7.学園生活
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「あ、ジンくん。ここの所ずっと忙しかったから冒険者ギルドに行けてないよね?もうすぐ出店するからお金に余裕がありそうなら登録をお願いしたいんだけど」
「ああ、いいぞ。ダンジョンでも結構稼げたし」
というか本当に忙しくてあの話をした日からそんなに時間が経っていたのかと驚いたような、呆れたような表情で頭をかき出す。
「今から外出届出して、明日にでも登録ついでにスラムに行ってくるわ。今何人くらい子供がいんのか分かんねぇし」
「子供たちも仕事してるだろうし、予定開けておいてもらわないといけないしね」
これで釣れたら釣っといてとドライフルーツのパウンドケーキを八本分切ったものを大きなバスケットに入れてジンに渡す。
「飲み物もあった方がいいですかね?」
「あ、喉に詰まっちゃうか」
「炊き出しじゃねぇんだからそんなに気にすんなよ」
というか炊き出しのほうがもっと雑だったぞと言いながらも、お茶の入った水筒も持って返事をする。
次の日の朝から出かけたジンは、昼には戻ってきた。
「とりあえず働けそうな10才前後の奴が15人いた。ケーキ食わせたらやる気もすげーあったし、そいつらは大丈夫だと思う。ただ、働くには力不足な5才前後が30人くらいて、そいつらも来たいって騒いでたから当日お仕掛けてくるかもしれねぇ」
一応仕事だから来るなって言ったけどと渋い顔をする。
「出店中は泊まり込みだろ?だから働ける奴らが面倒見てる下の奴らを置いて行きたくねぇって言っててよ」
だから連れてきてしまうかもしれないと頭をかいた。
「そうか、小さな子を置いてくるのは心配だろうしな」
アディの言葉にギルが頷いて賛同すると、それもあるがと言いづらそうに口を開く。
「なんつーか、人買いとかに拐われることがあんだよ。後は、大人に襲われたり」
だからスラムの子供たちは基本的に数人で動くし、働けない子供は一箇所に集まって面倒を見ている年上がいなければ出歩かないようにしていると言われ、貴族家出身は口を閉じた。
平民のみんなも、言葉をなくしている。
「王都ではそんな感じなんだ。なら小さい子達も連れてきてもらってもいいよ?働くのは無理でも保育室で預かれるし」
「・・・保育室?」
「うん。お店をやってる間は子供たちだけで遊んでてもらうの」
火の民やひなた達に見ていてもらうので心配はないという。
「前に種族の特徴の授業をしたでしょ?」
火の民は精霊種なので子供は皆で育てるという特徴があるのだ。
「もちろん食事も出すよ。その分の費用は子供たちが働いて稼いでくれるし、最終日に支払うのはそこから天引きして渡すように準備しておくね」
「マジか。それで大丈夫なのか?」
「それ以上に稼ぐ自信あるしね?」
「福利厚生はしっかりしていなければ将来的に損をするのはこちらですよ」
「ふく、なに?」
「福利厚生です」
現津が福利厚生の説明をしてくれているのを聞きながら、茂が笑ってジンを見上げた。
「その子達にも説明する必要がありそうだし、私達も前日からテント出してるし、その時につれてきてもらってもいい?」
「お前のは施しって思わねぇんだよなぁ」
「こういうのは持ちつ持たれつっていうんだよ」
杖をついて歩く片目の茂に苦笑して「分かった」素直に頷くジンに、子供たちの作務衣を豊に頼んでおくとまた笑いかけていた。
それから出店日までみのり屋の商品を全員で覚え、実際に使って体験し、どうお客さんに説明したら伝わりやすいかの話し合いをする。
そして、侍女達に接客の仕方を教わった。
もちろん王族たちも。
「さすがに王太后陛下、王太子殿下方が市民の前へお姿を表すのは、」
「そうですねぇ、何かあったら大変ですし」
「こんな楽しそうな機会を逃すなんて・・・」
「そうですよね?」
ファビオラにギルが便乗している姿に呆れているアディ。
「変装でもしようかしら」
「大人がいる時点で気づかれてしまいますよ」
「うーん、さすがに成長が早いっていう言い訳は通じないかぁ」
「アンドリュー様はよいのですか?」
「私は役に立たない土の魔石を買い漁って散財するような不良の第二王子ですから」
「一人だけ抜け駆けしようとしてるね?」
アディ達はそのまま参加すると気づいたギルがズルすぎると不服そうに顔を上げた。
「なら現津さんにお願いしてみましょうか」
「お任せください」
茂の言葉に即答で笑顔を見せると、ファビオラ達に手をかざして魔法をかける。
近衛騎士たちも子供の姿になり驚きにざわついた。
「まぁまぁ!!」
「あ、でも皆さんなら子供の頃を覚えている方がいらっしゃるかもしれませんし、髪と目の色も変えてもらいましょうか」
「シャッフルでいいですかね」
幼くなったそれぞれの髪色と目の色と交換すれば、誰が誰か分からなくなった。
「すごい!あ!!声も高くなった!!」
「これなら大丈夫じゃないですかね?ありがとう、現津さんのおかげでみんなで出店できるよ」
「茂さんの、引いてはみのり屋のためになる事ですから」
「ならない事でもシゲルのお願いなら叶えただろ」
「当たり前ですよ」
なんの為の夫ですかと言われ、夫って大変なんだなと呟く男子たち。
「別に何も出来なくても良いけど、やろうとしてくれるのは嬉しいよ」
「そこで出来ちゃうんだもんね、アキツくんは」
「これってどういう魔法?」
「ただの幻術ですよ」
「幻術でこんなに気持ちも変わるの?!」
「おしゃれしたら気分が上がるのと同じ事だと思うよ?」
「これならみんなと働いていても気づかれる事はなさそうですね!」
近衛の騎士達も、今回は名前で呼び捨てにすることを許してくれたので、急に三年生が増えたみたいだと笑う。
「名前も変えなければすぐに気づかれてしまいますよ」
「なら私の事はビビと呼んでもらおうかしら」
ファビオラが偽名を決めたので、ギルとスカーレットが顔を見合わせて考え出す。
「じゃぁ、どうしようかな。グレンなんてどう?」
「では、私は、サブリナで。辺境伯領ではありふれた名前でしたので」
こうして三人の偽名も無事に決まった。
「あ、ビオラちゃんはどうしようか。人のふりも出来ると思うけど、そうなると保育室で遊んでる子達と同じ年頃になっちゃうね?」
「フリフリ」
それは嫌だと首を横に振るのでファビオラも茂と一緒にどうしようかと考え出す。
「幻術で私と双子に見せても、接客でお客さんに触れてしまうかもしれないものね」
「プクー」
触られるのも嫌だと頬をふくらませる姿は、本当に幼い子供のようだ。
今は髪色などが違うが、並べば顔立ちがそっくりなのもよく分かり、年の離れた姉妹に見える。
「ビオラは風属性ですから、幻術よりも光の反射について学び姿を消せるようになるのが良いと思いますよ」
「ああ、それいいね」
ではビオラは魔法というか、光の屈折の勉強をしようかと言うと、全員がバインダーを持って席についた。