4.海賊と一緒
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「つまり、お前たちが連れてるその生き物はホムンクルスっつー新種の種族って事か?」
「大体はそんな感じです」
「そういわれると、ホムンクルスって外見に統一性とかないし、魔族に似てるかもね」
「どこも似てねぇよ」
ニューゲートたちも船を停めて話し合いの輪に加わり、風月と共にホムンクルスについての説明をされていた。
和はフーズ・フーの膝の上にいるが、風月はうるティに抱きしめられて大人しくしている。
「はぁ・・・、今日は風月と一緒に寝るでありんす」
「中で寝ると気持ちいいよ」
「最高」
「こいつがメインマストにしがみついてるとこ見た時は心臓が止まるかと思ったぜ」
「猫だからね。高い場所が好きなんだよ」
「サイズ考えろ」
全員でひとしきり驚き、みのり屋について知っている者が全員いるこの場で改めて世界の情勢についての説明を始めた。
マルコが知っているこの世界で起こったことを話し始める。
「世界政府を裏から動かしてんのは、光の民だ」
世界樹が生んだこの世界初の光の民はイム。
世界樹が直接生んだ精霊種はイムしか残っていない。そのイムが世界政府を作った理由は、
「”神”が残したこの世界を維持するため、だとよい」
「今でも連絡あんのか?」
「ある訳ねぇだろい。最後に会ったのはラフテルを出た時だぞ。どんだけ前だと思ってんだ」
「どんだけ前なんだよ」
イムの思想に同調した他の種族も協力しているらしいが、そのどれもが世界樹から生れたのではなく次世代ばかり。けれど、直接世界樹を見た事のある者たちだ。だからこそ、世界政府はここまで巨大な組織となったともいえる。
「お前は誘われなかったのか?」
「誘われたが、断った。あの樹がんなこと望んでるとも思わなかったし、イムのやり方は好きじゃねぇ」
「だから今魔族を落してんじゃねぇの?」
「使徒族の力が効かねぇんだぞ。俺が向こうに行ってたとしても、内部分裂なんざ時間の問題だっただろい」
「確かに」
「そういう事情があったんですねぇ」
「今でもその世界樹って残ってんのか?」
「どうだろうな。火の民がまだ生き残ってれば、少しは残ってるはずだ」
「なんで火の民?」
「イムが組織を作る切っ掛けでもある」
多様な種族が生まれてから、ラフテルという始まりの島では狭く皆が海を渡って新天地を見つけて住み始めた。
しかし、そこで増えた子孫たちは世界樹を神聖な物ではなく、付加価値のある宝樹アダムとして削り取るようになったのだ。
「だからモビーディックを造る時に絡んで来たのか」
「ああ、道理で」
モビー・ディック号は宝樹アダムで出来ている。ニューゲートが宝樹アダムを競売で購入した時にマルコと初めて会ったのだそうだ。
「和はそう言うの分からないのか?」
「分かるよ」
「知ってたのか!?」
「うん、だから初めてモビー・ディックを見た時、いい船だねって言ったでしょ?」
「そんなサラッと流して良い事じゃねぇだろ!!」
「でもただ腐るよりは使ってくれた方がいいんじゃない?」と首を傾げれば、茂たちも頷いている。
「それは俺も思ってた。あの樹は俺たちが生きていきやすいように自分で干からびたんだ。まぁ、だからって俺たちがその体を削りたいとは思わなかった。数世代も過ぎればそんな考えも無くなったがな」
特に寿命のある人間種は、燃やしても燃え尽きる事なく、頑丈で鉄よりも硬い。そんな不思議な樹が現実に手に入る。そうなれば欲しいと思うのが人の性。
「ラフテルには火の民だけが残った。光の民や使徒族なんかの空が飛べる奴らはたまに戻って信仰を続けてたが、他の人間種が来てあの樹を”宝樹”として切り出した事で戦争が起こった」
火の民も最初は来訪を歓迎していた。久しぶりに人間種が神に会いに来たのだと、世界樹まで案内をした。
「おとぎ話で聞いてた存在が目の前に現れて、タガが外れちまったんだろう」
既に枯れているとはいえ、その姿に心を奪われた。根源的な命の母である事を感じたのかもしれない。人間種の執着は凄まじく、火の民も最初は島に近づけないだけで終わらせていたのだがついに殺し合いへと発展した。その争いを聞いて他の精霊種と妖精種が駆けつけ、戦争は火の民が勝利する事となった。
「だが、あの樹はずい分小さくなっちまってた」
人間種が切り落とした枝、削り取るように倒れた幹。その姿を見て火の民は決意する。
「イム達が集めた残骸は渡したが、それを最後にラフテルを封鎖すると決めたんだ。海の民が島の周辺にのみ特殊な海域を作って船での到着は不可能になった。それだけじゃねぇ、炎の壁で覆いもした」
こうして、戦争に協力してくれた種族たちも拒む形となった。
そして、イムを始めとする光の民は使徒族を率いて世界政府を立ち上げ、人間種たちを束ねるために動き出した。
「俺も、あの戦争が終わってからはラフテルには行ってねぇ。だから火の民がまだ生きてんのかも、あの樹が残ってんのかも、何も分からねぇ状態だ」
今の世界の成り立ちを初めて聞いた者も多かったようで、驚きと失望のような感情で口を閉じていた。
「世界政府を作ったのは光の民と使徒族が中心だが、組織が出来たのも相当前だ。後から入ってきた奴らは創設の理由なんざ知りもしねぇ。使徒族が神の末裔だとかあの力が強制力なんざ言われてんのがいい証拠だ。今も変わらず世界の維持を目指して動いてんのなんざ裏に隠れてるイムたちくれぇだろ。当時の使徒族ももう何人残ってんのかさえ怪しい」
もしかしたら一人も残っていないから若い使徒族があんな風に傍若無人に振舞っているんじゃないかというマルコに、その世界政府に迷惑をかけられている者たちが納得したように頷いていた。
「でもよ、それだと火の民を見つけたら懸賞金がでるってのはおかしくねぇか?」
「いや、そうでもねぇだろ。世界政府を作ったのは光の民でも、後から入ってきた奴らは人間種がほとんどだろ?」
「その戦争で恨みを持っててもおかしくねぇ」
「それこそ火の民だけでラフテルに引きこもるのを許せねぇ精霊種、妖精種だっていただろ」
「だろうな。その懸賞金云々を許可したってのだって、イムからすりゃ保護のつもりがあったのかもしれねぇ」
ただ、そんな思惑など知らない下っ端が好き勝手に解釈して暴走するのなど何処の組織でも起こる事だという言葉に、キングが眼を閉じた。
キングの記憶に残っている両親は母親が火の民で、父親がゾオン系の魔族だった。政府に捕まった時二人とも殺されてしまったので、それ以上の事は何も分からない。
「すでに死んでたとは言え、”神”を砕いたって事か」
「ああ」
「世界の終わりを悟って延命させようとしたのが光の民で、滅ぶならそれもありだと思ったのが魔族ってのもまぁ、上手いことできてんな」
「延命?うーん?でもそれ、世界樹じゃなくて母代樹だよね?」
榊がモビー・ディック号を見上げて首を傾げる。
「菩提樹?」
「ううん、それとは違って、母の代わりの樹って書いて母代樹。私たちみたいに自分でどこかの世界に下りて来る世界樹ってまずいないからぁ、自分の分身の種を植えるの」
その樹が成長しながら植物の住みやすい環境を整え、最後に生命を生み出していく。
「他にもぉ、何て言ったらいいかなぁ~。神様の力がちゃんと行き渡るように霊樹っていうすごく大きくなって長生きする樹を植えたりもするよぉ?」
だからこの世界は今も変わらず存在しているのだしと宙を見ながらいう。
「この世界を本当に創った世界樹は今でも普通に生きてるよぉ。生んだみんなが自分たちでちゃんと生活できるようになったから、安心して次の世界に行ったんじゃないかなぁ〜?ちゃんと霊樹もあるみたいだしぃ」
そう言って顔をマルコに戻して微笑んだ。
「・・・んな事が、分かんのかい?」
「うん、私他の世界樹とたまに交信してるから」
「交信してんの!?」
「榊が交信してくれるお陰で私たちが色んな世界と繋がれるのよ」
「そこで見た物とかを本にしたり絵で描いたりしてくれるしね」
「面白いですよ」
「予言の書ってそういうアレか!」
「予言みたいになっちゃうのはぁ、たまたまだけどねぇ~」
そのつもりで書いてはいないんだがと苦笑する。
こちらの世界について一通り話し終えた後は、みのり屋の世界樹について質問が飛びかった。以前和が映像電伝虫で映してきたことはあったが、言ってしまえばそれくらいしか情報はない。
「あちきも和の家に行ってみたいでありんす」
「いいですよ」
「ここにも転移門作りますか?」
「え?」
「そんな事まで出来んのか!!」
「はい、榊ちゃんがいれば」
「出来るよぉ~」
「んなすげぇ事をポンとやるな!!」
お前そんな事まで出来たのかと驚いているフーズ・フーに、お前も知らなかったのかと他の者もそれ以上に驚いていた。
「戦争だって起こってんだぞ!!俺らを殺すでも脅すでもしてそっちに雪崩こんっでったらどうすんだ!」
「それは私も心配です」
「うお!誰だ!?いや、なんだ!?」
「自己紹介が遅れました。私榊さんが創ってくださった光の精霊、パンドラズ・アクターと申します」
突然榊の後ろから現れた、まるでマネキンのような姿の精霊が礼儀正しく頭を下げる。
「榊さんが繋げた門を使って罪を犯すなど許しがたい事です。繋げる場所はお選びになった方がよろしいかと」
「俺もその意見には賛成だ。俺たちがどうこうする気が無くても、海賊なんざやってりゃ敵対してる奴らと戦闘になるなんざ日常茶飯事だ」
中には船へ乗り移って来る奴らもいる。その時に門を通ってしまったら詫びても詫びきれるものではないとニューゲートが言うので、なら転移門は対策を練らないとと納得して頷いた。
「じゃぁ、和ちゃんにも手伝ってもらったら?私も媒体になるもの何か造るよ」
そう言って、茂が手を挙げる。
「あいつが出来る事は本を書くことだけじゃねぇのか」
「えっとね、本ではあるんだけど、もっと近いのは歴史とかかな?軌跡っていうか」
その人の人生を歴史とするのならば、世界樹も人生という歴史を歩んできたことになる。
「転移門って、その軌跡にしおりを挟むみたいな感じなんだって。だから門を作ることも撤去する事も難しい事じゃないって言ってたよ」
「その変わりに誰でも触れてしまうのよねぇ。だからパンドラが慎重になってるのよ」
「当たり前ぇだよ」
そんなすげぇもんを誰でも使えるとかありえねぇだろとその場にいた全員が言うので、そういう物なのかと見上げながら頷く。
「お前の紋とは何が違ぇんだよ」
「私のは場所とか人とか、紋をつけた人限定って感じだからね、榊みたいには出来ないよ。場所につけた時だって私が名前を知ってる人じゃないと呼べないし」
「お前のあれ、んなすげぇもんだったのか」
「普通にポンポン使ってたな」
「うん、別に制限があるとかそういう力じゃないしね」
門を潜る条件は後から決めるとして、それならば一目見ただけでは門だと気づかない物にしようと茂が提案をした。