7.学園生活
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次の日、みのり屋のテントの周囲には人だかりができていた。それ自体は毎回の事なのだが、入口にかけられた看板を見て今日は自分にとってあまり関係がない店だったと落ち込んで帰ろうとしていた者たちも、足を止めて外席に座っている子供たちへ視線を向ける。
「はーい!みんなお待たせー!」
テントの中から運ばれてくるのは、見たこともないお菓子たち。
「これは体にいい野菜ジュースですよ」
「これは練り切りっていう甘いあんこで作ったお菓子だよ。この飾り紐にお守りの付与がしてあるから、食べ終わったら身に着けてね」
「私が作ったのは飾り切りしたフルーツ飴!」
「キャー!!」
まるで薔薇のように切られたイチゴを飴でコーティングした棒つきの飴を手に悲鳴のような歓声をあげる子供たち。周囲で見ていた大人たちも、その足元にいる街の子供たちも眼を輝かせていた。
「せっかくのお菓子屋さんだから、ちょっと豪華にプリンアラモード。花火は危ないから、触らないでね?」
「すごいっ、火が花のように!だから花火!」
「私はパフェ~」
「キレイ!!」
「でかい!」
「私が作ったのはフォーチュンクッキーよ!」
「優先生が作ったらマジもんの”占いクッキー”だよね」
「魔女のフォーチュンクッキーは的中率120%だ」
「私はこれ!」
そう言って茂が持っていたトレーを子供たちの前に置く。
「これで君も錬金術師セット!」
「ねる〇る〇るねだ!!」
「転弧くんも食べる?みんなも見ててね。まずこのスポイトで粉に水を入れて、グルグル混ぜます。そして、」
「なんだこれ?!」
「雲になった!」
「えええ?!」
子供たちだけでなく神官もアルバイトの大人たちも驚く中、小瓶に入っていたカラフルな飴の欠片を皿に出して水色の雲のようなものに付けて見せる。
「これで完成!みんなもやってみて?」
「キャー!!」
「子供ってとりあえず叫ぶよね」
「愛らしい事だな」
「うめー!!?」
「なんの味か分かりませんがっ、美味しいですね!?」
フェアグリンも子供たちと一緒に騒ぎながら食べていて、豊の練り切りに付いていた飾り紐を子供たちの手首や足首、髪の毛などにつけてあげていた。
「みんなの反応も上々だね!」
「これならいろんな人が来てくれるかな?」
「今日のおやつの時間は他にも美味しいもの出してあげるからね!」
「キャー!!」
「やったー!!」
子供たちの仕事はここまでなので、そのまま保育室へ移動してもらっていると、帰りかけていた者たちもテントの中へと入って来てくれた。
「すげぇー!!?」
本日のメニュー「菓子屋」
店内に入れば壁一面に積み上げられた色とりどりの飴やグミが眼に入り、さらにいくつもある棚には芸術作品としか思えないお菓子が陳列されている。
「いらっしゃいませ。お持ち帰りですか?店内でお召し上がりでしょうか?」
榊がカウンターに座り、商人も冒険者も、魔法士、貴族、大人、子供、誰もが眼を輝かせながら店の中を見回している客に声をかける。すると、至が紐を引いて壁際に設置されていた鐘を鳴らした。
「これから満ちゃんの飴細工の実演を始めまーす!」
「飴細工?」
それはなんだと、舞台のように一段高くなっている場所に立った満に注目が集まった。
そして、誰もがその小さな手で作られる動物や植物、魔物に釘付けになっていく。
「はい、完成」
「わー!」
「これっ、食べられるの!?」
「もちろんだよ。飴だからね」
「今作った分はこちらで販売いたしますねー!」
「次は何を作ろうかな。何か作って欲しいものはありますか?」
リクエストを募ると、子供も大人も全員が手を挙げていた。
「300gですね。少々お待ちください」
「これ、グミってやつ。なんでこんなに色が違うんだ?」
「それぞれ味が違うんですよ」
「色と同じだけ!?」
「はい。この飴の詰め合わせも色別で味が違いますよ」
缶に入っているので水にも強いと、緑色の缶を振って見せると固い音が響いた。
「へー!この栓をすれば食べかけでも水にも強いんだ!なら一つ買おうかな」
冒険者の女性が一つ買い、その場で栓を開けて手の平に出して見るといくつもの色の飴が出てきた。
「うっまー!」
「今のオレンゲ色だったが、もしかしてオレンゲの味だったりすんのか?」
「うん!オレンゲの味がする!」
「面白れぇな。この白いのってなんだ?」
「それはミルンですよ。暑い日とか口の中がスッキリして美味しいと思うんですけど、あのスースーする感じが苦手という人も多いですね」
うちのみんなも、最後まで残して他の人にあげる者もいると笑っていたので、買った女性冒険者が何度か出してみて白い飴を見つけると、これかと指でつまんでいたので食べてみるか?と聞いてみる。
「作った時にできた欠片です。こちらならすぐになくなると思うので、苦手だと思ったら呑み込めますよ」
皆さんもどうぞと、他の客たちにも色んな味の飴の欠片を差し出すと、子供並みに大喜びで手を伸ばしていた。
「スゲー!本当にミルンの味だ!!」
「これはいいな!」
「うげーっ」
「やっぱり好みが分かれますね」
好きな人は本当に好きなんだがと笑いながらミルン味の飴だけが入っている瓶を見せると、何人かの大人が購入していく。多分貴族だろうとは気が付いたが、折角お忍び姿で来てくれたので礼を言っておまけも付けておいた。
オルギウス達もイーラとナルを連れてやってきて目を輝かせながら何をどのくらいずつ買うかと相談していた。
「300gってこんなに少なの!?」
「こんなのすぐに食べちゃうよっ」
「甘未は高級品なんだから当然よ」
母たちに苦笑され、そうだったのかとより真剣に何をどのくらい買うかと話し合っている幼い二人に笑っていた。
「これはなに?どうしてこんな所に宝石なんて、ディスプレイ?」
「こちらは琥珀糖、こちらはゼリーですよ」
「これも菓子だったのか!?」
他のお客もずっと宝石だと思っていたらしく、似せて作ったが本気で勘違いされるほどだったとはと満が笑いだす。
「こちらは贈り物としてや、毎日一つずつ違う味を食べて楽しんでいただくのを想定して作ったものなんです。ここに味の名前が書かれていますので、それを見て頂ければよろしいかと思います」
「琥珀糖とゼリーは触感が違いますので、同じ味の物だとしてもハッキリ違いを感じられると思いますよ」
「そうなのね!」
ケースは仕切りのついた箱で蓋がガラスになっており、食べ終わったらそのまま本当に宝石を入れる事ができる出来栄えとなっている。この箱を職人に注文したと考えても安いではないかと、王族たちが自分用に購入をしている後ろでは、多分お忍びの貴族たちもあれをいくつ欲しいとつむぎ、ひなたに耳打ちをしていた。
「綺麗・・・、本物と言われても信じてしまいそう」
「ふふ、琥珀糖の欠片でしたらお出し出来ますよ」
小さな欠片が入った籠を差し出して一つ指で割って見せる。指で簡単に割れたのを見て、本当に石ではなく食べられるお菓子なのだと理解した者たちが恐る恐る口に入れて驚いていた。
「なんだこの食感っ」
「クシャって言った!」
「表面が固いだけで、中はこんなにも滑らかなのか!」
味も色々あって面白いと気に入ってくれたようだ。王族はこのまま店内でも食べていくというので、席へ案内する。もちろん、ミッシェルとヘレンもいるので隣の席を案内したのだが、そんな気遣いをしなくても店内には魔法士団員や騎士団がお忍びの姿で散っていた。
仕事中とは思えない、全員童心に返ったかのような表情をしていたので心配にはなるが、そこは仕事ができる人たちなので余計なお世話だろう。
「僕錬金術師セット!」
「私も!」
「私もそれにするか。後”健康にも美味しい野菜ジュース”とプリンアラモードを」
王妃たちの注文も取り、準備が出来たものからテーブルへ並べていく。
『それではこちらの”これで君も錬金術師セット”のご説明をさせて頂きます』
つむぎが混ぜ方の説明をしてると、ひなたが練りきりとお茶を運んできて飾り紐の持ち帰りを勧める。
「これがフォーチュンクッキー?このまま食べていいのかしら」
『中に占いの結果が入っていますので、一度手で割っていただくのをお勧めいたします』
クッキーも美味しいのでその後食べてみてくれと微笑んで戻っていく。
「色が変わった!すごい!!」
「雲になった!!」
「口に入れるとすぐに消えてしまうが、飴がよい食感になっているな!」
幼い娘息子と一緒にはしゃいでいるオルギウスの隣で、マリーがフォーチュンクッキーを割って中から出てきた小さな紙を開いた。
「これから数ヶ月の内に子供の頃からの夢が叶う。期限まで書かれてるなんて、」
しかし、子供の頃の夢とは何だろうかと首をかしげながらクッキーを食べてみると、ジシャーの少しピリッとした味がアクセントの美味しいクッキーだった。これは持ち帰りたいと好みの味に顔を綻ばせるその後ろでは、ヘレンも同じようにフォーチュンクッキーを割って占い結果を読んでいた。
「一年と数ヶ月後に忘れられない幸せが訪れる。なんのことでしょうか」
「結婚か何かではないか?」
「私が結婚で喜ぶと思いますか?」
「それだけの相手に出会ったのなら私が持っている酒の中で最高の物を贈ろう」
「同じセリフをお返ししますよ」
お互い次代を残せと言われながら逃げ回っている身なので肩を落として見せた。そんな会話をしていると、テントの中がまた騒がしくなる。
「わー!どこを見てもお菓子の山だ!」
「見て!お話の中に出てきたお菓子の家まであるわ!」
「まぁ!なんて可愛らしいのかしら!」
「三人ともっ、別々に走らないでっ」
養い子に振り回されまくっているクミーレルにいらっしゃいませと声をかけると、まさかお菓子屋さんでさえこんな事が出来るなんて驚きですよと苦笑しながら店内を見回していた。
そして、同僚と上司一家がいる事に気が付いてまた苦笑してから、三人に先に食べてから見て回ってはどうかと話しかける。
「勢ぞろいね」
「休憩時間に被るなんてね」
「ミツル、あのお菓子の家は買える?」
「売り物ですよ。三日以内に食べ切られそうですか?」
それなら安心して売ることができると言われ、家族で食べるから大丈夫よとビビが笑うと二つ隣のテーブルで幼い二人の目が輝いた。
「それならバザーが終わった日にお渡ししますね。そこから三日が消費期限だと思てください」
「まぁ嬉しい!ありがとう」
礼を言ってメニュー表を四人で眺めながら別々のものを頼んで、どんなお菓子なのか見せ合おうと話し出す。
「すっかりお父さんが板につきましたね」
「ははは、そう見えるのなら光栄ですよ」
ちょっとくたびれてはいるが、初めて会った時よりも血色のいいクミーレルに笑って注文を取った。
「ありがとうございました」
最後のお客を見送り、黒板を下げて扉を閉める。
「みんなもお疲れ様、これからお店の中を宿に戻すから、その前に好きなお菓子を二つまでなら選んでいいよ」
「いいんですか!?」
「うん。夕飯の後にデザートも出すから楽しみにしててね」
子供同士でどの商品にするかと話し合っている隣では、大人たちもどれがいいかと話し合っているので笑いながら店内の片づけをした。
「でもお菓子を選んだら先にお風呂に入ろうか」
「今日も沢山汗をかいたものね」
「皆さんも入って来てくださいね」
「みのり屋はずい分、綺麗好きなんだな」
まさか毎日風呂に入らされるとは思わなかったと言うスラム街の大人に、去年も手伝いに来ていた子供たちが接客業は身だしなみを整えるのも仕事だと言っていたので笑ってしまった。
食後にプリンアラモードを出すと全員が喜んでくれ、満も嬉しそうだ。
今日も寝るまで榊の朗読を聞くのだが、子供たちが寝転んだラグの近くで三国とモコが身を寄せ合いキスをするように額や頬を唇でパクパクと触れ始める。桃はすでに眠そうに目をこすり、茂に抱っこをねだって寝るスタイルに入っていた。他のホムンクルス達もリラックスしているその姿に、テント内の雰囲気も穏やかなものになっていく。
お話が終わり、本を閉じた榊の周りではほとんどの子供が寝息を立てていた。
「おやすみ」
欠伸をしている子に笑いかけ、大人たちが寝てしまっている子供たちを抱き上げてベッドへと連れて行く。
「明日もよろしくお願いします」
きっとまた忙しくなるだろうからと言われ、大人たちも緩やかにやってきた眠気のまま部屋へと消えて行った。
次の日、何屋をするか教えられた子供たちが今日は忙しくなるぞと朝食を食べる量も多くなっていく。
「やっぱり一回経験してると頼もしいねぇ」
「だって!去年街中の人が来たんじゃないかってくらい中に入ってきたから!」
「今年もお客さん沢山来てくれるかな」
笑って食事を終え、休憩の順番を確認して塩タブレットと飲み水の入ったボトルを全員に持たせる。
「水を飲んでる時にお客さんと打つかってかけちゃったりしたら大変だから、喉が渇いたら壁際に寄ってから飲んでね?」
「水がなくなったらひなたかつむぎに声をかけるんですよ」
御代わりを出してくれるからと言うと、全員から揃った返事が返ってくるので統率が取れているなと笑う。
「じゃぁ、今日も一日元気に頑張りましょう!」
「おー!」
本日のメニュー「錬金術師の部屋」
既に開店を待っていた客たちから歓声が上がり、開いた扉へと走り出す。
「走ると危ないですから、ゆっくりとご覧くださーい!」
「お探しの棚までご案内いたしまーす!」
「何かありましたら従業員にお声がけくださいねぇ!」
そう声をかけていると、カウンターに座った茂に早速冒険者のパーティーが声をかけてきた。
「いらっしゃいませ。今回も毎日来てくれてありがとうね」
聖国で知り合った獣人の冒険者に声をかけると、この日の為に一年頑張って金を貯めてきたからなと全員で笑っていた。
「今年こそテントを買うんだ!」
「ふふ、来年もバザーに参加するつりだから、あんまり無理はしないでね」
「これよこれ!この化粧品よ!!」
「これ、・・・なんて書いてあるんだ?」
「こちらは毛生え薬の入ったシャンプーですね」
「毛生え?!」
「はい、頭でもいいですし、全身に使えますよ」
人間族なら頭部、獣人族なら全身、気になる部分は人それぞれですからと説明していると、隣に並んでいた物を手に取った女性たちから声が上がった。
「こっちは!?脱毛って書いてあるけど?!」
「こちらは毛穴から毛根を溶かして毛が生えてこないようにする薬です」
「除毛は分かるが、あんた女だろ。毛生え薬なんてよく思いついたな」
「女性だって髪のボリュームが減ると悲しくなるんですよ」
私もいつかお世話になる日が来るかもしれないと14歳の茂が言うも、その後ろでは男女関係なく飛ぶように売れていった。
「あったー!保存食だー!!」
「もうこれのない人生なんて無理だー!!」
「テントだ!やっとテントが買える!!」
「なんか増えてない!?」
「はい、こちらは小型化したテントになります」
室内も他のテントに比べて一番狭く、リビングと寝室を区切ることもできないワンルームとなっている。とはいえしっかりキッチン、風呂、トイレも完備されており今までのテントと使い方は同じ。
「今までのテントをお使いの方々も中で広げられるだけのサイズに設計しています。狭くした分お値段も抑えられたので、外観に拘ってみました」
テントを袋から出すと、カラフルなキノコに扉が付いているテントが建っていた。
「可愛い!!」
「小人の家みたい!!」
「他にも松ぼっくり、果物、カボチャなどの野菜、貝殻、ブーツ、ティーポットなんかがありますよ」
袋に刺繍されているデザインのテントが出てくると説明し、室内も案内していく。
「倉庫型とロッジ型のテントをお持ちの方は使用する人数も多くなることもありますし、何より個室がありませんからね。ベッドを入れれば寝室としても使えますし、このままお家の中で広げれば書斎としても使用できますよ」
「マジかー!!」
「おまけに他のテントより安いー!!」
どうする!?来年も出店してくれるって言ってたし今回は大きい方のテントを先に買って、また来年金を貯めて一人用テントを買うか!?と騒ぎながら相談を始める冒険者たち。
そんな冒険者たちを横目に、商人たちは迷いなく倉庫型とロッジ型を購入していく。
「いくつまでなら大丈夫ですか!」
「おいくつをご予定ですか?今年はそれなりに数をご用意できたと思うのですが」
というか、この金額の買い物をポンポンできるのは本当にすごいなと感心し、購入したテントの動作確認と使い方の説明をするため奥のスペースへ案内した。
「特級ポーション!」
「これが一本あるだけで安心感が違ぇよな」
「すまんが、魔物の解体本は何冊まで買える?」
「同じ本を何冊も買うんですか?」
アルバイトの子供が驚いていたが、他のギルドの分が欲しいんだとギルドマスターが言うと納得した後「そうでしたか、驚いてすみません。確認してきます」と一礼してから近くにいた優に聞きに行く。
「今の対応は良かったわね」
相手に何を思ってるのか伝えるのも、きちんと一礼してから確認に来たのもとてもよい接客だったと頭を撫でてからギルドマスターと話し始める。
「学ぶことが多いな」
「?」
「いや、こちらの話だ」
それを見ていたオルギウスが笑ってヘレンに返しながら店内を歩き出した。
「すまないっ、すみません!」
カウンターに座っている茂に声をかけてきたのは、多分街で工房を開いている錬金術師。
「これを!これを見てもらえないだろうか!」
「こちらは、研究ノートですか?私が見てもいいんですか?」
「研究に行き詰ってしまって、そもそも造りたい物の工程が間違っているかもしれないと悩んでいたんです」
だから意見が欲しいというので、遠慮なくノートを開いてみる。当たり前のように暗号化されていたが、錬金術の知識があれば読み解けるものだった。
「なるほど、よくここまで解明しましたね。確認なんですけど、造りたい物ってこれで合ってますか?」
自分のバインダーを開いて一枚の紙にイラストを描くと「そうです!それです!」と大きく頷くので、そのまま研究ノートを横に置いて紙に茂の感想を書き込んでいく。
「この研究で大丈夫ですよ。もちろん他にもやりようはありますけど、ここまでご自分でたどり着いたんですからこのまま進めても問題ないと思います」
ただ煮詰まっているというのはここの詳細を把握していないからだろうと書き込んでいく計算式に、「そうか!」と歓喜の声を上げていた。
「他にも難しい素材があると思いますが、その点を一つずつ解決していけば間違いなく完成しますよ」
これからもお互い頑張っていきましょうねと、ノートにメモを挟んで返すと泣きながら握手をして帰っていった。
「買い物をしていませんでしたが、良ろしかったんですか?」
「いいんですよ。同じ錬金術師としてお話が出来て嬉しかったです」
話しかけてきた商人ギルドのギルドマスターに笑って「いらっしゃいませ」と返す。
「お探しの物はありましたか?」
「なぜ一年という時間がありながら、ここの商品を買い占められるだけの金貨を稼がなかったのかと嘆いていたところです」
「そのお言葉は商人冥利に尽きますね」
それも商人ギルドのギルドマスターに言わせたとなれば拍が付くと言えば、笑って購入分のメモを渡してきた。
「買占めが出来なかったなんて、謙遜ですね」
「ギルドマスターの会合で貴女にその言葉を言わせたと自慢して回りますよ」
笑いながら現津に契約書の制作を頼み、ひなたを呼んでこのメモにある商品を全部揃えておいてくれと渡す。
「ご準備が出来ましたら奥でご説明いたします。ひなたにそのままギルドまで送迎をさせますので、ご安心ください」
「ありがとうございます。去年は無かった新商品が多くて、身を切るような思いで絞った甲斐があります」
「ふふ、これからも精進してまいります。来年からは今年の卒業生が活躍していくでしょうから、商人ギルドも錬金術師ギルドも、より忙しくなりますよ」
「それは嬉しい悲鳴ですね。まさかギルドマスターになってから、また商売の熱に浮かされる日が来るとは思いもしませんでした」
まるで商売を始めた若い頃を思い出すと言って、現津から契約書を受け取ると笑って茂と握手をする。
「これ以上貴女を一人占めしていると錬金術師たちから恨みを買いそうですので、また」
ギルドマスターが去った後は、カウンターに錬金術師の列ができた。そして自身の研究書とみのり屋の本を開いて一人一つずつ質問をしては後ろに並ぶという事を繰り返し始めた。
