7.学園生活
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新学期になり新一年生の担任は以前四年生を担当していたクアンドロがつくことになり、来年はナタリーが一年生を持つと決まる。今年はクアンドロの補佐として副担任をするそうだ。
現在の在学生は卒業までにアイテムバッグを造る、ホムンクルス、ゴーレムを造ると意欲的なのだから学科的にやる気が伝染していく。
みんながやる気を燃やしている中、入学してきた新一年生は50人。今までで一番人数の多い新入生に、みんなのテンションも更に高くなった。
「いやー、親戚中に声を掛けましたよ」
「そちらもですか」
「私もです」
術師団員達が笑い合っている。
錬金術師の素質はあるものの、不遇な道を歩むことになると分かり切っているので他学科へ入学する予定だった子たちの親と本人を説得しまくったらしい。
「私はもっと増えると思っていた。最低でも二クラスくらいにはなる物だとばかり」
「僕も。”みのり屋”も、自意識過剰みたいであれだけど、王太子も王太子妃も、第二王子に王太后もいて、他の王族も出入りしてるのに」
「まだみのり屋としても錬金術師としても、ほとんど動いてないしね」
たった数ヶ月で王宮勤め、学園勤め、教会の神官たちに身体強化を使えるようにするどころか水見式と言う素晴らしい発見まで伝授したのに?と首を傾げるギルたち。
「あれは知ってる事教えただけだろ?」
「教えた所で一朝一夕で身につけられない技術や経験、それを売っているのが”みのり屋”だ」
「底が見れないって君たちの事を言うんだろうなぁ」
ギルの言葉に全員が頷く中、ファビオラは笑っていた。
「今日は一年生の魔力特徴を見て、初級ポーションの造り方をみんなで教えてあげよっか」
茂たちがみのり屋だと自己紹介をすると、現津たち見目の良いものたちに見惚れている者も多い。そこへほとんどが結婚をしていると本人たちが恋心をぶった切り、新入生たちの心をズタズタにした中で錬金術師の第一歩を踏み出した。
「まず入学祝いとしてこのバインダーをお渡ししますね」
四つ穴タイプとクリップタイプ、他の皆も同じ物を持っているソレの使い方を説明し、箱に収められているノートも自由に使って良い事、穴あけパンチの使い方も実践して見せれば、ファビオラ達と同じ様に後ろで控えている侍女も護衛騎士も皆驚いていた。
「まぁ!始まる前からこんなに心が踊るなんて!」
「このバインダーは凄いですよ。使っていると他のファイルに戻れなくなります」
クミーレルとマウロがサポートとして付き、まずは初級ポーションを造ってみる事にした。
「やっぱり錬金術の空気を感じると気分が上がる?」
「コクコク!」
ファビオラの近くで一緒に薬草を見ていたビオラに話しかければ、ウキウキしているのかとてもいい笑顔で返された。そして全員の水見式を始める。
「ふむ、この子は強化系か。身体強化のコツを掴むのが早そうだ」
「なら俺たちが教えられることも多いな!」
ワットたちが話しかけ、気さくな先輩たちに他の子供たちも少し表情が明るくなっていく。
「みんな良い先輩になってくれてよかったよ」
「そうですね」
「これなら明日からの訓練も、みんなで乗り切れらるね」
笑いながら言う茂は、魔力特性でできる事が広がると眼を輝かせている新入生たちを眺めていた。
ファビオラは王妃としてそれなりの時間を過ごした。
オルギウスが成人して王位に着いてからは直ぐに影に引っ込み国を支えていた。その為そもそも湯が沸くところを見るのも初めてだと目を輝かせていたので、目を見開いて驚いている生徒たちも多い。
「貴族の生活は不便じゃないだろうけど、不自由ではあるかもね」
不便さを感じない暮らしをしてみせる事で平民の仕事が出来て、他の貴族、他国に付け入る隙きを作らない。そうして村、街、国を回していくのだ。
茂の言葉に、頷きを返している子供達。
ギルとスカーレットも初級ポーションを作り終えた所で、二年生以上は中級ダンジョンへ行こうかと声をかける。すると皆が手を止めて「うおー!!」と歓声を上げ始めた。
「全員で行くの?」
「一年生は初級ダンジョンと考えていましたので、それ以外のメンバーで、ですね。四年生まで合わせても少ない人数ですし」
「私も行って大丈夫かしら」
初めてのダンジョンだわと頬に手を当てて眉を垂らすファビオラに、現津が「そうかもしれないが」と苦笑を漏らす。
「それだけの魔力を十分コントロールしながら貴族社会を生き抜いて来たのですから、相手が権力から魔物に変わった所で動揺も少ないでしょう」
「場数踏めばすぐにまた頂点に立てるだろ」
梅智賀にもそう言われ、貴族出身の子供達が「わぁ」と小さな声を溢してしまった。
「初めての事ですし、不安に思われるかも知れませんが今はビオラちゃんもいますから。私達も全員で参加いたしますので、何かあってもどうにかしましょう」
「何かあっちゃ困るんだよ・・・」
「この世に絶対なんてほとんど無いですよ」
アランに笑い返し、もう一本初級ポーションを造ったらティータイムにしようと全員に声をかけた。
次の日作務衣に着替えてもらい、森へと移動することにした。
現津の幻術で少しずつ成長しているので、みのり屋メンバーが人間族ではないと気づいていない。
訓練のために車に乗り込み、桃之丞に引いてもらい走り始めた。今年の一年生は今までで一番女子の人数が多かった。そのためかアディたちを見て玉の輿だと熱を上げているものが多い。
もちろん、現津達に対してもだ。
「知らないって本当に怖いわ」
「本当ね」
「いくら何人奥さんがいてもいいとはいえ、」
「うん」
「なんでかしら、この哀れみのような、その子はやめなさいって言ってしまいたくなる気持ち」
ナタリーを始め、女性陣がそう呟いていた。
こうして新入生の洗礼とも呼べそうな七日間が始まった。
「今年も三日で二人もできるようになるなんて毎年豊作ですね」
死に物狂いで走り回りボロボロになった一年生たちの前で嬉しそうに水の準備をする茂と望。
そんな中、強化系の特徴があったティーノがブチ切れて、茂に怒鳴り出す。
もちろん現津が間に入ったが、他の生徒ではノアが早かった。 ディーノを押さえつけて地面に組み敷く姿などまるで進のようだ。
「何なんだよお前!ずっと命令ばっかで自分じゃ何もできねぇくせに!!」
魔法が使えないことは自己紹介の時に言っていたので、全員知っている。さらに森の中では現津に抱えられているのだからそう言われても仕方がない。
「アホかお前!俺らの中で一番強いのはシゲルだぞ!」
「そんな訳あるか!杖とそいつがいなきゃ一人で歩けもしねぇだろ!!」
「人の話聞きなさいよ」
「ほら、まだ見たことないし・・・」
「ちょ、アキツ待て!」
ガウェインとワットが身体強化を使って現津を止めるが、姿勢を崩しもしないと二人で慌てる。
おろおろしている他の一年生には申し訳ないが、茂は楽しそうに笑っていた。
「じゃあ私と勝負しようか」
半年後、学園祭で行われるイベント。
今年は今までの年と違い日程が変わったのだ。五日目にみのり屋と全校生徒代表との個人戦が催されるようになった。
これは新学期が始まってすぐに発表されたことだが、錬金術師科は発表される前に教えられていたのですでに誰が出場するか学園祭が近づいた時に戦って決める事になっている。
各学年から代表が二人ずつ。 その全員がみのり屋の誰かと対戦することとなる。
「これに出てみない?」
「どうする?」と聞かれ、強化系らしい負けん気の強そうな顔でやってやると叫ぶ。
「なら、それまでの半年間は先生や先輩たちの言うことを聞いて嫌でも授業を熟さなきゃね」
暴れるのをやめたのでノアも手を離した。
「超えなきゃいけないのはここにいる全員だよ。そうしなきゃ私にも届かないからね、ディーノくん」
挑発するようにディーノの名を呼んだ。
「いいのか?あれ」
「あれくらい元気があるのも可愛いじゃない」
「可愛くはないだろう」
アディがため息を吐きつつ、自分もこんなだったのかと肩をすくませながらディーノを見た。
そうこうしている内に七日経ち、無事に全員が身体強化を身につける。
それからもまだ観劇、ダンス等、どうしても茂が中心になってしまう授業でディーノは突っかかってきたが、全て茂の挑発に乗せられるという形で転がされていた。
「手のひらで転がされてるね」
「あれは最早踊らされている」
「可哀想っていうか、なんか面白くなってきたわ」
他の一年生たちはディーノに戸惑っていたが、少しずつだが授業の内容を身につけていった。
教師だけでなく、王子たちの態度からしてみのり屋である事は本当なのだろうと一人口を噤んでいたのは男爵家(縁切り済み)の男の子であるウィリアムだった。
一年生たちが入学してきてひと月が経ったある日、女の子二人が助けてくださいと教室へ駆け込んできた。
「ディーノが!」
「ウィリアムも止めるのに一緒に行ってっ」
他のクラスの子に呼ばれてしまい自分が一番身体強化が得意だからと行ってしまった。責任感の強いウィリアムも一緒に行ったと泣きながら話し出す。
「教えてくれてありがと。もう大丈夫だからね」
先生たちにも知らせてくれと頼み、泣いている二人も望に預けて教室を出て行く。
「相手の年、分かるか」
「多分、クズ、一年生です」
「そうか」
「やっぱ一年はそうなっちまうか」
「嘆かわしい」
「シゲルちゃん風に言うなら、篩にかけられて良かったんじゃない?」
しばらくして、茂に助けられたディーノとウィリアムが戻ってきてどこにも怪我がないかと一年生に囲まれた。
「手は出さないでずっと我慢してくれてたみたい。偉かったね」
「、別に」
手を強く握って下を向くディーノの頭を撫でて抱きしめる。
「偉かったよ。たくさん我慢したんだから、今は甘えておきなさい」
ウィリアムのことも抱きしめれば声を出さないように歯を食いしばって泣き始めた。
そして、落ち着いてきた頃、現津が手刀でディーノを気絶させる。
「おい!!」
「今感動のシーンだっただろうが!!」
「このままいい夢でも見させておきましょう」
「全く、一応回復はかけておきましょうか」
気絶したディーノを、椅子をつなげた簡易ベッドに寝かせて望が回復していく。ウィリアムは怯えて数歩引いていた。
というか、一年生が現津から離れていった。
本人はそんなことは気にせず茂に抱きついて動かなくなる。
「相手は子供だよ」
「私もたくさん我慢しました」
擦りつくのを甘やかすように受け止め、とりあえず現行犯だったので担任に引き渡してきたと話し出す。去年合同遠征の時にあった事件のことも一年生に説明し、四年生がいない理由も話す。
「先生にものすごく謝られちゃった」
「ダンジョンへ行く時、本人たちは参加させない代わりにクラスとしては見逃してくれと懇願していました」
「そこら辺はね、まだ一年生だし」
「他学科の教師たちも掌握してきているな」
「嫌われるよりはいいよね」
そう笑って見せた。