7.学園生活
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次の日、元気に保育室へ入って行く子供たちに手を振り、優達に後を頼んで居酒屋のようになっているテント内を整えていく。
テントの横に大きなガラス戸を付け、その上にも広いタープを設置。その下にテーブルとイスも用意してビアガーデンのようなスペースが出来た。
「受付でまず、外と中のどっちがいいか確認してね。中がいっぱいだったら外でも良いかを聞いて、席がなければ相席でもいいか、そのテーブルに座ってるお客さんにも確認してあげて?」
茂達は今日一日料理に付きっきりになってしまうため、テント内のホールは進、外席は至が中心となって給仕することになっている。
侍女たちはまだしも、術師団員も教師たちもノリノリなのはどうなのだろうか。
いや、錬金術師になるくらいなのだから元々好奇心は強いのだろう。
「はぁい、みんなもエプロンつけてねぇ~」
全員にエプロンを渡し、三角巾で頭を覆えばそれは完全な居酒屋だった。
御付着の侍女もいるが。
「今日も一日元気に頑張りましょう!」
「おー!!」
本日のメニュー「酒場」
すぐに騎士と思わしき男たちが数名入って来て中と外に分かれて座りメニューを見るが、どんなものか分からないと首を傾げるのでひなたが念話で説明をした。
「では、私はその天丼という物を一つ、果実水も付けてくれ」
「俺は鉄板焼?を頼む」
後果実水もと言われ、大きな声でハキハキと返事をする子供。
キッチンにいる満へ注文を通せば、すぐに現津が果実水を注いでトレーに乗せ、先に持って行くように言う。
ゆっくりと歩いてテーブルへ辿り着けば、侍女たちも騎士たちもハラハラしていたが礼を言いながら受け取って口を付け、眼を見開きながらいっきに飲み切っていた。
「すまん、御代わりを頼む!」
外と繋がる大きな扉からも果実水の御代わりが出ていた。
果実水は現津たちに任せ、満たちは料理を作り始める。ジュージューと音を上げながら食欲をそそる匂いが漂い出す。
「はい、天丼と鉄板焼。熱いから気をつけてね」
「では、共に行きましょうか」
熱い鉄板は現津が持ち、天丼は子供が持つ。
そしてテーブルへ持って行けば、果実水の御代わりもコップに注ぎ、ごゆっくりと席を離れた。
食べ始めた二人は夢見心地の表情で手を動かしている。
外へも料理を出していれば、続々と客が入ってきたので侍女長が受付カウンターで席はどちらが良いかと確認し、子供たちにどの席へ案内するかの指示を出してくれた。
「あんたが作ってんのか!?」
「はい、料理は私の趣味ですから」
「うちのみんなは基本料理うまいよ」
やるかやらないかは置いておいてと、進がおしぼりを出しながら言う。
連日来てくれていた冒険者たちがカウンターに座り、小さな満が大鍋を振っている事に驚いていると、聖国出身の六人がやって来た。
「はぁ~、良い匂い~」
「室内席と外席のどちらでも案内できますよ」
「中で頼む」
「あれ、森から来たのか?」
「よくわかんなぁ」
カウンターの近くにあるテーブル席へ案内し、おしぼりを渡すとその心地よさに驚いていた。
「どれも美味そうだなぁっ」
他の客が一心不乱に食事をしているのを見て、どの料理にするよと話し合う。
「おススメってあるか?」
「とりあえず全員で食うならグリフォンサイズにしときな」
腹にたまるのが良いなら米にするといいんじゃないかと言われ、餡掛けチャーハンと餃子セットにすると決めたようだ。
厨房へ注文を通すと、一人分の料理を出すのと同じ速度でグリフォンサイズ(5~6人分)が完成して厨房から直接皿を運んでくるとその巨大さにどよめいた。
「おまたせ、グリフォンサイズのチャーハンと餃子セットだ」
「ぐ、グリフォンサイズっ」
「す、すげーっ」
「これ取り皿な。ごゆっくり」
「うっま!!」
「美味い!!」
「て、手が止まらねぇ!!」
テーブルの中央に置かれた巨大なチャーハンと餃子を若い冒険者達がガツガツ腹に収めていく。
他の客たちも壁に描かれているサイズ表の真意に気づき、注文の仕方が変わってきた為子供たちが焦りだした。
しかし、焦らなくていい、走る必要はないと声をかけて時折水を飲ませながら配膳にもどす。
料理を持ち帰りたいという者には、今日中に食べると言う約束でサンドイッチかお結びを渡していた。
店内からも外からも色々な叫び声が響いていて、まだ酒の注文は入っていないのに陽気な雰囲気が漂っている。
少しすると新しい騎士と魔法士が来たようで仲間に席を譲る体で交代をしていく。帰る前に厨房へ一声かけてくれたので、茂たちも礼を言ってから料理作りに戻った。
子供達が疲れてきたのを見て先に休憩へ入れ、交代でみんなが休みながら半日を乗り切り、昼が少し過ぎた頃にお忍びで王族たちがやって来た。
現国王は自由だなと思いながらいらっしゃいませと声をかければ、ホールで給仕をしていたアディが気が付いたのか遠い眼をした。
今日はマリーたち王妃三人とイーラ、ナルも来たようで、別の席にはすでに騎士たちが何人も座っている。
「席は空いているか?」
「今は満席でして」
侍女長が少し待たせてしまうと言う前に、一つのテーブル(騎士)が「俺たちはもう食い終わったから空けるぜ」と立ち上がり、お代を差し出した。
ひなたが子供たちとテーブルを片付け、綺麗に拭いてから席へと通す。
すれ違う時に礼を言っていたので、まるで初対面に見えるが、事情を知っているアディの表情は死んでいた。
もうすぐ成人の身で連日の保護者参観はメンタルに来るのだろう。
「みんなも水飲みながらにしてね?」
「おう、気をつけてるぜ」
「ガークさんのご両親は、今日は来ないんですか?」
「仕事が終わったら飲みに来るってよ」
「さすがドワーフ」
「うちの親はもうすぐ来るかも」
「うちも。昼休みに来るって言ってたから」
メイナとポーの両親も来てくれるようだ。アンの両親は今来て席に着いたばかりなのでアランが挨拶をしていた。
少しそんな話をしていれば、王族からも注文が入った。
唐揚げ、カツ、天ぷら、揚げ物好きだなと思っていれば、エルフの冒険者が一人、カウンターへ座ってつむぎへ豆腐尽くしの料理と果実水を注文していく。
「肉や卵、出来れば動物の乳も使わずにお願いいたします。あ、サイズは全部ノームで」
「”かしこまりました”」
王族も枢機卿も来ちゃったのかと気づいたメンバーが遠い眼をしている中、ビビが果実水を持って子供たちと共に給仕をしていた。
酒をオーダーされたのでおとうしが運ばれているのを見てオルギウスがあれはどのメニューなのかと聞くと、お酒を注文してくれた者にはサービスで小鉢が出るのだと説明する。
「まだ仕事があるんでしょ?今日は諦めなさい」
いきなり少女に酒を止められたのでマリーたちが驚いていたが、オルギウスが不服そうな表情をするだけで終わらせている。
ミッシェルまでが大人しくしているのを見て、まさかこの少女がファビオラなのかと驚いていた。
幻術だとは聞いていたが、こんなにも鮮明なものなのかと眼を見開いている。
「ビビ、料理が出来てたよ」
「ふふ、こういう仕事も楽しいわよね」
グレンと呼ばれた少年が天ぷらと巨大米をテーブルへ置く。
「グレン、え」
ギルがグレンと名を変えているとは聞いていたらしいマリーが、自分の息子をまじまじと見てまた眼を見開いていた。
「ふふ、緑も黄色も意外に似合うでしょ?」
髪色どころか眼の色まで違うと、こんなにも別人になってしまうのかと言葉にせずに飲み込む。
酒を頼んだ冒険者の前に小さな升の中にグラスを置き、注ぎ出せば水じゃないのか?と首を傾げた。
「アルコールの強いお酒ですから、お気をつけ下さい」
現津にそう言われ、仲間同士で顔を見合わせてから顔を近づける様に一口ちびりと飲むと口を手で押さえながら立ち上がったので集囲の視線が集まる。
「頼む!一本売ってくれ!!」
「申し訳ありません。酒屋の日にご注文下さい」
「いつやるんだ!?絶対来る!!」
「今の所、いつ酒屋を営業するか決まっていません」
「、うそだろ」
崩れるように椅子に座り込むので、少し可哀想だった。
「こんな酒を知って、他の酒で我慢なんかできるかよ・・・」
そう呟いて大切そうにもう一口飲み「最高だ」とかみしめる姿に、仲間の冒険者たちも他の客もゴクリと喉を鳴らす。
そして、もう仕事はしないと決めたのかそのパーティー以外の冒険者達が酒を注文し始めた。
「ウィスキーのロックはきついと思いますので、水でお好きな濃さに薄めてください」
水の入ったグラスに美しい琥珀色の酒が注がれ、同じテーブルを囲んだ者同士で歓声を上げた。
「何か甘い物はありますか?」
「本日のスイーツはアップルパイのバニラアイス添えです。卵、動物性ミルクは使っていない材料で同じメニューもありますのでご安心ください」
稲荷寿司が最高と頬張っていたフェアグリンからもデザートの注文があったので、豊が切り分けた大きなアップルパイにクープでバニラアイスをすくい、丸い玉状にして乗せて出せば、それを見ていた他の客たちが自分もあれが食べたいと手を上げて注文を始めた。
その中に王族も混ざっていて笑ってしまう。
「アップルパイもバニラアイスも、どちらも最高ですね!!」
「お口に合いましたか?」
「毎日食べたいくらいですよ!」
明日は食事処ではないようだが、それでも楽しみだとウインクをして持ち帰りのお結びを大切そうにアイテムボックスへしまい、お金を侍女長に渡して帰っていく。
マリーたちもアップルパイをとても気に入ったらしく、持ち帰りで一人一切れずつ注文して戻っていった。
夕方になり、いつもより早めに仕事を切り上げてやって来た客が多くなる。
しかし、みのり屋の閉店は早い。
なのでドラゴンサイズのオードブルを今日中に食べるという約束でガークの父親が知り合いのドワーフを数人連れて注文をし、酒の噂を聞いていたようでそちらも買わせてくれと頼みこんできた。
「すみません、今日はお売りする事が出来ないんです」
残念そうに帰っていくが、後からガークが追いかけて来て背負っていた大きな瓢箪と数個の標準サイズの瓢箪を父に渡す。
「売った訳じゃねぇから、他の奴には内緒にしてくれよ」
他にも買いたいが買えずじまいの客がいるからと言って、元気に走っていく息子がずい分逞しくなったと嬉しそうに仲間と家へ戻り、初めて飲んだ清酒にドワーフ一同大騒ぎをして夜を明かした。
因みに、今日来てくれたアンたちの家でも同じ事が起こっていた。
「はぁ、みんながいてくれて助かったよ」
「私たちだけだと手が足りなくて、いつもメニューは少ないんだよね」
「働いたぁ~」
客のいなくなったフロアで椅子に座りながらぐったりと力を抜く茂たち。
「みんなもお疲れ様。せっかくだし、今日は私たちも外で食べよっか」
すでにつむぎ達が外の席を整えてくれていたので、今日配膳をしていた料理の他にもサラダなど、サイドメニューも並べていく。
「いっぱいあるから、ゆっくり食べてね」
食前の祈りをしているみんなを見てから、いただきますと手を合わせる。もちろんジンも両手を合わせていたが、その隣でベンノも両手を合わせていた。
「先生たちもお酒飲みますか?」
明日に響かない程度に抑えてくれるならと言って酒を出せば、子供たちや生徒たちも興味を持ったようだが、みんなは卒業してからねと止めておく。
「お酒は感覚を鈍らせるから、自分でも楽しく飲める範囲を見極めてからね」
そうしなければ気を失っている間に取り返しのつかない事になる時だってあるよと注意をすれば、大人たちも失敗談には事欠かないと苦笑して三年生以外も返事をしていた。
「親父が売ってくれってうるさくて悪かったな」
「
ドワーフ族の国へ行った時も全員水のように飲んでいたからそういう種族の特徴なんだよと言うと、皆が他の国へ行った話をせがんでくる。
質問に答えていると満腹になった子供たちがその場で眠り始めてしまった。
「お風呂は明日だね」
「俺が部屋に連れてくわ」
「おれも手伝う!」
「お前も眠そうにしてただろ」
年齢の割に体の小さな子が多いとはいえ、ジンが二、三人まとめて担ぐと隣にいたベンノが自分よりも小さい子を担ごうとするのを止める。
「ジンくんっていいお父さんになりそうだよねぇ」
「結婚とかする気ねぇけどな」
肩をすくませながら、ベンノを連れてテントの中へと入っていく。
大人たちも、ホロ酔いで気分良さげに笑って子供達を抱き上げて連れて行ってくれたので、夕食の片付けをして眠りについた。