7.学園生活
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そして、預かっていた鞭を出してイーラを呼んだ。
「練習用とはいえ十分危険な武器です。扱う時は必ずヘレン様、ミッシェル様、クミーレルさんがお側にいらっしゃる時にしてくださいね」
それはナルも同じだと言うと、二人ともが頷く。どうやら茂のいう事は素直にきくらしい。
「まずは専用武器にしてしまいましょうか。その後に使い方をお見せします」
「私にしか使えないんじゃないの?」
「この一回だけ、私が使えるようにしているんですよ。逆にイーラ様の魔力が無いと私専用武器になってしまうので、順番は大事なんです」
とはいえ、ただの鞭も武器なので保管には気をつけてくれと言って、イーラに持ち手を握って魔力を通してもらう。特に変化はないが、きちんと専用武器に出来たようだ。
「これは練習用ですので、ミッシェル様の剣とは仕掛けが違います」
「そうなの?」
「はい、ミッシェル様の剣は実戦用なので魔力増幅の仕掛けをしましたが、この鞭には魔力吸収を抑える陣を刻みました」
だから火が出にくくなっている。きちんと自分で明確にどれだけの火を出すか意識して魔力を練らなければならない。その説明を聞いてヘレンが頷く。
「それは素晴らしいですね。イザベラ様は魔力量も多いですから、力押しで出来るようになっては意味がありません」
その言葉にミッシェルもその通りだと頷いている。
「まず、イーラ様に練習していただきたいのは、鞭のどこでも自在に火を出し、消す。これが出来るようにする事です」
そう言って鞭の手元から順に先まで火を出したかと思えば、所々まだらに火を消した部分を作り、シマ模様を作る。
「これが出来るようになったら火力調整ですね」
模様が動いて見えるように炎の強弱を操作すれば、まるで大蛇が呼吸をしているかのようだった。
”生きている”
イーラはそう思って疑わなかった。
「ここまですれば、後は鞭を振る技術を上げ、どう戦うのがしっくりくるのかを探してみてください」
ノワゼットが一本の木を動かしてくれたので礼を言い、火を消して枝に巻き付ける。巻きつけた所だけ火を出せば、枝が燃え落ちた。今度は炎を出したまま打ち込み、炭となって大きくへこみを作ったら、宙で鞭の先から炎をだして太い枝を吹き飛ばす。
その様は、まるで大蛇が火を噴いたかのようだった。
茂の手の中で美しく踊るあの蛇が自分のものになったと眼を輝かせ、手渡された鞭に魔力を込める。
しかし、火を噴くどころか模様のような炎さえ出てこなかった。
「ふふ、この鞭は間違いなくイーラ様のものですよ」
けれど、使い熟せるかどうかはイーラにかかっている。そう言われ、絶対にやって見せると強く握りしめながら決意を口にする。
「練習用が使い熟せたら、実戦用をご検討ください」
これから体も大きくなり、きっと魔力量もさらに増えていく。そうなれば必要になる長さも素材も変わってくると笑った。
「ホルダーは豊ちゃんが作ってくれていますから、後でサイズを見て問題なければ今日そのままお持ち帰りいただけますよ」
笑いかけて、次はいよいよオルギウスだと振り返れば、物凄く眼を輝かせて既に立ち上がっていた。
その表情がイーラとそっくりだ。
「お待たせいたしました」
笑って収納バッグから預かっていた細身の長剣を出し、持ち手を握りやすいように差し出して魔力を込めてもらう。
「オルギウス様は剣術も魔法もどちらも同じくらい得意という事でしたので、剣としては切れ味と耐久性を上げ、杖としても使えるように付与と陣を刻んでいます」
そして、土属性の放出系であるのを生かした作りにしたと、鞘に収まった状態の剣をもう一度受け取った。
「身につけていただいていれば抜かずとも魔法の補助をしてくれます。ちょっと失礼しますね。さらに、剣として使っていただいて、」
剣を鞘から抜いて切先を地面に突きさす。
「こうすると剣を通して直接地面と繋がる事が出来ます」
的としていた木が、盛り上がった地面に飲み込まれていく。そして、マキとして使うのに丁度いいサイズになって吐き出された。
「地面の中でそんな事まで出来るのか」
「後は、こんな事も出来ますよ」
立っていた地面が船のような形になり、ミッシェル、ヘレン、クミーレルが乗った状態となった。
「ちょっと散歩してみましょうか。乗ってみたい方はいらっしゃいますか?」
王族が全員乗って来たので、錬金術師科は泣く泣く辞退している。物凄く乗ってみたいという顔をしていたが、血涙を流しそうな表情で見送ってくれた。
「おお!まったく揺れんな!馬車よりも快適ではないか!」
「速さや船の大きさも自在にかえられます」
「これは素晴らしい!土属性ならではですね!この地面との馴染みかた、魔法で作り上げた石や土ではないというのに反発が一切感じられません!」
「オルギウス様は土属性で、何か一つの鉱物、植物と特出して相性がいいという事は無かったですからね。それはつまり、土に関連したものなら何にでも波長を合わせられるという事です」
草原を一周してテントの前に戻ってくると船を地面に戻し、今度は小さく、けれど精密な造りの城を建てて見せた。
「オルギウス様でしたら、どこにでもお城を建ててすぐに王様になれると思いますよ」
魔力特性を見た時にも言っていた、冗談やゴマすりにさえ聞こえた言葉をもう一度言われる。
あの時は商人の口のうまさかと思ったが、実際に出来るだけの可能性が自分にはあるのだと言われ、声を出して笑ってしまった。
「はっはっは!王など一度なれば十分だ!次は冒険者にでもなってみたいものだな」
この力を使えばどこへでも自由に行けると、剣を受け取り自分で地面へ刺して使い心地を確かめる。地面から抜いた剣には刃こぼれも汚れもついていない事に満足そうに頷いて鞘に納めた。
「しかし、よく地面に刺そうなどと思いついたな」
「諦めた、もしくは無防備であると思わせて実はそれが本気になった証という、個人的なロマンを詰め込みました」
「ロマンか!それは確かにそそられるっ」
「国王の剣にそのロマンをぶつけられるお前は本当にすごい奴だよ」
上機嫌で笑っているオルギウスと、ため息を吐いているアディに笑い返し、マリーたちにも自分の武器が欲しくなったら声をかけてくれと笑いかけた。
「あたし、やっぱりコホリン・ドゥリューを造るわ!」
「あれキレイだったよね!私もスヴェルみたいなのを土属性で出来ないか研究しよう!」
「やっぱ中級か上級ダンジョン行ってレベルの高ぇ金属採ってきてぇなぁ!」
「俺は皮だな!アラライラオみてぇなの造るんだ!」
「僕もグローブ造るのに皮が欲しいから行きたいな」
「コクコクッ」
「上級とかだと、採れる素材もやっぱ段違いなんだろうなぁ」
「武器にもなる魔導具って、どんなのがいいかな」
子供たちが自分ならどんな武器を造る、それに必要な素材を採りに行くにはやはり強くならなければと盛り上がっているのを見て、クミーレルたちもまるで童心に返ったかのようにキャッキャと自分の考えた最強武器について話し出す。
そんな錬金術師たちを見て、ナルが茂に抱き着いた。
「ジュウと弓を見せて!」
自分も専用の武器が欲しいと見上げてくるナルに忘れてないよと笑って頭を撫でる。
「まずは弓からにしましょうか」
収納バッグから四つの弓を出す。
イチイバルは植物なので土属性、ピナーカは火属性、天之麻迦古弓は風属性、クインシークロスは光属性だ。
「これも弓なの?」
「そうだよ。普段はネックレスにもなるから持ち運びが便利なんだよね」
茂がクインシークロスと呼べば、光の弓が出来た。矢も光そのものであると説明して引くが、本当に射る事はなかった。
「この矢は生きている人に刺さった所で怪我などはしません。ちょっと温かくて気持ちいいとさえ思えると思います。この矢が攻撃として有効なのはアンデッドなんかですね」
「すごいね!魔法でしか見た事ないよ!」
「私が唯一使える”魔法”が錬金術だからね」
「僕も弓を作ってもらおうかな、剣も使えるようにしたけど弓の方が好きなんだよね」
興奮して光の弓に触っているギルに笑い返し、ナルを見た。
「私が持っている弓はこの四つだけですね。その場に合わせて使い分けていますけど、弓は弧を描きながら飛ばすことも、真っすぐに射る事も出来て、使い手が矢をある程度自由に操れるという利点があります」
その説明に、騎士たちや魔法士たちも大きく頷いていた。
「次は銃ですが、私が持っているのは二つですね」
そう言ってタスラムと一本の刀を出す。
「”
学園祭で見た錆びてボロボロの刀ではないと、興味深そうにオルギウスが覗き込んできた。
「この子はロス・ロボスです。
「変形、確かに。あのボロボロな剣が巨大な大剣になるなど、誰も思わないだろうな」
「なんであの刀ってボロボロのデザイン?にしたの?」
「その方がかっこいいかなって思って。誰も見向きもしない剣が実は物理最強を誇るとか、ロマンの塊だよね」
「うん。なんとなくシゲルちゃんの好みが分かって来たよ」
「はっはっは!これにはどんな”ロマン”が詰まっているんだ?」
「どっちもロマンを詰め込んで造りましたよ。でも、その前に銃と弓の違いについて説明しますね」
その違いは、弾が出るスピードだ。
「銃の方が速く、真っすぐ飛びます。ですが、タスラムのようなこの筒の部分を真っすぐ造らなければならいので、使い手よりも作り手の力量が出ます」
それでも、どんな素人が使っても一定のレベルまで攻撃力が上がるという最大の利点がある。
「そこからどこまでレベルを上げられるかは使い手の問題になりますが、これはどの武器にも言える事です。銃は矢よりもずっと速いので、弾を操るという事は出来ません。それこそヘレン様や魔法士団の皆様のように毎日魔法と向き合ってようやく辿り着けるといった感じです」
「え、私には出来るのですか?」
「出来ると思いますよ。ただ、うーん。ヘレン様が一つの弾に集中するのは、ちょっともったいないですね」
「ヘレン様なら千本桜だろ」
「だよね。魔力量も十分あるし」
「センボンザクラ?」
「銃ではないですけど、見てみますか?」
オルギウスもナルも良いというので、一本の刀を出して少し離れた。
「ノワゼットくん、また木を一本出してもらってもいい?」
「ププイッ」
返事をして手を上げると、一本の木が森から出てくる。まるで歩いているようだが、魔物ではなく正真正銘ただの木だ。
「”散れ、
鞘から抜いて顔の前で構えた刀の刃が消え、茂の周りに花弁のようなピンク色のものが舞っている幻想的な光景。しかし、一瞬で的としていた木がバラバラと崩れて行った。
「ようは風魔法と土魔法の合わせ技みたいなものですね。ヘレン様は三つも属性をお持ちですし、もっと色々出来そうです。土属性は植物と相性がよかったですし。銃や弓のような発射数が限られている武器はもったいないと思ってしまいますね。といっても、一発の威力を引き上げればそれだけで手数を増やすのと同じだけ有効な場合がありますよ。それが出来るのがこの弓ですし」
そう言って
茂に言われ、口をハクハクさせてから両手で押えた。
「こんなすごいものが・・・」
舞っていた花弁が集まり、また一本の刀へと戻っていく。その刀を鞘に収めた。
「こんな感じです。参考になりそうですか?」
「は、はい!」
すごいものが見られたと頬を染めながら頷くヘレンに笑い返し、ナルを見た。
「タスラムは銃身、この筒の部分の事です。ここが長いのでどちらかと言うと遠距離射撃に向いています。それこそ一発の威力を上げた銃です。こうやって持ち、照準を合わせて撃ちます」
そう言って、現津が用意してくれた石の的へ向かって撃って見せる。凄まじい音と衝撃。そして、眼の良い者が皆石を貫通している事に驚愕していた。
「ち、近くで見てもよろしいですか!?」
「はい、大丈夫ですよ。ただまだ熱いかもしれませんので、触る時は火傷にお気を付けください」
士団員たちが的の石に寄っていき、弾の形そのままの一直線で穴が開いている事を確認する。
「凄まじいな」
「はい、だからこそ、この銃身を作るのが難しいんです」
「そりゃそうだ、あんな威力の弾が狙ってもいねぇ場所に飛んで行ったら、事故じゃすまねぇぞ」
「でしょ?それもこの威力で発射するから、もしも銃身が曲がったり詰まったりしたら暴発して、撃った人が怪我しちゃうんだよ」
「・・・手と顔の近くで爆発がおこるんだもんね」
「こわっ」
「攻撃が来るって構えてるのと違って無防備であんなの受けるとか、普通に死ぬな」
「その辺は、作る側の方が想像しやすいよね。私もタスラムが完成するまで中々苦労したもん」
「シゲルで”苦労”したのかよっ」
「いいか、全員聞け。銃を造る時は絶対に一人ではやるなよ。三人以上、特級ポーション常備の時だけだ」
「はい!」
「作るなとは言わんのか」
「錬金術師はみんな好奇心が旺盛ですから」
失敗が怖くて実験なんかできませんよと笑ってタスラムをしまう。
「次が銃の最後です。さっき弾は操れないと言いましたが、それはスピードが重要だったからです。ですがこの銃はそのスピードを殺して、弾の数を増やし、敵を追い詰めていくタイプの戦い方に向いたものです」
言ってから、刀の名前を呼ぶ。
「”蹴散らせ、
光った刀が二つに分裂すると、茂の腰で二丁拳銃になった。タスラムよりもずっと銃身が短く、コンパクトな銃だ。
「かっこいい」
「やっぱりそう思いますか?ただ、この子強いんですが、戦うのが好きじゃないんです。なのでいつも寝てるんですよ。そういう性格なんです」
「進を想像していただければだいたい合っています」
「わしはもう少し覇気があるだろ」
「ギリギリそうだな」
「性格、・・・扱いやすいかどうかはあると思うが、まるで人のようにいうな?」
「私が造った自分用の武器は全員魂がありますからね。本当に性格があるんですよ」
「、タルパか!!」
「半分正解。タルパは完全な自然生命体でしょ?この子たちには肉体があるから、ゴーレムに近いね」
「魂っ、生きているのか!?」
「はい、そうでなければあそこまで上手に武器を使えません。私はこの子たちに助けられながら戦っているんです」
「今のは茂さんの謙遜です」
現津の言葉に、多分どっちも本当なんだろうなと思うみんな。クミーレルたちは「つまり」「なるほど」「であれば」と濃い議論を始めていた。
「ゴーレムに近いという説明で、この子は分かりやすいかもしれませんね」
呟きながら少し離れ、腰に下げていた銃を抜き引き金を引いた。光のような炎のような、ゆらゆらと揺らめく何かで形作られた狼が一匹、茂の足元に現れる。
「この子には触らないでくださいね。高濃度の魔力そのものみたいな存在ですから」
「触れると爆発し、なんの装備もない者であれば、一度で四散します」
「マジか!」
ガークがタスラムの時のように眼を輝かせた。
「この銃は、銃として撃つことも出来ますが、どちらかと言うとこうして弾である狼を沢山出して狩りをする事に長けていますね」
「あれで大物倒したけど、なんかちょっと可哀そうだったよな」
「まぁ、狼の群れって元々集団で追いかけて体力削った所を仕留めるもんだし」
みのり屋内でも強力な武器として認識されているようだ。
「ありがとう、戻って良いよ」
狼のような弾が銃へ戻り、すぐに刀へ戻ってしまった。
「今日はただのお披露目だったので機嫌が良いですね」
「悪くなるとどうなるの?」
「特にこれと言ってなにもしませんけど、淋しがりやなので他の兄弟と一緒にいたがりますね」
「無益な争いが嫌いなんだ」
「武器ではありますけど、戦いが好きかと聞かれると嫌いですからねぇ」
強い戦士が皆戦場を求めるかと聞かれれば、平穏を求める者もいるのと同じだと言う。
「自分が使われる場面が来ないのが一番いいって思ってるんですよ」
「それ、シゲル的にはどうなんだ?」
「それはそれでいいかなって思ってるよ。戦うのだって拒絶してる訳じゃないし。護身用に持ってて、特に何もなく帰って来た時が一番嬉しそうだし」
ナルの眼が輝き、「これにする!」と茂に抱き着いた。
「僕”じゅう”にする!今のロス・ロボスみたいな奴!」
「銃ですか。水で、・・・ああ!練習用なら良いのがあるますよ」
収納バッグから水鉄砲を出せば、みのり屋の半数が「懐かしい!」と寄ってきた。
「うわー!いつ振りだろうこれ見たの!」
「よく取って置いたな」
「みんな知ってるの?」
「これでよく川とか海とかで遊んでたんですよ」
「水魔法とか使えないからねぇ、私たち」
「進ちゃんをみんなで囲んだよね」
「あれはなかなかに厳しい戦いだったなー」
「いや、お前よく生きてんな」
「子供の遊びですからね」
「これはただの水鉄砲ですよ」
魔導武器じゃないと、想像しているのとは多分違うと笑いながら首を横に振る。
「ほら、威力だってこんな感じですよ」
指をかけて引き金を引けば、ぴゅーっと水が出て地面を濡らす。ただそれだけだ。
「え、意外」
「平和な遊びも知ってたのね」
ちょっと安心したとナタリーが胸の前で手を握っていた。
「このままだとただのおもちゃなので、ナル様用に手を加えますね。私たちのお古をお渡しするのもどうかと思いますが、物はしっかりしているので練習用としても十分耐えられますよ。構造も簡単なので新しく造る事も出来ますが、どちらが」
「これがいい!」
食い気味に返事が返ってきたので、ならこのまま改造することに決めた。
「一応二丁造りますね。最初から二丁同時に使うのは難しいでしょうから、まずは片方ずつ練習していきましょう。一つが壊れた時の予備にもなりますしね。後は、ホルダーですが、ナル様も体が柔らかい様なのでいくつか候補があります」
まずは
「もう一つは、ちょっと失礼しますね」
上半身にベルトをつけ、羽織に袖を通す。
「こうするとパッと見では武器を持っているようには見えません」
「本当ですね。これはすごい」
「後は、体の柔らかさを生かして背中につけるタイプもあります。ですがこれはどちらかと言うとサブですね。メインを背中につけるのはそれなりに熟練度が必要になってきます」
メインが使えなくなった時や人質を取られた時などに手を上にあげて武器を持っていないアピールをする。その隙をつくという時に有効だ。
「具体的だな・・・」
「いいですね。小型ナイフ等を忍ばせられます」
「魔法士もです。戦闘中は何が起こるか分かりませんから」
「腰は早打ち、脇は護身用、背中はもしもの時のためってとこですかね」
「僕ぜんぶ!」
「私も!」
「かしこまりました。その場面に合わせて使い分け出来るようにするのも訓練の一つですね」
イーラにも腰用のホルダーと足用を作ってあげようかと豊が笑う。
「足?」
「スカートの下に、太ももあたりですね。鞭を隠しておくと何かあった時とても安心ですよ」
「そんなっ、はしたなくないかしら」
「取り出すときはスカートを捲らなければならないのではしたなくなってしまいますが、そういう時はきっと命の危険が迫っている時でしょうし、”一時の恥はかき捨て”と割り切っていただくしかありませんね」
イーラにも淑女はスカートを捲らないものだとしっかり言い聞かせる。
「今戦わなければ大切な人を守れない。もしくは自分の命が危ないと思った時だけ、鞭を振るう強い王女を見せる時ですよ」
うちのみんなも、こんなにすごいのに各科で落ちこぼれと言われていたのもそう言う事だという。
「本当に強い人というのは自分にも自分の力にも自信があるので、周囲の言葉に傷つくどころか利用するくらい出来ると言うことです」
だから武器も見せびらかすのではなく、いざという時の為に隠し持つものだと言われ、幼い二人は納得したように頷いていた。
「・・・このままシゲルに教育させるべきか」
ボソリとオルギウスが何か言っていたが、聞かなかったことにして水鉄砲は明日渡すことになった。
「この指輪とかって武器に加工する事って出来る?」
ギルが差し出してきた指輪を受け取り、素材について調べていく。
「ダンジョン産の指輪だね。素材としても十分いい物だけど、これ既に役割があるでしょ?もったいなくない?」
「そこまで分かるんだ。なら明日別の指輪を持って来るよ。僕魔法メインで戦うつもりだったんだけど、さっきの弓を見て気が変わったよ」
「クインシークロスみたいな弓にするなら、指輪でもブレスレットでも、腕輪でもいいね。ギルくんは土属性の植物だし、私もどんな弓がいいか考えておくよ」
「ありがとう、僕も持っている物の中でいい物が無いか確認してみるよ。スカーレット、君も何か作ってもらう?」
君も戦う時は剣を使うのかなとギルが婚約者の女性を振り返って話しかけると、戸惑ったような表情をしてから視線を逸らした。
「私は、もう少し考えてから、お願いしようと思います。まだ身体強化も、出来ていませんし」
「いつでもお声がけください。もしかしたら今までと違う戦い方が合っていると気づくこともありますから」
「ええ、ありがとう」