8.鬼灯の冷徹
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次の日、また開店準備をしていれば木霊たち四人が木の実と魚を持ってやって来た。
「四人とも朝が早いねぇ」
「あんな大勢の大人の中に入ったら潰されちまうからな」
「確かにな」
「今日も可愛いねー!」
抱き着いてきた至に、烏頭は役得とばかりに顔を緩ませ、蓬は恥ずかしそうに顔を赤らめる。丁はキョトンとしていた。
木霊は茂たちを自分の上位種でもある高位の神が人のふりをしていると思っているので、大人しくされるがままだ。
「今日は木の実だぁ~」
「お、クルミあるじゃん」
「小魚と一緒に甘い佃煮にしてお漬物と一緒に出そうかな」
「今日の分は一人八個ずつですね。全部持って帰りますか?」
「俺一つだけここで食ってく!」
「俺も!」
「私は昨日の分を二つ食べて、いくつか持って帰ります。炊き込みお結びも同じ個数として数えて良いのでしょうか」
「炊き込みご飯はちょっと豪華だから、このお結びが一個半と炊き込みお結び一個が同じ価値にしようかな」
「では、芋が入っているお結び三つと炊き込みお結びを二つ持って帰ります」
「残っている分がいくつか分かりますか?」
「えっと、」
指を折りながら昨日残っていたのが五つ、今二つ食べてと数えて正解を当てた丁の頭を撫でて現津が微笑む。
「それだけ計算が出来るのなら騙されることもないでしょう」
この中で丁だけ親がいないと言うので、少々心配していたがしっかりした子のようだし大丈夫だろうと言われ、丁がまたキョトンとした顔をした。
「木霊ちゃんはどうする?今日も他の神様に持って行くの?」
「はい、なんか、ちょっと怖いくらい気に入ったらしくて・・・」
昨日も取り合いになって自分用のお結びも取られたと、しょんぼりしながら出されたお茶に口をつける木霊。
「そうだったんだ。それは悲しかったねぇ」
「木霊ちゃんも可愛いけど、不憫可愛いって感じだね」
「慰めになってないぞ」
至に突っ込みを入れていれば、満が皿に乗ったお結びを運んできたので、嬉しそうに受け取って食べていく子供たち。
「私も一つ食べて行きます。七つは持ち帰りでお願い出来ますか」
「包んでおくね。それと、昨日持ってきてくれた木の芽とキノコで天ぷらを作ってみたんだけど、味見してみる?」
「やった!!味見したい!」
「炊き込みご飯も大丈夫だったし、問題はないと思うんだけどね?」
豊たちが持ち帰り用のお結びを包んでいる間に、昨日家で揚げて置いた天ぷらを皿に盛り付け直して持って行く。
「味はもうついてるから、このまま食べて大丈夫だよ」
「いただきまーす!」
手掴みで天ぷらを食べ、眼を見開いて互いを見ると無言で奪い合う。
「サクサク!うっま!!」
「お前キノコばっかり持ってくなよ!」
「木の芽も美味しいです!!」
「ちょっと苦味も感じますが!こんなに美味しい物食べたことがありません!!」
夢中で食べている四人を見て、これなら大丈夫かなと笑ってみていれば後ろから新しい声が聞こえた。
「いいなぁ、それ僕も食べていい?」
そこに立っていたのは、三人の子鬼が以前現世へ降りた時に手伝ってくれた神獣がいた。
「天ぷらは味見用ですのですぐにお出しできますよ」
「お結びは?それもすごく美味しいって聞いてきたんだけど」
「お結びは何かと交換する商品なんです。交換する物は食べ物でも鉱物でもなんでも構いませんよ」
「そうなんだ!なら僕と付き合わない?僕これでも神獣だから相当珍しいよ?」
「神獣の毛皮ですか、世界に一つだけの敷物としてはまぁまぁですね」
「あっちで解体してやるから来いおら」
「怖い怖い!神獣で敷物作るとか罰当たりじゃない!?」
「自分の妻を守った証明です。大切に毎日踏みますよ」
「奥さん!?ごめんごめん!僕人のものに手を出したりしないから!」
「もう、二人とも。お客さんだよ?」
「茂さんたちって結婚してたのか」
「という事は、他の方々も既婚者でしょうか」
「ひ~っ、怖いっ。僕これでも吉兆の証だよ?商売繁盛とかそういうのは良いの?」
「浮ついた覚悟でみのり屋に近づいたら殺すぞ」
「吉兆の神獣に宣戦布告してんな」
「大丈夫ですか?」
「お~こわっ、何あの人たち。人間じゃないし、神の気配ともなんか違うし、おかしくない?」
心配げに近づいてきた木霊の後ろに隠れながら神獣が改めて男たちを見る。
「えっと、がぁでぃあん?という種族の方だそうです。現津さんは確か、ごーれむといったような」
「ガーディアン?なんでそんなものがここに、いや、それだけじゃないよ」
現津と梅智賀の後ろでこちらを見ている角の生えた二人の男と、袈裟を着た男、老人のような男も、黒い翼を持った男たちもおかしい。
「彼は?人間じゃないよね?向こうの男と同種?でもなんか違くない?」
「そうなんですか?」
「腐っても神獣ですか。勘が良いですね」
「このまま皮はいじまうか。もしかしたら再生して何回でも剥げるかもしれねぇ」
「残酷!神に対して容赦なさすぎでしょ!!僕は楽しい事が好きなだけだから!天ぷらとお結びが食べてみたいだけだよ!!」
それをされると大問題に発展するので待ってくれと木霊が間に入る。
「こちらは白澤様といって、とても古い神様です。さすがにそういった扱いは、」
「ほら、木霊ちゃんも困ってるよ」
「みのり屋の女性は皆既婚者か婚約者、もしくは決まった相手がいます。今回は知らなかったという事で見逃しますが、次はありません」
「こっわ!古い神だって言ってもこれ?さすがゴーレム。武器の付喪神に、石像?どうなってるの?全然分からない種族がこんなに」
「うちの者が失礼しました」
「こっちこそごめんね、まさか人妻だったとは思わなくて。僕女の子好きだけどその辺しっかりしてるから安心して?」
「えーと、昔からこんな感じの方なので、」
「そうだ、食べ物だったら桃があるよ。一応一部でしか採れない桃だから貴重だと思うけど。これでもいい?」
そう言って袖の中から桃を一つ出し、仙桃だと気が付いた茂が満にお結び90個分だと言うと、それを聞いた三人の子供たちがやっぱり神は持ってるもんが違ぇなと話し合っていた。
「じゃぁ二種類のお結びと天ぷらはここで食べていくよ。後は持ち帰りで。知り合いにも宣伝しておくね」
「ありがとうございます」
「神獣の兄ちゃん、皮剝がれそうだったのに寛大だなぁ」
「あれは人妻に声かけた僕が悪かったんだよ。ゴーレムは守ってる物に手を出そうものなら相手が神とかまったく関係ないからねぇ」
君たちもナンパをする時は気をつけなとベンチに座って話していれば、榊が一つの皿にお結び、天ぷら、漬物をまとめて乗せて運んできた。
「みのり屋の女の子はみんな可愛いねぇ、女神みたい。っていうか女神じゃない?君の名前聞いてもいい?」
「榊です。私を女神って言うの圧紘くん以外で初めてですよぉ~」
「圧紘、もしかしなくてもあの男?」
「そうです」
ものっすごいこっち見てる彼?と圧紘を指さし、笑って頷く榊から皿を受け取った。
「ほい、残りのお結び。さっきのお詫びでちょっと多めにしといた。悪かったな」
「謝謝。ねぇねぇ、君も女の子だよね?」
「よく分かったな。神獣って事は、獣の姿もあるのか?鼻が良いんだな」
「進さんって女だったの?!」
「一応な。男に間違われるからそのまま通す事が多いけど」
「ふふ、僕女の子が大好きなんだ。一緒にいると幸せになれるし、可愛いし」
「そこまで行くと清々しいな」
「でもなんでだろう、君たちを見てると女の子だからって言うのとは違う幸せが満ちていく。可愛くて良い匂いがして、懐かしいような新鮮なような、なんだろうこの気持ち」
神気が漲って来るみたいだとニコニコと笑顔で見上げてくる。
「ははは、そう言ってもらえるのは嬉しいな。まぁ、うちでは美味い物が食えるから、そっちでも幸せになって行きな」
そう笑って隣にお茶を置く。集まってきた他の客たちに話しかけられ、そちらへ向かう後ろ姿を見てやっぱり女の子は良いよねとクフフと声を漏らして笑う。
「可愛くってフワフワしてて、しなやかで凛としてて、見てるだけで胸が躍るよ」
「まぁ、おっしゃりたいことは分かりますが」
返事に困っている木霊をよそに、おしぼりで手を拭いてからお結びを食べ、「んー!!」と口を閉じたまま叫んだ。
「何これ!穀物だよね!?えっ、美味っ!何これ!!」
「美味いよな!漬物も天ぷらもすっげーうまいんだぜ!」
「今日の漬物昨日と違うやつだし、明日も違うのが出たりするかな」
「私は初めて食べたちょっと甘くて黄色い奴が好きです」
「うわ!こっちの味がついてる!うわー、これ好きだなぁ・・・、何の味かよくわかんないけど」
「この竹の若木って、もしかして昨日私たちが取って来た物ですかね?」
騒ぎながら食べていれば、他の鬼たちも交換したお結びを食べて嬉しそうに騒いでいた。
「ふ~、こんなに美味しい物があるなんて・・・」
「今日取ってきた木の実と魚はどんな料理になるんでしょうか」
「現世でもこんなの食べた事も見た事もないよ。ふふ、本当に何者なんだろうね、みのり屋って」
美味しい物が食べられて可愛い女の子たちがいるんだからなんでも良いけどと、神気の満ちた笑顔で漬物を食べ、これ絶対お酒に合うとはしゃいでから全て食べきった。
そしてごちそうさまと声をかけ、お結びが大量に入っている籠を抱えて帰って行った。