7.学園生活
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ファビオラもいるという事で、今回は王太后の近衛騎士達もついてきたし、神官も四名来てくれている。
しかし、こんなダンジョン攻略があるなんてと、錬金術師科が出す魔導具やテオ達を見て目を輝かせていた。
「これがあれば遠征先でも温かい物が食べられるのか!」
「こんなにも小型に出来るのはシゲルくらいですけどね」
「みのり屋のお店も開くつもりなので、その時はいらっしゃって下さい」
「商魂逞しいな」
「みんなにも手伝ってもらうつもりだからよろしくね」
もちろんお給料出すよと言われ、みんな大喜びで「いつするの!」と聞いてきた。
「舞踏会の準備もあるし、出来るだけ早く開きたいとは思ってるけど」
「舞踏会!」
「また研究する時間が減る!!」
「クソ!」
悔しがっている姿を他クラスと騎士たちがなんとも言えない表情で見ていた。
「懐かしいわぁ。ダンスって覚えてしまえば簡単だけれど、慣れていないと大変なのよね」
「数日に一度はダンスの練習も組み込んでいるので、根を詰めなくても良いとは思いますけどね」
ただ身体強化を使えるようになったばかりだとダンスも気をつけて練習しないとと言う。
「あら、なら私も練習が必要ね」
「あの練習って、王族必要?」
「まぁ、身にはなると思うぞ」
「面白いし、知っておいて損はないんじゃない?」
「俺もダンスはそこまで好きではなかったが、あれは面白いと思ったぞ」
「普通の練習と違うの?」
ギル達も参加したが、普通にステップと姿勢の練習だったよ?と首を傾げた。
もちろん話を聞いていた皆が同じように首を傾げている。
「あの授業は一年生だけにしてるからね。みんなはもう出来るから」
「どんな授業内容なの?」
「なんというか、・・・実用的です」
「ダンスが?」
「はい」
「シゲルちゃんの授業はいつも具体例が数多くあるので」
「実際、ダンスパーティーでそういう場面を見たことがありますし」
そういった"事故"が起こった時の対処方法を知れるのは助かると言うアディ達三人に、茂へ視線を向けた。
「学校を出た後も使える事を教えてあげたいですからね」
自分で戦う術を教えておかないと私が後悔しますからと、笑いながら夕食を食べようと皆に声をかけた。
三階層までゆっくりと素材集めをしながら進み、術師団だけでなく子供達までもがテキパキと余裕そうなので「すごいな」と声が漏れてしまった。
「二年生はこのダンジョンに一度来たことがありますから」
「そうなのですか?!」
「いや、まぁ、はい」
「こんな風に採取するのは初めてですけど」
「あの時はまだ錬金術が不味いポーションを造るくらいしか出来ないって思われてる時だったので。みんなのメンタルも弱っちゃうと困るし、これから大衆の前で戦わないといけなかった時だったしね」
"自分は出来ない"という思い込みをする前に力がある実績を作りたかったのだと言うと、「それは大成功だよ」とアランが呟いてからテオに顔を埋めた。
「もうコイツら担いで走るのも、崖から飛び降りるのもやりたくねぇ・・・」
「今なら自分で飛べますよ」
「あの蟻もなかなか良い素材になりそうだよな」
「コクン」
「もっと奥まで行くなら日数もだけど、マナポーションの方を沢山造って来なきゃ」
「アキツ達が回復してくれるにしても、まずマナポーションが無いと出来ないしね」
「もし次に中腹まで行くなら、ルーカスと行きたいな」
「それはあたしも!」
みんな自分の造っているパートナーと行きたいと話し出すが、他の者たちは茂を見る。
「体をいくら鍛えて知識を詰め込んでも、精神が弱っていたんじゃ宝の持ち腐れですからね」
「中級ダンジョンを、中腹までいったのですか?学生だけで?」
「いったい、何日かかったんです?」
「あの時は六日間でしたね。帰ってから一日ぐっすり休む余裕も欲しかったので」
「たった六日で?」
「はい。なので採取等無しで、ずっと走り続けてましたよ」
「戦闘も、倒す事よりも"いなす"を中心にしていました」
「おかげで強敵に立ち向かう勇敢さと逃げる判断もしっかりと付けられるようになったよね」
「・・・そうですか」
近衛たちがちょっと引きながら、これから地上へ戻るまでの間ポーションが足りるかと在庫を確認していく錬金術師科を見つめる。
「うん、これだけあれば足りるかな」
「今回も三階層で大物に当たったな」
「やはり新人は二階層までという話は本当だったのですね」
教師やクミーレル達が話し合いながら日誌を書いていく。
「テオのアイテムボックスってすげーよな」
「ポーションの質が落ちてないし、まだ入るんでしょ?」
「キュッ」
「明日もあるから、ゆっくりしてろ」
手を上げて返事をすると、出したポーションの空き箱をポケットに仕舞い、アランの頭の周りを飛び始めた。
「ザック、念の為もう一度魔力を補給しておくか」
「リリーは喉乾いてない?明日の朝まで待てる?」
「私は大丈夫よ。あなたのお陰だわ。寝る前に魔力補給をしましょうね」
ホムンクルスやゴーレムとのやり取りを見て、羨ましがるのは錬金術師だけではない。
しかし、やはり羨ましがり方が凄まじいのは術師団と三年生達だろう。まだ魂が定着していない卵に話しかけたり撫でたりと忙しそうだ。
「魔法の中には従魔契約や召喚術などもありますが、ホムンクルスはそれとも違うのですよね」
「違いますね。こればかりは造ってみた人にしか分からない感覚ですけど、自分の魂の欠片ですから」
錬金術を知らない権力者がゴーレムの軍隊を造って戦争に行かせると言ったが、その作戦に錬金術師は誰一人として頷かなかったという話があるくらいだと言えば、騎士だけで無く教師たちまでもが驚いていた。
「その権力者は、時間とお金をかけて育てた錬金術師たちは手元に残して代えの効くゴーレムだけを戦わせると言ったのが溝を広げてしまいましたね」
「では、なんと言えばよかったのですか?」
「他の兵士たちと同じですよ。国の為にゴーレム、もしくはホムンクルス、タルパと共に戦ってくれと言えば良かったんです」
「その話は父上にもした方が良いな」
「そこはアディくん達に任せるよ。私は実際に国とか領地とかを背負って戦う立場にないから」
「でもその話は事実でしょうね。私もビオラだけを行かせるなんて、身を切られるよりも辛いわ」
ファビオラの言葉に、大人達は全員が目を見開く。
「表現が難しいんですが、大切なものを遠ざけて自分は前線で戦う事は出来ても、自分だけ安全な場所にいて大切なものが傷付くのを黙って見ていろと言われるのは、飲み込めないというか。憤慨ポイントというか度合いが違うというか」
この話に納得してくれたのは、意外にも神官たちだった。
「神から与えられた魂を更に分けて造った片割れなのですから、切っても切れないのは当然でしょうね」
「ご理解いただけて良かったです」
「これから錬金術師が多くなっていくなら重要な案件だね」
改めて王宮へ報告しようと王族が話し合っているのを見て安心している術師たち。
全員三日後には五体満足でダンジョンを出て学園へ戻っていく。
今回から移動は各科の馬車をみのり屋が引いているので移動時間が短縮できていた。
騎士科では三国、曙、銀杏、花丸がとても人気だ。魔法士科ではモコが馬車を引くこともあるが、どちらかというと可愛いから人気と言った方が正しいかもしれない。
学園へ到着した後、他学科が休憩に入る中、錬金術師科は倒した魔物を解体していた。
「すげー!中級ダンジョンだと上層部だけでこんなに質がいい魔石が手に入んのか!」
ディーノ達一年生が出てきた魔石に目を輝かせている。
「この皮ならジンくん達の魔導武器にも耐えられるんじゃない?」
「今までで一番レベル高いしな!」
「同じ品質の皮が五枚かぁ。うち(錬金術師科)で何枚もらえるかしら」
「皮使う人も多いもんね」
「どう等分するかの話し合いの前に、こちらが必要な分を割り出さなければな」
校庭の一角で作業していれば、見学していた他学科の一年生達が次は自分たちも行けるのかと期待に胸を踊らせているのが分かる。
「テオ、他には何が残ってる?」
「キュー、キュキュ」
ポケットから一部だけ出して見せるテオに、なら今日中に解体は終わるかと呟きながらテオの頭を撫でるアラン。
「肉は厨房に持って行けー!皮を乾かす班と解体班はそろそろ交代するぞ!」
大物を出すから気をつけろとスペースを開けさせてトカゲの大型魔物が出されると、周囲の生徒達が歓声を上げた。
「それが最後の大物だ。後は小物と採取したものばかりだから教室で作業するぞ」
「はーい!」
「それにしても立派なトカゲだね。少しだけお肉使わせてもらえないかな」
全生徒に一品作って昼食に振る舞おうかと満が言えば、声を上げてやる気を出す解体班。
「なに作るの?!」
「このお肉なら唐揚げかな。今日一晩漬け込んでおけば、明日にはよく味が染み込んでると思うよ」
「唐揚げー!」
「先生!学園長に許可取ってきて下さい!」
「学園長も食いたいから良いってよ」
そこにいると、見学に来ていた学園長が手を上げるのでみんなも手を振り返して更にやる気を出していた。
満はそのまま肉のトレーを持ち、スザンヌ達と共に厨房へ向かう。
それを見送ってから、今まで食べた異国の料理について話しだした。
「生魚も、意外と美味しかったよな」
「カルパッチョ美味しいよね」
「僕はちらし寿司が好き。すごくきれいだった」
「テリーヌも良かったよね。ああいうの、切ったら分かるみたいなのすごいよね」
「生魚!?」
「そ、それは大丈夫なのか!?」
近衛たちは驚いていたが、新鮮できちんと処理していれば問題ないと茂が言う。
「ですが新鮮でも寄生虫などがいる場合もありますから、どんな魚でも大丈夫という事ではありません」
知識無く食べないでくれと望が止めると、進も頷く。
「卵も止めろよ。地獄を見て、運が良ければ生き残れるが基本死ぬぞ」
「地獄を見たうえで死ぬのか、最悪だな」
「でもちゃんと処理してれば生でも食べられるよ。すごい美味い」
「生卵は気持ち悪がる人もいましたし、こればかりは好みですけど」
「あー、煮卵のお結び食べたくなってきた」
「それ美味いのか?一回食ってみてぇな」
「満に頼めば作ってくれんじゃないか?」
「卵って高級食材だろ。プリンでも使わせてもらってんのにんなの気軽に頼めっかよ」
ジンの言葉に「そうか」と笑い返す。
「なら採りに行くか?そうすればタダだ」
「は?」
「ま、待ちなさい!生徒だけで何処に行く気!?」
さっきダンジョンから戻ってきたばかりなのよとナタリーが止めに入ると、考えるように見上げる。
「先生も風属性だったよな。今回も浮いてたし、大丈夫か」
「え」
戸惑うナタリーに手を伸ばす。
「今から行きゃ夕方までには戻ってこれんだろ」
「あら、ビオラも行きたいの?」
「コクコク!」
「王太后陛下!?」
「ガーフィールさんも行ってあげてもらえますか?護衛は必要でしょうし」
「そうですね。空の旅にエスコートは必要ですか?」
「フルフル」
ビオラが首を横に振ると、ファビオラと共に自分を風で包み浮いて見せると、「あらあら」と嬉しそうな声を出した。
「ちょっ、待て!私も行くぞ!!」
今にも飛び立ちそうな進たちにアディが慌ててザックを飛ばし、ストーンバレットを足場に空へと登ってハンググライダーを開いた。
「お土産よろしくー」
「明日の朝食は豪華になりそうですね」
進たちに手を振って見送ってから、我に返ったアランが「馬鹿野郎が!!」と叫んだ。
「ほら、教師が一人はいましたし、進ちゃんとガーフィールさんもいますから。戦力的にも学園的にも問題ないですって」
「大問題だ!!」
「王太后陛下が!お、追うぞ!!」
「今から行ったのでは見失って終わりですよ」
「ちゃんと怪我もなく戻ってきますよ」
近衛とクミーレル達、教師たちが大騒ぎしている中で、ギルが「良いなぁ」と呟く。
「飛べるって良いなぁ」
「シャーリー、僕たちも飛ぶ練習しようか」
「水はどうやって飛んだらいいんだろうな」
独り言のように卵のオリビアに話しかけているガウェイン。
そんな大騒ぎがあった日の夕方、疲弊しきったナタリーが進に担がれながら戻ってきた。
「だ、大丈夫ですか先生!!」
アランに続きマートン達がナタリーを介抱する。
「く、空中戦は、まだ、早かった・・・」
「せんせー!!」
「ミツル!卵取って来たから”はんじゅく煮卵”のお結び作ってくれ!」
「沢山採って来たんだね」
「陛下!お一人で外出なさるなど!!」
「あらあら、ビオラもいるんだから一人じゃないわ」
「コクン!」
「アディだけで行っちゃうなんてずるいよ」
「どこに行ってきたの?」
「国境近くの谷です」
「そこは崖ばかりじゃ、巣を作れるような場所あったか?」
「崖の中にあった」
「・・・飛べないと無理だな」
「お疲れさまでした。夕食までゆっくりしていてください」
「ありがとうございます。おや、それはショコラでしょうか」
望の用意していた好物のドリンクを見て嬉しそうに礼を言って口をつける。
「ススム!錬金術師を何の準備もなく連れて行く奴があるか!!」
「卵採りに行くだけで戦闘とかさせる気なかったし」
「こっちは魔力に上限のある人間だってんだよ!!」
化け物級のお前らと一緒にすんなとアランがチョークスリーパーをかけながら怒る。
他のメンバーはそれを見て笑っていた。
その後に茂が収納バッグから瓢箪を出し、仰向けで死人の様に横たわっているナタリーにマナポーションを飲ませる。すると、すぐに目を覚まして手を見た。
「これっ、特級のマナポーションですか!?」
「いいえ、中級です」
「はぁっ、すごい!」
自分で造ったものよりも味も良いと茂を崇めようとするので、それを止めさせて労らった。