7.学園生活
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「シゲル殿!見て下さい!!」
クミーレルが掌で包んでいた物を見せてきた。そこには立派な二枚貝があり、種類でいうなら真珠貝だ。
「生まれたんですね!おめでとうございます!」
「ホムンクルス!?」
「もう生まれたんですか!?」
「早!!」
クミーレルさんもこういうのと相性がいいのかと三、四年生や教師も集まって来てクミーレルのホムンクルスを見つめる。
「貝だ、これ他の貝と一緒にいたら見分けつかないよ」
「造った本人にしかそういう繋がりって分からないからね」
「どんな能力があるんですか!?」
嬉しそうに笑って貝を撫でて呼びかける。
「グレタ、皆さんにご挨拶ができるかい?」
パカリと貝が開き、中から大粒の美しい真珠が覗くと七色に輝き、クミーレルの隣にもう一人のクミーレルが現れた。
「すごい!アツヒロさんみたいな事が出来るんですか!?」
「いいえ、これは幻術ですよ」
「あ!本当だ!」
触ると手が貫通したのを見て、なんて完成度の高い幻術なんだと全員で騒ぎ出す。
「アキツくんの幻術みたいなこともできますか?」
「ああ、グレンとビビはすごかったもんな」
その特徴を説明すると、グレタの真珠がまた光る。すると二人の姿が変化した。
「すごい!成長した姿っぽい!!」
「もうちょっと幼くできる?見た事ないと難しいかな」
「ビオラを参考にしたら出来るかしら」
「おお!店やった時のまんまだ!」
「出来んだな!?」
「グレタすごくない!?」
「私達も出来ますか?!」
二人の近衛騎士も出店時の特徴を説明すると、その通りの姿になったのでこれはすごいとビビの侍女たちと共に驚いていた。
そう騒いでいると、現津がグレタに幻術を解くように声をかける。
「なんだ?」
「何かあった?」
「何でしょう、今は授業中のはずですが」
その言葉と共に、進が教室に入って来る。
「どうしたの?誰か怪我とかした?」
「いや、そうじゃない」
国境の近くにある森にオークの群れが近づいているから狩りに行ってくると、まるで世間話をするかのように話し出した。
「角煮マンが食べたい」
「食欲にまみれているな」
「オークの群れを食料と捉えられるのが、さすがですね」
落ち着いている進に、クミーレルも冷静に返していた。
「群れってどのくらいの規模?冒険者ギルドに応援を依頼しなくても大丈夫?」
「あれくらいならわしと天心だけで大丈夫だ」
「天心くんも?それならオークジェネラルとかいるんじゃない?」
素材が欲しいと言った茂の言葉に全員が目を見開いた。
「騎士団を集結して討伐に当たる魔物じゃないか!!」
「オークジェネラルが率いる群れとか!一人でどうにも出来ないよ!!?」
「そんな事ないだろ。お前らだってもう身体強化使えんだし」
「お前と一緒にするな!」
とにかく直ぐにミッシェルに知らせると手紙を書いてザックに持たせたアディ。窓から飛んでいく姿を見送り、どの国境近くなんだと聞きながら国が大打撃を受けるかもしれないと難しい顔をするギルが、クミーレルたちと話し出す。
「冒険者ギルドにも応援を依頼しましょう!今からどれだけランクの高い冒険者パーティーが掴まるかは分かりませんが」
「そうしよう。騎士団の準備が整うまでの間斥候として様子を見てきてもらわないと」
そう話し合っている姿を見て、ファビオラが茂を見下ろした。造ってもらった杖の役目を果たす魔導武器のネックレスに触れながら。
「"みのり屋"が討伐に協力してくれたら、どのくらいの被害で済むかしら」
「討伐に参加をしていない方々、という意味でしたらまず被害は出しませんよ。参加者までの話しをするのなら、最小限に収めるよう尽力致しますとしか言えませんが」
「それはエリクサーの使用も込みで?」
「もちろんです。回復の出来る者も皆でサポートさせていただきます」
四肢の欠損さえ治せる現津がいて、完璧にエリクサーの調合ができる茂がいる。これだけでも凄まじいというのに、みのり屋には他にも回復の出来る者が数名いる。怪我を治せる望はもちろん、傷ついた心さえ癒せる至、逃げ込める場所を安全に維持できる満。
「では、王太后としてみのり屋に依頼を出すわ」
国に被害を出さず、討伐に参加している者たちにも尽力する事。
「拝命いたしました」
王国で最上級を示す礼をする茂に微笑みかける。
「私は一度王宮へ戻るわ。騎士団への報告もあるし、ビビっていう好奇心旺盛な女の子にも声をかけてこないと」
その言葉にアディが眼を見開いて何か言う前に、「それは良いですね!」とギルが眼を輝かせた。
「クミーレル術師団長、報告もありますので僕と一緒に王宮へ戻ってください」
「しっ、しかし!報告はもちろん行いますがっ」
「ギル様、私もご一緒いたします」
「スカーレット様!?」
「大丈夫?みのり屋の助力があるとはいえ危険だよ?」
「危険とはいえ、必要な事ですから」
しおらしく答えるが、その目はランランと輝いているように見える。
「ん〜、念のため俺も一緒に行こうか」
「おおい!いつからいたんだよ!」
「エンターテイナーにそんな野暮な質問しちゃう?」
「圧紘は優秀ですよ。きちんと役に立つでしょう」
「神出鬼没ってあいつのことだよな」
「アツヒロさんが来てくれたら最高じゃない!」
そんな家族に固まっていたアディは、大きくため息を吐く。
「シゲル、私はこのまま参加してもいいだろうか。こちらから依頼をしておいて図々しいが、討伐が落ち着いたら少し素材を売ってくれ」
「参加してくれるならそれが報酬でもいいんじゃない?私たちも素材とお肉をもらうつもりでいたし」
「ならあたしも行きたい!」
「あたしも。オークのお肉って美味しいし、上位種なら良い皮とかになりそう」
「俺も!っつーかカクニマンを食ってみたい!」
「俺も!」
「強化系」
「俺を一緒にするな」
「食べないの?」
「食べるに決まってるだろ」
「同じじゃねぇか」
「どうしようか。錬金術師科の子たちには声をかけて、素材が欲しい子は参加にしようかな」
「全員参加するだろ、それ」
「では一応他の学科にも聞いてみましょうか。角煮マンが食べたい者もいるかもしれません」
「そんなにいる?全員参加になったら取り合いにならない?」
「大丈夫じゃないか?冒険者が何十人か来ても取り合いにはならないだろ」
「そんなに巨大な群れなのですか!?」
「多分、ジェネラルが四匹いる。ジェネラルになりかけてるのが数十匹、普通のが三〜四百ってとこかな」
進の言葉に気絶しそうになっているクミーレルをマウロが支え、とにかく一度王宮に戻り、教会にも協力を要請しなければとファビオラ達と帰っていった。
「じゃぁ、みんなは戦闘の準備をしててくれる?先生たちと話がまとまったら出発するから。あ、一、二年生たちにも説明しておいてくれると助かるよ」
「やったー!!」
「オークの皮だー!!」
「ジェネラルなら魔石も取れんだろ!!」
はしゃいでいるみんなに笑って、みのり屋と一緒に教室を出るアディ。メイドたちに教師全員に会議室に集まるように伝言を頼んだ。
「あと、ガーフィールさんにお願いしてオークたちが逃げない様にしておいてもらわないと」
「ガーフィール、土魔法でそんな事が出来るのか?」
「ガーフィールさんとノワゼットくんがいればね」
「土魔法の可能性は無限だな」
アディの言葉に笑っていると、進が自分もガーフィールと一緒に先に行くと言う。
「追い込んだ方が囲いやすいだろ」
「お願いね、私たちが到着したら狩りを始めていいよ。さすがに生徒たちにジェネラルは難しいだろうし」
「進さん、俺もジェネラル一匹もらっていい?」
顔を上げると、そこには転弧がいた。
「魔族は全員神出鬼没なのか?」
「普通に見かけたから声かけただけだろ?あいつと一緒にすんなよ」
俺にはそんな事出来ないと笑う。
「私もお手伝いいたします!」
「ありがとう、もしかしてコンシンネさん達も参加したがったりするかな?」
「あ、お父様自身というか、子供たちに狩りの練習をさせたがるかもしれません」
「オークの群れを・・・。精霊種とは、本当に強いんだな」
「人間種は、単純な力だけじゃ妖精種と精霊種には勝てないからね」
けれど、だから彼らからすると人間種は短い人生を使って何処までも上を向いて走っているように見えるのだと笑う。
「私たちには私たちにできる事を自由にやって、みんなと仲良くしてたらあっという間に寿命になっちゃうよ」
本当に無駄にする時間がないと笑っている茂について行くように歩き、「お前は何歳なんだ」とアランの突っ込みを聞きながらアディは眼を閉じた。
どうしてこんなにも、茂の側は心地が良いのだろう。
会議室に教師たちが全員集まった所で、国境近くの森にオークジェネラル率いる群れが迫っているのだと説明をした。
「ファビオラ王太后陛下直々に討伐依頼を拝命いたしました。ですので、みのり屋総出で取り掛かろうと思います。錬金術師科の生徒は希望者を参加させる事にいたしますが、その旨了承もいただきました。それで他の学科生にもお声がけした方が良いと思いまして」
圧紘の協力で学園に残ったとしてもきちんと授業を続けられるとも説明をすると、何人かの教師が手を上げた。
「討伐には"みのり屋"総出、とおっしゃいましたが、参加者に対してのフォローもしていただけるのでしょうか」
「もちろんです。今頃冒険者ギルド、教会にも声をかけているのだと思いますが、参加者は全員みのり屋が責任を持って尽力致します」
場合によってはエリクサーの用意もあると言うと、ざわつく中で手を上げた騎士科の教師が頷きを返す。
「承知しました。では私はこれから受け持ちのクラスへ向かい生徒たちに参加の是非を確認して準備に入ろうと思います」
「ありがとうございます。出来へば参加する学科はお贈りしたテントをお持ちください。テントを設営した場所には満ちゃんに結界を張ってもらい、回復の出来る者も、私を含め教会から神官様が来ていただけた場合はその皆さんで待機、迅速に処置に当たりたいと思っていますので」
「なるほど、それは有り難い」
「参加者はそれで良いとして、他への被害はどうするのですか?」
「予定としては、進ちゃんとガーフィールさんに先に様子を見に行ってもらい、オークの群れを逃さないように土魔法で囲んでしまいます。その過程で少々地形が変わってしまうかも知れませんが、ノワゼットくんや現津さん、私と桃之丞で後ほど土地や植物の再生に尽力すれば森の生態系も、元通りとは行かないまでもある程度までは回復できると自負しています」
そこから本当に元通りになるには、年単位で森自身に回復してもらうしか無いが、自然というものは強いので死ぬ事はないだろうと言い切る。その話を聞いて手を上げた魔法士科の教師も納得したように頷いた。
「ありがとうございます。私も安心して受け持ちの生徒たちへ説明を出来そうです」
「前向きなお返事をくださりありがとうございます」
「貴族たるもの、緊急時に日頃の鍛錬の成果を出し惜しむ事なく発揮させなければ意味がありませんからな」
「その通りですね。我々が抑えなくては国だけでなく王都、市民にまで被害が出てしまいます」
「その志に感服いたしました。ですが、参加したく無いと言う方の意思は尊重してあげて下さいね。緊急事態とはいえ、本来はオークジェネラルが率いる群れなんて成人前の子供たちに対峙させるような相手ではないので」
「お前もだろ」
「私は素材が欲しいので自己責任です」
「わしは久しぶりに角煮まんが食いたいんだ。そろそろ満に渡しておいた肉も減ってくる頃だろうしな」
「お話も纏まった様ですし、私は一足先に行ってまいりますね」
「気をつけて行ってきてくださいね」
望とガーフィールがキスをしているのを皆で見て、バルコニーから出ていくのを見送る。進も天心を肩に乗せてバルコニーから出ていった。
「せめて扉を使え」
「今更じゃないですか」
「こんなに安全なオークジェネラルの発見なんて、前代未聞だな」
呆れているアディ達に、教師たちも礼をして会議室を出て行く。扉が閉まると、雄叫びが上がって遠ざかって行った。
「錬金術師科のノリって感染するんだ」
「ブハッ」
転弧の呟きにローランドとガウェインが吹き出していた。
「圧紘、学園に何人残るか分かんねぇけど、取り敢えず現津さんと梅智賀さんになって守りは固めておけよ」
「はいは〜い」
「本当に神出鬼没だな」
「それが俺の特技だしね〜」
宙に話しかけた転弧に返事をして現れた圧紘を見ても、驚かなかったアディたち。そんな話をしていると、残っていた学園長が話しかけてきた。
「アツヒロ殿、わしの事も一人増やしてはくれんかね」
「良いけど、もしかして学園長も参加する気〜?種族人間でしょ?大丈夫?」
「何、無理と分かれば引くだけじゃよ」
無茶はしても無理はしないと茂にウィンクをするので、笑いながら一緒に行こうかと誘った。
「う〜ん、老いても元気って、さすがだわ〜」
「若返ったりしないのにな」
「人間種の良い所じゃないか」
ホーキンスも笑い、俺達も出かける準備をしようと会議室を出た。
一時間程して、学園の校庭には討伐に参加する教師と生徒たちが武装した姿で整列していた。
「ほぼ全員じゃん」
「え、教会側もほとんどみんな来てんじゃん。孤児院大丈夫?」
「もちろんです。緊急事態ですから、子供たちも分かってくれましたよ。アツヒロ殿のご協力もありましたし」
「冒険者が少なく見えんな。錯覚だけど」
「この短時間でこんだけよく集まったな。つーか、命捨てる覚悟したっていうか」
「愛国心?郷土愛?すごいね〜」
「魔族ってその辺も薄いんだな」
「魔族っていうか妖精種かなぁ〜」
「精霊種は腰を据えて、みたいな所もあるわよ?」
「はーい!一年生は上級生の言うことちゃんと聞いてねぇ!」
「遠足じゃないんだから」
「そういう事ですので、お二人は学園でお待ちください。アツヒロの作ったコピーではありますが、アキツとウメチカ、優と金剛が残ってくれることになっていますので」
「ですが!オークジェネラルが出たとなれば通常のオークも数十体は出現しているはずです!」
「そんな中で学生まで戦わせるなど!」
「お気になさらず。これが王国を守るという事ですから」
「この子たちは次代とはいえ、陛下たちと共に王国を守る貴族です」
「っ、」
クリストファーとティアナを止める教師たちの言葉に、なんて覚悟を子供の頃から持たせているんだと驚愕している聖国の者たち。
それを生暖かい目で見ている神官たち。
そうしていると、王宮から騎士団、魔法士団の乗った馬車が到着した。
「お待たせしてしまい申し訳ありません」
副団長を務めているロックスがアディ達の前にやってきて礼をとる。
「報告を受けて迅速に駆けつけてくださったのですね。ありがとうございます」
「私からもお礼を。我々の言葉に耳を傾けて下さり、本当にありがとうございます」
「いいえ、早期発見、報告にこちらこそ感謝を。現地へ到着次第お贈り頂いたテントの設営をしてすぐにでも討伐へあたれるよう準備をしてまいりました」
「我々も倉庫型テントに馬車を入れて持ってきておりますので、現地での救助活動にもお使いください」
「ありがとうございます」
フェアグリンとロックス、学園長とも話がつき、これから移動するという所でティアナが前へ出てきた。
「お待ちください枢機卿!私も回復魔法が使えます!少しですがお役に立てるはずです!!」
「ティアナ様!?」
護衛騎士が止めに入るも、自分も行くと言い張るティアナにクリストファーも前へ出る。
「ティアナは私が責任をもって守ります!ですのでどうか我々も同行させてください!!」
「殿下!」
内輪揉めを始めたので、アディとロックスが大きくため息を吐く。
「お二人は隣国の要人です。もしも何かあったらどうなさるおつもりですか」
「あなた方がなんと言おうと、何かあれば私たちが非難されます」
もちろん他国の危機を救おうと立ち上がってくれたのは有難いが、これ以上は関わらせられないと言い切った。
「私はこの国の王族です。国を守る義務があります。どんな責任を負ったとしても、それが責務です。ですが、あなた方を戦闘に参加させる責任は負えません」
「そうだな、こればかりは私も賛同する訳にはいかん」
馬車から降りてきたオルギウスに、全員の視線が集まった。
「しかしだ、我国ではないとはいえ二人もまた王族。これから背負わなければならない責任もあるだどう」
そう言った物を学ぶ為に留学したんだろうと笑って茂へ顔を向ける。
「シゲル、ミツルの結界はどれほどの物だ?もしもオークジェネラルが逃げ出し襲ってきたとして、壊せるだけの代物か?」
「この世に絶対はありませんので、あまり強い言葉は使いたくありませんがその状況でしたら間違いなく満ちゃんの結界が勝つと思われます」
何の対策も撃たずにただ攻撃をしてきたのなら結界を通過することはまずありえないと言われ、満足そうに頷く。
「私はこれから城に戻り、この件についての対策、原因究明に動かなければならん。しかし、私の代わりに息子のアンドリューを行かせる。王太子であるギルバートは向かわせぬ。そなたらはそんな戦場へ向かう覚悟がおありか?」
「、はい!」
「ではミツルの結界から出ない事を条件に討伐参加を許可する。しかし、余が責任を持てるのはそこまでだ」
もしも結界から出たのなら、それはもう自分が責任を負う事ではないのは理解出来るかと聞かれ、二人はしっかりと頷いて返事をした。
「分かった。護衛騎士、そなたらが出来ることは二人を結界から出さぬように動く事だ。それを肝に銘じ、主に従え」
「陛下、ありがとうございます」
頷くだけの返事をし、ミッシェルとヘレンを後ろに従えて集まった生徒、冒険者、神官達へ討伐の演説をして指揮を高めた。そして、馬車へと戻っていく。
生徒はそれぞれの学科で使っている馬車へ乗り込み、冒険者達は茂が用意した懐かしいリヤカーに驚きながら乗り込んだ。
「みんな、乗った?」
「乗ったー!」
「クミーレルさんは、やっぱりお城で陛下の護衛だよね?」
「だろうな、挨拶にも来なかったし」
そんな話をしながら出発の準備をしていると、ドタドタと十人近い者たちが駆け込んできた。
「待って待って!僕たちも討伐に参加するから!」
「間に合ってよかったー!」
「シリウス達の準備に手間取っちゃって」
「仕方がないだろう、ギリギリまで仕事をしていたんだ」
全員、10代の幼さが残る青少年たち。グレンとサブリナ、ビビは分かる。その侍女のように、護衛のように付き添っている四名も分かる。では、残る六人は一体誰なのか。
「シリウスと呼んでくれ」
「私はレーナよ」
「私はハンナ、よろしく」
「私の事はマチルダと呼んで」
「僕はリッチ!」
「私はアイラ!」
四人よりも幼い二人も元気よく見上げてくる。
「私の事はハイジと呼んでください」
「私はマイケルだ。よろしく」
ハイジとマイケルの持っている武器を見て、皆が誰なのかを理解した。
「シゲル様!」
馬車の前で自己紹介をしていると、クリストファーとティアナが駆け寄ってきた。
「急なわがまま、申し訳ありませんでした!ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いいたします!」
二人そろって礼を言うので、こちらも尽力いたしますと聖国の礼を取ると、それを見たシリウスが感心したように「聖国のマナーも出来るのか」と呟く。
「こちらの方々は、錬金術師科の生徒、でしょうか?」
他の皆の様に赤い作務衣を着ていないが、冒険者よりも平民よりも質の良い服と武器を持っている同世代の少年少女たちに向き直った。
そして、互いの顔を見合わせてからシリウスが真っすぐ前を向いて口を開く。
「宮廷錬金術師団団長、クミーレル様の養い子です」
「く、クミーレル様!しっかり!!お気を確かに!!」
「誰か!!気付け薬をくれ!!」
後ろで倒れているクミーレルを介抱している副団長のマウロと他の術師団員たち。
「あなた方全員ですか?」
「そうです」
「僕が長男です」
「俺だろうが」
「もう、二人とも長男でいいじゃない」
「ビビが母さんポジションだな」
「そうね」
「そ、そうとう、大切に、育てて下さっているのですね」
「そうですね。ミッシェル騎士団長と同じ武器も造ってくれました」
「私はヘレン魔法士団長と同じ指輪を」
そう言っている本人たちに、目を覚ましたクミーレルがホムンクルスのグレタを抱きしめて「私の癒しはお前だけだ」と縋り付いている。
「こ、こんなに、次世代まで、血筋にこだわりなくっ」
「クミーレル術師団長にはっ、頭が上がらないどころではありませんっ」
アディが両手で顔を覆いながら言うと、ザックが気遣う様に体を寄せてきた。
王国貴族の懐の深さに驚愕している聖国出身者たちに苦笑して、現地で会おうと全員が馬車へと乗り込んでいく。
「クリストファー様、ティアナ様、よろしければ我々と共に参りましょう」
フェアグリンが呼びに来たので、教会の神官たちと共に馬車へ乗り込んだ。