7.学園生活
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バザーの最後に学園長のタルパが生まれたというビッグニュースは早々に王宮へも報告され、学園長はそのお披露目で毎日忙しそうに出かけて行っていた。錬金術師科以外の中では「本当に生まれる!」と本気でタルパを作ろうとする者が出始め、バザーが終わったばかりだと言うのに学園は賑やかだった。
そんな中、茂が錬金術師科の四年生と三年生と教師四人だけを一つの教室へ呼んだ。
「実はみんなにプレゼントをしようと思って準備してたんです」
ただ、さすがに術師団全員や錬金術師科全員には無理だったので、他のみんなには内緒にしてねと言って個人用のテントを並べた。
「みんな倉庫用のテントは買うって前に言ってたし、こっちならどこに持って行っても邪魔になったりしないでしょ?」
「え、」
「い、いいんですか!?」
「いいよ。卒業のお祝いで渡そうと思って作ったテントだし」
他の人たちも欲しいと思ってくれそうだったから商品にしただけでと言われ、このテントはそういう経緯で出来たのかと驚きながら手に取って袋を開いた。
「外見も希望があれば少しなら変えられるよ。内装も、まだ時間があるし、この中からだったら変更するのも簡単だし」
そう言って内装のカタログを収納バッグから出すと、白い石や陶磁器、木やカラフルなタイルを使った美しいサンプルにポーの目が輝く。
「このテントっ、本当にもらっていいんですか!?」
「ふふ、気に入ってくれたみたいだね」
もちろんいいよと笑ってみんなの希望を聞いてメモを取っていく。
「この卵型!ほんっとうに可愛いっ」
「卵いいわよね!それも模様も付けてもらえるなんて!」
「果物の形も可愛いよね!」
「俺このブーツ!」
「俺は貝殻!」
それぞれが気に入るデザインのテントを選んだ所で、一度預かって手直しをすると鞄に仕舞った。
「うわー!どうしよう!卒業した後の想像が一気に膨らんじゃった!」
「個人用を二階に出して、倉庫の一階を店舗にすりゃどこに行っても生きて行けるぜ!!」
盛り上がっているのは四年生だけではなく、三年生の皆もだ。準備が出来たらエルフの国にも行きたいし、大陸中見て歩くし、いつか大陸の向こうにある島にも行ってみたいと地図を広げて話し合っている。
「国に定着する錬金術師が少なすぎるっ」
「下の学年からは生徒の数も段違いだし」
「ちゃんと国には戻ってくるって!」
嘆いているアディと教師たちに作った物は錬金術ギルドを通して発表するか国にも利益になるってと慰めた。
「王国を中心に錬金術も錬金術ギルドも盛り上がっては来てるけど、他の場所だとまだまだだろうからな。ぼったくりとか冤罪とかには気を付けろよ」
「みんなのロゴも刺繍で入れちゃっていい?」
「よろしくお願いします!」
「あたしのは、まだ入れないでもらっていい?」
今使っているロゴも気に入っているのだが、まだしっくりは来ていないのと言うメイナに、三年生の分は後日にしようと決めた。
学園祭もバザーも終わったという事は、残るは舞踏会のみとなった。四年生は卒業に向けてのラストスパートをかけていく。
「何か希望はありますか?」
採寸をし、ドレスの希望を聞かれている本人たちは戸惑いながら豊を見る。
「バザーの時も沢山注文を受けてたでしょ?」
「今年はさすがに、忙しすぎじゃないか?」
その言葉に、何故困惑しているのかが分かった豊は問題ないと笑い返した。
「もうほとんど終わってるから、大丈夫ですよ。心配してくれてありがとう」
「ほとんど終わってんの?!」
「だってっ、王族とか貴族とか!沢山来てたでしょ?!」
「士団員とか騎士団とかからも依頼来てたよな?!」
「学園に戻って来てからは授業は圧紘くんのおかげて仕立てに集中させてもらったし、榊が依頼の時に似顔絵と色を残してくれてたから作りやすかったんだよ」
おかげで生地の素材や色を決めるのに時間を使わなかったと言うが、そうであったとしても「あの数を!?」と驚く。そして、豊の仕事が早い事と圧紘がいる事を思い出して納得し始める。
「アツヒロさん一人いることの影響がでかいっ」
実際に圧紘は手伝っておらず、豊が一人で作ったのだがそこは言わずに笑って流した。
「ティアナちゃんとクリストファーくんにも作るんだよね?」
「うん、もう採寸は終わらせてるよ」
オルギウスと学園長からの贈り物という事になっているので、本人たちに請求はいかない。
「二人とも綺麗な金髪だし、肌も白いから何色かの黄色を合わせてグラデーションを作れは映えると思うんだよね」
「ティアナ様さ、いや、なんでもねぇわ」
「何かあった?」
「何かっていうか、バザーの時にちょっと見ただけだから、気のせいだと思うんだけどな・・・」
休憩で他の学科を見に行っていた時なのだが、次が出番の演劇だと言うところで進に話しかけて見に来てくれと誘っていたのだという。
「前からそうかなとは思ってたけど・・・」
「結構ススムにガチじゃね?」
「今更ですよ」
それこそみのり屋と縁組をしようと思っているのなら、結婚していない進を狙うのが妥当ではないかと言う現津に、それはそうなのだがと口ごもった。
「だって、ススムって、」
「でたらめなくらい強いじゃない」
そんな本人に勝たなければ結婚が出来ないと言うのは、もう直球のお断りと同意だと言うので苦笑してしまう。その話を聞いて、ギルが胸ポケットに入っているラビィを撫でながら笑った。
「僕も王族だから分かるけど、最近のティアナ様はなんていうか、普通の女の子なんだよね」
回復魔法が得意だからこそ聖女として担ぎ上げられた王族が、どういう扱いを受けるのかは想像がたやすいと眉を垂らす。
「自国では自由なんてなかったんだろうね」
「そうでなくても、王族に生まれて身分関係なく好きな人と結婚が出来るかもしれないチャンスなんてこれっきりでしょうし」
進にその気がないことは分かっているが、ティアナ本人が納得のいく答えを出すまでは見守っていようとファビオラも笑っていた。
学校全体が舞踏会へ向けて動き出してきたが、錬金術師科の塔では毎日皆が変わらず研究をしていた。
錬金術師科の卒業資格はアイテムバッグを造れることなのだが、それは三年生も含めた四年生の全員がクリアしているので問題はない。
なので、今は卒業後自分が得意とする分野でどうやって生計を立てていくかという方向にシフトしている。
「バザーで思ったけど、こっちの話し聞いてねぇ奴ばっかなんだよなぁ」
「冒険者とかはちゃんと説明を聞く奴も多いんだけどな」
「あと商人な」
「魔導具の仕入れとか、説明できなかったら向こうも大損するからな」
「問題は貴族か」
「頼むから貴族から逃げ回るような事はするなよ」
「しねぇよ。しねぇけど、うるせぇんだよなぁ」
「化粧品を売る時とかも気を付けた方がいいわよ」
使えば使っただけキレイになれるって勘違いして皮膚がただれるまで使ってクレームとか最悪とカタリナがため息を吐いた。
「化粧品って言うのが悪いんじゃねぇか?」
「もう薬だって言おうぜ」
「なんで薬は飲み過ぎたらダメだって分かんのに、化粧品ってなったとたん大丈夫だと思うんだろうな」
「そこはキレイになりたいって思う人が多いからじゃないかな?」
「それは分かるんですけど、」
こう、健康になりたいって願ってる奴と、がむしゃら具合というか、躊躇のなさが違うっていうかと口ごもる。
「うーん、キレイじゃなきゃ愛されないとか、見てもらえないとか、もしくはキレイじゃない自分じゃなきゃ認められないとか?そういう強迫観念みたいなもので視野が狭くなってる人って一定数いるからねぇ?」
「なんでそうなった・・・」
「理由はそれぞれじゃない?」
「権力に関わる部分もありますし、貴族女性にそういった考え方が多いのは事実かもしれませんな」
望に会いに来ていたガーフィールも笑って話に加わり、昔美しさに拘り過ぎて街中の若い娘の生き血で入浴をして処刑された貴族がいたと言われ、全員がドン引きした。
「そこまで行ったら、もう狂気だろ」
「それほど”美しい”事に価値を見出す方がいるという話ですよ」
「何事も程々が一番だな」
「ああ」
「あたしも女だけど、共感はできそうにないわね」
「男もだから安心しろ」
殺人までして美しさを保とうとしてる女は怖すぎて誰も近づかねぇよとレイモンドが返していた。
そんな話をしながら、ダンスの時間になったので皆で練習用の教室へと向かう。中に入るとすでに特別講師となりつつあるロレーヌ伯爵夫人がひなたに案内されて中にいたので、皆で一礼してから教室の中へと入った。
「今回もご協力ありがとうございます。エミリー様」
「みのり屋も三年生になり、卒業も近づいてきたという事で正式に教師にならないかとお声がけを頂きましたよ」
「そうだったんですか?」
ではこのまま学園の教師になるのかと聞くが、自分は王族の家庭教師なのだからそれは無理だと苦笑する。
「ですが、この時期だけの追加人員としてなら構いませんとお答えいたしました」
必要なマナー講師には他にも心当たりがあるので何人か推薦することもできると笑うと、一、二年生が残念そうな声を漏らした。
「エミリー先生の授業分かりやすいのに」
「なぁ」
「あなた達はまず、言葉遣いをマスターなさい」
そういう基礎的な部分がにじみ出る物だとため息を吐きながら苦笑し、ステップのおさらいをしようと授業を開始した。
「茂、卒業式が終わった後すぐに聖国へ向かうのは変わらないか?」
舞踏会を二ヶ月後に控えたある朝、錬金術師科の塔にある自室から出てきた進が話しかけてきた。
「うん、四年生のみんなも卒業旅行のつもりでついてきたいって言ってたよ」
アディも卒業して成人が近いということで、王族として正式にオルギウスの代理でクリストファー達と一緒に聖国へ向かう使節団を編成しているとも言っていたなと思い出しながら呟く。
「前に話してた感じなら、クミーレルさんのお家の人たちも一緒に来るだろうし、今頃舞踏会の準備もあるから忙しくしてるかもね」
「そうか、なら間に合うかな」
「何かありましたか?」
「あー、どういう状況なのかがよく分からないんだ」
だがダンジョンの中で動いているモノが活発化していると言いながら座ると、モネが紅茶をすぐに運んできた。
「もしかしてスタンピード?ダンジョンの活性化ってそのくらいしか思いつかないんだけど」
「多分そうだろうな。初めて聖国に行った時からデカいダンジョンがあるとは思っていたが、なんか上から蓋がされてただろ?」
「そうですね、”蓋”に関しては聖国全土に言える物でしたが」
「800年だからなぁ、長持ちしたな」
「現状を見る限り、その犠牲が報われているとは思えませんでしたが」
「犠牲があった事も忘れてんだろ~?」
モネとカリブーに「そうでもないさ」と笑い返す。
「これからどうなるかは分からんからな」
笑っている進に、モネの表情が少しだけ柔らかく変化した。そんな話をしていると、他の皆も起きてきて朝食を採るために食堂へ移動する。
「ススム様!おはようございます」
「おはようティアナ、クリストファー」
丁度ティアナ達も食堂へやって来た所だったので、手を挙げて返事をすると後ろにいる護衛達も会釈で応えていた。
「やっぱりススム狙いってるっていうか、」
「あれは本気で好きなのかな?」
コソコソと話している男子たちに、カタリナとメイナ、アンも頷いて同意する。
「でもよ、魔法士科と騎士科ってどこで関わるんだ?」
「二人は他の学科にも参加するのを許されてるでしょ?」
「ああ、そこで惚れたのか」
「かもね」
オークの群れを倒した時にはもう気になっていたみたいだし、いつかまでは分からないがと言って自分たちの食事をトレーに乗せてテラス席へと向かった。
