7.学園生活
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訓練後の授業内容で少し変更した所がある。フェアグリン、オルギウス、ファビオラたちに一番最初に聞いてもらい、承諾が出たので種族特徴についての授業が追加されたのだ。
「人の種族は、大きく分けて三種類あります。一つは人間族も含めた人間種。もう一つは寿命らしい寿命がなく、魂が精霊に変質しやすい妖精種。最後は、妖精種と同じように寿命らしい寿命がなく、最初から精霊に近い魂を持って生まれる精霊種です」
人間種の種類から始まり、妖精種、精霊種の種族特性を説明する中、聖国出身者たちが静かに震えているのが分かった。特に妖精種、魔族の説明を始めた時など殺気さえ醸し出されている。
そして、静かに手を上げたのは護衛騎士だった。
「はい、どうぞ」
「魔族が愛情深いなどっ、どのような面を見てっ、おっしゃっているのですか!」
「魔族の種族的特徴と魂の特性からですね」
「はーい、魔族の事は魔族が詳しく説明しまーす」
茂に殴りかかりそうな勢いで睨んでくる護衛騎士に、現津が反応しているのを見て圧紘が手を上げて茂を下がらせる。
「はい、迫圧紘です。圧紘って呼んでねぇ。種族は魔族で~す」
外見からはただの人間にしか見えない圧紘の自己紹介に、護衛騎士もクリストファー、ティアナも眼を見開いて固まった。
「ああ、安心して。俺覚醒してるからそんなに短気じゃないよ~。元々そういう性格っていうのもあるけどね」
覚醒がどういったものかは茂が説明していたので省くけどと、魔族の特徴である額の痣を出して見せる。
「これが”痣”。で、さらに力を出そうとすると、こうなる」
痣だった物が、黒い影の様に立体的に額を一周した。まるで、黒い花冠を付けているかのようだった。
「見たら分かると思うけど、何処も不自然に途切れたりしてないでしょ?他の種族の血が入ってるとこの冠が途切れたり少なくなったりして形が変わってくの。つまり、俺は一滴も他の種族の血が入ってない純粋な魔族って事」
キレイに一周していればどこかが欠けていても”純粋”という表現をするけどねと微笑んで、聖国出身の者たちに顔を向ける。
「で、多分あんた達が一番知りたいのはこっち」
そう言って眼の色を変化させていく。黒い眼球に血の様に暗い赤が揺れる瞳。伝承に残っている悪魔の姿そのもの。
「これは”血が騒いだ”魔族だけがなる眼ね。俺は榊さんに血が騒いでるからこの眼になってんの。血が騒いでない魔族はこの眼にならないよ」
自国を呪い苦しめ続けている悪魔と同じ種族の男が、額の冠も痣も、眼の色も元に戻して微笑む。
「みのり屋は異種族婚が多いよ。俺は榊さんが一番だけど、他のみんなの事も大好きで気に入ってるから商売で移動するなら一緒に行動するし。そういうのもちゃ~んと理解してね」
引き離すなんて無理だからと、優しげな笑顔のまま茂と交代した。
「ありがとう、今圧紘くんが見せてくれたみたいなのが分かりやすい魔族の特徴になります。ですが、魔族に限らず時々先祖返りで人間同士の親から別の種族の子供が生まれてくることもあります」
これは妖精のイタズラであるチェンジリングとは違い、正真正銘、違う種族の親から別の種族の子供が生まれてくる事を言う。
「人間種と妖精種、精霊種の間に子供が生まれた場合、間違いなく妖精種、精霊種の特徴を持った子供が生まれます。妖精種と精霊種が夫婦になった場合は、精霊種の子供が生まれてくるように、生物として見た時精霊種、妖精種、人間種という順に遺伝の強さが決まります」
しかし、強い種族の特徴を持っても世代を重ねればそれだけどんどん血が薄れていく。なので人間種同士で結婚をしたとしても、時折全く違う種族が生まれる事があるのだ。
「ちなみに、俺は人間の両親から生まれた魔族だよ」
「!?」
転弧が手をあげたので皆の視線が集まった。
「先祖返りって血が薄すぎて額の痣も出なければ覚醒もない、血が騒ぐこともない。人間種との違いはちょっと頑丈な体と、寿命が無いってくらいかな。まぁ、性格みたいなのは魔族の特徴そのままだと思うけど」
「妖精種は種族で成長の仕方が変わります。体の成長も含めて子供の時代が長いのは魔族と妖族くらいですかね」
小人族、使徒族は人間種とそんなに変わらず成長し、二百歳前後で成人するのに対し、魔族と妖族は体もゆっくりと成長して二百歳前後で成人をする。
「精霊種は生まれた時から人間種の五倍はゆっくり成長します。そして成人は五百歳前後となります」
「モンステラちゃんが百歳超えてるのにも驚いたけど、」
「まだまだ子供なんだもんな」
「パキラさん、テンコさんの事も、子供扱いしてた」
「年の離れた妹とその婚約者ですから、どちらも可愛くてしかたがないんですよ」
望が笑いながらポーションの入った箱を纏めて数を数えていく。
「そう言えば、この国、というか大陸では聞きませんが、他の場所だと子供を捨てるなら精霊種のいる里に捨てろという迷言があります」
「今迷言って言ったか?」
「子供を捨てる場所の話してんだから迷言だろ」
「その理由は精霊種が子供はその里の大人全員で育てるという特徴があるからです。ですので親を亡くした子供は子供同士で暮らせる家を使いますが、食事や生活に必要な物は大人が用意します。里の大きさに関わらず、いわゆるスラム街と呼ばれるような場所が出来ないのが精霊種の特徴ですかね」
それに、精霊種は恋愛イコール結婚なのでそもそも誰かを特別に愛すのは結婚の時だけ。なので人間種の様に娼婦街という物が存在しない。
「妖精種は基本的に国を作りません。精霊種も国という括りでコミュニティーを作っている感覚は無いように思います。特殊な例としては天の民は雲の上に住むことが多いので、必然的に他の種族と生活圏が離れてしまって一つの国の様になっていますが」
けれど本人たちとしては権力ではなく実力に見合った修行、祈り、礼節を持って生活をしているので、国王と呼んでももっと身近な存在。里の長くらいの感覚で接しているという。
「人間族は多分人間種の中で一番と言えるほど身体的に弱い生き物です。ですが、説明したような他の種族が受け継ぎやすい特性がこれといってありません。だからこそ、どの種族とも共存をすることが出来のだと思います」
もしも子供ができたとしたら、絶対に相手の種族の子供が出来る。けれどその血は薄くなり、より他の種族と溶け込みやすい存在になっていく。
「重要なのは、生きている今が幸せなのか、その”幸せ”と思える事はこれからもずっと続いても多くの者が同じように幸せだと思える物なのか、だと思いますよ」
今、自分だけが幸せだと思う行為は長続きしない。それが例え”正義”であっても、時間、時代が流れれば”正義”も形が変わる。人間種は特に、寿命が短いので変化もよく起こる。
「妖精種、精霊種は寿命がありません。けれど精神が肉体の寿命に直結しています。光の民は人生に満足を感じれば老いていきますし、魔族は人生に飽きると老いていきます。人間種との違いは、気持ちの持ちようで若々しくなるのではなく、本当に若返るくらいですかね」
「わ、若返るのですか?」
ティアナが手を上げて質問をしてくるので、「若返りますよ」と頷く。
「今は個人で冒険をしている家族がいるのですが、その子は魔族の旦那さんがいます。その旦那さんは魔族のゾオン系同士で作った組織に入っている方で、」
その組織のトップはそれなりに老いていたのだという。けれど出会ってから一緒に冒険をしていると、それが楽しかったのか直ぐに若返ったそうだ。
「すごい種族だって笑っていましたよ。その繋がりで知り合った光の民の方も若返ったと言っていましたし、本当に精神がそのまま肉体に影響を与える種族ですね」
人間種も気の持ちようで病気が良くなったり、若々しくなったりするので、それがもっと顕著に影響するのだと覚えておいてくれと言って授業を締めくくった。
「うちにいるのは、精霊種なら火の民、天の民、光の民、妖精種なら魔族ですね。一緒に行動はしていませんが、闇の民、使徒族の家族もいます」
みんなと楽しく仲良く家族を続けるのはもちろん話し合いと譲り合い、お互いの尊重をするから成り立つことだと言ってから微笑む。
「これが他種族同士にのみ必要だと思いますか?同種族同士であっても絶対に必要な事だと、私は思っています。感謝を示したり、尊敬する部分を他人に見つけたり、自分や他人を貶してきた人に怒ったり。これを一切しないのであれば他種族だろうと同種族であろうと、近づいてくる人はきっと損得感情だけで側に来た人で、損しかないと判断されればすぐに切り捨ててくると思いますよ」
血が繋がっていようがいなかろうが、そんな損得感情だけで関りを持てば誰かを信じる心や無償の愛というものを向けられた時に受け入れる準備が即座にできる物ではないと眉を垂らす。
「どの種族もみんな愛情深いです。その愛情表現をどんな風にするか、どんなものに愛情を感じるのかは個人と種族の特徴が大きいと言う話です」
皆さんも、自身と周囲の人たちについてゆっくり考えてみてくださいと言って授業を終えた。
魔法士科の一年生、A、Bクラスが終わったら騎士科のA、Bクラスの訓練となる。その中にベンジャミンがいて、声をかけると嬉しそうに学園へ入学したと教えてくれた。
「今年も神官さんたちが協力してくれてるから、お昼ご飯も気にせず食べて大丈夫だからね」
「はい!ありがとうございます!」
「魔法士科に聖国の王族が留学してきたけど、絡まれてない?」
「種族の授業してる時とか噛みついて来てたからな」
「そうだったのですか?」
自分はまだお会いしていないのでと見上げてくる。ギルやアディがたまに食事を一緒にする時は食堂の二階、貴族席で摂っているようなので、一階を使っているベンジャミンとはすれ違う事もないようだ。
「まぁ、聖国でならまだしも王国に来てまで人種差別を大々的にやってたら国に帰されるだろ」
「留学してまで学びたいことがあるんだろうしね」
「さすがにみのり屋だけが目的じゃないよね?」
「そう思います」
ベンジャミンもそれなりに話は聞いているようで、素直に頷いていた。
王国と聖国は同じ神を崇めているが、土地柄なのかフェアグリンの功績なのか、その教えの解釈は大きく違う。
だからこそ、王国の貴族には人間族以外も存在している。
「騎士科ならわしらと関わる事が多くなるな」
「はい、その時はよろしくお願いします」
進たちと話してから、仲良くなったらしい同じクラスの子供たちと笑い合って訓練の準備に入る。それなりに楽しくやっているようだ。
全クラスの訓練が終わり、二年生がホムンクルス、ゴーレム、タルパの造り方を教わったのでどんな子を造るかと盛り上がっていた。
「俺はホムンクルスを造る!すげぇ速く走るギンナンみてぇなやつだ!」
学園祭で現津にやられてからというもの、ディーノは自分の魔力特性である雷を操れるようになっていた。二年生になったら絶対にホムンクルスを造るとずっと夢に見ていたので、他の子たちも頑張れと応援している。
そんな中、リックの相棒が生まれた。
「ジョージ!ずっと待ってたよ!!」
リックの腕の中には、キンシコウという猿のジョージが幸せそうに抱きしめられていた。
「はぁ~、あたしってホムンクルスと相性悪かったのかなぁ?」
「早く、会いたいよね」
灰色のモフモフを撫でているメイナに、ビーカーを持って頷いているノア。
「望んだ通りの子になろうと一生懸命なんだよ」
「あたし、そんなに何か望んだかな?」
ただ会いたいだけなのにと言うと、ノアも頷いている。
「本人も忘れてるような事全部、叶えてあげたいんだよ。きっと」
優しい子だねぇと話しかけながら卵に笑いかけた。
「デーヴィッド、あなたが何もできなくても別に良いのよ?」
「メイナちゃんは良いお母さんになれるよ」
それからというもの、リックは自分用に造った魔導具と同じ物をジョージの分も調整して造るようになり、より魔導具の精度をあげられる様になった。
「キャッキャッ!」
「こっちは嫌か。ならこっちを軸にしよう」
「ホッホ」
「手伝ってくれるの?君は本当に器用だね」
一緒にキックボードを造り、試運転でリックが運転してジョージが後方の攻撃をするなどの連携技も身につけ始める。
校庭でその姿がよく目撃されるようになった。