7.学園生活
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学園祭開けの一日は授業がないのでゆっくり休み、次の日に教室へ向かうと第二王子とその側近二人が着席していた。四年生として編入してきた宮廷錬金術師団もしっかりと教室の席に座っている。
マートンが、今日から二年生として編入してきた三人だと怯えながら紹介をしてくれた。
「本日から特別講師として教鞭を振るう事になった茂です。よろしくお願いいたします。さっそくで申し訳ないのですが、私は平民の出身でして、このような堅苦しい口調に慣れておりません。皆様に対してとても不敬であるとは分かっているのですが、粗野な口調に戻してもよろしいでしょうか」
「かまわない」
「これから同じ教室で苦楽を共にする仲間になるという事で、きっと意見のぶつけ合いなどをする事もあると思います。なのでそのような言動もご理解いただけると有難いです」
「それは私自身が保証する。ここで不敬などと言っていては掴めるものも掴めまい」
王族として返事をした第二王子に、側近の二人も宮廷錬金術師団も文句はないようだ。
「寛大なお言葉ありがとうございます」
「それと、今言う事ではないのは分かっているが改めて謝罪をさせてくれ。そなたは私の世界が狭いと教えてくれた恩人だ。あの日の暴言の数々、本当に申し訳なった」
「素直に謝罪したのは良いですね。わずかですがマイナスに振り切っていた好感度が動きました」
「わーぉ、茂さんに暴言吐いて現津さんが放置してたんだ。見込みあるって思われててよかったね」
「貴族の会話に勝手に入って行くな」
「今更だけど物凄く失礼だからな?」と言いながらアランが現津と圧紘に注意をすると、王子が構わないと手で制止する。
「謝っていただいてありがとうございます。ですが私は初めから怒っていませんでしたから、もう気になさらないでくださいね」
王子からの謝罪を笑って受け入れる後ろで、現津が威嚇しているのを見ながら、1、2年生の自己紹介をする。
一年生たちは茂たちを含めて十人。二年生たちは王子たち三人を入れて八人だ。二年唯一の女子であるカタリナを始め、ワット、イーサン、レイモンド、リンクの五人と、この国の第二王子であるアンドリュー、側近の一人でアンドリューと共に魔法士科で飛び級をしたローランド。そして、騎士科だったガウェインだ。
教卓から向かって左が二年生、右が一年生と少々並びも変わり、その後ろに教師、士団員となったのだが、宮廷錬金術師団もそんなに人数が多いわけではなく、50人入る教室がやっとそれなりに埋まったくらいのものだ。
「では、まず錬金術師科から水見式を始めましょうか」
現津と望が補佐として全員にビーカーと桶を配ってくれた。
他のみのり屋メンバーは、それぞれ自分たちが教える事になった科へ挨拶に行ってくると教室を出ていく。
「俺たちは図書室でも借りて過ごそうか」
「うん!どんな本があるか楽しみぃ~」
「お前は一人こっち来いよ」
「分かってるって〜」
「榊って何ができるの?」
「戦闘や補佐向きでは無いので自由にさせておいて構いません」
リックの質問にそう返し、水見式の説明を始める。
「この世に全く同じ人が居ないように、魔力にも人それぞれ違いがあります。どんなに似ていても同じ人はいません」
水見式の説明をしながら、魔力を注いでもらう。早速始める一年生と、互いの顔を見合わせながら真似を始める二年生と教師たち。
すると、ボンッと爆発がおきた。
「すごいねガークくん!もう水だけで爆発させられるようになったんだ!」
「へへ!でもギリギリで止めるつもりだったんだ!もう一回やらせてくれ!」
「では、少し丈夫なビーカーにしましょうか」
「もっう、すこ、し!」
ジンはビーカーの下にある桶も水でいっぱいにしようと力を振り絞っている。
「見てみて!ドンドン泡が出てくる!」
「私も!苔?が生えてきた!」
「僕も水晶がいっぱいになっていく!」
「失敗作のマナポーションくらいにはなってるんじゃないかな?」
自分専用だけどと水を飲んでニッと笑うリック。
「僕の、どうやって試そう」
「試験管に分けて確認してみましょうか」
「やり方、教えて」
ノアの水は毒なので、望がその強さを調べる方法を教えていく。十分に実戦で使える強さだと分かり、嬉しそうに目を輝かせた。
「おっし!もう潮の匂いがするようになったぞ!」
アランも喜びを表し、一年組はその変化にハイタッチをしていた。
「じゃぁ、今度は二年生たちを見ていこうか」
半年前と同じように魔力の特徴と向いている傾向を伝えていけば、自分にそんな事が出来るのかと驚いた後、一年生たちを見て希望を見つけたような表情になっていく。
それに笑い返して、残る三人へと近づいた。
「殿下は」
「名前で呼んでくれて構わない。殿下もいらん」
「え、そうですか?では、アンドリューくんは」
「アディでいい」
「じゃぁこの科にいる時はアディくんで。アディくんは土属性の金属が特性なんだね。結晶ができてる。ローランド様は」
「僕も気軽に呼んで良いよ」
「ローランドくんのは冷たくなってるね。水面が凍ってる。ガ」
「俺の事も気軽に呼んでくれ。呼び捨てでも構わない」
「じゃぁガウェインくんは、ジンくんと同じ身体強化が得意になりそうだね。ワットくんもそうだけど、属性違いだから物を強化する方向はちょっと違うかもしれないけどアドバイスは出来るかも」
二年生のワットは土属性、ジンは風属性、ガウェインは水属性だ。
師団員たちにも気軽に呼んでくれてと言われたので、みんなと話す時のような柔らかな口調に戻す。
「属性の違いはもちろんあるんだけど、水見式で分かった性質に分かれて訓練した方が分かり易かったりするかも知れないから、そういう所も考えて伸ばして行こうね」
イーサンとレイモンドは水属性、リンクは風属性、カタリナは火属性。
「マートン先生は水属性、ナタリー先生は風属性、クアンドロ先生は火属性ですね」
師団員たちも全員の魔力特性が分かった所で、魔法と魔力の違いについて説明を始めた。
「という訳で、学園祭でみんなが使っていたのは魔法ではありません」
「ええ?!」
「もっというなら、私は魔法が使えません」
「えええ?!!」
「ふふ、良い反応ですね。でも本当ですよ。私は生活魔法も使えないんです」
ロウソクを出し、子供でも使える「
「ですが、錬金術を使えば話は変わります」
指を鳴らすと、ロウソクに火が灯る。
「方法は違いますが、結果は同じです。そして、原理を知らない人からは無詠唱で魔法を使ったとさえ思われます。これが錬金術です」
だからこそ錬金術は面白いと言って笑う。
「これからは皆さんの得意な物を伸ばして行きましょう。苦手な所は必要な時に、それを得意とする人に助けてもらいながら進んで行きましょうね」
「そして来年も学園祭で優勝しよー!」と言えば、一年生が盛り上がる。
「今日は基礎のおさらいとして、ポーションを造ってみましょうか」
だからその前にと、二年生、教師、師団員全員に赤い作務衣を渡して着てもらう。
「錬金術師にとって赤は特別な色ですからね」
万物の元であるプリママテリアを集め、この世の源その物である賢者の石。
「錬金術に不可能はありません。それはつまり、この世に無能も出来損ないもいないという事です」
「、」
赤い作務衣を着た全員がもう一度着席したのを見て、一年生以外の全員にそれぞれの名前が刺繍された革製のバインダー(4つ穴タイプ、クリップタイプ)が配られた。
「これはこうやって使います」
穴あけパンチの使い方も教えながら羊皮紙に均等に穴を開け、バインダーに挟んで見せる。
「なんと!大発明ではありませんか!」
「いったいどういう仕組みなんだっ」
大騒ぎしている師団員と教師たちは気にせず、ポケットになっているページも渡して穴を開けたくない紙はここに入れれば良いとやって見せる。
「こ、これをっ、もらって良いんですか?!」
カタリナが戸惑いながら手を上げ、他の生徒たち、アディたちまでもが信じられないと見つめてきた。
「もちろんですよ。使わなかったらあの棚に置いておいて下さい。名前は入ってますけど、後から来た新入生とかで気にしない子が使うかも知れませんし」
ちょっと大きいと思うかも知れないが、このサイズが使いやすいのだと収納バッグから物凄く使い込まれたバインダーを出してみせる。
「私はクリップタイプをメインで使い、穴開きの方はまとめて置くという使い分けをしています」
望も茂と同じ様に見せてきたが、二つで用途を分けているようだ。
「これもう何代目なんだろう。ある日パカッて、本当に、どこからかほつれて来るとかじゃなくてパカッ!て壊れちゃうから」
あれは心臓に悪い上、ずっと一緒だった戦友を無くしたような気分にさせられると、バインダーを見つめてからしまった。
「後、教室のここにノートも置いてあるので好きに使って下さい」
錬金術は計算を沢山するし、人の記憶ほど曖昧なものはないからメモは必須だと、棚の中にある一つの箱を指差す。
この教室で過ごすのは初めての者たちに説明をしながら、穴あけパンチもここに置いてあると言い、減った分の羊皮紙を足して教卓へ戻る。
皆がもらったばかりのバインダーを大切そうに抱えている姿に笑って、ポーション造りに取りかかった。
今度はポーションのレシピが書かれた紙を皆に配る。レシピを見るのも初めてなアディたちの為に、旧レシピも全員に配って見比べてもらう。
といっても、配っているのは現津だ。
「こちらの旧レシピも造ってみましょうか。どんな違いがあるのか分かりやすいでしょうし」
「この新レシピは、?材料は全く同じものですが、少々分量に差がある程度ですね?」
「それはシゲルが入試の時に余った時間で作ったポーションのレシピになります」
「入試?!」
「こっちの旧レシピで造ったポーションって味が酷くて、調べようとした時に現津さんが代わりに飲んでくれたんですけど」
「あんな物を茂さんに飲ませるくらいなら私が回復します」
こいつはその為に回復魔法を使える様にしたのかと、現津の性格をそこまで分かっていない二年生たちもちょっと引いていた。
「なので私が自分で飲みやすい物を造ってみました」
「これには私も助かりました。回復には患者さんの体力や気力が直結してしまいますから」
「おまけに、この新レシピの方が効果が高いんですよ」
「魔力の相性もありますけど、リックくんとノアくん、アンちゃんなら初級ポーションのレシピで上級ポーションと同じくらいの効果が出せますよ」
「なんと!!」
「そんな事が!?」
二年生の中で向いているのはリンク、教師の中ではナタリー、師団員の中にも十数名いると言い、先程の水見式を思い出してもらう。自分にそんな特技があったなど知らなかった者たちが、嬉しそうに新レシピを見つめていた。
「では、まず旧レシピでポーション造りの手順をおさらいして、その次に新レシピとの違いを見ていきましょう。飲み比べもしたら、その効果を実感出来ると思います」
レシピに書かれている材料を全部机の上に出し、こうしておくと入れ忘れなどが無くて良いと基本中の基本から説明をした。
アディたち三人は本当に初心者なので、まどろっこしく感じる説明から始めても文句を言う者はいない。器具の名前や使い方をゆっくりと説明しながら、一回分のポーションを造り上げる。
「まだ集中力は持ちそうですか?このまま午前の内に新しいレシピも造ってみようと思います」
今使った器具は後でまとめて洗うとして、次は新しいレシピでポーションを造り始める。
「このレシピは作り手によって多少のバラつきはありますが、味も良くなりますし、材料も今までとほぼ同じなので費用もそこまで大きく変わりません」
「なんて事だ!」
「研究にはお金が必要ですからねぇ」
このポーションが造れるだけで十分生活していけるくらい稼げると、全員に実際造ってもらう。
さすがにアディたち三人以外は手慣れていたので、後は数を熟していけば直ぐに一人で造れるようになるだろう。
「これが造れるようになれば、魔力の相性問わず中級と同じ結果を出せますよ」
「そんなすごいレシピをっ、良いのですか?!」
「はい、みんなで実際に造っている所を見ましたが、ものすごく難しいという事も無いようですし、時が来たら錬金術ギルドにも提出して公表してもらうつもりです」
「え!?」
「そうなの?!」
「うん。いや、その理由はすぐに分かるよ」
驚いているアディたちに苦笑しながら、新レシピで造る手伝いをする。
「アディくんたちは手先が器用だね。初めてなのに筋がいいよ」
新参者の三人を中心に見ながら、午前の内に新レシピでもポーションを一本造り、早速飲み比べをしてみようと、一人二つのショットグラスを配る。
一口ずつグラスへ移し、アディたちに毒味をしようかと聞けば自分で造った物なのでいいと断られた。
そして、旧レシピのポーションを一口飲み、全員でえづき出す。
「うえっ、こんなに不味かったっけっ」
「久しぶりに飲むとっ、クルなっ」
一年組も久しぶりに飲んでその不味さを思い出したようだ。
みんな望から水をもらって口直しをしてから、気合を入れて新レシピの方に口をつける。そして目を見開いて騒ぎ出した。
「飲みやすい!」
「なんかっ、爽やか!」
「使っている薬草も、元々良い香りがするものですしね」
「こんなに違うなんてっ」
「私の都合で申し訳ないんですが、ギルドを通して公表するまではもう少しだけこっちの旧レシピで頑張っていただきましょう」
「こちらを知らないのですから、公表すれば喜ばれますよ」
「だといいんだけど」
現津とそんな会話をして苦笑する。
その後、みんなで使った器具を片付けているとみのり屋達が教室に入ってきた。一緒に入学したメンバーは、朝から自分たちが通っていた科に行っていたのでアディたちが錬金術師科にいるのを見て驚いている。
「あれ、王子様たちだ!」
「アディくんたちもみんな錬金術師科に編入してきたんだよ」
「へー、フットワーク軽いな」
「まぁ、好きな事やってる方が伸びるだろ」
いきなりため口をきいてきた進たちに焦る二年生。それを見て手を上げながら謝る。
「すまんな、わしはどうも敬語というか、この口調を変えるのが下手でな。気に障ったら一応気をつけるから言ってくれ」
「気にかけるだけだけどな」
「人には得手不得手がある」
笑いながら、昼食を取るために片付けた一室に移動した。
「塔で食事をしていたのか」
「道理で、食堂で見ないはずだ」
「皆さん作務衣に着替えたんですね。・・・少し採寸させていただいていいですか?」
豊が全員を見回し、シャッとメジャーを出して一人ずつものすごいスピードで採寸をする。そして、バインダーを開いてメモを取っていく。ザックリと人の絵も描き、目と髪の色も書き足していた。
「肌の色は、」
「そこまでメモするのか」
「似合う色は人それぞれですからねぇ」
「豊ちゃん、みんなの運動靴もお願いできる?」
「いいよ、明日までで大丈夫?」
「靴まで作ってるの?!」
「豊ちゃんはうちの仕立屋だからねぇ」
「一人で作ってるのか?!」
「このくらいの人数ならすぐ出来ちゃうよ」
布から織ってる訳でもないしと笑っているが、そんな簡単な話ではないだろうと全員に驚かれていた。
「ジンくん、また大きくなった?もう一回採寸しようか」
「この前作ったばっかだろ。まだいいよ」
「丈とか裾とか足りなくなってきてるから、それだけでも直そう?」
ポーとノアもだと言い、目測で「2cm、3cm」と呟きながらバインダーから前回測ったメモを出して書き足していく。
「やっぱりみんな成長期だねぇ、すぐ大きくなっちゃって」
「親かお前は」
そんな話をし、カリブーが持ってきてくれた食事を机に並べ、満が作ってきてくれたおかずも出していく。
「あ、毒味はするから安心してね」
「満が作ったもんなら毒でも食え」
「パワハラだよ、智賀くん」
「回復はかけますので、安心して食べてください」
「親しげにしても良いとは言われてるけど、雑に扱っていいとは言われてないからね?」
「チッ」
現津と梅智賀が二人揃って舌打ちをしたので、変な所ばっかりそっくりなんだからと呆れた様に言って三人に謝る。
「えっと、二人って本当に兄弟なんだね?」
「そうだよ、現津さんがお兄ちゃんで、智賀くんが弟」
「・・・外見はあまり似てないな」
「中身はそっくりだけどね」
「そっくりだよね」
「あー、あれだ、現津は防御が得意だが攻撃が出来ないとは言ってない。梅智賀は攻撃が得意だが防御が出来ないとは言ってない、みたいな」
「それどっちも出来るってことだよね?」
「ウメチカは、Fクラスにいたよな?」
「満と同じクラスが良いに決まってんだろ」
「うちで攻撃の火力が断トツで高いのは梅智賀ですよ」
「?!!!?」
学園始まって以来の天才と言わしめた現津が、自分よりも攻撃魔法が使えると弟を示す。
「梅智賀とガーフィールがいれば、まず大丈夫だろう」
「頼りにしている」
蜻蛉切と利刃に言われ、ニコリと微笑み返すガーフィール。
「私達攻撃とかからっきしだからねぇ」
「口喧嘩でさえ勝てないもんね」
「満の結界は鉄壁だ」
「それしか出来ないからね」
「ほい、毒味。うん、美味い。安心して食え」
進が三人分の取り分けた皿から一口ずつ食べて見せ、大盛りにしている自分の皿に向かって手を合わせて食べ始めた。
「マスター、毒味は私がいたしますので、」
「せっかくの美味い飯だ。そんな堅苦しい事考えながら食うのは無粋だろ」
「私達も食べようか。いただきます」
手を合わせるみのり屋と、食前の祈りを唱えてから食べ始める他の子供たち。
ジンは学園に入って改めて食前の祈りという物に触れたので、祈る神もいないという理由からみのり屋と同じ様に手を合わせている。
「うん!美味しい!これオークのお肉だよね?バラ?」
「うん、今はバラ肉が一番多くて、他のストックが減ってきちゃった」
「マジかー、抜け出して狩って来るかな」
「抜け出すな!もう教師って立場なんだから届け出してから行け!」
アランが食前の祈りを途中で止めて顔を上げる。
「お前、今まで抜け出してなかっただろうな」
「狩人が気配で察知されたら終わりだろ」
「数日前までただの生徒だっただろうが!」
「今度美味い肉を獲ってくるから見逃してくれ」
「賄賂を渡そうとすんな!」
「わしに交渉ごとは無理だな」
「今更だろ」
「やる気の問題ではないか?」
「先生も早く食べてみて下さい!」
「本当に美味しいですよ」
「美味いのは知ってるよ。はぁ、」
「今日も美味い。満は最高の妻だ」
「ありがとう、デザートに水羊羹もあるからね」
「狂い死にそうな程好きだ」
「はい、榊さん。あーん」
「あー」
夫婦でなんかイチャ付き出したのを見せられ、空気を変えようとガウェインが茂を見た。
「訓練の時は、森へ行くのか?」
「うん、午後からまたポーションを造って、その効果を自分でちゃんと確かめるの。お客さんに渡す時だって説明出来ないとどんなにいい商品でも上手く売れなかったりするしね」
学校全体の水見式が終わったら身体強化の訓練に入るから、また作務衣を着て塔の入り口に集合だという。
昼食が終わり、それぞれまた各々の教室へ戻って行った。
そして錬金術師科の皆はポーションを三本造った所で終わりとなった。終業の鐘が鳴り、使った器具を洗っていると豊と蜻蛉切が教室に入ってくる。
「はい、運動靴。付与もしてあるから痛みにくくはなってるけど、履いてみて痛くないか確かめてくれる?」
「もう出来たのか?!」
「豊は仕事が早いですよ」
「うわっ!軽い!えっ?!」
「すごい、まるで裸足でいるみたいだ」
「大丈夫そう?あ、ジンくんたちも、靴はさすがにサイズオーバーだと足を痛めちゃうから、明日からこっちを履いてね」
「マジかよ。よく見てんなぁ」
今日は測らなかったのにと、渡された新しい靴を履いて前の靴が窮屈であったと実感した。
「他のみんなは、まだ大丈夫かな?」
また少ししたら採寸し直そうといい、ジン達が今まで履いていた靴を持ち上げる。
「洗ってまた持ってくるね。このままジンくんたちが持ってても良いけど、もしかしたら来年とかこの靴がピッタリな子が入ってくるかもしれないし」
「このまま飾っとくのももったいないしね」
こうして、錬金術師科全員が上から下までお揃いとなった。