4.海賊と一緒
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そして翌日、全員で鬼ヶ島の山へと降り立つ。
「お会い出来るのを楽しみにしていました。初めまして、みのり屋の代表を務めている茂と申します」
山から降りた麓で待っていた百獣海賊団、ワノ国の者たちに笑顔で挨拶をすれば、「待ってたぞ!」と歓迎してくれた。
特にフジミヤを始めとしたワノ国の重鎮たちはあり得ない程恭しく迎えてくれたので、もっと力を抜いてくれと笑ってしまう。
「うわ〜、本当にあの梟みてぇな眼してんだな」
「和とは違う、けどみんないい匂いがするでありんす!」
「そうですか?」
自分の匂いはよく分からないと豊が首を傾げ、取り合えず座って話そうかと本殿に入り、大広間へ案内すると開かれていた窓から青い鳥が入ってきた。
「マルコ」
「久しぶりね」
優は会った事があるので和と共に声をかけると、人の姿になり片手で顔を覆いながら口元だけで笑ってみせる。
「ああ、久しぶりだな」
この気配、雰囲気。和一人、優一人からもずっとしていたあの懐かしい存在感が、九人揃ったことでこんなにもハッキリと感じられるなんて。
「ずっと、待ってた」
その一言を絞り出してまた鳥の姿になると、そのまま眠ってしまった。
「もしかして夜通し飛んできたのかな?」
「なら相当疲れてるだろうね」
「わざわざ一人で先に来たのかよ」
「無理もないわよ」
ブラックマリアが笑い、丸まっているマルコはそのままにして話を進める事にした。
「やっぱり、しばらくはワノ国にお邪魔させてもらおうか?」
「そうですね。私も情報を集めてから動くのが良いと思います」
「歓迎いたします!皆様が授けてくださった"めぐみ米"と巨大米もっ、毎年豊作なのです!」
これから成長した稲穂が垂れ下がり田を黄金に色づけてくれる時期なのでそれを見てやってくれと言われ、それはとても楽しみだと茂だけでなく満たちも微笑む。
「刈り入れが終わったら収穫祭で私が連れてきた食べられる生き物をみんなで狩るんだよ。新米も美味しいし、今年はみんなでやる?」
「いいねぇ!実験所から一匹連れてくる?」
「あんなもん誰が倒せんだよ」
「何造ってんだよ」
「私が見つけた色んなのを参考にもっと美味しくしたりしてるよ。なんでか美味しいとすごく強くなるけど」
「お前が見つけてくるもんでさえバケモンなんだぞ!」
「俺たちも手伝うか」
「そうだな。世話になるのだ、催し物は大事な政(まつりごと)だしな」
「ウォロロロ!ニューゲートにも収穫祭までいてもらわねぇとならねぇな!」
家は自分たちで用意できるので生活の心配はいらないが、庭か裏山かどこか邪魔にならない場所を貸してくれと言えば城に泊ってくれて構わないとフジミヤが言う。
しかし、それは苦笑しながら断った。
「せっかくなので町の人たちにまぎれてみようと思います」
「みんながいるなら私も行って大丈夫?」
「俺も行く。一人になるな」
フーズ・フーも一緒に行動するようで、それならばとフジミヤもその日で変わるかもしれないが案内人を数名つけるのでどこでも自由にしてくれていいという。
「あちきも行きた~い!」
「こっちも交代で一緒に見て回りましょうか」
「お前らはいらねぇだろ」
「どんだけ独り占めする気でありんす!!」
和の事だって独り占めにしてる癖にとブーイングを受けても全く気にしていないフーズ・フーだったが、膝の上にいる和を見て気づく。
「おい、住むって何にだ」
「これですよ。空いてるスペースに投げたらパッて開いて、」
「んなもん駄目に決まってんだろ!!」
茂が鞄から出した手のひら大の丸い玉を見せてきたので「しまえ!」と叫ぶ。
「ならテントにします?あっちも用意してありますよ」
「テントもだよ!駄目だっ、フジミヤ!ワノ国で口が硬え奴がやってる宿を貸切れ!金で解決出来んならそうしろ!長期滞在でも倍出しゃ文句もねぇたろ!」
「なんだ今の〜?パッて開いて家でも出来んのか〜?」
「そうですよ。どこででも寝泊まり出来ると移動とか楽ですから」
「ただの家が一瞬で出来るだけでもありえねぇってのにっ、こいつが造ったもんがそれだけで済む訳ねぇだろ!」
「・・・ちょっと待て。和、お前らテントで暮らしてるって言ってたよな?」
「うん。茂か造ったテントに住んでるよ」
「何個のテントだ?」
「一個」
「お前んとこの奴ら100人以上いるだろ!?」
「うん。外観は二、三人が入るくらいのテントでね、中がここみたいなお屋敷風になってるから歌仙たちも落ち着くって言って喜んでくれてたよ」
こっちに遊びに来た時もあんまり違和感とかないから過ごしやすいってと言われ、言葉を失くす皆と片手で眼を覆っているフーズ・フー。
「え?でもこっちの世界でも時空とか一次元、二次元とかの概念もありますよね?」
そこまで分かっていれば空間を区切って固定する技術もすぐに出来るようになるだろうから大丈夫じゃないですか?と見上げてくる茂に、クイーンが「アウトー!!」と叫んだ。
そして、急遽フジミヤたちが中心となってワノ国中の宿と言う宿を調べ上げ、三十名前後がひと月近く滞在できるように手配をすることに決定した。
「んなもんがあったらなぁ!航海で餓死する奴も食料紛争も起こらねぇんだよぉ!!」
「今起こってるから、これから造るんじゃないんですか?」
「何億年後に可能になるかも分からねぇ技術過ぎて化学なのか魔法なのか区別がつく訳ねぇだろ!」
「進歩した化学って魔法と区別がつかないものよね?」
「過程くらいしか違いもない物だしね?」
優と一緒に笑っている茂に、クイーンが「知恵の神~!!」と叫びながらもちゃっかり後で造った家とテントを見せてもらう約束をしていた。
「お前らが持ってるもんも作り出すもんも、こっちの世界じゃ全部奇跡で神の所業になる。言動には気をつけろ」
「なら、何か造る時はクイーンさんに確認しながらにしますね」
「付与ってどこまで大丈夫ですか?」
「使徒族とかいるから歌なら大丈夫ですよね」
「魔法は使わないで過ごす方がいいわね。占いくらいに留めましょうか」
「私は、こっちでも変わらず料理を作って静かにしていようかな」
「私もそうします」
「せっかく金で解決出来るってんだから、ゆっくり観光でもしていけよい」
いつから起きていたのか、鳥の姿のままマルコが口を開いたので皆の視線がそちらへ向いた。
「”M”として稼いでた分も、和が持って来てた食いもんの分も、あんたらには返しても返せねぇだけのもんをもらってんだ。それこそ白ひげも全面協力するだろうし、金の心配はいらねぇ」
今までも他の世界で”みのり屋”として商売したり色々忙しくしていたのなら、今回はただ遊んで行けばいいと言う。
「他の島に行きてぇなら俺たちの船に乗りゃぁいい。これからも他の世界を見て回るってんなら、たまには何もしねぇで見て回るくらいしてもいいだろい」
「それもいいのではありませんか?今までただの観光というものはした事がありませんでしたから」
「それもそうだねぇ。でもただでお世話になるっていうのも申し訳ないし、私たちに出来る事なら協力しますからなんでも言ってくださいね?」
それこそ、ワノ国にある孤児院や学び舎に回されている分のお金が減ってしまうのは嫌なのでと茂が言うと、フジミヤ達がしっかりと返事をして頭を下げた。
話もまとまりだしたのを見てから、いつまで獣型でいるんだよと言われても眼を閉じて口を開かないマルコ。
「まだ疲れてて寝足りないんだろ。わしも昼寝がしたいんだが、ここで寝てもいいか?」
「自由人かよ」
日当たりのいい窓の近くで横になった進と、その側で丸まって一緒に眠る天心。それを見て、マルコももぞもぞと動いて近くに行く。
「進は一日の半分は寝ないとならない体質だから、その辺で寝てても気にしなくていいよ」
「雑だなぁ。まぁ、別にいいけどよ」
「宿の準備が出来るまではうちで寛いでけ、ウォロロロ!部屋ならいくらでもあるからな!」
「それこそこの島でだったらさっきの家建ててもいいぜぇ~?」
フジミヤたちと白ひげくらいしか直接停泊したりしないからなと言われ、しばらくよろしくお願いしますと茂ともども挨拶と顔合わせが終わった。
「私たちもこっちで過ごそうかな。たまに狩りには行きたいから向こうにも出かけるけど」
「風月くんは?いつも向こうにいるの?」
「うん。ご飯の時間になったら戻って来るから自由にしてる」
「風月って誰だ?」
「うちにいる大きい猫だよ」
「ああ、飼ってるっていってたな。猫」
「こっちで過ごす事が多くなるなら連れて来てあげたら?」
「そうしようかな。ちょっと行ってくるね」
「・・・あいつも連れてくんのか」
「嫌だった?」
「・・・」
何かを考えるように無言になるフーズ・フーを見て、「絶対ただの猫じゃねぇんだろ!」とササキ達が騒ぐので仕方がないかとため息を吐いた。
「みのり屋が全員来ちまった時点で、隠すのは逆に悪手か」
独り言の様に呟いて、和を膝から下ろして冒険している森へ一度戻るのを見送った。
「風月ってそんなにヤベェ奴なのか?」
「みのり屋の中にヤバくねぇ奴なんざいねぇよ」
「風月くん可愛いじゃないですか」
「アア!」
「桃も可愛いよ」
茂の膝に手をついて見上げてくる桃之丞を抱き上げて腕に座らせれば、甘えるように胸に顔を埋めて来るので頭を撫でる。
「可愛い~!白熊でありんす!前の世界で拾ったんでありんすか?」
「いいえ、この子は私が造ったホムンクルスですよ」
「ホムンクルス?」
「現津さんと結婚した時に、結婚祝いとして現津さんの騎獣を造ったんですよ」
「ブブブ」
「甘えん坊の食いしん坊ですけど、頼りになりますよ」
「・・・どうやって乗るんだ?」
「巨大化出来ますので、私と茂さんが騎乗する分には問題ありません」
「もしかして、あいつ等もか?」
「みんな大きくはなれますけど、乗れるくらいになるのはそれぞれですねぇ」
「プキッ」
「三国は乗れますよ」
「曙も騎乗が出来る」
「ニコサンはこれ以上大きくなる事も姿が変わる事も無いわよ」
「キュプ」
「モコもギリギリ乗ることは出来ますけど、毛をくれるのが主ですね」
「メェ〜」
「嵒太郎には乗りませんね。ご飯を作ったり部屋を温めたりするのを手伝ってくれます」
「ギュッ」
「日輪は乗せてくれますよ!ねぇ〜」
「ギャッ」
「尻尾が燃えてっけど、熱くねぇのか?」
「大丈夫みたいですよ?初めて自分の尻尾が燃えてるのを見た時とか驚いてましたし」
あの時の反応が可愛くて仕方が無かったと笑っている至に、キングがどことなくむず痒くなっていると和が戻ってきた。
「風月連れて来たよ」
「にゃぁお」
「、ねこ」
「猫か?これ」
「猫でしょ?」
「足何本あんだよ」
「いや、なんで胴体が空洞なんだ?よく生きてんな?」
「みんなが乗れるくらい大きくなれるから、このくらい足がある方が安定するんじゃないかな?」
「みんなが乗る・・・」
それはどのみんなだと、ここにいるみのり屋と、和が連れている刀剣達を思い浮かべてフーズ・フーを見る。近づいてきた和と風月を膝に乗せている姿に、絶対刀剣達の方だと口を手で覆う。
「フジミヤ、宿探しは時間がかかってもいい。鬼ヶ島でこの世界の常識を説明する必要もあんだ、重要なのはそこじゃねぇ」
とにかく口が固くて外部に情報を漏らさない事。こちらの事を詮索しない者である事が最低条件だと言われ、厳選いたしますと深く頷いて今の所は重臣を二人置いてワノ国へ戻って行った。
「歓迎の宴は夜ですので、改めてお伺いいたします」
「わざわざ来てくださってありがとうございます。今のワノ国に何が出来るか、観光をしながら考えてみますね」
他の人達がどんな暮らしをしてるのか見るのが楽しみだと言われ、恭しく頭を下げた。
「人に紛れてぇならもっと言動に気をつけろ」
「"人は猿のまがい物、神は人のまがい物"って言ってた人がいましたし。そこをまがい物扱い出来るなら私達が紛れても分からなく無いですか?」
「それ皮肉だろ」
「お前らが言う神が何かは置いといて、ただの人からすればお前らも十分"神"だからな?」
「お母さんを神聖視するのは分かりますけどね?」
「こいつを母親だと思った事はねぇな」
膝の上にいる和を示しながらため息を吐き、とにかくワノ国の準備が整うまでは鬼ヶ島でこちらが持っている情報と擦り合わせをしろと言われた。