8.鬼灯の冷徹
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次の日、白澤が麒麟と鳳凰を連れてやって来る。
「おはよう~!お客さん連れてきたよ!」
「わぁ!可愛い!」
至が鳳凰を抱き上げて頭を撫で、望がお盆で口を隠しながら麒麟を見ている。
「えー!僕の時と反応違くない!?」
「人にはそれぞれ好みがありますからね」
現津が持ってきた物を受け取って帳簿につけていく。
「鳳凰はまだ可愛いって分かるけど!麒麟なんかじじいじゃん!」
「老成でしか出せない落ち着きがあって素敵だと思いますよ」
「納得がいかない!」
騒いでいる白澤をベンチに座らせ、何がどれくらいあるかと確認をしていく。
「このお酒、ただのお酒じゃ無いですね。神気が混じっているというか、」
「よく分かるねぇ!養老の滝っていう、無限に酒が湧いてくる滝があるんだよ」
「一眼一足、両手、盲目、これはずい分」
「人に化けるのが上手いのう」
「ふふ、よく間違われますが私達は神様じゃありませんよ」
「それはさすがに無理があるじゃろう」
「お一人140個分となりましたが、どうなさいますか?」
「二つずつ食べてから後は持って帰るよ。また味の違うお結びを半分ずつ包んでもらっていい?」
「はい、かしこまりました」
「そうだ、こちら新しい味のお結びなんですが、お口に合うようでしたらこちらもお包みしましょうか?」
そう言って一口大の白いお結びを出す。中には甘辛い佃煮が入っていた。
「んー!これも美味しいね!甘い物も合うなんて思わなかったよ!」
「海の幸と山の幸が合うとはな!」
話していると、また子供たちが来て貝と海藻を見せてくる。
「これって食える!?」
「昆布とアサリ?かな?」
「大丈夫だよ、どっちも食べられる」
「昆布は出汁を取った後、佃煮にしようかな。でもそれだと今日と被っちゃうか。砕いてふりかけとか、昆布巻きの方が良いかな」
満が新しいメニューを呟きながら昆布を見つめていた。
「今日はご一緒だったんですね」
「ニーハオ、聞いてよ木霊くん、望ちゃんの好みって麒麟みたいなのっていうんだよ!絶対僕みたいな若い方が良いと思わない?」
至は鳳凰だったしと愚痴れば、「ああ」と鳳凰を見て納得したような声を出す。
「至さんは、子供好きなようです。私も初対面から抱き上げられたりしましたから」
「行動力の塊だな」
「みんな今日も食べていく?」
「うん!腹減った!」
「俺も」
「私もお願いします」
「今日も新しい味があるから、味見してみてくれる?」
おしぼりで手を拭き、渡された皿から小さなお結びを取ってすぐに食べた。
「ん!甘い!!」
「これ!昨日取って来た木の実ですか!?」
「そうだよ、一昨日海亀?さんが小魚を沢山持ってきてくれたの」
「海からここまで大変だっただろうに、よく来てくれたよねぇ」
「川はあるけどな」
「海亀って淡水大丈夫なの?」
「ただの海亀じゃないし・・・?」
持って帰る分を包んだお結びを持った至が四人に話しかけ、ニコニコと笑いながら頭を撫でて屋台へ戻っていく。
「なるほど、あれは子供好きで間違いないな」
「子供は可愛いかもしれないけどさぁ、何もできないじゃん」
「お前が歓迎されんかったのはそこだろう」
そう話していると、海亀が甲羅の上に貝や海藻の入った籠を持ってやって来た。
「すみません、ちょっと早くついてしまったのですが、お結びと交換していただけませんか」
「はーい、あ、昨日の亀さん。今日も来てくれたんだぁ~。遠い所ありがとう」
「いえいえ、持ち帰ったお結びを姫が大喜びでして、」
「今日も全部持ち帰る?」
「いえ、一つだけ食べて行きます。昨日食べ損ねてしまったので」
「ならここで待っててねぇ~」
榊がベンチの隣にお盆を置き、そこにお茶と漬物を添えた。
「本当に亀だ」
「あ、これはこれは、これでも海の神の一柱ですよ」
木霊と挨拶を交わしている海亀の前に、海苔巻きが置かれた。
「亀さんならこっちの方が食べやすいかな?」
「わぁ、お気遣いありがとうございます」
一口大に切られた海苔巻きを食べ、海の味がすると嬉しそうに笑った。
「お待たせしました、こちらがお持ち帰り用のお結びです」
「おお。これなら皆に配っても足りるじゃろ」
「どっこいしょ、じゃぁまた来るぞ。馳走になったな」
三人を見送ってから、優が四人に話しかけた。
「いつも来てくれてとっても嬉しいわ。ちゃんとその日のうちに食べている?」
「ここは暑いからねぇ、明日までは持たないと思うから、他のお客さんにも一応声をかけてるけど」
「食べきれる分だけ持って帰るようにしてね?」
「亀、帰る時は声かけてな。川まで送ってくから」
「ええ!そこまでしていただく訳にはっ」
「変な奴らに絡まれたら面倒だろ。そうでなくてもここまで遠いだろうし」
「そんな事まで、ありがとうございます。あと、この新しいお結びとっても美味しいです。まさか一昨日持ってきた小魚がこんなに美味しくなるなんて」
急なお使いだったからあんな物しか用意できなかったのにと、感動しながら進と共に川へと向かっていった。
この日も客の行列が途切れることはなかった。
翌日も早い時間から丁たちがやって来てお結びを食べていれば、体の大きな鬼がやって来て子供たちからお結びをひったくろうとして騒ぎを起こした。
しかし、利刃がすぐに取り押さえたので誰も怪我をせず、お結びも無事だ。
「みのり屋で騒ぎはご法度だ」
これ以上騒ぐなら角を切り落とすぞと言われ、罵りながら逃げていく。それを見て烏頭が「かっけぇ!!」と叫ぶのと、至が抱き着くのは同時だった。
「利刃さんかっこいいー!好きー!!」
「出てくるなと言っただろうが」
至にため息を吐き、サーベルに当たらないように片手で押さえ、肩に手を置いて止める。
「何もかもが癖っ!」
「至姉ちゃん、利刃兄ちゃんにベタ惚れしてんだなぁ」
「だってかっこいいじゃん!こう、仕事とか動きとかもう、ね!」
「子供相手に何を言っているんだ」
ひとしきり抱き着いて満足してから離れた至に、少々呆然としながら助けてくれた礼を言う丁たち。
「怖い思いをしたな。ここにいる間は守ってやれるが、家へ戻るまではそうもいかん。気をつけて帰るんだぞ」
目線を合わせるようにしゃがんで微笑み、頭を撫でてまたおいでと言ってから屋台の方へ戻っていく姿を見送る。
「かっけー」
「ああいう所が好きなんだぜ、至姉ちゃん」
「でしょうね。付喪神が人の姿をしている事と、あの強さは関係があるのでしょうか」
そう話しながら一度烏頭の家へお結びを預けに向かう。
次の日もみのり屋の屋台へ向かうと、変な人に絡まれなかった?と茂が聞いてきた。
「みんないつも子供だけで来てくれるけど、誰か大人がいた方がいいかな?親御さんとか忙しい?」
「忙しいっていや、忙しいかもな?」
「うん、二人とも食い物探しに行ったり、布織ったりしてる」
「私には親がいませんので」
「そっか、丁くんは親御さんがいないんだ。ならうちの子になる?」
「ええ!?」
「お兄ちゃんがいっぱいいるから急に家族と兄姉が増えたら驚いちゃうかな?」
微笑みながら頭を撫でてくる茂を驚きで固まったまま見上げていれば、現津がどうしたのかと寄ってきたので、丁にうちの子にならないか誘っていたと、そのまま伝えてしまう。
「それは良いですね」
しかし、現津は微笑んでしゃがむと丁の頭を優しく撫でた。
「うちに来れば、九人の母と父、兄姉が無数に出来ますよ」
「九人?八人じゃなくて?」
「ここにはまだ来ていませんが、みのり屋にはもう一人母がいるのですよ」
「ふふ、お試しで今日の夜にでもうちに泊ってく?」
「お試しならいいんじゃね?とりあえず今日の晩飯は考えなくていいじゃん」
「明日どうだったか聞かせてくれよ」
「みのり屋の皆さんはどなたも即決ですねぇ」
私も一度お邪魔させてもらいましたが、とても良い所ですよと木霊にいわれ、少し考えてから小さく頷く丁。
「よかった、うちが肌に合わなかったら無理に決めなくても良いからね」
それでも毎日ご飯だけは食べにおいでと言い、店が閉まる頃にここにまた来てねと、遊びに行く三人を見送った。
木霊はまた明日と言って一人現世へと戻っていく。
それから夕方になり、丁はみのり屋の屋台がある広場へと向かう。
しかし、途中で足を止めた。
本当に行って良いのかと戸惑っていると、どうしたと声をかけてきたのはホーキンスだった。
「うちの夕飯は時間が決まっていてな、夕飯まで時間がある。お前はまだ幼いから、先に風呂に入っていつ寝てもいいように準備をするか」
「・・・本当に、行っても良いのでしょうか」
「構わない。俺も拾われた身だが、今までも沢山の子供を迎え入れてきたからな」
みのり屋はそういう家なのだと微笑む。
「気が付いたら弟妹が大勢出来ていて、楽しいぞ」
おいでと誘われ、小さな足を動かしてついて行った。