7.学園生活
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「フェアグリンさん元気いいね」
笑っている至に、ベンジャミンがそっと教えてくれる。
「毎日豆の成長と味噌、醤油の発酵を観察するのが楽しいみたいです。陛下が教会の近くに畑にするための土地を寄付してくださいましたので」
「趣味ができると日々の楽しさって増すからね」
学園へ戻ってきて、これから錬金術師科が解体を始める魔物を他の子供たちと一緒に観察しているフェアグリンに笑っていた。
「枢機卿は、こちらの国でも慕われているのですね」
留学して初めて話しかけられ、怯えたように肩を揺らしたが「はい」としっかりとクリストファーに返事をするベンジャミン。
「わ、私が知っているのは、数年前からですが、その時から、神官だけでなく街の皆さんに、頼られていました」
「そうなのですね」
「人好きのいい笑顔とか親しみやすさとかあるよね、フェアグリンさんって」
「性格なのか種族的なものか」
「どちらもですかね」
蜻蛉切と豊が笑いながら素材を茂の下へと持っていく。
「聖国ではフェアグリン様が枢機卿という地位にいる事を快く思っていない方が多いのでしょうか」
人も多い校庭で、素材と分けられた肉を持ったガーフィールが世間話をするかのようにそう聞いてきた。
ピシリと、ベンジャミンだけでなくクリストファー達。その後ろにいる護衛達も、教師たちと話していた神官たちまで固まってしまう。
しかし、ガーフィールはそんな事気にしていないようにいつも通り、にこやかに笑った。
「イアグルス教とは違いますが私も元は教会側の者ですから、その内情がどういったものかは想像できます。ふふ、人が多く集まれば多種多様な考えと幸せの形がありますから。国も街も村も教会も、一枚岩という訳にはいかないでしょう」
そう言ってニコリと顔を綻ばせる。
「信じる神は違えど、今を生きる人々の幸福を祈っているのは変わらないのです。問題は魂の美しさですよ」
そう笑って肉を満の下へ運んでいった。
「え、あのっ、ガーフィールさんは、ど、どこかの神官様だったのですか!?」
「いいえ、神官ではありませんでしたよ」
話しかけられた望が苦笑しながら答える。
「では、教会の孤児院など?」
「それも違いますね。ガーフィールさんのお父様は教会を建てたり石像などを作る石工職人ですから」
「それくらいの関係で、内情が分かると?」
護衛騎士があからさまに気分を害したという表情をするが、それを見ても望は本人に聞いてみたら良いと笑顔を向けた。
「神官と同じかそれ以上に、ガーフィールさんは人を救うということを深く考えて実行してくれていた方ですよ」
その言葉に、現役の神官もフェアグリンも興味を持ったようだった。
素材もキレイに分けられたので、神官達も誘って一緒に昼食を食べることになったのだが、今日はもう休んでいいと言われている騎士科生であるベンジャミンもやって来た。
出された食事は全てヴィーガン料理で、全員が同じ物を美味しそうに食べ始める。
食事がある程度進んだ所で、ベンジャミンが少し遠慮しながらガーフィールに話しかけた。
「あの、ガーフィールさんは、教会でどのようなお仕事をしていたのですか?」
「私ですか?基本は墓守でしたが、街全体の守護ともいえますかね?」
「守護、聖騎士、のようなものでしょうか?」
「騎士ではありませんね。もう少し抽象的なものです」
「抽象的?」
「この国にも宗教にも、そのような考え方があるかは分かりませんが、私のいた所では醜ければ醜いほど人々から悪いものを遠ざけると言われていましたので、私は父に醜くなる事を望まれて生まれてきたのですよ」
醜く、誰よりも醜くなって人々を守るように言われ教会の屋根の上から街を見下ろし、悪いものを遠ざけていたと言われ、思っていた以上に重い過去に息を呑んだ。
「で、でも、そのお役目も、期限が、あるのですよね?」
「ええ、もちろんです。死んでしまってはその役目も果たせませんから」
「死、」
「あの日は空から不幸がやって来まして、私の力およばずそこで半身が砕けてしまいました」
その時に死んだので役目もそこでおしまいだと言うも、でもお前は生きているだろと目で訴えられ、ニコリと笑う。
「魂が神の御下へ戻ってしまうその前に、砕けた私の体を一つずつ集めて癒やしてくださった方がいましたので」
「あれはなかなかな大破だったよね」
「私達みんなで繋ぎ合わせたよ」
「もうあんな無理はしないでくださいね?」
「ふふ、私が今守る皆さんはお強いですからね」
ガーフィールの隣にいる望と笑い合っている姿に、言葉を無くす聖国出身者たち。
「その・・・、お役目が、無事に済んで、よかったな」
アランの言葉に笑顔で頷く。
「兄弟たちも皆私を祝福してくれましたし、教会ももう十分に勤めを果たしたとして快く送り出してくれましたからね」
「兄弟いたんだ」
「おりましたよ。血の繋がりというものはありませんでしたが」
もしかしたら同じ父から生まれた者もいたかも知れないが、ちょっと分からないと考えながら言う。
「相当過酷な仕事ではありませすけど、だからといって嫌われてるとか避けられているというものではないですから、そこはご安心ください」
重すぎるくらいの受け止め方をしている皆に、多分想像しているのとはちょっと違うと思うと茂が言う。
「ガーフィールさんのいた国の周辺では良い意味で有名でしたし、観光の一つというか、名物?みたいな扱いでしたよ」
「そうですね、私達を見上げてくる方は沢山いらっしゃいました」
お陰で治安の悪い所もあったが賑やかで、とても良い国だったと思い出すように話が盛り上がる。
「お料理も美味しいし、ファッションの最先端をいっているとも言われていたんですよ」
「国民の人たちもみんなその国に愛着があってプライドも持ってたしね」
「ショコラ・ショーもその国発祥の飲み物なんですよ」
「そうだったんだ。あれ美味しいよね」
「僕はココアも好きだよ」
「コクン」
「もしかしてコーヒーもか?」
「あれは別の国ですね」
「ポポンの根が飲み物になるなんて知らなかったから、あれ驚いたなぁ」
まだ美味しいとは思えないけどとアンが苦笑すれば、学生たちは頷くも大人たちはあの苦しみが良いのだと笑っていた。
「・・・お父様を、恨んではいらっしゃらないのですか?」
「ええ、もちろんです。今でも昔も、誇りに思っていますよ」
自分を醜く造ってくれた事も全て。
心の底からそう思っていると分かる柔らかい声と表情で言えば、ティアナは口を閉じる。
「でもさ、国によって美醜の違いはあるって聞くけど、ガーフィールくんは醜くないよね?」
それとも目や髪の色でそう言われていたのかとギルが首を傾げると、「ああ」と声を出してから手で顔を覆い石で醜い悪魔のような面を被って見せた。
「国では生まれてからずっとこの顔で生きていましたよ。他の兄弟たちも似たようなものですね」
「なるほど、才能のある子を集めて、守る役目を与えてたんだ」
それには微笑むだけで返事をしないので、みんなそれを肯定と取った。
「肉の上についているだけの造形で美醜を決めるなど早計ですな。その方が持つ本来の美しさとは魂から滲み出た生き方で決まるものです」
それこそ造形が醜くければ悪いものを遠ざけられると笑う。
「望ちゃんなんてまだガーフィールさんの顔見る前に結婚決めちゃってたもんね」
「ガーフィールさんのアプローチすごかったもんね」
「愛の国って呼ばれるだけあるなって思ったよねぇ」
「もう!恥ずかしいのでその話はしないでください」
「えー、聞きたーい」
「メイナさん!」
赤くなっている望に楽しそうに笑っているガーフィール。その様子をジッと見つめていたベンジャミンに気づき、笑いかける。
「この世に造形美はあれど、不細工などありませんよ。それは単にその方にとって好みではなかったというだけです。国や人が変われば好まれる外見というものも変わりますしね」
目の前の誰かが世間の総意だと本気で思っている者がいたのなら、それは相手に問題があると頬杖をついた。
「この世に同じ人がいないように、感性も同じものなどありません。ただ似ているだけですかね」
「・・・きっと、そうなんでしょうね」
まだそうだったとは頷けないが、これから色々な経験をすれば本当にそうだと、笑って話せる気がするとベンジャミンが頷くのでガーフィールもその時が楽しみだと笑い返した。
「そもそも一度恋に落ちてしまえば相手の短所も愛すべき長所ですよ」
「お前、みのり屋に拾われて本当によかったな」
「感謝していますよ。緊急事態であったとはいえ説明をされる前に身包みをはがされ、衣を新調された時の驚きが忘れられませんがね」
「めっちゃ想像できるわ」
アランが深く同調しているのを見て、ギルが口を抑えて声を出さない様に爆笑していた。
そんな昔話を聞きながら穏やかに昼食が終わり、学園はこれから学園祭への準備に入って授業もそれに合わせた内容へと変化すると教師陣から生徒たちへ説明が入った。
教室でゴーレムの体を造っていたガークが見てくれとみんなに声をかけてきた。
「やっとリチャードが完成したぞ!」
人の上半身と下半身が馬型の体に鎧の頭を付けたゴーレムを前に舞い上がっているガーク。
「すごい!獣の民みたい!」
「武器を持って戦ってもらうつもりでいるからな。ゲン担ぎだ」
「うわー、本気で二人になった感じだ」
学園祭で戦う時とか大変だなこれと言いながら、リチャードの体が完成したことをみんなで喜んだ。
侍女長が休憩になさいませんかと呼びに来てくれたので、全員でティータイムに使っている教室へ移動する。そこで一年生たちがなんかゴーレムが増えていると物凄く驚いていたが、話はお茶の席でねとテーブルを囲む。
「今日はミルフィーユでございます」
「少し食べるのが難しいけど、キレイに食べられるかな?」
生徒が増えたという事で、他学科の様にメイドも配属された。もちろんオルギウス達が選別した女性たちなので、メイドとはいえ低位の貴族家にいるよりも行き届いた教育をされている。
メイドたちがお茶とケーキを配膳していく中にはもちろんひなたとつむぎもいて、侍女たちと共にメイド達に生徒との関わり方、距離の取り方を示していた。
「これ、このままフォークで刺したら絶対に崩れるよね?」
「あ、クリームと生地の固さが違う」
平民やスラム出身の子供もいるため、テーブルマナーは日常的にゆっくりと教える事になっている。茂たちは少し離れたテーブルで相談し合っている子供たちを微笑ましそうに見守っていた。
「こうやって倒したら良いんじゃない?」
「これはマナー的にセーフ?」
「セーフ」
同じテーブルに着いている貴族出身の子がよく気づいたなとやって見せれば、他の子供たちも真似をして食べ始めた。
「みんな食器の使い方覚えるの早いねぇ。他のみんなも森ではワイルドに手でも行けるようになったし、どこに素材集めに行っても困らないよ」
「確かに。素材はどこにあるか分からないからな」
「ねぇ~」
「こういうマナーって大切だよ。大切な話をする時もマナーが身についてると軽んじられる事も少ないし」
素材採取の依頼を冒険者に出す時も、唾を飛ばしながらぐちゃぐちゃ食べて汁なんかも気にしない人が繊細な素材を思う形で採ってこれるのか、って不安に思うし。相手にも同じ事を思われると、ものすごく想像しやすい話をされ、マジだなと一年生達の背筋が伸びた。
「みんなは素材の扱いに慣れてるからね。コツさえ掴めばマナーもすぐにモノに出来るよ」
身体強化の訓練に比べれば簡単簡単と笑って、御代わりのミルフィーユもあるみたいだから好きに食べてねという茂。
「四年もすれば王族と食事しても失礼な事をしなくなるよ」
「それだけの躾を、貴族も全員がされていると思うなよ」
ため息を吐くアディと同じテーブルを囲んでいるのは全員平民とスラム街出身者だ。その全員が普段の言動からは信じられない程マナーが良い。
「まぁ、出来るのと好きは別物だけどな」
「俺も外で飯食ってる方が良い」
イーサンとリンクが御代わりのミルフィーユをもらいながら話す。
「私たちの言う外って森だしね」
「マナーとかいらねぇからな」
「僕もワイルドになれた気がするよ」
レイモンドとカタリナにギルも笑い、スカーレットもその隣で笑っている。
そんな優雅なティータイムも、少し経てば話題はやはり錬金術についてになっていく。
「やっぱり一番スタンダードな薬草を深堀した方が良いよ」
「成長が早いのって相当な利点だよね」
「村でも、採れてた」
「結構どこでも採れるよね」
「海沿いの場所でも生えてたぞ」
「先生本物の海に行った事あんの!?」
「一回な。卒業して教師になる前に行ったんだ。そこで小遣い稼ぎに採った記憶がある。時間が出来たらまた行くかな」
場所によって採れる海鮮も違うっていうし、ダンジョン産以外でも新鮮な海鮮を食べさせてやりたいしなとテオに笑いかけた。
「俺も行ってみたいです。オリビアがまだ本物の海を見た事がないので」
「そう言えば、みんなって卒業したらどうするか決めてるの?」
「俺は実家が宿屋だからな。一部屋を貸してもらって、そこを拠点にダンジョンに行ったりポーションを卸したりとかかな。旅人とか冒険者の客もいるから宣伝できるし」
「あたしはとりあえず、いろんなダンジョンを見てまわりたいわ。素材も欲しいし」
「俺もまずは素材が欲しいな。それがねぇと何も造れねぇし」
「誰も街の工房に入らねぇんだな」
「入る訳ねぇだろ」
「出来るなら卒業までにお金を貯めてみのり屋の倉庫型のテントが欲しいわ」
「分かる!」
「あれあったら何処に行っても店開けるぜ!!」
「おい、誰か一人でも王宮に来い」
「自由に素材を採りに行けないのはちょっと」
「そんな所でシゲルの影響を受けるな」
「もうすでに立派な術師団がいるじゃない」
「学園も教師不足が深刻なんだ。誰か教師にならないか」
「若い内に世界を見ておくのは良い経験になるって言われたんで」
「ワット、お前たまにでいいから臨時で教師のアルバイトしないか」
実家を拠点にするのなら王都にいる事も多いだろと言われ、「研究の時間!」と言い返していた。