8.鬼灯の冷徹
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日が暮れてくる前にみのり屋の屋台がある広場へ向かうと、長かった列も短くなっていた。
「お帰り、いつもこのくらいの時間まで出かけてるの?」
「はい。早すぎましたか?」
包んだお結びを渡していた満が出迎えてくれた。
「ううん、もうすぐ店じまいの時間だからこのくらいなら丁度いいかなって思って」
「今日はキノコ採って来たぜ!」
「大量だね」
「桃之丞が探すの手伝ってくれたんだ」
「丁、おかえり。桃之丞も」
「ぶぶぶ」
現津に抱っこをせがんでいる桃之丞を抱き上げ、丁の頭を撫でる。
「今日あった方に、丁という名前は召使いという意味があるので改名を勧められました。今日からは鬼灯と名乗ることにします」
「そうですか、それは良い出会いがありましたね」
本人が気にしていないのなら言わない方がいいのかと思っていたが、気づいてくれる人に出会ったのかと笑ってまた頭を撫でた。
そして、蓬と烏頭にも向き直って籠の中を覗く。
「大量ですね。あちらで鑑定しましょうか」
「おかえり~、今日もずい分頑張って来たねぇ?」
「あんまり無茶するなよ?森の奥とかなんかすげぇのいるみたいだし」
圧紘と転弧にも頭を撫でられ、自分を見下ろしてくる大人たちを見上げていれば、至が後ろから抱き上げてきた。
「おかえりー!今日も沢山働いたよぉ。丁くんも疲れたでしょ、今日は私たちと一緒に寝ようね!」
「いいなぁ、鬼灯」
「二人もずい分頑張ったんだな」
「家はここから近いのか?日が暮れたら何かと危ないだろうから送っていこう」
利刃と蜻蛉切が烏頭と蓬に話しかけ、茂が鑑定している間に改名したと告げると全員がすんなり「鬼灯」と呼んでくれる。
そして、収穫分のお結びを烏頭と蓬の代わりに持ってくれた。
「あ、明日みのり屋の家で遊んでもいい!?」
「いいよ。コンシンネさんたちの一族の子供も沢山いるから、仲良くしてあげてね。魂達はここの亡者と違って弱いから、いたずらはしちゃダメだよ?」
畑の場所や、行ってもいい場所、危険な場所の説明もみんなに教えてもらってねと言われ、歓声を上げて嬉しそうに帰っていく。
「私たちも戻ろうか」
「そうね。夕食の前にお風呂に入ろうかしら。汗がすごいわ」
「豊の作ってくれた服着てなきゃなかなか過酷な場所かもな」
みんなで賑やかに屋台やベンチを片づけて家に戻って行った。
今日は女湯に連れて行かれた鬼灯がピカピカになって出てくれば、戻って来ていた蜻蛉切たちがいたので礼を言いに近づく。すると笑顔で頭を撫でられた。
「今日は何処でキノコを探していたんだ?」
「火の吹き出している森です。あそこには川が流れているのでキノコやコケが沢山取れると木霊さんが教えてくれました」
「子供だけで森へ行くのは少々心配ではあるが、逞しいものだな」
「明日はうちで遊ぶと言っていたが、腹が空いたらこの食堂か畑へ行くと良い」
そこにある食べ物は好きに食べていいと言われれば、黒い翼の生えた、火の民と呼ばれている褐色肌の子供たちが畑を案内してあげると一緒に見て回る約束をする。
「鬼灯くん、寒くない?」
「?はい。丁度いいです」
「よかった。ここって黄泉の国よりも涼しいから、風邪をひかないように気をつけなきゃね」
「ありがとうございます。あと、今日のおべんとうに入っていた甘い物はなんですか?」
いつものお結びと違うと三人で夢中で食べてしまったと言われ、稲荷寿司美味しいよねと盛り上がる。他にも今日三人で何をしたかと話す鬼灯に相槌を打ち、食後には甘い果物を食べた。
「寝る準備をしたら家の中を探検する?」
私の部屋を散策してもいいよと至が手をつないで奥へと入って行く。その隣を歩く利刃を見て、ズボンの裾を掴めば手を取って歩き出した。
「可愛いねぇ」
「思ったよりも慣れるのが早そうですね」
「結構しゃべるね」
「自分の話を聞いてもらえるという経験が少なかったのでしょう」
ガーフィールが、「あれはとても嬉しい物ですよ」と笑っていた。