7.学園生活
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それから数度歌劇を開催すれば生徒同士で好きな演目について話し合ったり、一緒にごっこ遊びをするようになった。
「バルス!」
「こんな所で滅びの呪文を唱えるな!」
なんとも微笑ましい光景だ。
「先生!またナウシカ見たい!」
「あれも面白いよね。でも次は”天使にラブソングを・・・”の予定なんだよね。これも面白いから楽しみにしてて」
「ほらほら、歌劇は舞踏会が終わってからだよ」
「はーい!」
一年生たちがクアンドロに促されて教室へと入って行く。今日は豊が作ってきたドレスの調整をする日だ。
「今年は他の科からも依頼が来たんだろ?」
「全員分はさすがに無理だから、お抱えの仕立屋さんたちと一緒にね。私は四年生と先生たちの分だけ作ってるよ」
「騎士科と魔法士科も色で統一したのか?」
「そうだよ。騎士科は青、魔法士科は黄色」
「色の三原色ってところが粋だよね」
「”三原色”?」
アディ達が首を傾げたので豊が画用紙に絵具を出して説明をする。
「この三色があれば、どんな色でも作れるんだよ」
「本当だ!」
「すげー!!」
「うち(錬金術師科)は元々赤を使ってたし、相性も良いよね」
「みんなは何色のドレス着るの?」
「今年からはみのり屋として参加するし、普通に制服で出るよ」
「制服とかあるの?」
「あるよ。一目でみのり屋って分かってもらえて便利だったりするからね」
「冠婚葬祭の時も制服着れるから楽でいいんだよな」
「考え方」
そんな話をしながら全員のドレスを見て手直しも終わった後で一息入れた。
ドレスも完成し、全員のダンスも十分に形になった所でやってきた舞踏会。
「みんな、笑顔だよ。笑顔」
茂にそう言われ、ぎこちなく笑う一年生に他の生徒たちが笑う。みんなで肩を叩いて会場へと入って行った。
例年よりも華やかな印象を受けたらしいオルギウス達が、いったい何をしたのだと聞いてきたので予め用意していた献上品を見せる。
もちろん、王族全員、教会、孤児院分の保湿剤だ。
周囲から注がれる視線は去年よりずっと穏やかだったのだが、そのほとんどがテオたちホムンクルス、ゴーレムに注がれていた。首や頭にリボンを付けておしゃれをしているみんなはとても可愛い。リリーも頭にユリを二輪咲かせている。
アンが踊っている時は踏まれたりしない様に他のホムンクルスたちと一緒にいるように言われていたのだが、どうしてもアンの近くにいたかったらしいリリーの為に、アランがアンをダンスに誘った。
するとテオがリリーに手を出し、モコモコと動いたリリーの体に手のような突起が現れる。
アラン達の踊りに合わせて二人もクルクルと回り、可愛いものが好きな生徒たちが自分もテオと踊りたいとアランに詰め寄るも、テオ本人がそれを拒否した為泣く泣く引き下がると言う一幕もあった。
茂たちがオルギウスに挨拶をしていると、マリーにテオに触れないものかと相談された。
「近くで見るとまた・・・」
そう言って手を伸ばすが、テオはすぐにアランの後ろに隠れてしまう。
「ホムンクルスもゴーレムも、主人とその家族にしか触らせませよ」
アディに言われ、その肩に停まっているザックに手を伸ばせば、見つめ返してくるが避けることなく触らせた。
「ねぇアンドリュー、ホムンクルスを造る予定はないの?」
「ありませんね」
「僕はホムンクルスにするつもりですが、テオのような姿はしていないと思います」
母であるマリーに、首を横に振る息子二人。
「私はゴーレムにするの!」
「僕もどんなホムンクルスにするかもう決めてるよ!」
塔に行った時に図鑑を見て一目ぼれしたとナルが言うも、その動物は母たちが嬉々として可愛がりたくなるタイプの外見はしていない。
「もっとこう、思わず触れたくなったり、触って癒されたりする子にしない?」
「感性は人それぞれですよ」
「もうすぐ温度調節ができるようになりますから、ザックも温かくなりますよ」
「手触りの問題なのよ」
近い感性を持っていそうなアディが一番遠い所にいるらしい。
王族たちとそんな話をし、アディとエラが踊る時はザックがオルギウスの肩に停まってビオラと何か話しているような雰囲気を出し、すごいなと改めてゴーレムというものに感心していた。
錬金術師科のメンバーで談笑していると、魔法士科の四年生であるカミーラがノアにダンスを申し込んできた。
「え、」
驚いて断ろうとしたが、以前教えてもらったお断りの文句はもう使えない。どうすべきかと眼を泳がせていると、相手が真剣な表情をしている事に気づき茂の言葉を思い出す。
”勇気を振り絞っている”
好きな人をダンスに誘うのは、相当な勇気がいるとも言っていた。その答えにたどり着き、カミーラの様にノアの顔も赤くなっていく。
そして、一つ頷いてカミーラに手を差し出した。
二人で無言のまま一曲踊り、一礼をして中心から外れる。
その手を離すとき、ノアはもう一度礼をした。
「ありがとうございました」
自分をダンスに誘ってくれたことをとても嬉しく思うと礼を言って頭を上げる。相手は貴族のご令嬢。
そして、自分は卒業すれば田舎で医者になる平民。
これからの人生で関わり合う事はないだろうが、とてもいい思い出になった。そう思ったから笑いかけ、手を離して仲間のいる方へと歩いていく。
みんなに冷やかされながら、やはり笑った。
舞踏会が終わり、四年生が卒業する為お世話になった先輩たちにポーションや魔導具を贈る最終チェックに入ったのだが、カミーラに何か渡さないのかとノアに話しかける。
「残らないものがいい」
「なんで?」
「もう、会わないから」
その言葉に、なんとなく何を言っているのか分かったみんな。クミーレルやギル、アディ達までもが宮廷錬金術師団に入ったのなら男爵位、そこから功績を上げたのならそれ以上の家格と結婚することも出来ると言う。
しかし、ノアは首を横に振った。
「村に戻る」
ノアにとって爵位よりも結婚よりも、村で医者をする事の方が重要だった。
それでも自分に好意を持ってくれたことは嬉しかったからお礼がしたいと言われ、なら花を贈ろうとアンが手を叩いた。
デザインは豊に頼むと、可愛らしいリボンも用意してくれたので花はみんなで何が良いかと考え出す。まだ森でもあまり咲いていなかったため、球根などを集めてリリーに咲かせてもらった。
そして、ブーケをノアが作ってみんなのプレゼントと共に渡す。
「ありがとうございました」
礼を言うノアに、カミーラは泣いてしまったが最後には笑ってくれてよかったと全員で胸を撫でおろす。
「これで良かったの?」
「うん」
お礼が言えてよかったと、またみんなで騒がしく肩を叩いて笑い合った。