7.学園生活
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「みんな、今日の分のポーションを造り終わったらこれからについて相談しようか」
「これから?」
「全員が身体強化使えるようになったら安心してダンジョンに行けるし。最初は初級ダンジョンに行く予定だけど、そうなると戦うのに武器とか必要でしょ?」
「ダンジョン!!」
「採取!やったぜ!!」
「武器って事は魔導武器だよな!?」
「オッシャー!!」
「どんな風に戦うかもイメージして、自分に合う武器を形にしていこうね」
「武器ってなんでも良いんですよね!?」
「学園祭で見たやつみたいな!!」
一年組は元々だが、この数日で二年組のノリも似て来ている。
というか、アディたちとの距離が近くなったような気がする。遠慮が無くなって来たというか。
やはり”同じ釜の飯を食う”という行為は偉大だなと痛感した。
もしもそれを本人に言ったのなら、あれだけ泣き叫びながら泥にまみれていたら王族も貴族もあって無いようなものだろと、たった数日で悟ったような表情をした事だろう。
「戦い方は、やっぱり魔法が良いな。僕」
「俺は剣が良い」
「私も魔法だな」
アディたち三人も、自分たちの戦闘スタイルは決まっているようだ。
そんな中、アランがグリモワールのようなものを作ってみたいと呟く。するとジンもアラライラオみたいなのが造りたいと勢いよく手を上げた。
「グリモワールとは、何でしょうか?」
「アラライラオとはっ、もしや学園祭で見た毛皮の魔導具の事ではありませんか!?」
「ポーションを造り終わったら、参考として私が持っている魔導具をお見せしましょうか」
その一言でテンションがブチ上がった錬金術師科の皆は、今までにないほどのスピードと連携を見せて今日消費した分と明日の分までポーションを製作して行儀よく席について早く説明をしてくれとせがんでいた。
「こいつら(錬金術師)って知識欲と好奇心に貪欲だよな」
「まぁ、だから研究職につけるんだろう」
感心しているような進の呟きに、利刃が返していた。
まずは全員見たことがあるアラライラオから見て行こうかと収納バッグから出せば、黄色い声が上がった。
「この陣に魔力を注いで、私の体とこの皮の間にある空間に一時的な筋肉を作ってそれっぽく見せてるんですよ」
名を呼べば光って応えるアラライラオに、皆感動の声をもらしていた。
なので、皆も自分専用にする方法を覚えようねと言って、毛皮を半分肩にかけて手だけを熊に変えて見せる。グッパッと動かして見せれば、桃之丞が同じように手を出して見せてきたので頭を撫でてから毛皮を脱いだ。
「基本的な陣は教科書に載っているのと同じで良いと思います。ただこれだけではさすがに足りないので、相性の良い他の陣を見つけて重ねるのが良いですね」
後はどんな動物になるか決め、真似できるかにかかって来ると言う。
「確かに、本物の熊みてぇだったもんな」
「熊はいつも身近にいてイメージしやすいからね」
「アア!」
「でもそれだけじゃ説明がつかなくないか?お前イタチとか狐とか、小さくもなってたよな?」
「そこはアイテムバッグの応用ですね」
「ここでもアイテムバッグ!!」
「今はまだやりませんけど、全員で基礎と応用を身に着けたら造り方を教えますね」
アラライラオを教卓へ置き、次にトライデントを出す。
魔導具は他にもあるが一度に説明するには多すぎるから少しずつ見せようかと言う。
それから二日間は訓練後の授業は進と至に任せ、午後の時間はポーション造りと武器造りとイメージ作りに専念した。
「ガウェインくんの剣は、柄に陣を刻む事にしたんだね」
「ああ、さすがに変形まではまだ出来ないが、水属性なのを生かせればと思ってな」
「僕はまだ悩んでるんだよね。別に杖じゃなくても良いんだって思ったら迷っちゃって」
魔法士は杖を使うという考えを止めたらしいローランドが考え込んでいる。
「私もだ」
そして、それはアディもだった。
「なら、今は魔石を使った魔力の貯蓄を研究したら良いと思うよ」
貯める魔力が自分のものなら、使っても反動は無い。
「これはゴーレムを造る時にも使えるものなので、みんなも覚えておいた方が良いですよ」
魔導具作りにも使えると言い、残っていた魔石で作って見せる。
「もっ、もう一回やってくれ!!」
「良いよ」
ゆっくりと、小さな魔石に陣を刻んでいく。
「魔石の大きさや色の濃さによって、もっと強力な陣が刻めます」
そうすればそれだけ貯められる魔力も増えていくと言えば、早速バインダーに陣を書き写して練習用の小石に刻み始めた。
初めての魔導具作りという事で、目を輝かせているアディに笑いかける。
「アディくんは土属性の金属だからね、魔法にするにしても魔導具にするにしてもやりようは色々あると思うよ」
「・・・私は、今まで土魔法を使ってこなかったんだ」
言いにくそうにしているアディに、属性の優劣を考えていたのならそうだろうなと頷く。しかし、それを聞いていたリックが気づく。
「あれ?土属性で金属って、アキツと同じじゃない?」
「は?」
「そうだね、金属の種類は違うけど」
アディだけでなく、他の錬金術師科メンバーまでもが手を止めてポカンと口を開けて現津を見た。
「農業は森羅万象全てと向き合える学問と言われている国さえあるんですけどね」
「うっ、・・・そ、だろ」
「所変われば人も変わるっていうし、この国では今まで土属性の出番?みたいなの無かったんだろうね」
「大国でありながら肥沃な土地があるのです。土属性の魔法や魔力を発展させずともやって来られたんでしょうね」
みのり屋の三人が何かに納得しているのを見て、アディは声にならない声を出しながら喜んでいた。
「先達がおらず、上手く扱える者がいなかったので後周しにしたんでしょう」
一緒に喜んでいるワットにも笑いながら、窓際に置いていたポットに手をかざして土で小人を作ると操って見せる。
「可愛い!」
それにアンが食いついた。
歩かせて見れば、他の者たちも興味深そうに覗き込んで来る。
「まるで生きているようだ」
「ここに魂があれば、立派なゴーレムとなります」
「これがっ」
「色んな属性の武器とかを持たせたら素材集めもスムーズに出来たりしますよ」
「私の方がお役に立てます」
そう言って操るのを止めてしまったので、小人の姿がただの土へと戻ってしまった。
「ゴーレムに妬くなよ」
「頼りにしてるよ」
「モモノスケはいいの?」
「桃之丞は茂さんが”私の為に”造ってくださった騎獣です」
「うん」とみんなが引いている中、茂がアランを見た。
「アラン先生はホムンクルスかタルパが向いていますよ」
「前から言ってるな」
それは何故なのかと聞くと、進が「自覚がないのか」と驚いていた。
「自覚?」
「危ないな。ちょっと一緒に外行くか」
「は?」
「じゃあ説明は進ちゃんにお願いしようかな」
「え、は?」
茂たちに見送られ、アランは進に腕を掴まれてテントを出て行った。
「え、なんだ?自覚って、?」
「先生の魔力、”海”だろ?」
今日は水見式はしていないがと困惑するアランに、「匂いで分かる」と苦笑する。
「匂い、で分かるもんなのか」
驚きながら顔を向けられ、今の所外した所は無いと笑った。
「五感の何かを失えば、残ってるどっかが鋭くなるもんだ」
そう言って目隠しのベルトを外して眼を見せてくる。
「なんだっ、その目・・・」
「全盲になった者の中に、たまにこういう”銀河眼”っていう眼を持った奴が生れてくる」
まる満天の星空をそのまま切り取ったかのような美しい瞳と、整った顔立ちに見惚れてしまう。
しかし、平民であることとその強さを思い出し、すぐに手放しで褒めていいのか分からなくなってしまった。
「この国でどうかは知らんけど、”母なる大地”みたいな感じで”大いなる母”とかって海の事を言ったりする国がある」
「あ、ああ、言うな。この国でも」
「なら感覚として分かるかもしれんが、何か多くの生物が住んでたり、生れたりする場所を人は無意識に母親、つまり女に例える。誰が言い出したか知らなくてもそう言われたり言葉を受け入れて根付いたりするだけ、何かを生み出すのは母、女だとみんな思ってる」
けれど、同じ力を持つアランは男。
「三毛猫のオスは幸運の象徴。何百万分の一の確率で生れてくるからそう言われてる。先生も同じだ。自分が世界と言う国よりも広い視野で見ても相当珍しいっていう自覚を持ちな」
三毛猫のオスは金貸何百枚って値で取引されるくらいだ。それが人間ならばいくらになるか分からない。
この世の物とは思えない美しい瞳で見つめられ、ゴクリと喉が鳴ってしまった。
「・・・身体強化、頑張るわ」
「それが良い。茂がホムンクルスが向いてるって言ってる理由は分かったか?」
「ああ、自分がそんなに希少な力を持ってる、っつー自覚は、まだないけどな」
「自覚は後からでいいさ。単に気をつけるって自衛ができてれば十分だ」
そう笑ってテントへ戻るかと目隠しをつけ直して腕を叩けば深くため息を吐いた。
「生まれ持った力を最大限生かせる職についているのはさすがだな」
「・・・はぁ~、マジかぁ~・・・」
両手で顔を覆いながら、悩んでいるような喜んでいるような声を出すのでまた笑った。
テントの中へ入ると、見たこともない化け物猪がいて叫んでしまった。
次の日、優の授業が終わった後、ローランドが自分はゴーレムを造りたいんだと言って魔石に陣を刻む練習をした物を見せてきた。
ガウェインはまず、ジンのように水を纏といながら動けるようにする練習から始めると宣言する。それはワットも同じだったので、二人で手合わせをする事も増えていく。
そんな中で、アディが相談にやって来た。
「その、今まで土属性の初歩魔法さえ使ってこなくてな、武器を造るにしろ、まったくイメージが湧かないんだ」
「なるほど、それは困ったね?」
少し考え、現津に後処理を頼めるかと聞けば、もちろんだと即答したので杖を預け、収納バッグから一本の刀を出す。
「参考になるか分からないけど、面白いとは思うよ」
そもそも武器を使うかも込みで考えてみるといいと歩き出す茂を見て、全員が一緒にテントを出ていく。
「あの武器は初めて見るな」
外見だけで学園祭で見た「
そして、少し離れた場所で茂が刀を鞘から抜いた。
「"おはよう、土鯰"」
光れば一本だった刀が円状になり、それを地面に殴りつける。すると離れた先で地面が盛り上がり、地形を変えてしまった。
「なんだこりゃ!?」
「どう言うっ、いやっ、地面は繋がってるんだからそう考えると・・・」
「それ範囲広すぎない?!」
「だから土属性は強ぇんだろうが」
「もう一回やって!」と皆が騒ぐので、もう一度地面を殴ってさらに地形を変えてみせる。
「こういう事も出来るけど、魔法だったらガーフィールさんたちの方が答えられると思うよ」
「ガーフィールさんの魔法はすごいですよ!」
望にもそういわれ、素直に頷くアディ。
「なんだろうな、今猛烈にシゲルが言っていた"井の中の蛙"という言葉が頭の中を駆け巡っている」
「では、後は空の深さを知るだけですね」
「・・・そうだな」
誇らしそうに微笑む現津を見て、また素直に頷いていた。