8.鬼灯の冷徹
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次の日、屋台を引いて黄泉の国へ向かうと既に二人が待っていたので、今日も一緒にどんぐりを拾いに行こうかと火の民達と歩きだした。
そして、山へ入る前に鬼灯たちと同年代くらいの女の子たちと出会った。中にはみのり屋によく来てくれるお香もいたので、こちらから声をかけると「みんなでどこへ行くの?」と聞かれ、答えようとする蓬だが烏頭がそれを止める。
「女には教えてやらねぇよ!」
そう言って胸を張るので、笑いながら進がしゃがんだ。
「そうだな、明日の昼までは内緒だな」
女の子たちに見えるように烏頭、蓬、鬼灯の肩を引き寄せて見せた。
「これからお結びとは違う美味い料理を作る材料を採って来るんだ。沢山採れたら三人がみんなにも奢ってくれるかもしれないぞ」
「本当!?」
「わー!楽しみだわ!」
キャッキャッと女の子たちに笑顔を向けられ、頬を赤らめながら照れる烏頭と蓬。
「友達は何人いる?」
「えっとねぇ、ここにいる五人は三人共一緒に遊んだことがあるわ」
「そっか、なら五人で明日の昼にみのり屋においで、三人が今日頑張った成果を見せてやるから」
そう言って微笑む進を見てポーッとしながら返事をする五人。
「さて、女の子たちも期待してるし頑張らなきゃな」
三人の背中を叩き、張り切って行くぞと山へ向かって歩き出すのを慌てて追っていく。
「進さんかっけー」
「進さんはいつでもかっこいい方だよ」
「うん!すごい強くてかっこいいよ!」
蓬の呟きに火の民達は間違いないと頷いて山へ入りみんなでどんぐりを拾い始めた。
昼食も山で食べ、一日かけて拾ったお陰で大量のどんぐりが集まった。今日も進は芋を掘っていたようで、昨日の様に泥だらけだ。
「うん、いいな。虫食いもほとんどなくて良いどんぐりだ」
今日も夕飯を食べていきなと二人を誘って店を開いている広場へ戻り、みのり屋へ戻って風呂に入ってさっぱりして食堂へ入る。するとそこにはすでに進がいて、囲炉裏に火を入れていた。
「さっぱりしてきたな」
「うん!」
「何か焼くの?!」
「すっかり仲良くなったねぇ」
子供たちの話を聞きながら夕食を食べ、明日も山へ行くのかと聞かれていいやと首を横に振る。
「五人、こいつらの友達を昼食に誘ったんだ。だからどんぐり蕎麦を作ってくれないか?」
「わぁ!五人も!?」
「もしかして女の子!?」
これは張り切って作らないとねと盛り上がる母たち。
これが切っ掛けで誰かといい雰囲気になるかしらと優と至がはしゃいでいるのを見て、それはどうだろうかと鬼灯が冷静に言っていると烏頭が「女なんて気にしねぇし」という。
それを聞いて「年頃の男の子!」と至が可愛がっていた。
「母ちゃんがいっぱいいるってすげぇな」
「女性が強いのは良い事ですよ」
「それで足りるか?御代わりあるぞ」
いっぱい食えと梅智賀が空になった皿に大皿から料理を取り分けていく。
「今日も沢山自然樹を掘って来てくれたんだね。明日お蕎麦を作っても残りそうだし、夕飯はお好み焼きにしようか」
「なにそれ!」
「それも美味い奴だろ!」
「明日も食べにくる?沢山出来そうだからお土産に持って帰って上げてね」
「やったー!」
「明日も来るー!」
囲炉裏の火で温めた味噌汁を竹マグに入れ、ノリで包んだお結びを籠に入れてお土産として持たせた。
「また明日なー!」
「寝坊しないでくださいね」
「進兄ちゃん!また休みの日は一緒に遊ぼうな!」
「山に入るのにハマったか?」
「気をつけてね」
笑って二人の頭を撫でていた。今日はガーフィールと転弧が二人を送っていく。
「今日も楽しかった?」
「はい!」
「さ、歯を磨いてもう寝ようね」
寝て起きたらもう朝で、また沢山楽しい事があるからと手を繋いで洗面所へと向かった。
次の日はみのり屋は開店日なのだが、いつもなら蓬たちとすぐに採取へ行っていた鬼灯達が今日はずっと台所に齧りついている。
「どんぐりが、こんなにキレイな粉になるなんて!」
殻を全て取り除き、水で晒した後に天日干しにして石臼で引いていく。本来ならば数日必要なこの工程も錬成術を使えば一瞬で終わった。
「家にある奴よりずっと白い!」
「なんでだ!?」
「じゃぁ、これから麺を作っていくよ」
「おー!!」
どんぐり粉と自然樹を合わせて一つの塊になるまで練り、寝かせる。
「スープはこれ!飲んでみて」
「うま!・・・でも、これこの前進兄ちゃんが作ってくれた汁物?っぽい?」
「そうだよ。その兎で出汁を取ったの」
このスープも美味しいよねと言い、できた生地を伸ばして麺にしていく。
「すごい!こんなに細くなるなんて!」
「お前けっこう料理好きだよな」
「魚とか自分で焼いてたからじゃね?」
鬼灯が目をキラキラさせて切った麺を解して一本いっぽんを伸ばしながら観察していた。
「そろそろお店開けるよー!」
「はーい!」
「三人はどうする?友達が来るまでお店の周りで遊んでても良いよ」
満に声をかけて店の外へ出て「すげぇのができた!」と話している中でも、どんどんと客が店の前に並び始めていた。
そして昼が近づき、お香が四人の友人と共にやってきて三人に話しかける。
「来たか!」
「どんな物を作ったの?」
「それは食ってみてのお楽しみだ!」
「満さんたちに来たと知らせてきます」
鬼灯が中へ入ると、しばらくして進と共に戻ってきた。
「待たせてゴメンな。こっちにおいで」
店の前だと他のお客さんたちも食べたくなっちゃうからと裏へ呼び、テーブルを一つ出して全員を座らせる。
「はい、お待ちどう様。こちらどんぐり蕎麦でございます」
「どんぐり?」
「そばって?」
「みんなで拾ったんだ。美味いよ」
湯気の上がる器からは嗅いだことことのないいい香りがして、五人も覗き込んでゴクリと喉を鳴らした。
「お前らも一緒に食べな」
「うわー!ありがとう進さん!」
「頑張った本人なんだから沢山食べな」
おかわりもあるからなと言って店の正面へ戻っていったので、鬼灯がいただきますと両手を合わせてフォークで食べ始めれば他の子達も一口食べ、それからはガツガツとスープも全て飲み干してほうっとため息を吐き、空を見上げていた。
「こんなに美味しいもの、お結び以来だわ・・・」
「本当・・・」
「どんぐりを、どうしたらこんなに美味しくできるのかな・・・」
三人も満足したのか、「はぁ〜」と深い溜め息を吐いていると、冷たい水を持って至がやってきた。
「スープも全部飲んでくれたんだ!美味しかった?」
「はい!とっても!!」
「あの麺もね、この子たちが朝から作るの手伝ってくれたんだよ」
やっぱり男の子も料理ができる方がいいよねと言う。
「私も前疲れて寝ちゃった事があったんだけど、そしたら利刃さんが甘露煮作ってくれたことがあって、感動しちゃったなぁ」
「マジか」
「利刃さん料理できたんですね」
「至さんの方が好きって感じなのにな」
「今でもたまに作ってくれたりするよ」
幸せそうに笑って戻っていく姿に、めっちゃ意外だなと三人で話していると、女子五人が家ではお母さんが、お父さんがと話し出した。
こうして、三人は五人の女の子たちからとっても美味しいものが作れる男の子たちとしてちょっとした有名人になり、株も上がった。らしい。
「進さん、次のお休みは何してるんですか?」
「今度一緒に黄泉との堺にある川を見に行きません?」
「やっぱ進兄ちゃんが一番モテてんじゃん」
「あれはしかたねぇって」
「女性だと知った上で、ですからね」
囲んでくる女の子たちにどうしようかと苦笑している進を見る三人だった。