7.学園生活
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後日、マリー達から保湿剤を定期購入するという手紙が来た。
「女性の美に対する熱意は凄まじいね」
「シゲルを召抱えられないかと相談された」
「うちも。初めて母上を怖いって感じたよ」
「あれだけ即効性があって高い効果がでたらね、欲しがらない女性なんていないわよ」
沈んでいるガウェインとローランドは、茂が渡しておいた王族に献上した物と同じ物を実家に贈ったのだ。
王族と同じというのもあるが、その効果にテンションが爆上がりした母から脅さんばかりのお礼の返事が届いたのだという。
そんな二人を見てファビオラが笑い、スカーレットの実家では季節によっては父も困っていたので母と共に喜んでいると嬉しそうに話していた。
「エラに、男が肌とかに気を使うと隣に立つ者も気を使うと言われた」
「二人でキレイになったら問題ないよ」
「お祖母様の、シワが無くなって髪が艶やかになったのも影響あるかな」
首を傾げ、本当にビオラとそっくりだと二人を見比べる。
「日々が充実すればこうもなるわよ」
「そうだよ。それにその年齢に合った美しさってあるから、実際の年齢よりも大事なのって若々しさと清潔感だよ思うよ?」
自分はいつまでも好奇心旺盛でシワシワのお婆ちゃんになるのが夢だと笑っている茂に、自分もいつまでも元気でいなければビオラに心配をかけてしまうと同じように笑うファビオラ。
「シゲル達は年取っても変わらなさそうだよな」
「小さい事でカリカリしてるとことか想像できねぇ」
そう呟いて皆で笑っていた。
笑っていたギルが一つ息を吐いて真剣な顔をする。
「新学期から、隣国の王太子と姫君が留学してくる事になったよ」
「隣国って、聖国?」
「そう、狙いは十中八九"みのり屋"との繋がりだと思う」
他の皆にも分かるように、少しだけ説明をしてくれた。
この国は大国であり、その政治も安定しているので近隣の小国にたかられる事はあっても依存する必要はない。どちらかと言うと他国の方が仲良くしてくれと言い寄ってくる事が多い程だ。
「今回来るのは聖国で聖女と呼ばれている程回復魔法に優れた姫君と、将来の国王である王太子」
「そんなすごい人達に繋がりを求められる事したかな」
「出店してた時に冒険者たちが泣いて喜んでたじゃん」
「あの人たちとはね?直接関わったし分かるんだけど。私達聖国では出店してないし、スラム街にしかいなかったよ?」
聖国は歴史的にも光属性の魔法に力を入れて研究している経緯から、ポーションよりも回復魔法が重視されてきた。この国も二年前までそうだったのだ。
だと言うのに、この国の王族のほとんどが錬金術を学び始めたとなれば気になるのは当然。
「どっちかって言うと、ギルくん達の偵察?とかじゃない?今後の付き合い方の調整とか?」
「それもありはするだろうけどね。僕がまた学園に通ってるって知ってるだろうし」
しかし、それでもあの国が求めているのは"みのり屋"という賢者だと言い切る。
「みのり屋がまだ正体不明だった時から国を越えて噂が飛び交ってたからね。"賢者は杖をついているからゆっくり現れて忽然と消える"って」
「噂って言うか、ほとんど事実だね?」
賢者って所以外と苦笑する。
「もしかしたら、一方的に施しをしたとかそういう話になってるのかな?あれもちゃんとした商売なんだけど」
スラム街であったのもそこの住人の方が薬を必要としている者が多かったからだ。
「新薬の実験をする代わりに報酬としてお金とご飯をあげてたんだよ。聖国は特に、スラム街の人がお金を持ってると怪しまれたしお店で買い物とか出来なかったから」
「スラムに対する当たり強くない?」
「人種差別が根強い国でスラムにいるって、人間族以外って事だろ?」
「獣人、エルフ、ドワーフとかか?」
「エルフとドワーフって寿命長いよね?」
「うわ、枢機卿が慕われる訳だよ」
「それが気に入らないから派閥も生まれるんだけどね」
「なら差別を止めて自分でスラム街の奴らをどうにかしろよ」
「そこはほら、八百年以上続く歴史と伝統を否定してまでごめんなさいって謝るのって相当な覚悟いるから」
「それで人口減る一方だわ、魔族に呪われるわ、外交拒否られるわしてんだからいい加減認めろよ」
「年を取ると新しい事を始める気力が無くなるのよねぇ」
自分も気をつけようと膝に乗っているビオラの頭を撫でていた。
「父上とも話たけど、こっちの発展を邪魔したり"みのり屋"に変なちょっかいをかけないなら、僕達も聖国の邪魔をしないって所に落ち着いたよ」
種族別の授業を受けたら考えが変わるかもしれないし、王族だけが知っている呪いをかけている魔族についての情報もあるかもしれない。
「なるほど」
「後、決め手は二人とも魔法士科に留学だからね。ならまぁ、いいかなって」
「しかし、王太子と聖女が直接来るとは」
「そうよねぇ。貴方達二人共婚約者がいるし、イーラとナルはまだ婚約をしていないけれど、年が離れていてもいいから婚姻を結びたいって言うには天秤にかけられる物が無いと思うし」
「回復魔法を見せつけて今後の有利に、って考えるくらいなら枢機卿をこっちの国に置いたりしないだろうしね。それこそ今更だし」
フェアグリンがこの国で枢機卿になり、既に二百年近くが経っている。
「聖女と崇められていても、10代半ばと200歳超えのエルフは比較にもならないでしょうね」
「どういう意図があるのか迄は読み切れてないけど、みんなは今まで通り過ごしてよ。それはそれでこっちの有利になるから」
「なるの?」
「錬金術の有効性を示して、魔導具の発展、生活水準の向上を見せつけられるからね」
「何より四年生は最後の一年を邪魔されたくないでしょ」と苦笑した。
「仲良くなれたらいいわね」
「なれるかなぁ・・・」
「聖女と呼ばれてるくらいですから、きっととても優しい方ですよ」
そんな話をしていた数日後、学園に残っていた皆(ほぼ全員)で中級ダンジョンへ潜り、一度攻略して戻ってくる。一度でも攻略すれば、参加した全員で均等に分けてもかなりの収入と素材になった。
「やったー!今までで一番いい革だー!!」
「希少金属と魔鋼もこんなに採れたぜ!!」
「ギルドで処理してもらわなくてもいいから、その分浮いたわね」
「シゲルたちのおかげで移動費タダなのが本当に助かるよね」
「その分働いてもらってるから、トントンだよ」
というかみんななら全速力で走ったら2、3日でたどり着けるよと言われ、それはそうかもしれないけどと返ってくる。
みんなが使わない分の素材は茂が買い取り、肉は半分ほど皆で加工して保存食にし、もう半分はみのり屋で買い取った。
「戻ったら四人はそのままお城に帰るんだよね」
「クミーレルさんとマウロさんもでしょ?」
「聖国の王太子と姫を迎えて歓迎のパーティーをしなくてはならないからな」
「忙しいな」
「ダンジョンとか行っててよかったのか?」
「むしろこの日程で中級ダンジョンが攻略できて素材が手に入るんだぞ。こんなチャンスを逃せるか」
「パーティーとかなかったらもう二回くらい行けたよね」
「父もご挨拶に来ると言っていましたので、会った時に話したら羨ましがりそうです」
「ダンマルタン辺境伯めっちゃ王都に来まくってるけど、大丈夫なのか?」
「学園祭にも出店の時にも来てたわよね?」
「全員が身体強化を使えるようになったから、移動の時間が大幅に減ったの」
「・・・辺境伯領から走って来てんの?」
「半分くらいは馬に乗ってるわ」
笑っているスカーレットに、カタリナ達三年生が「さすが」とよく分からない賛辞を贈る。
「シゲル先生達から聞いた薩摩藩の話にそうとう感銘を受けたみたいよ」
「あれを目指さんでもいいだろ」
「でも榊ちゃんに本を売ってくれって言ってたよね」
「うん、他の藩についても調べてたよぉ〜」
「野蛮じゃなくてダンマルタン藩士って言われるようになったら面白いよね」
「それ、僕か父上が攻めてきた敵国に”やれるもんならやってみろ”って留学進める流れじゃない?」
「聖国とか?」
「地理的にも現実味あるのは反対側の帝国とかかなぁ」
「小国を2つ挟んでいるので今はほとんど関わりがありませんよ」
苦笑しているスカーレットだった。
今回聖国から留学に来た王族二人を王都まで無事に送り届けてくれたのは別の辺境伯家だ。
「・・・走って来るのかな」
「流石に馬車よ。聖国から来るのは身体強化が使えない人がほとんどなんだもの」
「いつかダンマルタン辺境伯領にも行ってみたいよな」
「俺たちが錬金術師科卒ってバレたら訓練に強制参加かもしれねぇぞ」
「さすがに覚えてねぇだろ」
「覚えててもこっちゃただの平民だぜ?」
「平民だろうとスカーレットの学友だし、向こうからしたら最高に声をかけやすい強者だよ」
「戦闘狂じゃないんだから」
そんな話しをして笑っていた。
王都へ戻ってからはファビオラを含む王族たちが一度城へと戻って行った。歓迎のパーティーが終わったはずのある日、錬金術師科塔の窓からザックが入ってきてアディの席に停まると咥えていた手紙を置く。
「これ、私が読んでもいい手紙?」
「コクン」
茂が確認を取ってから中を改めた。
「緊急事態?」
「うーん、そこまでではないかなぁ?王子様とお姫様が”みのり屋”を紹介して欲しいって言ってるんだって。どういう意味で言ってるのか分からないから、しばらくの間はみんな一人で関わらない方がいいかもって」
「私達聖国で悪いことしたっけ?」
「していないからこそだと思いますよ」
「何か、良くないことがあったのかな?」
不安そうに表情を曇らせる満を見て、梅智賀が殺してくるかと呟く。
「待て待て!いきなり殺そうとするな!」
「あたしたちでもそれはまずいって分かるわよ」
教室にいたアランとメイナが梅智賀を止め、満もそれはやりすぎだと注意したので今は静かに満にくっついている。
「危ねえ、先に”みのり屋”について説明しといてもらわねぇとな」
「情報漏洩です」
「こっちゃ国際問題の瀬戸際なんだよ」
「後数日もしたら直接ご挨拶するしね」
返事を書くからちょっと待っていてくれとザックに言い、その場で手紙を書き始めた。
「結構早く寮に入るんですね?」
「俺達も含めた教師全員に挨拶してくれるんだとよ」
一番の目的は臨時講師の"みのり屋"に顔繋ぎをする事だろうがとアランが言う。
「その時に直接会えるんですし、人柄とかその時に分かりますよ」
私達に会いたがっているのも、どういう意味かはその時に分かるかもしれないと、みのり屋での方針は既に決まっているようだった。
「何つーか、お前の良いところではあるんだけどよ、それでいいのか?」
相手に聖女がいるとはいえ一国の王族達。巨大な敵が出来るかもしれないのに優しすぎないかと心配そうに茂を見下ろせば、問題ないと返される。
「私が厳しくできない所は現津さんがフォローしてくれてますから」
「優しさと厳しさの差あり過ぎじゃない?」
「茂さんとみのり屋に何もしなければ良いことです」
「何かしそうに感じたらその時点で敵だ」
「みのり屋の厳しさ担当が過激派なんだよなぁ」
メイナとリックがそう言いながら、ホムンクルスの卵を撫でていた。