7.学園生活
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「腹減った」
「巨大米、太巻き、ホットサンド、焼きたてのバケット等ございますよ」
「太巻きもらえるか」
騎士科が訓練をしていた訓練場では、カリブーが椅子とテーブル、おしぼりを出して進が軽食ではない軽食を食べ始めた。
「本当によく食べるな」
「燃費が悪くてな」
モネが出してくれた太巻きを三本食べてから、ナッツの蜂蜜漬けを焼いたバケットにたっぷりと塗って食べ、おしぼりで手を拭きお茶を飲む。
「はぁ、おやつ前だし、このくらいで良いか」
よし、続きをするぞと武器を手に構えている騎士科と魔法士科の生徒の前に立って準備運動のように肩を伸ばした。
四年生だけ、みのり屋を相手に他学科と合同で戦闘訓練をしていたのだが、その訓練時には王宮の騎士団、魔法士団も参加している。
昼食でも十分に食べたはずなのに、すぐに空腹を感じて小休憩時に普通の食事をする進に驚いていたのは最初だけだった。今では誰も驚いていない。
「ん?王子様とお姫様も参加か?」
「いや、見学だ」
「そうか、一年生だしな。そりゃそうか」
危ないから離れて見学してなと声をかけ、数名でパーティーを組んでいる四年生と向かい合い全員を倒していく。
「あの、ススム様は、武器を使わないのでしょうか」
「使いません。本人は使えないと言っていましたが、本当にどの武器も苦手なようです」
実際に学園へ入学する時の試験では下から数えた方が早い結果だったと騎士科の教師がクリストファーにいうと、あんなに強いのにと眼を見開いていた。
「現在は少々変わりましたが、それでもここの生徒は貴族家の子息がほとんどです。伝統を重んじていた為、強さではなく剣技を重視している部分がありました」
今では恥ずかしい限りだと苦笑して担当をしている四年生達に声をかけてから、腰に下げていた剣を抜いて一緒に反省会をしながら訓練を始める。
「騎士が剣に誇りを持って何が悪いというのでしょう」
「その誇りにしがみついた結果、魔族に国ごと飲み込まれちゃったんでしょ~?」
いつからそこにいたのか、笑っている圧紘が話しかけて来て勢いよくそちらを振りむく。
「誇りは大事だよ。と~っても大事。誇りがないと魅力も半減しちゃったりね~」
けれど、その誇りが大切な人を傷つけるならそんなもの論外。そう言って笑顔を深める。
「自分の誇りと大切な人との幸せな生活。そんな考えなくても分かるものを天秤にかけるのが人間種だよね~」
「っ」
「煽るなよ」
「だって、いつまでもちゃんと自分たちがした事を直視しないで”魔族の所為だって”逃げてんだもん」
このままじゃヘルンさんのお世話になる案件じゃんと転弧に肩をすくめて見せた。
「タイミングとかあるんだろ。八百年も経ってりゃ当事者なんて全員死んでるだろうし」
「その辺どうなの?王族だけが知ってる事実とかないの?」
早いとこあの呪いどうにかしないともっと大変な事になるよと言われ、クリストファーがどういう事でしょうかと護衛の前へ出る。
「あ~、そこも知らないのか~」
「茂さんの授業で言ってただろ。魔族の成人は二百歳前後。二つある魂が覚醒するには一万年って」
それはつまり、一万年までの間年を取ればとるだけ自然と魂が覚醒へ近づいていくという事。
「魔族の中堅?って千歳あたりからなんだよ」
「中堅、」
「そ、そのあたりから力が増加していくの」
「増加!?」
「八百年前に、あの規模で終わってる所を見ると成人前か成人直後か、そのくらい若い魔族だったって事は間違いないんだよ」
そして、それから八百年が過ぎている。となれば、
「千歳になるのは、まもなく・・・?」
「多分ね」
実際の所はどうか知らない。聖国だけに強い憎しみがあったからの現状なのかもしれない。
しかし、実際に訪れた感想はそうではなかった。
「スラム街見たよ。ほとんどが人間族以外の種族だった」
「イアグルス教では、人間族が、他の種族を先導すべきだと、」
「今は別にそこはどうでもいいんだけどさ、異常に少なかったんだよ。人数が」
「少ない?」
「二百年?くらいかけてフェアグリンさんが少しずつ王国に逃がしたにしても、少なすぎる。あの国土と住居跡、井戸の数に川沿いの発展、どれを見ても少なすぎる」
死んだにしてもその亡骸は見つけられなかった。人の骨は、八百年くらいでは風化などしない。日に当たらない場所であったなら、更にその形のまま残っているだろう。
「んで、そのお隣にあるこの王国と、周辺の小国には人間族と同じかそれ以上に他人種がいる。その理由、想像できる?」
「・・・当時、聖国から、逃げたのでは」
「そうね、逃げた。うん、間違いじゃない」
けれど、正確には逃がしただと笑いかける。
「さすがにこっちだってまったく関係ない相手に八つ当たりする気はないよ。最初はね?といっても理性なんて一瞬で焼き切れちゃうだろうけど」
その一瞬で逃がせるだけ逃がしたんだろうと言って仮面を顔に近づけた。
「王太子殿下に聖女様。どうぞ時間の限りお考え下さい」
どれくらいの時間が残っているかは分からないが、聖国は今分岐点に立たされていると恭しく礼をする。
芝居がかったそのセリフと仕草に、反応できずにいると歩き出して生徒たちの訓練に戻って行ってしまった。