらにしようと思ってます。でも、せっかくですし城下町ならではの料理が作れたらいいんですけど」
それはまだ考え中だと笑って皮張りのリュック型収納バッグ(どう見てもランドセル)から常識的なサイズのまな板と包丁の納められた箱を出した。
「嵒太郎、お鍋をお願いね」
「ギュ」
返事をした亀が竈へ入っていきその背中から火を出して鍋を温めていく。迷惑はかけないようにするとは言っていたが、薪さえ使わないとは思わなかったと驚いていると、料理長が目を見開く。
サイズから包丁が入っているとは分かっていたが、満が開いた箱の中にはなんの材質で作られているのか予想もできない美しい包丁が五本納められていた。
万能的な三徳包丁、菜切り包丁、刀と見紛う刺身包丁、魚や肉の硬い骨さえキレイに断ち切れそうな出刃包丁、そしてこちらも万能的な小型の包丁が一本。外海ではペティナイフと呼ばれているらしい。
光りに照らされなおその美しさが際立つ包丁を小さな細い手が持ち上げた。
「まずはキノコかな。市場の人がこの時期は毎日市場に出回るって言ってたし」
今日買ってきたのは香りが強いキノコが多いが、香りは少なく代わりに歯ごたえとサイズの大きな物もあったのでそれは千切りにしてかき揚げ用に素早く下処理をしていく。
「城下町はこの時期このくらいの気温が普通なんですか?」
「え、あ、はい。これからもっと暑くなっていくのが通年です」
「夏は結構暑くなるんですね」
それならば温かい蕎麦しか出てこないのも可哀そうかと呟きながら梅智賀に氷を出してもらい、米粉と小麦粉を二つのボウルに出して冷やしながら天ぷら液を作って揚げていく。
「二種類作ってみたんですが、ワノ国の方はどちらの衣の方が親しみがありますか?」
「どっちも美味い」
「智賀くんは食べ慣れてるからでしょ?ここは海が近くないみたいだけど、川は大きいのが流れててそこで魚を採ってるみたい」
海魚の天ぷらも悪くはないが、食べなれた食材の方が受け入れやすいだろうと買ってきた海老を揚げた。
「んー、悪くないと思うけど・・・。こういうのはやっぱり寒い時期に食べたくなるよね。暑い時期に食べるなら、もう少し味付けを濃くして、さっぱりしている方が食欲も出るだろうし」
海に囲まれている島国とはいえ、城下町のここは内陸に含まれる。となれば、海産物も食べ慣れているがそれ以外も身近な食材という事だ。
「うーん、明日は別のお店を見て回ろうかな。町から少し外れてたら農家さんもいたりするよね」
「直接見に行くか?」
「うん。茂たちも、私がアレンジを考えるのを待ってくれるって言ってたし」
何より今回は大きく移動をするような事もないので、他の皆もゆっくり観光を楽しんでいるしと笑って調理台をかたずけていく。
「嵒太郎もありがとう。天ぷらの味見する?」
「ギュッ」
竈から出てきた亀に皿に盛った天ぷらを差し出し、油跳ねした部分も全てキレイに掃除すると料理長に感想をもらってメモを取る。
「ここでも天ぷらは小麦粉を使ってるんですね。でも米粉も衣が薄くなって触感がよくなったらこちらも美味しいと。料理長さんがそう言うなら、町の人たちも受け入れてくれそうですね」
とはいえ、やはりこれから暑くなる事を考えると天ぷらだけと言うのも如何なものかと呟きながら礼を言い、最後に嵒太郎の使った皿も片付けて明日もこの時間にお邪魔しますと挨拶をして厨房を出ていく。
「あの天ぷらめっちゃ美味かったんだけど、米粉になんか秘密とかあるの?」
「秘密と言うか、巨大米と恵米の合わせ粉なんですよ。お米を主食にするワノ国の人たちならこっちの方がお好きかなと思って」
「配合知りてぇっ、でもうちの連中なら小麦粉の方が好きかもな。いや、あの薄い衣を食ったらハマるか?」
これは試してみる必要があるなと考え込むサッチに笑い、料理の話をしながら本館へ向かって歩いて行った。
「美味っ!これで決定じゃねぇの?!」
「川海老もうめぇな」
「小ぶりでも味が濃いですよね」
そう笑って、でもと小さな手を頬に当てて考える。
「ワノ国の夏はとても暑いと聞いて、」
「ああ、確かにそうですね。湿度が高くなってしまうのでカビなどもよく生え、食品をダメにされたなども耳にします」
フジミヤは立場的に直接厨房や食糧庫に入ることはないが、どのくらい何がダメになったなどの話は上がって来るので聞いていると頷くと、満だけでなく茂もそうなのかと頷いている。
「それなら、ワノ国の満腹地蔵は温かいお蕎麦と冷たいお蕎麦が出てくるようにした方が良いですかね?」
「そんな事が出来るのですか?!」
「出来ますよ。ただそうなるとお出汁も冷たい用に作ってもらわないと行けないんですけど、」
「それはもう作ってあるから大丈夫だよ」
進もよく食べるのでいつも家で作っている出汁で大丈夫だろうと満が頷いてエプロンを外した。
「ただ、せっかくの城下町だし、ここでこそ食べられる物もあるだろうし、それを探したいんだよね」
「農家がどこにあるかは分かる」
案内するから一緒に行こうと梅智賀が満の隣に立つので、自分も行きたいとサッチを含む数名の白ひげ海賊団コックと百獣海賊団のコック達。
「いってらっしゃーい」
「行ってきます」
歩いていく満の背中を見ながら、あいつ自分から出かけたりするのかとフーズ・フーが呟いた。
「満って新しい食べ方とか考えるの好きだよ」
「茂さんに次ぐ研究者肌ですしね」
「茂に次ぐ!?」
「錬金術は台所から生まれた化学ですしね」
むしろ火を司る嵒太郎が生まれてきた所を見ても、満が錬成術師になってもよかったのだがと眉を垂らして笑う。
「ですが満は結界術を選んだのですから、やはり錬成術師は茂さんの力なのですよ」
「ふふ、ありがとう」
この力で出来る事をこれからも研究し続けていくよと笑って朝市で買ってきた竹細工を手に持った。
「・・・みのり屋には九つの席があるって言ってたが、誰がどこに座るかも話し合って決めたのかい?」
「そうですよ。というか、
「力?」
「はい。始まり、願い、実現、時間、生命、守護、祈り、統合、終わり。この力と性格の相性がいいのは誰かって話し合ったんですよ」
指折り数えながら上げられたのは、どうとでも解釈が出来そうな抽象的なもの。
「私たちは世界を作ったりはしませんでしたけど、他の世界樹がこうして世界を作っているのはみんなこの力を持っているからですね」
「・・・あんたらは、なんで全部持ったまま一人になろうと思わなかったんだよい」
「んー、どうしてでしょうね?ちょっと自分でも嫌だって思った自覚がないんですけど、和ちゃんが私たちに召喚術を使えないので、多分全員が分かれたままが良いって思ってるんじゃないですかね?」
「和?」
「はい、和ちゃんが自分に私たち全員を召喚紋を付ければ、もしかしたら人の形をしたまま一人になれるのかもしれませんね」
けれど、そうはならないとどこかで確信している。
「私たちが一人に戻った時って、多分人の形を保てないと思います」
それこそ家に生えているあの樹そのものだと笑った。
「なので、こうしてみんなで旅をするのを楽しんでいる内は、ずっと九人に分かれたままだと思いますよ」
「・・・そうか」
正直、何をどこまで理解できたのかは分からないが、本人たちが望んだ今の姿でいてくれる限りはこうして一緒にいられるらしい。
「失礼します!中へ入れてください!お願いします!!」
茂が竹細工を分解して遊んでいるのを見ていると、宿屋の表門から子供の声が聞こえてきた。
「なんでしょうか。見てまいります」
「私も行こうか?」
「いえ、どういった要件か分かりませんので茂さんはここにいらしてください」
そう言って立ち上がった現津が表門へ向かい、しばらくして戻って来ると後ろにはまだ幼い男の子が一人いた。
「可愛い!どうしたの?迷子?」
「ここまで連れて来たら迷子ではねぇだろい」
至にツッコミを入れながら視線を向け、魔族の子供であると気づく。
「あれ、狂死郎だ。久しぶり」
「和様!」
「今日優が行ってきた寺子屋に通っている子供のようです。優がみのり屋と聞き、和がここにいると目星をつけて来たそうです」
「お久しぶりでございます!」
床に手をついて深く頭を下げるのは薄青色の髪を高い位置で一本に結っている男の子だ。
「狂死郎すごく頭が良いんだよ。ここの所ずっと囲碁の大会で優勝して私の相手もしてくれてるんだよね」
「へー!すごいんだねぇ!」
「まさか和様がワノ国に上陸していらっしゃるとは!」
「うん、これから百年くらいは出入りできると思うよ」
家族が来たので自分も一緒に行動することにしたと言うと、ものすごく嬉しそうに目を輝かせて顔を上げた。
ワノ国では毎年囲碁と将棋の大会が開かれ、優勝者は将軍と共に鬼ヶ島へ向かい、そこで和とゲームをして遊ぶことになっている。その話が歴代の優勝者から広まり、鬼ヶ島には神がかった鬼才がいるとまことしやかに囁かれるようになった。それがいつの間にかワノ国と百獣海賊団を裏から操る天才軍師がいると噂になったのだが、本人は全く知らない話だ。
「お供させてください!」
「学び舎で勉強とかしなくていいの?」
「もう全て納め終えております!」
「それもそっか」
元々記憶力も頭の回転も良い上に、魔族として成長が遅いため人間の子供たちと同じ外見だがすでに十年以上寺子屋に通わされていると以前愚痴っていたので頷いてしまった。
「じゃあ家の人に言っておいでよ。少しの間はこの宿を中心に観光するけど、それ以降は花の都の外にも行くし」
どのくらい家に帰れないか分からないので、その説明もした方が良いと頭を撫でる。
「なんだったら私からおうちの人にご挨拶しようか?みのり屋って説明しても知らない商店なら不安にもなるだろうし」
「ありがとう、私もいつも相手になってくれてるってお礼言いたいし一緒に挨拶しようかな」
涙目になりながらまた頭を下げる狂死郎に笑っていた。
そんな狂死郎を見て、侍たちが微妙な顔をする。優勝者という事で何度もフジミヤと共に鬼ヶ島へ行っているので、ここにいる用心棒がただの侍ではないと分かっているだろうに。
「もしも一緒に行ってもいいって言われなくても、しばらくはこの宿でお世話になるつもりでいるから学び舎が終わったら遊びにおいでよ」
「よろしいのですか!?」
「やったね!今日の夕飯も食べていけるかな!?」
至が抱きつき、膝に乗せると驚いて真っ赤になると逃げ出し、和の後ろに隠れてしまった。その姿にまた目を輝かせて構いだすので、和を挟んでの攻防が繰り広げられていく。
「ふふふ、可愛いねぇ」
そんなやり取りを見て笑い、フジミヤ達に狂死郎の家族は何人くらいいるか知っているかと聞きながら何か手土産になるものはないかと考え出した。
