7.学園生活(続き)
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歓迎会が遅れてしまったのでアレな話だが、数日後にはみのり屋と使節団、開拓村へ移住する住民の送別会が開かれる。なので、また郷土料理やパーティー用の料理を作るために漁師たちが小さな船を出しているのを遠目に見ながら、和とページワンが釣りをしていた。
「ここってどんな魚が釣れるんだろうね。この前の魚美味しかったけど、生きてる所見れなかったし」
「異世界だから、見たこともねぇ魚だってのは確かだな」
そう話しながら食料調達をしつつ、これから本格的にダンジョンへ潜るための英気を養っていく。
「って訳で、俺らは聖国に残るわ」
「あたし達は開拓村まで行くけど、ワット達がダンジョン攻略をした後交代で和達と合流するつもり」
和は一度ダンジョンから戻ってきたら数日は休むように言われているので、その間に交代をするつもりだと卒業したばかりの五人が言う。
「マジかー!」
「いいなー!!」
「Sランクの素材採りまくりじゃん!」
「お前らも十分持ってるだろ」
「高ランクの素材なんていくらあっても良いんですよ!」
最低ラインの復興はできたとはいえ、聖国はまだまだ荒れている。おまけに海賊たちが滞在中は今までにない人口密度になる為、勝手が違う事も多いだろう。
「やったー!このテントがあればどこでも店が開けるし研究もやりたい放題だ!」
「おまけにロゴ入り!最高だ!!」
「マジでありがとうございます!!」
スタンピードで手に入った素材と現金でみのり屋の商品を思う存分買いまくった卒業生たちは、成人したばかりの錬金術師とは思えない最高の機材と資料、店舗を手に入れて大喜びだ。もちろん三年生たちも同じ物を持っているのだが、皆にはまだ学業が残っている為王国へ戻らなくてはならない。
「来年のバザーには戻るんで、雇ってください」
「そう言ってくれて嬉しいよ。またスラム街の人たちにも声かけるから、経験者は大歓迎」
「半年近く居てくださるんですか!?」
「邪魔じゃないなら」
「魔法士が多いって言っても、ポーションにも需要ありますよね?」
「あ、使節団に手紙書いて預けたらいいんじゃないですか?」
「商人ギルドとかならすぐに支店開いてくれそう」
「これからの事を考えるなら冒険者ギルドも必須だよな。森に魔物が住み始めれば増えるのは一瞬だろうし」
「冒険者ギルドもだが魔法士ギルドもか。教会がそれを兼任すんなら後からでもいいかもしれねぇが」
「ってなってくると武器と防具を作る職人か錬金術師は絶対必須だな。道ができたとはいえここまで安全に来られるとは限らねぇんだし」
「ここってなんかアンデッドも出やすい土地なんだろ?光属性の魔法ってなればセレスタンさんでどうにか出来んのかもしれねぇけど、今回みたいに数の暴力ってあるからな。付与術士も育てるか連れてこないとじゃね?」
今後の必要な改善案が次々と出され、「やる事がっ、やる事が多いっ」と神官たちとメモを取りながら顔色を悪くするクリストファー。
「まぁ、全部を一編にやろうとする必要はないだろ。まずは支店を開く依頼の手紙を書くくらいだ」
一つずつ片づけて行けばいいと進に言われ、頷いてから手紙を書くために私室へと向かった。
「殿下も大変だなぁ」
「アディ達も、普通の使節団ならしない事もいっぱいやってたし、やっぱり貴族とか王族って大変ね」
「絶対になりたく無いと本音が見え隠れしているな」
「そこまでは言ってないだろ?」
「まったく。まぁいい、ザックと相性のいい素材も、王国への土産もできたしな」
「初めて一人で任された公務でこの成果は素晴らしいですよ」
「ええ、きっと陛下もお言葉をくださいますよ」
「・・・そうだな」
何も知らないウォリスとアイリーンに笑顔で言われ、歯切れ悪く頷いて視線を後ろへ向ける。その本人たちが付いてきている為、とても一人で行った公務とは思えないのだが、こればかりは口にする訳にもいかず肩に停まっているザックを撫でながらやり過ごした。
「これだけの利益があると、来年のバザーでまたいろいろと揃えられそうだな」
「そうだな。現金に替えるのは確かにいいが、これだけの素材となると武具の制作依頼を出した方がよくないか?」
「国宝を造るもよし、個人の戦力、部隊の戦力を強化するもよし、なんでもできそうね」
「せっかくですし辺境伯四家に恩を売っておくのもいいと思いますよ?」
これから何かあった時にも役立ちそうとサブリナがいい、それも一つの手だよねとグレンが賛同する。
本当にしっかりした養い子たちだなと感心され、「ハハハ」と乾いた笑いしか出てこないクミーレル。まるでアディのようにグレタを両手で撫でていた。
「このテントは素晴らしいな。我々もいくつか購入させてもらおう。今後必ず役に立つ」
「はい。それは私も嬉しいです。開拓村への資金予算も計算が終わりましたので、余裕がある分で購入しましょう」
「開拓村への資金はこちらでお預かりします。開墾に必要な物資、居住地、生活必需品のリストです。こちらの購入という事でよろしいですか?」
「はい、確認させて頂きます」
「住居の金額が安いのではないか?」
「材料はいくらでもありますから。石造りの建物ではなく木材にすれば安く済みます」
「運搬もテントがあればそんなに困らないしね」
「豊の付与で燃えにくい加工を行いますので、その点で金額が上がっています。トータルで見ればこちらに利益が出ていますよ」
そんな話をしながら、最終日まで聖国の復興を手伝っていた。
そして、送別会としてささやかながらパーティーが催され、こんなにも晴れやかな気分を味わった事が無いと皆で大騒ぎをしていた。
「・・・」
そんな声を遠くに聞きながら、聖王陛下の寝室で静かにベッド横に座っているライアンとサラ。
「ここに来られるのも今日で最後よ。明日には国を出るわ」
「・・・そうか」
十日などあっという間だなと目を閉じて微笑むと、ライアンを見上げて優しそうに目じりに皺を寄せる。
「ネビュラ、お前をそう呼ぶのは私が最後。そして今日が最後だ」
「ライアンの次にいい名前だわ。あまり関われなかったみたいだけど、貴方(父親)がその名前を付けるくらいライアンを大切に思っていてくれて本当に良かった」
感謝しているとサラに言われ、小さく声をもらして笑いだす。
「憎んできた悪魔が、一番私の心を理解してくれるというのも不思議な話だ」
「そうかもね」
「僕は、どうしてもライアンという名前がしっくりきてしまうけど、でも、ネビュラっていう名前も好きですよ」
やせ細った手に優しく触れて笑いかけると、穏やかな笑顔を浮かべた。
「サラ、生前のライアンとネビュラは顔立ちが似ているか?」
「いいえ、外見が一致しているのなんか髪と目の色くらいよ」
「そうか。赤毛の赤目、」
そう呟きながらだるそうに腕を持ち上げてライアンの頬を撫でる。
「エリザベスと同じ癖のある髪だ。その優しく聡明な眼も、私に似無くてよかったな」
自分に似ていれば、きっと愛したものを守ることのできない男になっていたと、眼を細めて別の誰かを見つめているかのような表情をした。
「
椅子に座っている姿で微笑み、石像になってしまった最愛の妻を示してライアンに笑いかける。
「エリザベスにそっくりなお前なら、どんな事があっても家族を愛すことを忘れず、守って行けるだろう」
だから、血に縛られることなく広い空の中で生きなさいと体から力を抜いてベッドに横たわった。
「・・・僕は、自分が死んだ時の事も、生まれて来た時の事も、覚えてはいないし、」
母親の事も覚えていない。気が付いたら暗闇の中にいて、サラを探していただけだと呟きながらしわがれた手を握る。
「母親似だって教えてくれてありがとうございます。貴方のように、サラに頼るだけじゃない優しい夫になれるように頑張ります」
貴方も母と一緒に見守っていてくださいと笑いかけ、親子で過ごせる最後の時間を共有した。
「貴方の幸せはここにはないのね。仕方がないわ、始まりがあれば終わりが必ず来るものだもの」
そう言って美しい魔女が笑う。
「肉体を癒しても、貴方の内側はバランスを取り戻せなかった。心残りはあれど、もう留まる事はできないわね」
そう微笑み、死人同然に生きて来た一人の男へ魔法をかける。
「貴方も幸せになっていいのよ。大丈夫、子供は親を超えていくものだもの。川の流れのようにしなやかに変わっていくわ」
何かの葉が描かれた美しい紋様が魔法陣のように男を包み、消えて行く。
「今はゆっくりおやすみなさい。お別れの挨拶はちゃんとするのよ?あの子たちにとっても、貴方は大切な親なんだもの」
死神にしては美しすぎる。何も成せない人生を歩んできたというのに優しすぎる。
魔女はまるで救いを与えるように、肉体と魂を繋ぐ糸をほどいていく。
絡まりすぎて、もうどうしようもないと自分でも諦めた感情が一緒にほどけていく。
「おかあさん」
「なぁに」
「好きな人ができたのです」
「ええ、見ていたわ」
とても素敵な恋をしたのねと美しい微笑みを向けられ、満足そうに無邪気な笑顔を返した。
昨夜の宴の余韻が抜けきらない空気の中、アラマキに礼を言いつつお土産を渡して見送った。
そして、使節団へ感謝を述べて開拓村へと送り出す希望者たちを託す。
「開拓村の教会には一時的に我々が残り、正式に務める神官が決まるまで皆と共に生活基盤を整えたいと思います」
「経験上、多少なりとも今回のスタンピードが王国にも影響を与えていると確信していますので、私は一度は王都へ戻り被害状況を確認しなければなりません」
そこで候補者を募り、正式に新しい村に出来た教会へ赴任してもらう。
教会側でも今後の流れを確認し合い、みのり屋と共に王国へと歩き出す。
「いってらっしゃーい!」
「和ちゃんも無理はしないでねぇ!」
「無茶も程々にしてくださいよー!」
「うーん!」
「なんつう信用ならねぇ返事だ」
「おい!お前らもちゃんと見とけよ!」
「はーい!」
フーズ・フー海賊団が返事をしているのを笑いながら見ている百獣海賊団と白ひげ海賊団。そんな大人数で人類未踏の特級ダンジョンへと潜っていった。
王国への道は、とりあえず聖国と一番近いグロスター辺境伯領へと向かって作っていく。
「今更だけど、この道が急に出来たらグロスター辺境伯さん達驚くよね?」
「驚く程度で終わるか」
「相談も無くって所には物すごく不満を持たれると思うけど、元に戻せって方面には怒らないと思うよ」
「費用は全て王宮持ちだしな。文句を言われたら使うなと言える」
「グロスター辺境伯に喧嘩売りたい訳じゃないんだよね?」
ローランドとガウェインに確認をすると、当たり前だと呆れたように返された。
「そろそろ手紙も届いている頃だろ。ザックに地図を見せてグロスター辺境伯の城も教えたらな、とりあえず確認の為に早馬が来るだろうからその時に説明をする」
だからザックがいないのかと、アディの肩が定位置のゴーレムがいない事に納得をしている錬金術師たち。
「これからあたらしい村にいくの?」
「そうだよ。みんなが安心して暮らせる家と、お腹が空かないように美味しい野菜が育つ畑も作らないとね」
「他には何がしたい?」
「国境を守る街になる予定ですし、検問でも作りましょうか」
「プイプイ」
「今まではサラの茨で守ってたからな。これからは人手が必要になるぞ」
「検問は作っていいと思うけど、国境を塀で覆うのはさすがに予算オーバーでしょ?」
それならまた茨で一周させるわと、馬車に揺られながらサラが言う。
「クリストファーのあの感じ、戦争とかそういうのを知らないわよね?」
「知らないでしょうね。聖国に戦争を吹っ掛けるだけのメリットが今までありませんでしたから」
「その原因が私だし、ライアンも戻って来たし、罪滅ぼしで茨を一周させるわ。そうすれば他の国も状況が分かるまでむやみに突っ込んできたりはしないでしょ」
「それは良い案ですね。後で殿下へ手紙を書きましょう」
「そうだ、ライアンくん」
「はい」
「まだ落ち着いてないし、そもそも家もこれからだからあんまり想像ができないかもしれないけど」
人間でいう所の12歳、天の民として外見が同じくらいになるのは60歳。その歳になったら王都の学園へ入学してみることを考えてはどうかと持ち掛ける。
「入学金に銀貨15枚が必要だし、勉強も魔法も使えないと入れないんだけど。いい経験になると思うよ」
「昔は王国ってなかったのよね。どんな国なの?」
「人間族が多いですが、人種差別も無くてなかなか良い国ですよ」
「いきなり学園に入るのを想像するのは難しいかしら」
「そうだな。半年後には学園祭もある。その数ヶ月後にはバザーで学園外に出店もする。その時に様子を見に来ると良い」
「それは良いですね!僕たちもまだ王都にいますし!」
「もしも興味が湧いたら迎えに来よう。コルソンがいれば移動も早いからな」
「、妖精?」
「ああ、俺の相棒だ」
そう言ってどこからか現れた山羊の様な姿をした妖精を見つめる。
「あなた、闇の民の血が入ってたりするの?」
「いいや、俺は純粋な魔族だ。と言っても、先祖のどこかに闇の民がいなかったとは言い切れないがな」
ホーキンスが生まれた世界には闇の民がいたため、精霊種になれないだけ妖精種の血が濃くなった可能性も考えられるのだ。
「闇の民、火の民の次に生まれて来た精霊種ですね?」
「ええ、彼らは妖精や精霊と一緒に生まれて来るんです。なので生まれてから死ぬまで一生を共にする相棒と呼んでいるんですよ」
「自身の陰が精霊の住処か、面白いな」
「火の民は母代樹が自身の弱点として一番最初に生んだという所に誇りを持っていると書いてあるが、闇の民はそういった部分が書いてないな」
「”幻術でか弱い姿をとっている”?どういう意味だ?」
先日渡された母代樹が出て来る本には、種族の特徴なども書かれていたのでそのページを開きながらシリウスが顔を上げた。
「そのままですよ。幼い子供の姿になっていたり、老人、四肢の欠損、病弱、そういった姿をして里の外へ出るんです」
「なんでわざわざ?」
「うーん、闇の民ってものすごく強いんだけど、強いからこそ”力”の重要性について考えるのが好きっていうか、自分たち以外の種族もどんな使い方をしてるのか見るのが好きっていうか、」
「望さんのような方々ですよ」
「ノゾム?」
「優しく慎ましやかに、事を荒げる必要のない時は影ながら見守っているような所がありますね」
「それはさすがにほめ過ぎですよ」
そんな事を考えて行動している訳ではないと苦笑している望と笑い合っているガーフィールを見てから、茂たちへ視線を戻した。
「実際にそんな感じの人たちだよ。見るからに強そうな人には頼りやすかったり、逆に頼りすぎちゃったりするでしょ?」
「”藁にも縋る思い”という諺が出来る程に、本気でどうしようも無くなれば力ないものにも縋ったりするでしょう」
「普段から弱者にも分け隔てなく優しくしていれば、その中に闇の民が紛れていた場合盤面をひっくり返すだけの力を貸してくれるという事です」
「彼らの信条は、善意には善意を、悪意には徹底した無視を、ですからな」
「無視なの?」
「無視だね」
「弱者だからと虐げてきた者が、窮地に陥って助けを求めて来た場合弱者の振りを貫きますよ」
「悪意に悪意で返さねぇだけマシだろ」
「・・・なるほどな」
闇の民も扱いが難しい精霊種だなと言いながら更に本を読みこんでいく。
「もしも学園祭を見に来て、興味が湧いたらバザーにも顔を出してくださいね。保育室もあるので、ライアンくんはそこで同い年くらいの子供と関わるのを経験してみると良いかも」
「サラにその気があるのなら、出店中はアルバイトとして協力してください。出店中の衣食住はこちらで用意をしますし、ライアンの入学金は確実に稼げますよ」
「まったく文句はないんだけど、ちゃっかりしてるわよね。あなた達」
「商売人は”損をしない”が信条ですからねぇ」
「みのり屋の”損”はどのラインなんだ?」
「今回の使節団同行とか、普通の
「和ちゃんがやる気になってくれてよかったよ」
笑いながら道を造り、一度休憩として道から外れた脇に石を積んだ簡易かまどを作る。
「これからこの道を通る人が使うかもしれないし、このまま残していってもいいかな」
「計算上では開拓村から聖国の王都まで徒歩四日の予定ですから、今後も休憩した場所には簡易かまどを作って行きましょう」
「これ冒険者の人たちに喜ばれそう」
「それこそキャラバンとかが来たら大助かりだろ」
「早馬にとっても助かりますよ」
急いでいる時はかまどを作っている余裕もないし、かといって自分も馬も休憩をしない訳にもいかないしというウォリスの言葉を聞き、術師団がちょっと立派な簡易かまどを作ってくれた。
「あ!こっちに川がある!!」
「本当だ!水源とか生きてたんだ!」
「こんな所に川なんかあったかしら」
「多分アラマキが森にした時に向こうにあった川がこっちに流れて来たんだろうな」
スタンピードで元々あった形がもう残っていないようだが、新しくできたんだなと笑って進が水に手を入れてみる。
「匂いも鮮度も申し分ないな。ちゃんと飲めるぞ」
「そんな事まで分かんのかよ」
「お前本当にすげぇな」
「皆さん、水を飲む時はきちんと煮沸してからにしてくださいね」
「シャフツとは、なんですか?」
開拓村で新しい生活をする皆にも、きちんとした生活の知恵が必要だなと頷いて優と望が目に見えない程小さな生き物がいるのだと説明をしていた。
「新しく家を建てると言っていたが、どうするんだ?」
「必要な木材はもう切って乾かしてあるし、道のブロックを並べたりはひなた達が頑張ってくれてるから私が造るよ」
「地ならしも基礎も私が出来ますので、問題ありませんよ」
「シゲルちゃんだけでも万能なのに、」
「アキツのサポートがえげつないよな」
「茂さんの夫なのですから、これくらい出来て当然です」
「夫のハードルが高ぇんだよ」
笑いながら昼食を作っていると、戻って来たザックがアディの肩に止まって足を差し出し手紙を見せる。
「グロスター辺境伯からだ。様子を見るために使者を数名こちらに向かわせているらしい」
「これ見たら驚くだろうなぁ」
「大型の馬車がすれ違えるだけの幅があるもんな」
「おまけに完成までが早いし」
「いつ頃到着するかな。グロスター辺境伯領の途中はまだちゃんとした道とかないし、大変だよね?」
疲れているだろうからゆっくり休憩できるように冷たい飲み物でも用意しておこうかなと動き出す満を見て、こっちもサポートが行き届いていると思いながら手紙に目を落とす。
「状況を見て、開拓村から聖国の王都まで行ってみるそうだ。サラたちが森の中に住むことも了承したと書いてある」
間違っても二人に喧嘩を売らないように自領で厳重に言い聞かせると書かれていたのは口にせず、サラとライアンを見ると安心したように力を抜いて笑いあっていた。
「みんな、これから数日はまた移動が続くからしっかり食べて力をつけてね」
「ブロックを運ぶのを手伝っていただけるのは助かりますが、交代で休憩をしながらですよ」
「魔法の使い方に興味がある子は私と授業をしましょうか」
きっとこれから役に立つだろうから、子供たちは全員。大人は交代しながらと決まり、種族に関係なく授業を受けて魔力の使い方を教わっていた。
「、っ、難しいですねっ」
「魔力の運用は申し分ないのだがな」
金剛に教わりながら足元に雲を発生させようと頑張っているフェアグリンを見て、ライアンも一緒に練習をしてみるが二人とも上手くいかない。
「天の民として生きてきた時間が短すぎるのよね」
「しばらくは先生の近くにいてその空気感というか、感覚を覚えた方がいいな」
なんなら移動中はずっと雲に乗せてもらっているといいとホーキンスに言われ、馬車の外で並走して雲で移動することになった。
二人にとっては今後の事を考えると重要な経験だ。とはいえ、そんな楽しそうな物を見せられて他の者たちが羨ましがらないはずもなく、並走していたのを後方へと移して希望者全員を乗せて移動していた。
「こうやって母代樹から離れた島や大陸へ移住させたんだな」
「間違いないでしょうね」
「言っておくけど、若い天の民は同種族しか雲に乗せられないわよ」
「え、そうなんですか?」
「ええ。他種族をあれだけ乗せられるって、金剛は何千年生きているのかしら」
「あと数百年で5000歳と言っていたな」
「納得したわ」
サラが呆れにも似たため息を吐く。
「そんなに長い間生きていれば、寛容にもなるってもんよね」
「特に金剛は、ずっと他種族の子供を守って来たみたいだしな」
「守るばかりがその子の為にならないと気づいた時には結構経っていたそうよ」
「まぁ、金剛からすれば成人したつっても全部子供に見えるだろ」
「お守りの辞め時が分からなくなっても仕方がないだろうしな」
一部の精霊種以外は食事が必要になるのだから尚更と言われ、何人かが口を押えて「本当だっ」と驚きを現した。
「金剛先生からすれば気づいたら餓死してるとか普通にあり得るのかっ」
「成人しても餓死とか病死はいつでも起こりえるし、」
「おまけに精霊種からすりゃ人間種は全面的に弱いだろ」
「寿命も、短い」
「え、弱くてすぐ死んじゃうから成人後も守ってたらそれでもやっぱりすぐ死んじゃったって事?」
「・・・」
「・・・」
「先生!」
「先生!!」
何故か急に錬金術師たちが泣きながら雲に乗って抱き着いてきたが、分からないままに抱き着いてきた皆の頭を撫でて落ち着かせようとする。その行動にまた何人もが泣きながら群がっていった。
「面白いな錬金術師」
「天の民って性別関係なくみんな母性が強めだよね」
「せめて父性って言ってやれ」
そんな話をしながら初日が終わり、日が暮れる前に簡易かまどを作って薪を拾い皆で温かい食事を食べ始める。
「今日は移動で疲れたでしょ?お風呂に入ったら早めに休もうね」
「明日も移動ですから、あまり夜更かしをしてはいけませんよ」
「開墾の場所に着くまで頑張りましょうね」
辛いだろうがあと数日は耐えてくれとみのり屋に言われるが、今までの生活からすればあり得ない程の待遇と日中の過ごし方をしているので、不満を言うものはいなかった。
それどころか、道を作っている中で少しずつだが確実に完成へ向かって進んでいると実感が湧くのか、作業を手伝ってくれていた者たちの中には村が出来たらどんな事をしようかと、これからについて考えられるようになってきた者もいるらしい。
「せっかくだし子守歌を歌おうかな」
風呂から上がった全員に至が歌えば、皆の中へ光の粒が吸い込まれていく。その度に、どうしようもなかった憤りと絶望の気配が薄れていった。
疲れていた。
疲れていたのだ。
何にという理由はとうに失った。とにかく存在している事に疲れていたのだ。消えてなくなりたいと願って止まなかった。
その奥底に眠っている本当の願いにも気づかず、惨めな自分ごと消えてしまいたかった。
「あなた達の幸せは、まだここにちゃんとあるわ」
見つけ出してくれた。望んでいた救いではなかったけれど、希望を与えてくれた。
この大きな存在を、なんと呼ぶんだったか。
幼い声が、頭のもっと奥の方で嬉しそうに笑っているのが聞こえた。
