7.学園生活
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「嫌だー!!ここに泊まるー!!」
「明日も訓練で来るんだからいいでしょー!!」
「戻ってから座学をするという約束だったでしょ」
「シゲル達が教えてくれたらいいじゃない!」
「私たちでは専門外かもしれませんよ?」
「算術と歴史の授業だよ!出来ない!?」
「算術は問題ないけれど」
「歴史って、私が書いた本使っていいのかなぁ?さすがに足りないよねぇ~?」
自国の歴史はちゃんと専門家に授業してもらった方が良いんじゃない?と榊が首を傾げた。
「この国の歴史もまとめていたのか」
「みんなが入学してすぐの頃はふらふらしていたので」
「それに二人が戻って来るのを待ってるのは教師だけじゃないでしょ?」
夕食の準備をしているコックたちも急に食事はいらないと言われたら悲しんじゃうわよと皆に説得され、渋々頷く。
「座学も落ち着いている時にいらしてください。護衛の方々も決める事があるでしょうから、お部屋の準備をしておきますね」
絶対全部終わらせてここに泊まると宣言をして帰っていった。
「シゲルちゃん達がいてくれるお陰で、二人の止まっていた勉強も猛スピードで進んでるみたいだよ」
「二人は元々の能力が高いしね」
興味を持てれば放っておいても止まることなく走り始めていただろうと笑ってテントの中へと戻る。
「私たちもここに宿泊して良いのですか!?」
「はい、出来れば使用した感想をいただきたいので」
「メニュー表の相談にも乗っていただけませんか?」
量の問題があるのだと、満がメニュー表とは違うボードを見せてくる。そこにはサイズ表と書かれていて、種族別のイラストと共に料理が描かれていた。
「この国は人間族や獣人族が多いのでここから大きく外れる事はないと思うんですが、食事量は人によって代わりますし、色んなものを少しずつ食べたいという方もいらっしゃいますから」
こういう物はあった方がいいと思うのだと説明する満に、ギル達だけでなく辺境伯たちも興味津々だ。
「フェアリー、ノーム、サキュロス、サラマンダー、グリフォン、ドラゴン。面白いサイズ表ですね」
「子供が見ても分かりやすい方が良いと思ったので」
「下に説明書きもあって良いね。人間でも15〜20人くらいいればドラゴンサイズを頼んでも食べられるんだ」
「グリフォンサイズ(5~6人分)は冒険者さんみたいにパーティーを組んでるお客さんには喜んでもらえると思うんだよね」
「大食いの奴もサラマンダーサイズを頼めば大体満足できんだろ」
梅智賀がいつも自分はサラマンダーサイズを頼んでいると言うので、普段の食事量を知っているメンバーが「サラマンダーサイズデカいな」とイラストの正確さを理解した。
「とりあえず、今日の夕飯はこのサイズ表を参考にして料理を注文してもらったら?」
「お試しだしね」
「見やすい所に置いておくか」
そう言って梅智賀が壁にボードを掛け、ひなたとつむぎも楽しそうに手を叩いてメニューを各テーブルへセットしていく。
「なんというか、和みますね」
「可愛らしいわよね」
本当に物語の中にいるみたいと、ダンマルタン辺境伯にファビオラが笑い返していた。
「報告書をまとめようと思いますので、テント内を見て歩いても良いでしょうか?」
「構いませんよ。ダンマルタン辺境伯様、クミーレルさんたちと共にテント内をご案内してもよろしいでしょうか?」
「はい、よろしくお願いいたします」
「ありがとうございます」
「さすがに高級ホテルとまでは行きませんが、訓練での疲れを癒せるようにはなっております。お部屋にも必要なものは揃っておりますが、何か足りないのがございましたらお申し付けください」
食堂兼ロビーを通り過ぎて一階の部屋、扉に模様が入っている九つを指さした。
「あの模様が入っている部屋は私たちの部屋です。皆様がいらっしゃる間は私たちもこのテントで生活をいたしますので、何かあればお気軽にお声がけください」
そして、こちらがテラス席でありプレイルームでもあると両開きの大きな扉を開けば空と草木まであるテラス、というか庭があった。
「ここは外、ではないですよね?」
「はい、それっぽく見せているだけですよ。天気はテントの外の、本当の空をそのまま写しているだけですから、夜になれば星空も見えますし、雨の日は曇ります。雨は降らないので安心してくださいね」
そうなればただの雨漏りだと苦笑して、これまた大きなガラス戸を開けて庭へ出れば陽の温かさもしっかりと感じる事が出来たので全員で驚いていた。
「その日の気分で寛いだりしてください。隣に図書室もありますので、読書をしたりも出来ますよ。お出かけの際はカウンターでお声がけくださいね。お部屋の掃除等は訓練中に終わらせようと思いますが、人数確認も兼ねていますので」
「そこは街の宿と同じなのですね」
そして二階へ上がり、美しいナンバープレートが付けられている扉を開ける。
「これが一人部屋ですか!」
「テントの中だと言う事を忘れてしまいますな!」
「このような部屋がっ」
「ダンジョンに住み着く者が出てきそうですね!」
「私たちも移動しますから、それはどうでしょう」
大きな体の者でもまったく狭さを感じることなくのびのびと過ごすことが出来るだけの広さとベッド。
「このベッドは床と一体化しています。ここを持ち上げると荷物を入れるスペースがありますので、貴重品を入れるのにお使いください」
「なるほど!この作りであれば寝ている時に金品を盗まれることはありませんね!」
「そうなんです。なのでこの形のベッドにしているのですが、貴重品の場所が同じになっているので鍵かけは徹底していただけると助かります」
今回は訓練中の連泊。そういった心配はさせたくないが、こればかりは自己責任の範疇。そのルール以外は自由に使ってくださいと笑った。
そして、個室に付けられた洗面所、トイレ、風呂場と繋がる引き戸を開けて見せればその作りにも驚いていた。
「お手洗いの使い方なのですが、こう蓋を開けていただいて、用をたしましたら座ったままここにあるスイッチを押していただきます」
「座ったまま?」
「はい、危険な事は起こりませんので、とりあえず終わるまで座っていていただけると有難いです。そして、こちらの紙で綺麗にしていただき、立ち上がってこのレバーを回すと水が流れます」
「本当に!これは素晴らしい発明ですよね!!」
「これで清潔と臭い対策が取れますし、デリケートな問題を少しは緩和させられると思います」
クミーレルとそんな話をして更に区切られている風呂へと入る。
「一人用ですので設備も最低限ですが、こちらがシャンプーで、こちらがリンスです。そして石鹸は体を洗う用になります」
「これで整っていないとは、家格の高い貴族の家でもこうはなりませんよ」
笑いながらお湯と水の出し方も教え、部屋を出た。
「一応各部屋にお風呂はついていますが、一階の奥に大浴場もありますので、よければお使い下さい」
見てみるかと聞けば即答で頷かれたので、まずは男と書かれた方へ入って行く。
「男女の浴場は日替わりですので、間違えないようにご注意ください」
「内容が違うの?」
「内装と言うか、アトラクションと言うか、そんな感じの物が違います」
「アトラクション?」
「今回は女性のお客様もいらっしゃいますし、こちらが終わりましたらご案内しますね」
男湯は入ったらすぐに大きな湯舟が一つ目に入った。そして、
「こちらは打ち湯でございます」
「打ち湯、これも風呂なのですか・・・?」
「はい、ここに座ったり横になったりしていただき、コリを解していただくのに使います」
「コリ、試してみたいな」
「午後の授業が終われば自由時間ですから、いつでもお入りください。こちらはジャグジーです。空気を出すことで体に当たるお湯が柔らかくなります」
そして、外の景色を見ながらお湯に浸かれる解放感漂う露天風呂。
「これは、入浴中はさぞ気分がいいだろうな」
そういって女湯へ向かった。
「大湯舟は同じですが、他にもツボ湯もご用意しています」
「ツボ湯?」
「薬を入れて置くツボがありますよね。それを人が入れるくらい大きくしたものです。そして、それぞれに薬効の違うハーブを入れていますので、腰痛などの関節痛を和らげるものや、お肌がつるつるになるものなど、色々ありますよ。それと露天風呂です」
露天風呂は空を見ながらリラックスして体もほぐれてとても良いと熱弁する茂。
「両方に露天風呂を作るか迷ったんですよ。差別化するために作らない方がいいのか、その日によっての特別感を出すよりも毎回楽しめた方がいいのか・・・」
「薬湯は望が調合していますのでご安心ください」
「どちらもすごい事は良くわかりました」
この大浴場が茂の最も力を入れた場所だと言うのは伝わったようで、ダンマルタン辺境伯は頷いて茂を見下ろす。何か言う前に現津が口を開いた。
「宿屋を開く際は素材の買い取りなど、カウンターで換金できるようにいたしましょう」
「冒険者ギルドと商人ギルドの相場も確認しなきゃね」
「お任せください。茂さんはまだ気になる部分もあるようですし、そちらへご尽力下さい」
「ありがとう、本当に現津さんがいなかったら研究してる時間今の半分以下だったよ」
「茂さんは研究者ですから作る事に集中なさりたいでしょう」
笑い合う二人に、何となくどういう関係性を担っているのかを理解した。