7.学園生活(続き)
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開拓村の拠点へ向かって三日目、グロスター辺境伯領からやって来た使者と合流することが出来た。
「これはっ、」
「道とは聞いていましたがっ」
キレイに線を引いたかのように景色が変わっている後方を見て固まっている使者を見て、笑っている王国の者たちと誇らしそうにしている聖国の者たち。
「ここまでお疲れさまでした。私たちはこれから朝食なのですが、皆さんはもうお済ですか?」
良かったら一緒に食べないかと満が誘うと、アディにも話がしたいから同席してくれと言われた四名の使者が席に着く。
「本当にスタンピードを、たった半日で終わらせてしまったのですね」
「みのり屋の、まだ聖国に残っている和とその仲間たちが応援に駆けつけてくれたおかげでな」
「そうだったのですか。ではこれから聖国の王都へ向かった時にご挨拶が出来ればと思います」
「ああ、皆気さくな魔族たちばかりだから話はできるだろう。ただ、今はダンジョンへ潜っているので滞在中に戻ってくるか分からない」
タイミングがあえば会えるはずだと言われ、頷いていた。
「和殿の特徴をお教えいただけますか?」
「魔族の夫がいると聞いております。粗相があれば我々だけで弁解が出来る段階まで持っていけるか不安でして」
「素晴らしい判断だ」
「特に和ちゃんの周りには夫のフーさん以外にもゾオン系が沢山いたし、夫じゃない魔族の人も和ちゃんに血が騒いだって言ってたから。本当に気を付けて」
「挨拶でも握手はしちゃダメよ」
「全員既婚者?もしも誤解を受けそうになったら奥さんがいるって全力で誤解を解いてね」
とにかく触るな、馴れ馴れしくするな、異性としてみていると誤解を与えるようなことはするなとアディ以外にも念を押され、四人が神妙な表情で頷いている。
「そんなに神経質にならなくてもいいだろ」
「フーさんに呪われたら王国どころか大陸にいる人間種の男が皆殺しにされるんだぞ」
「カイドウさん達まで怒らせたら大陸が無くなる可能性だってあるじゃない」
「まぁ、本気を出せばな」
「・・・肝に銘じておきます」
誰からも否定が返ってこなかった事に、グロスター辺境伯から来た使者が顔色を悪くしながらスープで体を温めた。
和の特徴と召喚術を使っていない時はありえないくらい肉体が脆いという事を教えられ、今後の王国のためにもしっかりと勤め上げてくれと第二王子にプレッシャーをかけられて見送られる使者の四人。
「可哀そうじゃない?」
「怯えてたよ?」
「あのくらいが丁度いい」
「もしもがあれば本気で危険だからな」
「最初から気を緩めていくよりもずっといいよ」
アディの他にガウェインとローランドの二人もこれくらいで良いと言いながら移動のために片づけを始めた。
この日のうちに開拓村を作る予定地まで移動する事が出来たので、明日からの作業に備えて皆にはゆっくり休んでもらった。
次の日、現津が整地した場所へ皆で目印をつけていく。
「ほう!村とは言いますが、今後を考えてすでに街としての配置にしておくのですね!」
「これからどんどん住民も増えていくでしょうし、商店街を表通りに作っておけばこれからここにやって来た人も分かりやすいですよね」
居住地は表通りから外れていた方が外観も、住んでいる者たちの心の平穏に繋がることもある。
「後は、宿屋はちょっと大きめのものを二つと、教会も表通りの中で一番目立つ場所に、大きめに作ってと」
そうすればこれからやってくるこの街の統治者も住めるし、街で何かあれば皆が集まって話し合いをしたり避難所としても使えると、看板に大きく街の見取り図を描いていく。
「すごいわね。こっちで私に手伝えることってなさそうだし、このまま国境沿いに茨を生やしちゃうわ」
「ここに関所を予定していますから、空間を空けておいていただけますか?」
「分かったわ。微調整は出来るから、関所が建ったら建物にも茨を這わせて隙間を無くすわね」
そうすれば侵入も簡単にはいかないだろうと言い、ライアンに金剛から離れないように声をかけてから森の中へと入っていく。
「皆さんの中から、何かお店屋さんをやってみたくなる方が出て来るかもしれませんし、これから移住してくる人の中にお店を開いてくれる方がいるかもしれませんので、まず店舗だけは作っておきますね」
もしも使わずとも、普通に家として使えばいいと言って建設予定の説明を全員にしていく。
「建物は我々で作業をいたしますので、皆さんは森で食べ物を集めてきてください」
「これからの事を考えて、クルミやどんぐりを沢山拾いましょうか」
「引換券にしておけば畑が安定するまでの間食事に困らなくなりますからね」
「あ、ここに水源があるよ!」
「やった!銭湯作ろう!」
「ルールをきちんと決めてみんなが使えるようにしないとね」
「綺麗に使わないと逆に疫病や感染症の拡散に繋がるものね」
「そこは大丈夫じゃない?神官さんたちってみんな望ちゃんの授業を受けてたし」
至の授業も受けていたから病気が生じやすい環境と回復についての知識はあるだろうと言うと、「おさらいをさせて下さい!」とこの村に残ることが決まっている神官から強い申し出が上がった
「一応錬金術師も三人いるし、ゆっくり皆さんにも分かってもらっていけば大丈夫ですよ」
「そうか、そもそも病気の予防からみんなに分かってもらわないといけないのか」
「医者志望じゃなくても習っておいてよかったな」
「男湯と女湯で別れるだろうし、体の洗い方とか病気の発見の仕方とか、知ってもらわないとね」
というか、今回残る神官の中に女性がいないので、女側の授業が出来るのは自分だけじゃないかとカタリナがため息を吐いて肩を落とした。
「衛生用品を作るのはできるけど、説明とかはマジで任せた」
「俺らがやるとセクハラとか変態扱いされる可能性があるから。男側に授業するのは任せろ」
「私たちがいる間は手伝うわよ」
「子供のうちにしっかり教えておいてあげましょう」
サブリナとビビに礼を言い、人数がいる間に出来る事はしてしまおうと収穫に行く班を男女と子供に分けて授業を行う。
皆がそれぞれ動いている間、茂と現津は自分たちにできる作業に取り掛かった。
現津が地ならしと基礎を作り、区画整備をしていく。茂は完成した均等に並んでいる基礎に向かって収納バッグから出した丸い球を投げていった。
地面に着地した球が開き、まるで久見木細工のように繊細な木工細工が何重にも重なるように大きくなっていく。
「うん!大丈夫だね!中はどうかな?」
「うわー!!」
「またすごい魔導具造ってるー!!」
「中も大丈夫だね。設計した通りの間取りだし、現津さんが作ってくれた貯水タンクと繋げれば水汲みの仕事も簡単になるよ」
「これ!もしかしてテントみたいに戻せるの?!」
「これは戻せないよ。一度使っちゃえばもうこのままだから、」
「それでもすごすぎる!!」
「おまけに美しい!なんだこの紋様は!!」
「木造建築ならではだよね」
「これを一つ購入させていただけませんか!?」
「え、いいですけど、一度開いたら移動できませんよ?」
そういう問題じゃないと錬金術師たちに叫びながら囲まれ、希望者に家を収めた球を手渡した。
「アイテムバッグの応用なのは分かるけど、どうなってるの?」
「木片を、ただつなぎ合わせたとしてこうはなりませんし、」
「一度開いてしまえば戻せないという事は、この中で組み立てているという・・・?」
「え?」
「じゃあ組めるかの確認は外でやってるって事か?」
「そんな事してたか?」
「ならやっぱり”中”でやってるって事じゃん!」
「蜻蛉切さん達の国で寄木細工っていう工芸品があってね、すごくキレイだったんだよ」
あの国の職人さんたちは本当にみんな器用で、伝統的な芸術品が沢山あって見ているだけで楽しかったと次の家を建てていく。
「ほらこの窓とか!この繊細な作りが大好きなんだよねぇ」
「好きだって、作れるかよこんなん」
「茂さんはこういった作業が得意ですからね」
「得意で済ませられるか!」
話しながらも、次々と建ち並んでいく木造建築に圧倒されていると、皆と一緒に収穫へ行っていた蜻蛉切と利刃が戻ってきて立ち止まる。
「久見木細工?」
「この手法で一軒家を丸々、なんと贅沢な・・・」
「やっぱそうだよな!?」
「やっぱりそうなんだな!?」
「こんな繊細で手の込んだ家が当たり前じゃねぇよな!?」
「一部に使われることはあっても、全てをというのはまずないな。神社、神仏に関係する建造物ならばあるが、」
「あったとしても、相当な権力者か富を築いた者が豪遊をするだけの余裕があると見せつけるためにするくらいだな」
「一般人の家!!」
「お前これ王宮に献上してもいいレベルの家ってことじゃねぇか!!」
「まぁ、他国の伝統工芸ですし。前に贈ったセンスとか反物とかも喜んでもらえたので、多分」
「これは、釘を使っていないな。いつの間にこんな技法を学んでいたんだ」
「宮大工の作業を見ていた時だろうか・・・」
「魔族っ、みのり屋を止められるのは知識を貯めこんだ魔族だけだっ」
この技術が使われていた出身地の二人が驚愕しながら建設されたばかりの家を見上げている姿に、王国民が頭を抱えながら魔族たちを恋しがっている。
騒ぎながら作業を続けていると、国境を茨で一周させたサラが戻って来たので何を騒いでいるんだと声をかけると、みんなに群がられた。
ひとしきり騒いで説明を終えた所で昼食に丁度良い時間になったので、皆でみのり屋の車の近くに集まって深めの木皿に盛られたかつ丼を食べ始めた。
「お肉が食べられない方はこちらをどうぞ」
肉の代わりに厚揚げを煮込んでおぼろ豆腐でうっすら固めたものを乗せた皿を受け取り、美味しいと全員で御代わりもしていく。
「言いたいことは分かったわ。私に止められるとは思わないけど」
「確かに職人さんが一から作ったんなら相当なお値段になるし、時間もかかるものだけどね?今回は私が見よう見真似でやってみたなんちゃってなまがい物だし」
「これをまがい物と言っては職人たちが泣くだろう」
「この技術を身に着けるために何十年研鑽をすると思っているんだ」
「一番身近で見てきた人がこう言ってるじゃない」
この国では確かにこの技術の価値は本当の意味では分からないだろうが、それでも素晴らしいものだという事は分かるのだから乱用は気を付けた方が良いと忠告を受けた。
「うーん、ここは商店街を予定してるからいいと思ったんだけど、難しいね」
「サラの言い分も理解できますね。ですがここは新しくできた村ですし、目玉として注目を集めるのもよいと思いますよ?」
何よりサラの茨で囲われているので外部からも守られている状況だと現津が口を開く。
「この街には、今現在技術者がいません。これから新しい家を建てるにしても店を開くにしても、一人の職人を育てるのは時間がかかります」
だから外から来て住みたいと思ってもらう必要がある。
「ですが、一般的な職人は興味がなければ今いる場所から移住を考えないでしょう。それも聖国は今まで閉ざされていた為情報が何もありませんから、わざわざ訪れる者もいないと思います」
しかし、この街並みを見れば何人かの職人は絶対に住み着いてくれるだろうという。
「久見木細工はまだこの大陸で見たことがありません。木造建築も安価で粗末な住居という認識があります。この新技術を解析、習得する為にドワーフの一人でも訪れたら間違いなく噂が広まり他にも数名は引っ越してくると思いますよ」
そうすれば活気の増し方が全く違うものになるだろうと言われ、それは確かにそうだろうとサラも頷いた。
「なら、表通りはこのままこの久見木細工の建物を並べて行って、住宅街は一部の飾りとかにすればいいのかな?せっかく新しい家に住めるんだから綺麗な方がいいと思ってたんだけど」
「あまり価値のある物を無償で渡すのはよくないわよ。それが当たり前になれば他の店で買い物をしなくなるんだから」
これからこの街に来て家を建てる者に対してもハードルを上げているし、茂が建てた家との価格差が大きくなりすぎて後々争いの種になると言うと、王国民も間違いないと頷く。
「家って消耗品で、住んだらその年月だけ古くなっていって価値が無くなると思ってたんだけど・・・」
「この造りならば手入れを怠らなければ数百年は余裕だろう」
「ここにいるエルフなら死ぬまでは住めるんじゃないか?」
「豊の付与が施されているとはいえ木造建築だ。石造りの建物と違って火にも弱ければ劣化も激しい」
住み続けるなら手入れも大変だから頑張れと言われた長寿の種族の者たちが、どう頑張ればいいんだと質問責めをし始めた。
こうしてこの日の内に無人の商店街と住宅街が完成し、誰がどこに住むかは明日明るくなってから決めようと話して広場で夕食を食べる。
「皆さんの家に入れる家具の分も料金はもういただいているので、どの家に住むか決めたらその家に入れられる家具を運びましょうね」
「家が決まった後は畑を耕し、作物を育ててみましょう」
作物の成長過程を現津が魔法で一度見せるので、その完成を目指して自分たちで時間をかけて育てていってくれと説明をしていく。
「畑仕事の説明は子供たちも一緒に受けましょうね」
「でも実際に働き始めるのは教会で勉強を終えてからですよ」
「大人たちも文字の読み書きが出来るように勉強をする時間を見つけなければなりませんね」
「冬なんかの畑を休ませる時期が良いでしょう」
「これから商人たちも沢山来るようになりますから、下手に買いたたかれたりしないように気を付けてくださいね?」
それこそここに移住したいという者が名乗り出た時はきちんと審査をして決めた方が良いと神官たちにも助言をした。
「最初の数年、もしくは十数年は警戒して裏家業の者たちも目立った行動はしないでしょうが、それ以降は聖国が他の国と同じように暮らせると証明が終わった後です。そこからは治安維持も今とは違う方法で目を向けた方が良いでしょう」
今すぐ考えなければならない事ではないが、これから確実に必要になってくる課題だと言われ、神官たちが頷く。
「この問題をどのように進めるか、決定するのは王侯貴族です。ですが、その王命を実行するのは皆さんです」
だからどうしたいか、どうしたらいいと思っているかを言葉にできるように考えることはやめないで欲しいと言われ、住民たちもそれぞれ返事をしていた。
「さ、難しい話もこのくらいにして、新しい街に名前を付けないとね」
「名前、そういえば、ありませんでしたね」
「これからの門出には重要なものだと思いますよ」
それこそセレスタンにもクリストファーにも何も言われていないので、こちらで決めて報告をしてもいいと思うと言われ、皆が顔を見合わせる。
「昔もここに街があって、名前もあったんでしょうけどね」
しかし、その街はもうなくなってしまった。これから新しく街を作り住んでいく皆が付けてもいいだろうと微笑んだ。
「これから自分の名前と同じくらい口にする名前になるでしょう」
良い名前が決まるのを祈っていると言われ、全員が頷きを返した。
