7.学園生活
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こうして始まった辺境伯達の訓練には、王都周辺の教会にいる神官たちも参加することになっている。
「ミツルさん、お手伝いする事があれば何でも仰ってください」
ファビオラが言っていた、周囲と一線を引いているような雰囲気を感じないフェアグリンの笑顔に、心底嬉しそうな神官たち。
その反応に、本当に慕われているんだなと呟く。
その呟きを聞いたローガンが、こっそりと耳打ちして教えてくれた内容は、想像していたが改めて聞くとやはり悲しい物だった。
「私達のほとんどが、この国の孤児か聖国で虐げられていた者ばかりなのです」
それをフェアグリンが救い、衣食住だけでなく、神官に必要な教養を与えてくれた。
「一生をかけても返すことが出来ない恩をいただきました」
だから何か、せめて笑っていて欲しいと願い続けてきたのだと、幸せそうに顔を綻ばせる。
「ローガン様と、ハリー様も聖国ご出身ですか?私達が訪れた時は、人間族の方々は、貧民街であってもそれなりの施しがあったと思うのですが」
「私達が生まれた頃は例年に増しての不作の年でした」
ただでさえ農作物どころか魔物を倒して食料にする事も大変なあの国で、そんな年が続けば人間だろうが獣人だろうが、身分の低い者たちから切り捨てられていく。
「それを知ったフェアグリン様が食料を恵みにやって来てくださいました。それどころか、魔族の呪いで覆われた森へ一人で入り、何十体という魔物を倒して来てくださいました。人間至上主義を掲げている手前、あの国でフェアグリン様を大々的に歓迎する事は出来ませんが、市民の中では絶大な人気を誇っているのです」
「そうだったんですね」
それならきっと、人種差別が無くなるのも何かきっかけがあれば直ぐだろうといわれ、また嬉しそうな笑顔を見せた。
「皆様の様に、我々も柔軟に過去と未来を受け入れて行きたいと思うのです」
神々と暮らし、外からやって来る皆を受け入れて共存していく。
みのり屋のそれはまるで、聖書に書かれている始まりの楽園のようだと柔らかく笑った。
食事が終わり、至の歌が始まる為神官たちが膝をついて祈りの姿勢になる。
それはフェアグリンだけで無く、神官たち全員がその姿勢で目を閉じ、音楽と共に顔を上げた。
至が口を開くたび、光の粒のような雫がテント内に溢れていき、体に当たるとそこから生まれ変わった様に瑞々しくも清々しい生命力が漲って来る感覚を味わう。
「皆様にご多幸があらんことを」
その言葉に、自然と頭を下げた。
気分がいい。
こんなにも満たされたのは初めてかもしれない。
思い返せば、みのり屋を初めて見たその日から多幸感が胸から溢れている。
何故だろうか、まるで子供に戻ったかのように扱われるからか。
食事を取ることに喜びを見出したからか。
いや、そんな物は後付けの理由に過ぎない。
(心地良い)
まるで母に愛され、父に守られ、なんの不安も疑いもなく身を委ねる赤ん坊の気分だ。
だが、何故この幸福を感じれば感じるほど、コメカミに違和感が広がるのだろうか。
痛い訳ではない。
魔力の流れというべきか、何かが溢れ出そうになるのだ。
だから今日も、幸せを感じながらも頭を抱えてしまった。