7.学園生活
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四日後、臨時講師のみのり屋もアラン達と共に集まり、聖国からやって来た王太子と聖女の挨拶を受ける。
「どうぞ、これからよろしくお願い致します」
兄、妹のどちらも美しいプラチナブロンドとサファイアの様に青い瞳。姫君はまだ女性と言うよりも少女の枠から出ていない。儚げなその外見に見合うだけあり声も高く、王太子は声変わりが終わったばかりの様でもあった。年齢でいうと王太子は14歳、姫が13歳だ。
王族の挨拶に応えるように皆で礼を返す。
「私共は魔法士科に入学させていただきますが、留学の四年間はとても短いものです。ですのでどうか、他学科への授業参加をお許し下さい」
「もちろんでございます。学ぶ事への意欲ある学生を止めるなど教師として出来るものではございません」
学園長からの許可も出たという事で、各科の教師たちを紹介していく。
そして、錬金術師科の四年生担任としてマートンを初めとしたアラン、クアンドロ、ナタリーを紹介し終えてから、みのり屋の紹介をする。
「国王陛下より直接王命を賜わり、学園の臨時講師を勤めております。私はみのり屋の代表、茂と申します。聖国の新しい光りである王太子殿下、聖女と名高い姫君にご挨拶できる事を心より光栄に思います」
この王国の最上級の礼ではなく、聖国での正式な最上級の礼をとる茂達に一瞬面食らっていた。
「みのり屋の皆様が聖国へ訪れた際、我々が手を差し伸べるべき国民を救って下さった事、いつか礼をしたいと聖王陛下と共に話しておりました」
できればその機会を設けたいと言われ、学園長達が遠い目をする。後ろにいたファビオラたちは苦笑いを浮かべていた。
つまり、この国のようにみのり屋と近づきたいのだ。
オマケに聖女として支持を受けている姫が出向いているという事は、そういった救いを求めている者達に対するアピールにもなる。
なんなら王太子とどちらかが結婚するという流れも期待しているのだろう。
「その様に受け取っていただきありがとうございます。ですが、私達はただ商売をしていただけですので聖王陛下並びに王太子殿下にお声をかけていただけるなど、恐れ多い事でございます」
けれど聖国はとても興味深い国だったのでまた訪れたいと顔を上げて笑いかければ、改めて義眼に気が付いたのか眼を少しだけ泳がせる。
「賢者は、エリクサーさえ作ることが可能と伺いましたが、」
それなのに身体の欠損を治すことは出来ないのかと言葉にはせず聞いてくる王太子、クリストファーに変わらず笑い返す。
「私のこれは生まれつきのものでございます。この
「そうでしたか。不躾な物言いをお許し下さい。気分を害させてしまいましたでしょうか」
「いいえ、気にかけていただいたその優しいお心に触れることが出来て嬉しく思います」
美しく一礼する姿に、妹姫のティアナも護衛騎士もクリストファー本人も、まるで器の大きな王侯貴族のような気品を感じ取っていた。
こうして、初の顔合わせと挨拶は穏やかな空気の中で終わった。
「どうしたんですか?あれ」
「あー、まぁ、うん」
教室に戻ってから現津が茂に抱きついて離れない姿に、挨拶から何かあったのかとみんながアランに聞く。ギルとスカーレットはクリストファーとティアナを寮へ案内してから一緒にお茶をするらしい。
アディはザックに手紙を渡し、オルギウスに挨拶での出来事を事細かに報告していた。もちろん現津が怒りを覚えている事もしっかりと書いてある。
テオがアランを心配して抱きつきながら毛づくろいを始め、頭が痛いと言ったようにモフモフの背中を撫でて、クリストファーとのやり取りを話し出す。
「ありえませんっ、茂さんに憐れみなどっ」
憤怒で殺気を抑えられなくなっている現津に苦笑しながら大人しくされるがまま抱きしめられている茂。
「私が何度生まれ変わってもこの身体がいいって思うくらい気に入ってるなんて、初対面の人に分かれって方が無理だよ」
「それでもですっ。そこまで分からずともあの物言いっ、みのり屋の力も茂さんの実力も見誤っただけでなく疑いっ、聖国の程度が知れたような物です!」
「現津さんとのファーストコンタクトが最悪になっちゃったねぇ」
これは困ったなと抱きしめられながら遠くを見つめる。
「これ以上茂さんに憐れみを深めて侮辱するのなら、殺します」
「国際問題になっちゃうからやめてあげて?聖国を将来背負って立つ人だよ。それに、本当に優しくて良い子なんだと思うよ?兄妹二人共。もしもあそこで困ってるんですよって言ったら聖女様が回復魔法かけてくれたんじゃないかな?」
「善意を振りかざして感謝のみが返ってくると思い上がっている世間知らずです」
「二人共王族だからねぇ、あの国はここみたいな学校がある訳じゃなかったら、色んな経験をする機会だってそんなに与えられなかったんだろうし。これから救われる人とも救えない人とも出会って自然と変わっていくよ」
だから、今は関わらないだけで良いと現津に言い聞かせていると抱きしめる力が強くなった。
「茂さんは寛大で慈悲深いです」
あんな世間知らずの子供たちが同列で話すなんておこがましいと言ってようやく笑った。
「本当に嫌われちゃったねぇ」
それから十日間は、優と金剛と一緒にスラム街にいる子供達に会いに行ったり、ベンノ達に文字を教えたりして過ごす。
「本当にまたきてくれた!」
「せんせー!」
「これから新学期が始まるとあまり様子を見に来られないの」
今困っていることは無い?と子供達が普段使っている家へ訪れ、一緒に食事をしてスライムで体や服をキレイにしてから学園へ戻る。
そうしていれば直ぐに新入生たちが入学してきた。
錬金術師科に入学してきた生徒は多く、初めて二クラスに分かれることとなった。
しかし残っている教師はナタリーのみ。なので術師団員が交代で子供達を見ることにした。
「教師不足が深刻ですね」
「我々がサポートいたしますよ。今年ようやくこの錬金術師科に本当の四年生が出来たのですから、これから数年は致し方ありません」
クミーレルたちのおかげで一年生の授業はキチンと回っているようだ。
個人の魔力特性を見てから七日間、地獄の様な訓練で身体強化を体得してからは上級生と共にポーション造りに忙殺される。今年も新一年生全員が身体強化を使える様になる頃には初級、中級のポーションは完璧に造れるようになっていた。
オルギウスたちの許可をもらったクリストファー達も魔法士科の一年生として訓練を受けたのだが、初日は護衛騎士たちが抗議してきた。
しかし、王国の貴族子息達が誰も文句を言っていない上に、訓練中はギル達王族もその婚約者であるスカーレット達もサポートに回っているので文句を言うのなら訓練に参加しない方が良いとやんわり断られる。
「お疲れさまでした。お風呂に入ってから落ち着いて休憩なさってください」
ケンカに発展しそうな護衛とギルの間に茂が入り、他の一年生達と一緒に風呂を進めると他の者と共に入れと言うのかとさらにヒートアップしたのをクリストファーとティアナが止めた。
「申し訳ございません。まだ王国の勝手が分からず」
「いいえ。我々もご説明が行き届かず申し訳ありません」
王族も全員、まだ学園に通っていない幼い弟妹も王太后であるファビオラも、この訓練を騎士団、魔法士団たちと共に行い身体強化を身につけているのだとしっかりと説明をする。
「家臣である他貴族と、それも他国の貴族たちと共に湯浴みをする事に抵抗感を持つのは当然です」
「だったらわしの部屋で風呂に入るか?」
一つなので男女に分かれてもらう必要はあるが、使っていいぞと進が声をかけてきた。
「いいの?」
「ああ、わしは後から入ればいいしな。王子様はカリブーに、お姫様はモネに頼めばいいだろ?」
その後に騎士たちも纏めて入りなと、今はこれくらいしか代案を出せないから引いてくれないかと微笑む。
「訓練初日は誰だって勝手が分からなくて当然だ。急に襲われてストレスが掛からない方がどうかしてるしな」
「お気遣いありがとうございます」
「いいよ。むしろわしは口調が変えられないから代わりにそれを許してくれ」
案内するからついてこいとテントの中へ入る進に、ギルが礼を言って共にテントの中へ入った。
「皆様もどうぞ」
茂と共に入り口をくぐり、外観からは決して想像が出来なかった広い空間に口を開けて驚愕する。
「こっちだ。向こうが大浴場。みんなが使ってる風呂だな。もしも入ってみたかったら訓練中のどこかで使ってみると良い」
「こ、こんなっ」
「馬車でさえも広々としていたというのにっ」
「これはみのり屋が錬金術で造った魔導具ですよ。僕たちも基礎を学んでいますが、この構造は全く理解できていません」
「ギルはどうする?わしの部屋で入るか?」
「ううん、僕は大浴場を使うよ。では、また後でお会いしましょう」
アディ達と共に大浴場へ入って行く背中を見送り、もう護衛騎士も何も言わず進について行った。
こうして全員が風呂に入り、食事をしている時に一人ゆっくり風呂に入って戻ってきた進の前にモネとカリブーが大量の食事を並べて行き、共に食べ始める。
「マスター、御代わりはいかがですか?」
「いや、今はこのくらいでいいよ。昼寝をした後で食べるかな」
「今日はずい分少ないなぁ~?」
「昨日エースさんが来ていましたが、もしかして寝不足でしたか?」
「寝不足って程じゃないがな。今日はこの後すぐ寝るよ」
「エースって、ススムに結婚を申し込んでる人だっけ?」
「ここにいるって事は、勝ったのか」
「会った事ないけど、ホーキンスさん達に相手してもらってると相当強いってのだけは分かるよね」
「ススムがマジで戦ってるとこ、一回で良いから見てみてぇよな」
「それ見たいなら相手は和さんじゃなきゃ無理じゃない?」
リックとガークの会話に圧紘が笑い、榊に食事を食べさせていく。
「アツヒロさんにもまだ誰も勝ててないんだって」
「ミッシェル騎士団長がたまにアツヒロ殿のコピーを一人城に連れて帰っていると聞いているぞ」
「王宮勤めって大変なんだなぁ」
「俺には務まらねぇわ」
「ねぇ、誰か卒業したら王宮錬金術師にならない?」
「なんなら貴族と結婚してくれ」
「勧誘雑かよ」
王侯貴族と食卓を囲み、まるで友人の様に会話をしながらスープの御代わりに自分で器を持って立ち上がった。そしてつむぎや満、ひなたに注いでもらってまた席に戻って食べ始める。
「この後またポーションを造り始めるから、みんなもしっかり食べておいてね」
「はーい!」
「早めに終わったら外で遊んでもいいからね」
「マッハで終わらせて魔導具の調整するぞ!」
「今日は先に俺の訓練に付き合ってくれよ!」
「俺でいいなら相手してやろうか?」
「ワット先輩!!」
「この前メイソンにやられてただろ」
「お前らはそれでいいのか」
「面倒見のいい先輩がいて助かるよ」
賑やかに、けれど侍女たちにマナーを教えられながら食事をしている錬金術師科は人数が増えても学年の隔たりが少ないようだ。
食事が終わった後は、至の歌を聞いて皆が回復と食休みをとり、午後の授業を開始した。
訓練一日目はクリストファーたちの護衛から苦情が上がったが、二日目からはそんな事もなく進んでいった。