付き合うまで
おなまえは?
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「宗四郎くん」
目の前に〇〇さんがいる。少しだけ頬を染めて、節目がちに視線を彷徨わせる彼女に心臓が高鳴る。〇〇さんが何かを言いたそうに唇を震わせていて、目が離せなくなる。
「宗四郎くん…あのね……私…宗四郎くんのことが…」
上げた視線とぶつかって、彼女の言葉を奪うように声を重ねた。
「まって。そこから先は僕に言わせてほしい」
「え…?」
両思いだと確信できれば、恐れることは何もない。戸惑う〇〇さんの頬にそっと触れ、顔を近づけた。
「そ、そうしろう、くん…」
「好きや。これから先の人生を、僕と一緒に過ごして欲しい」
「…そ、宗四郎くん…わたし…」
〇〇さんは言葉を切って、そっと目を閉じた。まるで僕を待つかのように。僕は瞳を閉じてまた彼女の唇に吸い寄せられるように近づき…
弾けるような警報音に目を覚ます。
反射で時計を確認すれば夜中の3時26分。視線を彷徨わせても、当然彼女はいなかった。
「………だぁぁぁ!!!くそ!!!」
頭を掻きむしりながら、隊服に着替える。…先日のカフカの件があってから〇〇さんに会えていない。仕事が降って湧いたわけではないのだが、シフトの都合やら、タイミングを見計らったように案件を依頼されたりなど、纏まった時間を作ることができなかったのだ。そうこうしているうちに一週間程が過ぎ、会えない間になんと言って下の名前を呼ぼうかなんて何度も考えているうちに夢にまで見るようになってしまった。重症である。
ぶつける先を知らない苛立ちを抱えたまま、上着を引っ掴んで部屋を飛び出した。
マルヨンマルナナ。第三部隊現着。
カフカは先ほどの車内の空気を思い出す。普段なら簡単な会話をして、部隊の緊張をほぐす副隊長が2、3言、言葉を交わし、ほな、実戦までええ緊張感保とうか、と言い黙り込んでしまったのだ。いや、言葉の通り緊張感を緩ませすぎないためにそうしていたのかもしれないが、なんとなくそうじゃないような気がする。
「なあ、今日の副隊長、機嫌悪くなかったか?」
近くにいるレノに話しかけるカフカだが、そこに割って入るようにキコルが銃への装填を済ませながら会話に入り込んだ。
「確かに普段よりは言葉が少なかったかもしれないけど。そんなに機嫌が悪かったかしら?」
「先輩、何か気になることでもあったんですか?」
「いや、なんとなくそんな気がしただけなんだが…」
気のせいだよなー。と笑いすかしていると、背後から人の気配を感じるが早いか、頭に軽い衝撃が入り、カフカはうぉっと短いうめき声をあげた。
「人様の心配やなんて、随分余裕そうやなぁ。なぁ?カフカ」
「ふ、副隊長っ…!!!」
「心配されるなんて上官として失格やなぁ。一応、普段通りにしてんねんけど」
「い、いえ!勝手に自分がそう感じていただけなんで!すいませんっしたぁ!」
「いや……まぁ、ええわ」
歯切れが悪そうに言葉を切った副隊長に、不思議に思って視線を上げると、いつも通りの笑顔で指をピンと立てている姿があった。
「ほな、そろそろ作戦実行といこか」
作戦が始まると順調に掃討が進み、本獣撃破の連絡も届いた。余獣の作業も順調に進んでいるし、時期に本隊の撤収連絡も来ることだろう。第3部隊の若手も順調に育ってきていることを実感しながら、先ほどカフカに言われたことを思い出す。夢を邪魔されたとはいえ、仕事に態度を持ち込んでいるつもりは全くなかった。なかったが、相手にそう悟られるような態度があったのだろう。自分でも気づかないうちに、どんどん〇〇さんに対する気持ちが大きくなっているらしい。
吐く息が白く、白んできた空に霞んで消えていく。
「…はよ、会いにいかんと」
彼女と出かけたのは1ヶ月くらい前だろうか。また時間を作ってデートに誘おうと思っていたのに、気づけば師走になっている。
会いに行ったところで、関係が進展するわけでもないが。いや、そもそも進展させないとこの気持ちは膨らみ続けるのではないか?でも進展する可能性は?夢のようにお互いが思い合っているとは限らないのに。それなら何も語らずにずっと〇〇さんにとって特別なお客様扱いしてもらっていた方がいいのではないだろうか。でも、この仕事をしながらずっとなんてあるのか?夢の中でも一緒に過ごしてほしいなんて、自分がどこまで一緒にいてあげられるのかわからないのに。
「……〜っ!!」
片手で髪を握り潰すように掴む。だめだ、考えがまとまらない。耳に撤退を知らせる連絡が入ったが、思考が止まったままだった。
「どうした、保科」
「亜白隊長…いや、なんでもありません」
「…そうか。昨夜も遅くまで稽古していたんだろう。帰ったらしっかり休め。いくぞ」
「了!」
亜白隊長と共に移送車両に向かい、部下たちが乗り込んでいる姿を確認し、分隊に撤退確認の指示を出してから一般車両に乗り込んだ。後部座席には亜白隊長が乗っているから自分は助手席に乗り込む。流れていく景色の中、帰ったら報告書をまとめなあかんな、と考える。大方、小此木ちゃんがまとめてくれているだろうが、書類の監査はしなければならない。書類の確認が終わる頃には午前の訓練も締めに入る時間だろうし、訓練の結果を聞きに行き、データを貰って報告書と…と考えていると、彼女の店の近くまで来ていることに気がついた。少しだけ心がそわそわしてくる。運良く彼女を見かけることは出来ないだろうか。顔を外に向けながら、彼女の姿を探すように視線を彷徨わせていると信号で車が停止する。もう少し先で止まってくれれば、彼女の姿が見えるかもしれないのに。そう思っていたら店のドアが開き、1人の男性が店の外に出てきて、彼女も後を追うように出てきた。にこにこと笑う〇〇さんの笑顔に胸の奥がほかほかするのと同時に、相手の男が羨ましくてたまらない。おそらく店のお客だと思われるが、店の前まで〇〇さんに見送られるなんて。しかもしっかり会話までして。僕が店から出る時にまで、あそこまでしてもらったことなどないのに。
「………ん?」
なんで、〇〇さんはお見送りまでしとるん?いや、店の中でお見送りされたことはあるが、ああやって店の外に出てまでお見送りをしていたことなんてあったか?
そう思うと、胃の底が冷えるような、それからじくじくと膿むような痛みを覚える。なんや、この感覚。
「保科?どうした?やっぱり調子が悪いのか?」
「…いえ。なんでもありません」
「急ぎの仕事もないし、報告書の確認は私がしておくから、休暇を取得して休んだらどうだ?」
「大したことやないんです。心配かけてすいません」
「そうは言うが、保科。お前の顔、真っ青だぞ」
そう言われて車のサイドミラーを見ると、映る自分の顔色が悪いことは一目瞭然だった。こんなん、わかりやすすぎて笑うてまうやろ。
「…ほんなら、おやすみもろうてもええですか?」
「ああ。戻ったら申請を出してくれ。机の上に置いておいてもらえれば、承認しておく」
「ありがとうございます」
信号が青になり、店を通り過ぎていく。2人の姿がサイドミラー越しに見える。男と話している時の彼女の笑顔が脳にこびりついて離れなかった。
嫉妬
(しかも、今日月曜日やんか。あの男なんやねん)
目の前に〇〇さんがいる。少しだけ頬を染めて、節目がちに視線を彷徨わせる彼女に心臓が高鳴る。〇〇さんが何かを言いたそうに唇を震わせていて、目が離せなくなる。
「宗四郎くん…あのね……私…宗四郎くんのことが…」
上げた視線とぶつかって、彼女の言葉を奪うように声を重ねた。
「まって。そこから先は僕に言わせてほしい」
「え…?」
両思いだと確信できれば、恐れることは何もない。戸惑う〇〇さんの頬にそっと触れ、顔を近づけた。
「そ、そうしろう、くん…」
「好きや。これから先の人生を、僕と一緒に過ごして欲しい」
「…そ、宗四郎くん…わたし…」
〇〇さんは言葉を切って、そっと目を閉じた。まるで僕を待つかのように。僕は瞳を閉じてまた彼女の唇に吸い寄せられるように近づき…
弾けるような警報音に目を覚ます。
反射で時計を確認すれば夜中の3時26分。視線を彷徨わせても、当然彼女はいなかった。
「………だぁぁぁ!!!くそ!!!」
頭を掻きむしりながら、隊服に着替える。…先日のカフカの件があってから〇〇さんに会えていない。仕事が降って湧いたわけではないのだが、シフトの都合やら、タイミングを見計らったように案件を依頼されたりなど、纏まった時間を作ることができなかったのだ。そうこうしているうちに一週間程が過ぎ、会えない間になんと言って下の名前を呼ぼうかなんて何度も考えているうちに夢にまで見るようになってしまった。重症である。
ぶつける先を知らない苛立ちを抱えたまま、上着を引っ掴んで部屋を飛び出した。
マルヨンマルナナ。第三部隊現着。
カフカは先ほどの車内の空気を思い出す。普段なら簡単な会話をして、部隊の緊張をほぐす副隊長が2、3言、言葉を交わし、ほな、実戦までええ緊張感保とうか、と言い黙り込んでしまったのだ。いや、言葉の通り緊張感を緩ませすぎないためにそうしていたのかもしれないが、なんとなくそうじゃないような気がする。
「なあ、今日の副隊長、機嫌悪くなかったか?」
近くにいるレノに話しかけるカフカだが、そこに割って入るようにキコルが銃への装填を済ませながら会話に入り込んだ。
「確かに普段よりは言葉が少なかったかもしれないけど。そんなに機嫌が悪かったかしら?」
「先輩、何か気になることでもあったんですか?」
「いや、なんとなくそんな気がしただけなんだが…」
気のせいだよなー。と笑いすかしていると、背後から人の気配を感じるが早いか、頭に軽い衝撃が入り、カフカはうぉっと短いうめき声をあげた。
「人様の心配やなんて、随分余裕そうやなぁ。なぁ?カフカ」
「ふ、副隊長っ…!!!」
「心配されるなんて上官として失格やなぁ。一応、普段通りにしてんねんけど」
「い、いえ!勝手に自分がそう感じていただけなんで!すいませんっしたぁ!」
「いや……まぁ、ええわ」
歯切れが悪そうに言葉を切った副隊長に、不思議に思って視線を上げると、いつも通りの笑顔で指をピンと立てている姿があった。
「ほな、そろそろ作戦実行といこか」
作戦が始まると順調に掃討が進み、本獣撃破の連絡も届いた。余獣の作業も順調に進んでいるし、時期に本隊の撤収連絡も来ることだろう。第3部隊の若手も順調に育ってきていることを実感しながら、先ほどカフカに言われたことを思い出す。夢を邪魔されたとはいえ、仕事に態度を持ち込んでいるつもりは全くなかった。なかったが、相手にそう悟られるような態度があったのだろう。自分でも気づかないうちに、どんどん〇〇さんに対する気持ちが大きくなっているらしい。
吐く息が白く、白んできた空に霞んで消えていく。
「…はよ、会いにいかんと」
彼女と出かけたのは1ヶ月くらい前だろうか。また時間を作ってデートに誘おうと思っていたのに、気づけば師走になっている。
会いに行ったところで、関係が進展するわけでもないが。いや、そもそも進展させないとこの気持ちは膨らみ続けるのではないか?でも進展する可能性は?夢のようにお互いが思い合っているとは限らないのに。それなら何も語らずにずっと〇〇さんにとって特別なお客様扱いしてもらっていた方がいいのではないだろうか。でも、この仕事をしながらずっとなんてあるのか?夢の中でも一緒に過ごしてほしいなんて、自分がどこまで一緒にいてあげられるのかわからないのに。
「……〜っ!!」
片手で髪を握り潰すように掴む。だめだ、考えがまとまらない。耳に撤退を知らせる連絡が入ったが、思考が止まったままだった。
「どうした、保科」
「亜白隊長…いや、なんでもありません」
「…そうか。昨夜も遅くまで稽古していたんだろう。帰ったらしっかり休め。いくぞ」
「了!」
亜白隊長と共に移送車両に向かい、部下たちが乗り込んでいる姿を確認し、分隊に撤退確認の指示を出してから一般車両に乗り込んだ。後部座席には亜白隊長が乗っているから自分は助手席に乗り込む。流れていく景色の中、帰ったら報告書をまとめなあかんな、と考える。大方、小此木ちゃんがまとめてくれているだろうが、書類の監査はしなければならない。書類の確認が終わる頃には午前の訓練も締めに入る時間だろうし、訓練の結果を聞きに行き、データを貰って報告書と…と考えていると、彼女の店の近くまで来ていることに気がついた。少しだけ心がそわそわしてくる。運良く彼女を見かけることは出来ないだろうか。顔を外に向けながら、彼女の姿を探すように視線を彷徨わせていると信号で車が停止する。もう少し先で止まってくれれば、彼女の姿が見えるかもしれないのに。そう思っていたら店のドアが開き、1人の男性が店の外に出てきて、彼女も後を追うように出てきた。にこにこと笑う〇〇さんの笑顔に胸の奥がほかほかするのと同時に、相手の男が羨ましくてたまらない。おそらく店のお客だと思われるが、店の前まで〇〇さんに見送られるなんて。しかもしっかり会話までして。僕が店から出る時にまで、あそこまでしてもらったことなどないのに。
「………ん?」
なんで、〇〇さんはお見送りまでしとるん?いや、店の中でお見送りされたことはあるが、ああやって店の外に出てまでお見送りをしていたことなんてあったか?
そう思うと、胃の底が冷えるような、それからじくじくと膿むような痛みを覚える。なんや、この感覚。
「保科?どうした?やっぱり調子が悪いのか?」
「…いえ。なんでもありません」
「急ぎの仕事もないし、報告書の確認は私がしておくから、休暇を取得して休んだらどうだ?」
「大したことやないんです。心配かけてすいません」
「そうは言うが、保科。お前の顔、真っ青だぞ」
そう言われて車のサイドミラーを見ると、映る自分の顔色が悪いことは一目瞭然だった。こんなん、わかりやすすぎて笑うてまうやろ。
「…ほんなら、おやすみもろうてもええですか?」
「ああ。戻ったら申請を出してくれ。机の上に置いておいてもらえれば、承認しておく」
「ありがとうございます」
信号が青になり、店を通り過ぎていく。2人の姿がサイドミラー越しに見える。男と話している時の彼女の笑顔が脳にこびりついて離れなかった。
嫉妬
(しかも、今日月曜日やんか。あの男なんやねん)
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