7.学園生活
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
みんなでダンジョンへ行くために準備をし、他学科とも話し合いをしていたある日、アンのホムンクルスが生まれた。
「見て!リリーが生まれたの!!」
寮から走ってきたアンの腕の中には丸いコケにつぶらな黒い眼が付いたホムンクルスがいた。
「いっきにこんなに大きくなるの!?」
サイズでいうとバスケットボールくらいのリリーだが、昨日までは掌に収まるマリモだったのだ。
初めてホムンクルスの誕生を見たギルたちが驚くのも無理はない。
アンが抱えていたリリーをみんなで囲み、机に下ろすとただの丸だったのに短い足のような突起を出して立って見せる。
「どうなってんだ?こいつ」
「わー、草の良い香りがする」
「あ、本当だ」
「マリモっていうか、なんか、カービー?」
「それだ!」
「カービー可愛いよね!リリーの参考にさせてもらったの!」
「それでなんか似てんのか。でも口ねぇな?」
茂が出した図鑑の中には、ゲームのキャラクターや魔物もあり、皆も創作物として楽しみながら見ていた。
「キュキュ」
テオが何か言ったのか、リリーがアンを見てモコモコと体から腕のような突起を出すと、自分で千切って見せる。
「キャー!!ど、どうしよう!?」
「いや、大丈夫そうだぞ?」
リリーは自分で取った腕を見せ、特に痛がる様子もなく元の場所へ戻すと眼を閉じた。すると眼に見えるスピードで腕がくっつく。
「植物と土の良い所を持って生まれて来たみたいだな」
「ホムンクルスは主人の魔力と時間があれば怪我くらいすぐ治るけど、リリーちゃんはその時間が極端に短いのかもね?」
「今見えましたが、体の中心は土のようでしたし、もしかしたら体内に種を取り込めるかもしれませんよ」
ガーフィールの言葉に、アランが薬草の種をアンに手渡し、リリーの前へ出すと手を出してその種を体内へと取り込む。
眼を閉じると頭から薬草が生えてきた。
「これって、抜いていいのかな?痛くない?」
「コクン」
本人が大丈夫そうなので、ゆっくりと引抜ければ開いた穴もすぐに塞がる。
「リリーの食事は間違いなくアンの魔力を注いだ水だな」
それは間違いないとみんなも頷く。
「アンちゃんとの相性はばっちりだね」
そう言われ、嬉しそうにアンが抱き着けばまたただの丸になり、アンの腕の中に納まった。
この日からまた錬金術師科は注目を浴びた。
アンが抱えていない時は足下を歩くようについてくるリリーなのだが、少し走ったりする時は丸くなって転がっているので更に視線が注がれる。
「あれはゴーレムなのか?」
ホムンクルスとゴーレムの違いがイマイチ分からない者は、その首を傾げていく。
天気のいい昼休みなどは、庭園で陽を浴びている姿がどことなく可愛いと噂になっていたりもした。
リリーの誕生を皆で祝った後日、学園の生徒の大半がダンジョンへ向かった。
ダンジョンへ向かう為に車に乗り込み始める中、ディーノが一人でやって来て茂に声をかける。
「足とか、魔法が使えない事とか、馬鹿にしてごめん」
真剣に謝って来るディーノに笑いながら頭を撫でた。
「な、撫でんなよ!」
「仲直りできたのが嬉しくて、ふふ、ごめんね。でも学園祭で戦うのは楽しみにしててもいい?」
「あ、当たり前だ!」
そのやり取りを見て、みんなのディーノへの接し方も少し変わったようだ。
こうして一年生を中心としたダンジョンアタックが始まった。
一年生同士でもそこそこ溝のような物もあったようだが、中衛としての役割を熟す中で、少しずつその溝も埋めているようだ。
というか、前衛が崩れた時にフォローに入ったら普通に他学科よりも強かったので見直したと言う方が正しいだろう。
「シゲル先生がみのり屋のリーダーって本当?」
「国王陛下にもそう挨拶してたって聞いたぞ」
「訓練でもそう言ってたけどさ、」
「いつも一緒にいるあのカッコいい人って彼氏?」
「旦那さん」
「結婚してたの?!」
「ガーフィール先生も?!」
「うん」
「えー、アキツ先生好きだったのに」
「絶対辞やめた方がいいよ」
「絶対後悔するよ」
現津の話題でだけ"絶対"を連呼する錬金術師科に、ちょっとたじろぐ。
「さ、みんなは戻って素材の下処理をやってみようか」
「はーい!」
「またねー!」
「それでは、先に失礼します」
この遠征を経て、今は退学したという上級生達がした事、一年生の中にも合同遠征に参加できない者がいる理由に頷く。
「でもさ、一緒に遠征しないとか横暴過ぎない?」
「私はそうは思わないなぁ」
「俺も」
「ダンジョンで戦ってる時に振り返ったら誰もいないとか勘弁だろ」
実戦を通し、信頼関係がいかに大切かがよく分かったと言う意見が多くなっていく。
ダンジョンから戻ってふた月程過ぎた頃。
アディがハンググライダーを作っていた手を止めて、「あ、」と声を漏らしたので皆がそちらへ顔を向けた。
「ザックが、・・・ザックだ」
「・・・なに?」
「おめでとう!ザックくんの魂出来てすぐ生まれて来てくれたんだね!」
「ええ?!ゴーレム出来たの?!」
「おめでとうアディ!」
「いや、しかし、」
ハンググライダー作りで余った材料を見ていくつかの部品を拾い、机の上に広げた。
「どれだっ、ザック!お前に最高の身体を造ってやる!」
誰でも使って良い材料が収められた箱をひっくり返し、これじゃ無い、これじゃ無いと漁りだす。
「へー、ゴーレムってそう言うのがあるんだ」
「ホムンクルスは自分で身体を造って来てくれるからね」
「どれだっ」
買い漁っておいた土の魔石をばら撒きながら見えないザックに話しかけているアディは、何も知らなければヤバい人なのだが、ここにはそのヤバい行動を羨む者しかいなかった。
「そっか、僕もシャーリーが生まれたらこの身体じゃないって言われる事もあるんだ」
練習用として愛用しているハープを見て考え始めるローランド。
「そこがゴーレムの可愛い所だよねぇ」
身体を造る所から一緒って言うのはホムンクルスとは違う良さだと言う茂に、ガウェインが首を傾げた。
「シゲルもゴーレムを造った事かあるのか?」
「あるよ。というか、私が一番最初に造ったのゴーレムだよ」
「そうなのか?!」
「え?!どこ?!何処にいるの?!」
「ふふ、いつも一緒にいて私を支えてくれてるよ」
そう言って立っている茂の手には、杖が一本握られているだけだ。
しかし、ここに居る皆はあの杖が義足になる事も知っているので「マジか!!」と騒ぎ出した。
「茂さんは私が支えます」
「頼りにしてるよ」
現津がこめかみにキスをするのを見て、だからゴーレムに嫉妬するのかと妙な納得をされる。
そのやり取りに、望一人が笑っていた。
そこからひと月、アディは何かに取り憑かれたように机にかじり付きザックの身体を造った。
そりゃもうみんなに心配される程の情熱を燃やしていた。
そして、オオハシという鳥の形をしたゴーレムを撫でる。
「まだ不完全ではあるが、ああ、間に合った」
今年から学園祭に一緒に出ようとザックを抱きしめた。