7.学園生活
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次の日も大声で叫びながら足場の悪い森を走り回っていた皆は疲れ切っていたが、風呂に入り、食べた事もない美味い食事をして、至の歌を聞くという癒しを知り文句は減っていた。
一時間の授業も初めて知ることばかり。気づきが多いと意外に人気なようだ。教師たちが馬車で戻れば、ポーション造りをした。
そして三日目の訓練。
雨の中で追いかけっこをしていたのだが、ガウェインを含めた数名が身体強化のコツを掴んだ。
「おめでとうございます」
やはり強化系はコツを掴むのが早いなと微笑んだ。教師たちがただ虐め、ひいては能力の低いクラスへ入れた仕返しをされている訳ではなかったと泣いて喜んでいる。
「こじれてんなー」
「訓練が終われば元にもどるだろう」
「戻るだけの関係ってあったか?」
梅智賀の素朴な疑問に、みのり屋以外も口を閉じた。
「これがっ」
ガウェインが驚いたまま固まっている。
「今日の天気ならジンくんが風を纏ってるみたいな事が出来るかもしれないよ」
「お、後で手合わせするか?」
学園祭が終わった後に現津と梅智賀に魔法を教わったので今は初級の風魔法を覚え、身体強化と組み合わせて戦う様になったジンが声をかけてきた。
「ああっ、頼む!」
約束をしている二人を笑いながら、茂と現津がまだ戻って来ていない強化系の下へと走り出す。
二年生のワットが身体強化のコツを掴みかけているが、本人がその変化に戸惑い上手く自分の物に出来ずにいた。
強化出来る時、出来ない時を自分でコントロール出来ないらしく、桃之丞から逃げる中でどんどんヘタになっていく。
「どこかに甘えが残っているようですね」
訓練なのだから死なない。死ぬ思いをしているだけと思っているのでしょうかと現津が首を傾げた。
「んー、本人の意志でどうにかできない部分かもね」
それこそ仲間が助けに来てくれると思い続けられるのは良い事なのだがと茂が同じように首を傾げた。
その気持ちを残しつつ、どうやって甘えを捨てさせようかと考えていれば「おまかせください」と現津が幻術で本物の魔物と鉢合わせしてしまったと見せかけた。
桃之丞たちの威嚇が可愛く見える唸り声にガクガクと震える膝。力が入らなくなる体。
あんなに大声を出していたのに、悲鳴さえ上げられない。
死ぬ。
その恐怖が直接脳に叩きつけられた時、ドロリと雨でぬかるんだ土が動き出す。
「わー!!!」
ようやく上げられた叫びと共に、腹の底から溢れてきた魔力が瞬時に体に巡り、ありえない距離を飛びのいていた。
「おめでとう」
きちんと自分でコントロール出来ていると声をかけられるその後ろで、燃え上がり消し炭になっている魔物。それを見て、「よがっだっ」と泣き笑いしながら崩れ落ちる。
「洗浄と回復をかけますね」
上から下から色々出ていたので現津が魔法をかけ、泣き止まないワットの頭を撫でていれば小さくなった桃之丞が抱っこしてと両手を上げてきた。
「戻ったらゆっくりお風呂に浸かってね。このままじゃ体が冷えて風邪をひいちゃうから」
「そうですね。茂さんのお体も冷えてきました」
そんな話をして三人でテントまで戻ると、つむぎがすぐにタオルを持ってきてくれたので風呂へと歩き出す。
しかし、その前にジンとガウェインが手合わせしてくるとテントから出て行ってしまった。
それを見て、ワットも忘れてしまう前にと二人を追いかけて行く。
みんなが風呂から出た頃に戻ってきた三人だが、見ただけで誰が勝ったか分かる程、ジン以外の二人がボコボコにされていた。
「僕が治してもいい?」
三人にタオルを渡し、風呂に入る前に傷を治した方が沁みたりしなくて良いだろうとキリルが青いバラを三人に持たせる。そして手をかざすとバラは散ってしまったが、その変わり三人の傷がキレイに治っていた。
後に残ったのは、バラの甘やかな香りだけ。
「、どういう」
「みんながいう所の魔力特性かな?」
回復が得意なんだよと笑い、もうご飯の準備が出来ているからお風呂に入っておいでと促した。
「今日のお昼はフレンチトーストです」
ハムとチーズを挟んだ塩気のあるフレンチトーストと、クリームと蜂蜜のかかった甘い物の二種類を出していく。
「んー!良い香り!」
「テントの中だって事、忘れそう」
「これ昨日の蜂蜜?」
「そうだよ。沢山あるから、好きな方を御代わりしてね」
今日は雨なのでとても気温が低い。かと言って暖炉に火をつけるには少々時期が早い。
という事で、嵒太郎が部屋を温めてくれていた。
嵒太郎を囲むように他のホムンクルスたちも集まり、自分の前に置かれた皿から人間たちと同じものを食べている。
訓練の初日から毒見はいらないと断ったアディたちも、皆と同じように見たこともない食事を口に運ぶ。
「美味いっ!」
「ふかふかしてる。こんなパン、家でも食べた事ないよ」
「フレンチトースト・・・」
王族だけでなく、貴族の中でも身分の高い侯爵家の二人が驚きながらパクパクと食べ進めておかわりもしていた。
「アアアー!」
「御代わり?どっちがいい?」
桃之丞が鳴いて御代わりを催促してきたので、塩気のある方と甘い方を持って見せればバンザイをして両方欲しいと言ってくる。
「みんなもいる?」
牡丹とノワゼットが蜂蜜たっぷりの甘い物、曙と日輪はハムとチーズ入り、他の皆は両方と、好みが分かれていたが皆御代わりをしていく。
「ずっと思っていたんですが、」
「はい?」
「高位の魔物は人語を操るといいますが、ホムンクルスは、そのくらいの知能を持っているのでしょうか」
宮廷錬金術師団副団長のマウロが、器用に手を使って食べているホムンクルスたちを見て茂に問いかける。
「この子たちはみんな基本的に人と同じだけの知能がありますよ。ただ姿や術者の希望と言うか、”こんな子と一緒に暮らしたい”っていう思いで感覚が動物よりになったりするみたいですけど」
「三国は完全に馬ですな」
「モコもそうですね」
「日輪はドラゴンみたいでかっこいいもんねー!」
「ギャッ」
「曙は、犬みたいで可愛い」
「花丸も感覚は完全に狼だねぇ~?」
「オン!」
「アンコとギュウタロウは?」
「ドラゴンだな」
「コイツドラゴンだったのか?!」
「嵒太郎は、何だろうね?亀飼った事無いからよく分からないけど、料理を手伝ってくれたり、釜戸の代わりをしてくれたり、すごく助かってるよ」
「ぎゅっ」
「ボタンは、なんとなくわかるんだけど、」
「ノワゼットって何?」
「妖精ですよ」
「妖精だったのか・・・。この体の部分。どうなってんの?お前」
「キュルキュルっ」
「内緒なんだよねぇ」
「ニコサンはもう、何かも分からない」
「鳥だ」
「尻尾が特徴的で可愛いわよね」
「キュプ」
そんな会話をしている錬金術師科を見ながら、他の者たちはつむぎ達に世話をされて満足するまで食事をしていた。
食事が終われば嵒太郎に大鍋を温めてもらって作ったココアを飲みながら至の歌を聞き、食休みが終わったら茂の授業を受ける。
授業中に出された御代わりのココアにはバナナとショウガのスライスが入れられていて、こちらは大人たちに好評だった。
三日間の授業も終わり、次の日からは授業はせずに学園へ戻ってよい事になっていたのだが、もっと授業をしてくれという声が出たのでみのり屋たちで相談を始める。
「後四日間だろ?授業してやれば?」
「その内容が難しいんだろ」
「なら一回分はわしがやるか?身体強化が出来るようになったんなら魔力を体内でどう動かすかも教えておいた方がいいだろ」
「あ、それは確かにあるね。騎士科とか関係なく、知識として知っておいた方が応用も考えやすいだろうし」
「なら私もやってみようかな!訓練が終わってからって思ってたけど全員訓練受けるんだから先に授業しておけば後が楽だよね!」
「榊、至の授業内容をまとめて台本を作ってやってくれ」
「いいよぉ~」
「俺らは学園に戻ってからが出番かな~、戦闘訓練とかするんでしょ?」
「私もそうなりそうですな」
「俺も、そっちでしか教える事思いつかないや」
「付与って授業どうしよう。守護の刺繍とか見せても困るよね?」
「結界も感覚と技術だよ」
「二人のは魔力操作が出来るようになってからの話だからな。学園に戻ってからの授業じゃないか?」
「なら二回分の授業はいいとして、後二回分は何しようか」
「最終日には全員身体強化が使えるようになっているでしょうし、教えた事の実戦で良いのでは?」
「じゃぁ私も授業をしてみようかしら。運命について」
「決まりですね」
こうして、訓練中の七日間はずっと授業も続けることに決定した。
決まったので先生たちには一度学園へ戻ってもらい、先に学園長への言伝を頼んでおく。
「戻ったら私からもご説明しますね」
そう言ってからみんなで見送った。