7.学園生活(続き)
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それから四日間は、新しくできた街での生活をどうするかという話し合いが神官たちを中心に行われていた。みのり屋はあくまでも一時的な手助けであり、ここで生活をしていくのは住民たちなのだ。その為、この話し合いには全員が参加している。
「いつかは分かりませんが、また遊びに来ますね」
その時この街がどうなっているのかがとても楽しみだと笑って、新しく建てた関所の門を通って聖国を後にした。
そして、四日進んだ所で一度道作りをやめて車も停め、満たちに留守番を任せて森の中へと入っていく。
「この先ですよ。獣道も無いので、足元に気を付けてくださいね」
「ねぇ、いくつか収穫していってもいい?」
「好きなだけ採っていいよ。普通の桃だとすぐに傷んだりもするけど、桃が生やしたものだから長持ちするだろうし」
「モモノスケも意外とすげぇんだよな」
「意外にな」
「アア!」
「茂さんから生まれたホムンクルスですよ。まったく、もっと言い返してやりなさい」
「桃は食べ物の事になると強いもんねぇ」
小さな子熊の姿で怒っているのが可愛いと笑っていると、抱っこを求められたので抱き上げて更に森の中へと入っていく。
一時間も歩かずに、とても広い草原の中心に一本のピンク色の花と実を付けている大きな木が目に入ってきた。
「、すごいっ」
「キレイ・・・」
「いい匂い!」
「あ!蜂の巣が出来てる!」
「あれミツバチじゃない!?」
「桃のハチミツも美味いよ」
「刺激しないようにね!?」
「刺されるから!」
蜂の巣に近づいていく養い子たちを止めているクミーレルとマウロを歩いて追い、皆も木の下に来て見上げる。
「立派な巣を作ったね?」
「ですが、この木に作られると桃の収穫が面倒になりますね」
「養蜂箱に移したらいいんじゃないか?」
なんならこのままサラとライアンの収入源にすればいいと進が言い、ハチミツならライアンも食べられるし最高じゃないかと養蜂の仕方を教えた。
「聖国に行くにしても王国へ行くにしても、頻繁に町へ出るのは大変でしょうし一応畑も作りましょうか」
「じゃあ家の場所を先に決めちゃおうか」
茨でこの草原を一周させるなら畑もその近くの方が収穫がしやすいかとサラと話しながら日当たりのいい場所を探していく。家を建てる場所を決めたら現津が土属性の魔法で地盤と基礎を整えながら一階分の地下室を作って貯蔵庫はこのくらいの広さで良いかと確認してきた。
「ものすごい十分よ。っていうかどんな豪邸を建てようとしてるの?」
「流石に豪邸は建てませんよ」
「流石にのラインが分からない」
みんなで感想を言っていると現津が階段を作りながら地上に戻って来たので、玄関の予定地に向かって球を投げるとあっという間に久見木細工の大きな家が建った。
「豪邸じゃん!」
「二階建てのちょっと立派な一般的な家だって」
「お前の豪邸は城しかねぇのか!」
誰がどう見ても貴族とかが住んでるってと言われながらも、そんな大げさなと笑って中はシンプルだよと扉を開く。
「ここに貴族が別荘造ったって言われても信じちゃう」
「このクミキって技法は家の一部にしか使わないって言ってなかった?」
「街ではって事だったんだろ」
話しながら、茂が中に入っても大丈夫だと声をかけてきたので皆で扉をくぐった。
「わー!木のいい匂い!!」
「本当に落ち着く香りねぇ!」
「木造建築の新築っていい匂いするんだよね」
この家は豊にも強めの付与をしてもらったので長く住めるだろうと言って間取りを確認していく。
「寝室は二階のつもりで作りました。お二人とも年を重ねても肉体が老化する種族じゃないので膝が痛くなったりもないでしょうし」
「気遣いが生々しいんだよなぁ」
「生々しいって言うな」
「こっち側は日当たりが良いので、二部屋並べてお二人の書斎というか、プライベート部屋としてどうぞ。この部屋は物置でもゲストルームでもいいと思いますよ。寝室はこっちに作ってますからベッドもこっちに入れちゃいますね」
クローゼットも大きくしたので収納力もしっかりある部屋ですよと、クローゼットとは別で季節ものをしまう事の出来る大きなウォークインクローゼットも見せてから一階へと戻って風呂、トイレ、客室にもなる居間横の部屋を案内する。
「普段はこうやって大きなダイニングとして使えて、お客さんが泊まりに来たらこうして移動式の扉を出す事で部屋として区切られます。ここを寝室にしてもいいと思いますよ」
「これすごくない?」
「蜻蛉切さんたちの国では一般的な作りだったよ」
「これもか!」
「異文化って面白いよね」
「良いものは取り入れていくに限る」と言いながら、みのり屋産のトイレと風呂の使い方を説明していると現津が畑も完成したと窓から声をかけてきたので皆で外を見て驚く。
「畑じゃん!」
「そうだと言ったでしょう」
「もう作物が育ってるじゃん!」
「桃之丞にかかればこのくらい造作もありませんよ」
「アア!」
「さっきの根に持ってる?」
初めて見る野菜もあるだろうからと、満が描いたレシピ本も渡して食べ方を知ってもらう事にした。
「サラ、茨で草原を一周していただけますか?この森はアラマキが作ったものではありませんから今でも魔物の気配が近いです」
「あ、そうね。先に一周させた方が安心ね」
昔住んでいた森とも違うので落ち着いたら散策をして確認をするのも大切だなと頷いて髪を茨に変える。まるで意志を持っているかのように地面を伝って動き、あっという間に広い草原を一周させてしまった。
「これで弱い魔物は入ってこられないわ。そういえばモモを採取に来る人間もいるんだったわね」
ならあの道に繋がる方面には入り口を用意しておくかと、茨を操って即座に美しいガーデンを思わせるアーチを作った。
「すごいキレイ!」
「あ!実がなってる!」
「食べてもいいわよ。この実でジャムやお酒を作ると美味しいの」
「養蜂で安定してハチミツが手に入れば、ジャムだけじゃなくて酒やシロップの幅も広がるな」
「至れる尽くせりが過ぎるのよ、あなた達」
嬉しいし、ものすごく助かっているのだがとため息を吐いてライアンの前でしゃがんだ。
「半年はここでゆっくり生活をして、落ち着いたら王国に行ってバザーの手伝いをしてもいい?お給料は出るって言うけど、それを抜きにしても人手があればやれる事も増えるでしょうし」
「うん。僕も出来る事は手伝うよ。こんなに、もらいすぎだし」
「新しい門出にはこのくらいが丁度よくないですか?」
「あなた達まだ子供なのよね?」
本当に子供であってる?と茂たちを見ながら首を傾げているサラに、アランを始めとした教師陣が何度も深く頷いていた。
「私たちはこれから一年はまだ王都にいる予定ですし、何かあればいつでも声をかけてくださいね」
分からないことがあれば聞くし、注文があれば受け付けると言って一つのテントと収納バッグを差し出す。
「スタンピードでサラさんが倒した魔物の素材は全て聖国に寄付したでしょ?聖国からも賠償金を預かってきました。お互いお金で償えることではないのは確かですけど、償いの先が搾取なのはお互い前に進めなくなります。これから別々に生きていくにしても、今大陸にある国はどこであっても入国する時にお金を支払う必要がありますから、持っていて損はありませんよ」
「それは昔も同じだったけど・・・。もう、私が心配する必要もないんでしょうけど、本当にあなた達にとって損はしてないのね?」
身を切るような親切は嬉しくない。その心配は本当に無いのかと確認をしてくるサラに笑って頷けば力を抜いて礼を言う。
「ありがとう。ライアンを地下から出してくれたことも、故郷をスタンピードから救ってくれた事も、全部」
「ふふ、辛い時間も多かったでしょうが、これからは二人で沢山楽しい時間を過ごしてください」
もう二人を邪魔するものはないのだからと笑って手を振る。
「また会いましょうね」
「ええ!本当にありがとう!」
「またね!」
二人に見送られて茨のアーチを潜り、森の中を進んで車まで戻ると昼食の準備をして待っていてくれた満たちに迎え入れられた。
「家は気に入ってもらえた?」
「うん、多分ね」
「豪邸過ぎて驚いてたよ」
「豪邸作ってたの?」
「ちょっと豪華な普通の家のつもりだったんだけど」
「細部にまで拘った素晴らしい住まいだった」
その言葉を聞き、茂の感覚との違いがそうさせたんだなと苦笑する。
「みんなもお疲れ様。これから数日はグロスター辺境伯領に向けてひたすら道作りって聞いてるから、休める時にゆっくり休んでね」
労われながら美味しい昼食を堪能した後、四日かけてグロスター辺境伯領の関所までたどり着き、道作りはそこで一度止めて辺境伯に挨拶をした次の日にはすぐに出発となった。
「慌ただしいね?」
「アディ達だけでも残って今後の話をしなきゃいけなかったんじゃないの?」
「それも間違いなく必要な事なんだが、まずは王都に戻ってスタンピードの報告をしなくてはならないだろう」
「辺境伯の話だと、スタンピードが始まった時聖国の上空にカイドウさんが見えたって言ってたからね」
「この世の終わりだと思ったそうだ」
「何も知らなかったら、普通にドラゴンが襲ってきたように見えるもんね」
「こくん」
「もしかしなくても小国側からも見えてただろうな。ミツルの結界が無かったら被害が出てたくれぇだし」
王都でもどんな噂が回っているか分からないと言うアディに、冒険者ギルドでも斥候の得意な冒険者を派遣して様子を見ていたらしいと梅智賀が口を開いた。
「俺たちが聖国にいる間に来てたらしい。急に森が出来て状況が分からなくなったから撤退したんだと」
「アラマキさん、本当に一瞬で森作ったもんな・・・」
「うん」
あんな森が目の前でいきなり現れたらそりゃ逃げるわと全員が納得し、それならば王都に戻って各ギルドも招集しての説明会を開かなければ今後の話もまともに進められないかと言いながら道を作っていく。
「こんなに短時間でこれほどの道をあっという間に・・・」
「それだけのお代はいただいてますしね」
「その支払いでもこちらに損はありませんが、和がダンジョンへ入ることを許可されましたからね。有り余る利益が見込めるので万々歳です」
「規模がすごすぎる」
「特級ダンジョンとか、ギルドと数ヵ国が協力して攻略に向かう案件だぞ」
「入ってすぐにAランクの魔物が群れで襲い掛かって来たからな。準備に相当時間をかけて一階層ずつ数ヵ月かけて挑むレベルだ」
「和以外も全員大はしゃぎで出入りしてたね」
「力加減して戦わなくても地上に影響がありませんからな」
「楽しくてしかたがないんでしょう」
ガーフィールと望がブロックの追加を出しながら笑っているのを聞き、「魔族」と呟いてしまった。
「日程としては順調そのものなんだけど、それでもやっぱり新学期には間に合っても入学試験には間に合いそうにないんです。先生方は先に学園にもどりますか?」
「入試に必要な準備はもう終わらせてきてるから大丈夫だ」
「アツヒロ殿にも協力をお願いして了承を頂いていますし、問題ありません」
「こっちも全員でブロックを作って賄ってんるだから人手は割けないでしょ?」
「ありがとうございます。実際かなり助かっています」
「これでも最短ルートで道を選んでいるんですが、やはり新学期に合わせるのが精一杯ですね」
「それも”みのり屋”ならの話だから。称賛はしても文句が出ることはないよ」
「あるとするなら、道を作らなかった領地の貴族からだろうな」
「今回Sランクの素材が大量に手に入ったからと言っていくらなんでも国中に道を作るのは無理だ」
「それこそ自分たちで稼いで依頼を出せと言い返すのが正論だ」
アディとシリウスの言葉にグレンも大きく頷いているので、そこで意見が合っているのなら問題はないのだろうと、すさまじいスピードで道を作りながら王都へ向かって移動していく。
道中、何も知らない町や村の住民たちに相当驚かれたが、ウォリスとアイリーンが王族がいるからあまり近づかないようにと警護をしながら事情を説明して下がらせていた。
「みのり屋なの!?」
「初めて見たー!」
「子供じゃないか?」
「学園に通ってるって聞いたわよ」
「こんな田舎にまで噂が流れてたんだね」
「一年生の学園祭からみのり屋の噂は途切れたことがないぞ」
「ずっと正体不明の賢者だったものね」
「正体を隠してた時も、今とやってる事は変わってないんだけどねぇ」
苦笑しながら道を作り続け、たまに挨拶へやってくる貴族たちと話しながら十数日。
「王都だ!」
「門が見えてきたぞ!」
「帰って来たって感じするー!」
見慣れた王都の門を見てはしゃぐみんなに、初めての他国への遠征がスタンピードだったのだから相当疲れただろうと声をかける。
「今日はこのままゆっくり休んでね」
「休んでる時間なんかあるか!」
「Sランクの素材が使いたい放題だぞ!」
「今回の報告が終わったらザックの魔石に陣を刻んで魔力を貯めてやらなくてはいけないんだ。休んでいる時間なんかない」
「最高級の水の魔石がシャーリーと相性が良くて本当にラッキーだったよ」
「リチャードは火の魔石だとしても武器に他の属性を使えば問題ねぇからな!」
錬金術師たちが全員休む気配のない事を言っているので、現役の騎士と魔法士達がドン引きしていた。
「せめて寝る時はベッドで寝てくださいね」
「眠気と徹夜ハイで素材をダメにすると後で後悔するからね」
聞いているかは分からないが注意をし、門兵達に挨拶をして錬金術ギルドと商人ギルドのギルド証を見せて通してもらう。
昨日まで無かった道が出来ている事、みのり屋である事、第二王子率いる使節団が一緒であった事に驚かれながら、見慣れた外壁の中へと戻って来た。
「思ったよりも落ち着いてるね」
地震の影響で荒れたと思っていたが、建物の被害はそこまでなかったらしい。
「やっぱ聖国と離れてるとこんなもんか」
「あ、塔が無くなってる」
「塔?」
「塔っつうか、崩れて一部だけ残って塔みてぇになってた建物があったんだよ」
スラム街の奥にあった背の高い建物が無くなっているとジンが指さす方角には、確かに以前崩れかけの廃墟があった。
「耐えられなかったのでしょうね」
「怪我した人とかいないといいけど」
「元々危ねぇから誰も近づかなかったし、大丈夫だろ」
「瓦礫がそのままなのも危ない。スラム街の縮小には丁度いいな」
崩れてしまった建物はそのまま撤去して更地にしようかとシリウスが呟いていると、その更地を買うにはどうしたらいいと首を傾げる。
「買うのか?」
「買える値段ならな」
卒業後は冒険者になるのですぐではないが、店を出したいのだという。
「ただ、俺がずっと店にいられる訳じゃねぇからスラムの誰かを雇って店番させようと思ってさ」
敷地が大きいのであればスラム街の子供たちが寝起きするだけの宿屋のような物を作って提供するのもいいと考えながら腕を組む。
「俺もそうだったし、あいつらも、別に金は稼げんだよ。稼ぎ方を知らねぇだけで」
「それいいね。スラムの子たちって結構しっかりしてる子が多いから孤児院が合わない子もいるみたいだし」
「決まった規律を窮屈に感じるようですよ。能力があると自覚があるならではの感覚でしょうね」
「店番しねぇ奴からも銅貨一枚でも取って飯食わせれば学園に入学する金くらい自分で貯められるだろ」
安全に寝起きできる家があれば稼ぐ力も継続しやすいので、子供でも銀貨を貯められると梅智賀が頷けばガウェインが「なるほどな」と納得していた。
「土地を買う時は保証人が必要になるだろうからな。俺が保証人になってもいいぞ」
「侯爵家の名前出したら一発だろ」
「お前家継がねぇのに勝手に名前使って良いのかよ」
「家を継がなくても第二王子の側近だ。家の名前ではなく俺の名前で通るだろう」
「さりげなく私の名前を使っているな」
「ふふ、錬金術師がやる子供専用の下宿かぁ。面白そうだね」
「もしかして、スラム街の土地って安かったりする?」
「どうかな?更地にする為にも人を雇わないといけないし。でも大通りからは離れてるし、更地のままで良いとかなら安いかも」
「それならあたしも土地買いたい!」
お店を開くのはテントがあるのでいいが、街には店舗を持ちたいとメイナが言うと、アンも土地が欲しいと頷く。
「私は更地が欲しいから、スラム街にそういう場所が出来るなら嬉しいかも。リリーと一緒に薬草園を作って研究もしたいし」
「アンの力を使うなら確かに更地の方がいいな」
「僕もいつかは自分の店舗を持ちたいけど、しばらくは宿屋暮らししながらいろいろと見て回りたいな。ね、ジョージ」
「僕はまだ考え中。ルーカスが生まれたら、もう少し考えがまとまるかも」
「ガークはすぐに家を継ぐの?」
「継ぐっつうか、まだ親父が現役だからな。仕事を教えてもらうのと自分の研究を並行してってとこか」
まずは職人として一人前にならなくては魔導武器も安心して売ることが出来ないと言う皆の話を聞き、王宮の者たちが無言で喜びを分かち合っている。ようやく王都にとどまる錬金術師が出てきたぞと言いたげなアイコンタクトを送り合っているのを見て、そんなに心配しなくても他国へ行ったら皆が王国を恋しがって戻ってくるだろうと現津が呟いた。
「百聞は一見に如かずっていうしね」
「そうですね」
「まだどこの国も錬金術師には冷たいですからねぇ」
「わー!!」
「久しぶりに感じる!!」
「お帰り~」
いつの間にか車の中にいた圧紘に全員で驚き、学園までの道のりの中で王都の現状を教えてもらった。
「いや~、もう本当に、疲れたわ~」
「お疲れさま」
「榊さんに癒されながらしばらく引きこもりたいです」
「引継ぎをしてからならいくらでもどうぞ」
「ありがとうございます!」
「本当にすごいのにね」
「アツヒロさん一人いるだけで街が一つ助かってるもんね」
「なのにあれだもんなぁ」
「そこは普通にありがとうでしょ!」
わめきながらもきちんと情報交換をしてから姿を消した。
「はぁ~、早く王太子が王位を継いでくれないものか」
「継いでもすぐには前王を逃がさないよ」
「陛下は成人してすぐに戴冠式をしたんだぞ。もう休ませてやってもいいだろう」
「引継ぎとか人脈とかいろいろあるでしょ?」
「騎士団長もそろそろ後継者を決めるべきだな」
「部下が逃がしてくれるといいけどね」
大陸の強者を数えたら五本の指に入る騎士団長とか、誰も手放したくないでしょうと
そんな養い子たちと一緒に馬車を乗り換え、アディに後で城で落ち合うと挨拶をして先に帰っていくクミーレルをみんなで見送り、使節団にもお疲れさまでしたと労いの言葉を贈り手を振る。
「私たちも戻りましょうか」
「はい。子供たちもですが、怪我人が押し寄せていないか心配です」
「落ち着けるのはもうしばらくしてからですね」
笑っているフェアグリンと嬉しそうな神官たちを見送った。
「枢機卿も、天の民だって知ったばかりで大変だよな」
「実家の公爵家とどうなんだろうね?」
そんな話をしてひと月ぶりの錬金術師科の塔へと入ったのだが、残っていた生徒たちに囲まれて休むどころか研究する時間を確保できたのは新学期になって少ししてからだった。
「Sランク!!」
「こんなに沢山?!」
「使っていいんですか!?」
「いいよ。でも実際に素材として使うのは上級生になってからね」
「えー!!?」
「当たり前だろ!失敗したら全部ダメになるんだぞ!」
「特級ダンジョンなんか俺たちだけで入れると思うなよ!」
「特級ダンジョンは最初からAランクの魔物ばっかでそれも辛いのにSランクが出てくるまで潜るのも大変なんだよ」
「これは私からのお土産だから、学園と錬金術師科に寄付ってことでここに置いておくね」
それこそ実験に使うまで素材としてどんなものなのか確認してイメージトレーニングをするのも大切だよと言われ、二年生と新一年生たちが叫びながら素材部屋として整えた部屋に入り浸っていく。
「今年の一年生はものすごく増えましたね?」
「はい、過去最大の人数です」
いっきに四クラスまで増えた一年生を見て、教師不足が解消するのはもうしばらくかかるなと苦笑した。
