8.鬼灯の冷徹

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みのり屋の一人。迫圧紘がお相手となります。
みのり屋の一人。フーズ・フーがお相手となります。
みのり屋の一人。蜻蛉切がお相手となります。
みのり屋の一人。金剛大慈悲晶地蔵菩薩がお相手となります。
精霊種、火の民の女の子。志村転弧がお相手となります。


次の日、朝食が終わった所でが鬼灯に背負い袋を手渡す。

「見た目よりも沢山入るから、今度からお弁当とか水筒はこっちに入れるようにしてね。硬い皮を使ってるから丈夫だよ」
「ありがとうございます!」
「ただ今までのように採取をした物は籠に入れて持って来た方がいいな。こういった便利な物は狙われやすい」
「そうですね。気をつけます」
「この鞄にも個別登録をしましょうか」
「松果体と同期付けしたら鞄を失くしちゃっても直ぐに手元に戻ってくるようにできるよ」
「そんな事までできるのですか!」

眼を輝かせている鬼灯に、自分たちも持っている、お揃いだ、良かったなと子供同士で喜び、進たちと共に数名の大人と黄泉の国へと向かった。

「あ!来た来た!」
「待ってたぞー!」

昨日渡した弁当箱を持って今日は既に待っていた二人と合流し、二人の案内でいつも遊んでいる山へと向かっていく。

「行ってらっしゃーい!」
「気をつけてねぇ!」

その背中に手を振って、屋台の準備をした。

「茂さんたちっていつも機嫌いいよなぁ」
「そうですね。家でも変わりませんよ」
「いいなぁ、うちの母ちゃんなんかいっつも怒ってるぜ」
「うちも!いっつも怒鳴りながら追いかけて来てさぁ!すっげぇ怖ぇの!」
「それは烏頭さんにも問題があるのでは?」

そんな話をして盛り上がりながら火の吹く山を登っていった。

「お、どんぐりあるじゃん」

進がしゃがみ、足下に落ちているどんぐりを拾い上げる。

「えー、うちで薄く焼いたの作るけど別に美味くねぇよ?」
「だよなぁ」
「私も食べていましたが、口の中が酷い事になります」
「ははは、このままだと食べにくいけどな。ちゃんと美味く食べられるぞ。ただ量が必要だからな、今日集めたとしても足りないかもしれないけど拾っていくか」
「美味いもんが食えるなら拾う!」
「俺も!」
「どんぐりで良いのは助かります」

集めるのが楽だと、全員で拾っていく。

「いつもこの辺までしか来てないんだな」
「そうだよ。よく分かるなぁ」
「足跡とか踏まれた土の感じとか、木の生えかたとかな。見てればどんくらいの人の出入りがあるかくらい分かるさ」
「すげー!」
「わし個人はルールとか結構緩いけど、森とか人のルールが通用しない所での決まりは厳しいぞ」

そう言って子供たちと視線を合わせるようにしゃがむ。

「森なんかにいる生き物が、今度美味い物を持って来るから許してくれって言っても見逃してくれる訳が無いからな。だからここから先に行く時は誰か森や山に詳しい大人と一緒の時だけだ。子供だけでは行かないって約束してくれ」

みんなでもう遊べなくなるなんて嫌だからなと言われ、子供たちは返事を返す。

「みんなで森で遊ぶ時は、わしの事も誘ってくれ」

笑いかけてから一緒にどんぐりを拾い始めた。

しかし、しばらくすると顔を上げて山の奥を見つめて立ち上がる。

「ちょっと行ってくるけど、子供たちの事見ててくれるか?」
「狩りですか?私が行きましょうか」
「いや、初めて見る奴だからわしが行ってくる。どんな奴か楽しみだ」

そう笑って走り出した進の姿は直ぐに見えなくなった。

「狩り?なんかいんの?」
「進様には分かるんだろうな。私たちにはまだ気配さえ感じ取ることが出来ないが」

苦笑しながら子供たちと一緒にどんぐり拾いを再開してしばらくすると、音もなく進が戻ってきた。

「お帰りなさいませ。何がいたんですか?」
「なんだろうなあれ。ウサギみたいななんかだった。昼になったら焼いて食ってみるか」

もう少ししたら向こうにある川のほとりで昼食にしようと言ってどんぐり拾いに参加し始める。

「進兄ちゃんたちって、火の民?に様って呼ばれてんのに偉ぶったりしないよな」
「実際偉くは無いからなぁ」
「私たちが敬称を付けてお呼びするのは皆様をお慕いしているからなんですよ」

子供たちが集めたどんぐりを大きな籠に入れながら笑っているモネとカリブー。みのり屋の全員が神様じゃないと言っていたが、やっぱり人のふりをしている高位の神じゃないのか?とコソコソ話しながらどんぐり拾いをし、お腹が空いたと思う少し前に河原へと移動する。

「ちょっと下がっててな。狩ってきた獲物を出すから」

そう言って子供たちを下げてから、川の中にウサギのように耳の長い化け物を出した。

「す、すげー!こんなのを一人で倒してきたのかよ!!」
「狩人だからな」

眼を輝かせている烏頭たちに笑い、「こういうのがいるから森には一人で来るなよ」と言い、釜戸を作る者と捌く者に別れて昼食の支度を始める。

「耳も焼いて食うの?」
「焼いても美味いと思うけどなぁ。今日は弁当もあるし、汁物にして食うかな」

大きな鍋を出して素手で割った骨で出汁を取る。その後に肉と耳の軟骨を合わせてミンチにし始めた。

「はい、交代」
「やっていいの!?」
「みんなでやった方が美味いもんが出来るんだよ」

十分に出汁が出た骨を取り出し、そこら辺に生えていた野草を川の水で洗って入れていく。

「うん、いいひき肉になってるな」

ありがとうと礼を言ってスプーンで一口大にしながら鍋の中に入れた。火が通ったのを確認してから火からおろし、味噌で味をつける。

「よし、じゃぁ昼飯にするか」
「やったー!」
「飯だー!」

カリブーの体からお重に入れられたお結びとおかずを出していく。鬼灯が自分の鞄から水筒を出していれば、それを見た二人は羨ましがる。

「はは、豊にお願いして作ってもらうか?」

中が広くなるタイプは大人になって自分で稼げるようになったら頼んでみなと言われ、口をとがらせながらも鞄は欲しいと盛り上がる。

「うっま!」
「なんかっ、コリコリしてる!」
「それが耳の部分ですよ」
「軟骨つみれ汁いいよなぁ」
「姐御は意外に料理出来るんだよなぁ~」

そんな話をしながらしっかりと全てを食べ終え、スープもキレイになくなった。
モネたちが鍋の片づけをしてくれている間に、集めたどんぐりの量を確認していく。

「いいな。ほとんど穴が開いてないどんぐりだ」
「足りそうですか?」
「明日も集めれば十分かな」
「やったぜ!」
「なぁなぁ、どんぐりでどんな料理が作れんの?」
「それは材料がちゃんと集まってからのお楽しみかなぁ」

ただ、食べればしばらくどんぐりばかり拾う様になるかもしれないぞと言われ、そんなに美味い物かぁと膨らんだ腹をさすりながら幸せそうな顔をする蓬。

「どんぐりはみんなに任せて、わしは芋でも掘るかな」
「いも?」
「どんぐりの料理に使う、山で採れるもう一つの食材だな」

実はそれを探すのが面倒なんだと、しっかりと食休みをしてから火を消してまた森に入って行った。
しばらくどんぐり拾いをしていると、進が「あったあった」と蔓をたどりだす。

「これから掘り始めるから、あんま遠くに行かないように気をつけてな」
「はーい!」
「どんな芋なんだろうな」

一時間後、泥だらけになりながら進が掘り出したのは巨大な28本の山芋だった。

「はぁ、形が歪だから掘りにくい」

そう言って、もう一本掘り出してカリブーにしまってもらう。

「これ、芋なの?」
「美味いの?」
「美味いぞ。今日の夕飯もうちで食っていくか?」
「いいの!?」
「二人とも今日一日頑張ってたからなぁ。明日も拾いに来るんなら美味い物食べて元気付けたいだろ」
「やった!」
「おっしゃ!」

という事で、集めた物は全てカリブーに持ってもらい、帰る事にした。

「うちに来る前に、二人の家に寄ってうちに来るって言わなきゃな」

昨日も心配させたんじゃないか?と話しながら山を降りたその足で蓬、烏頭の順に家を訪ねて預かる承諾を取ってからみのり屋へ向かった。

「ただいまぁ」
「おかえりなさい。わぁ、汚してきたねぇ」

二人の家へ寄っている間に屋台をしまって先に戻ってきていたようで、家へ入ると満が顔を出した。

「芋ほりするとこうなるよ。あ、カリブー芋出してくれるか?ちょっとでいいから今日の夕飯で出してくれ」
「わ!立派な自然樹!」
「鬼たちは食べてなかったみたいで、手つかずだったからまだ沢山採れそうだったよ」

どんぐり料理でも使いたいけど、明日また掘ってくるから食べきってもいいぞと満の後ろからやって来たサンスペリアたちが一緒に芋を受け取って厨房へと入って行った。

「このまま風呂に行くか」

歩き出した進の後をついて行き、色の違う二つの暖簾の前で別れる。

「進兄ちゃんって本当に女の人なんだな」
「あ、待って。二人共お風呂から上がったらコレ着てね」

キレイにして繕っておくから帰る時に着替えて行ってねとが持ってきた作務衣を受け取り、礼を言って風呂へ入る。
キレイになって出てくれば、食堂と繋がっている廊下にまで美味しそうな良い香りが漂ってきていた。

「腹減った~」
「すげぇ美味そうな匂いする!」
「今日は何かな?」

子供同士で夕飯の内容について話していると、さっぱりして目隠しを取った進を見てその目の美しさに口を開けながら呆ける。

「進兄ちゃんめっちゃかっけぇ!」
「はは、ありがとう」

その目ってどうなってんの!?と話していれば、サンスペリア達が顔を出して食事を配膳する手伝いをしてと声をかけ、返事をして厨房と繋がっているカウンターに乗せられていたお膳をそれぞれの席へと運び出す。

「寒くないか?風呂から上がって髪も乾かしてるみたいだが、湯冷めしないように気をつけろよ」

大人達に声をかけられながら、火の入れられた温かい囲炉裏を囲むように皆で座り、手を合わせて夕食が始まった。

「これなに?」
「ドロドロしてるけど、食えんの?」
「今日掘ってきた芋を擦り下ろしたもんだぞ」

「あの芋!?」と驚いている二人に、少し大きめの茶碗に盛られた麦飯に白だしで味をつけた芋をかけて食べて見せれば真似をして口に入れる。

「美味い!?」
「はっ、もう無くなった!?」
「のど越しがいいから直ぐ入って行くよな」
「明日はちょっと移動して、別の所を掘ってみるか」
「これは美味しいですね」
「明日は私たちも掘るのをお手伝いします!」
「どんぐりを拾う班と芋を掘る班に別れてみるか」

擦り下ろしている芋が入っている大きなすり鉢に御代わりがある分をみんなで分け合い、全てが綺麗になくなった。

「イワシの澄まし汁も美味いな。ショウガがきいてる」
「今日も亀さんが海の幸を沢山持って来てくれたの」
「時間を見つけてあちらの海にも行ってみますかね」

賑やかに話をして、お土産用に擦り下ろした芋を焼いたフワフワした食べ物とお結び、竹で作ったカップに入れたイワシの澄まし汁を籠に入れて二人を家まで送った。
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