付き合うまで
おなまえは?
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揺られる電車の中、今日の思い出を振り返る。
今日は一日水族館を見て回った。最初はショーから始まり、次は館内。館内にある通常展示と、季節展示、それからお触りコーナーに、物販店。一度軽めのお昼を挟んでから外に設けられてるいるペンギンやシロクマをみて、アザラシのショーなんかみていたらあっという間に3時になっていた。
2人でパンフレットに視線を落とし、一通り水族館を体験したことを確認してから、立川駅まで戻ることにしたのだ。
「こんなに水族館を満喫したの、久しぶり。すっごく楽しかったなぁ」
程よい疲労感を噛み締めながら、隣に立つ保科さんを見る。保科さんの腕には私が欲しいと思ってみていた白いアザラシの人形が入った袋が下げられている。お土産コーナーを見ていたところ、年甲斐もなく可愛らしい人形に目を引かれ、買うかどうか睨めっこしていたところを保科さんに見つかり、誘ってもらったお礼だからと買ってもらったのだ。加えて、ちゃんとお店に送り届けるまで持ってたる。という好意も受け取り、保科さんが荷物持ちをしてくれることになったのだった。
私の視線に気づいた保科さんは腕にかけられた袋を見てから、にこりと笑った。
「〇〇さん、めっちゃはしゃいどったもんな。意外やったわ」
「そうかな?私結構、水族館とか動物園とか好きだから、かも」
「そうなん?ほな、今度は動物園でも行こか」
さらっと告げられた誘いの言葉に、一瞬言葉が詰まる。嫌?と少し悲しそうな顔で見てくる保科さんに、嫌じゃないです。嫌じゃないですけど、と言葉を返してから、ちらりと視線を車内に向けた。
先ほどから、保科さんにちらちらと視線を向ける若い女性がいる。水族館を歩いていた時も振り返る女性がいたし、つまりは保科さんは有名人であり、モテるのだ。
「私なんかが、またご一緒してもいいんですか?」
「なんで敬語?それになんかが、なんてことない。〇〇さんだから誘ってるんや」
「こ、光栄です…」
もごもごと返事を返しながら少し照れてしまう。今日1日で保科さんとだいぶ仲良くなったが、それと同時に照れもせずにこちらが嬉しくなるようなことをぽんぽん言ってくる人だということがわかった。あと、ナチュラルにレディーファーストっぽいところも。それはもう、こちらが勘違いしそうになるくらいだった。
「ほな、約束。今度は僕と動物園行こな」
ほら、また。
「…うん」
なんだか気恥ずかしくて、保科さんの顔を見れそうにない。
今日一日、彼女と一緒にいてだいぶ仲良くなったと思う。イルカショーでどえらい水をかぶったが、それがきっかけで〇〇さんも僕への緊張が解けたみたいだった。
隣を歩く彼女を盗み見ると、鼻歌を歌いながら歩いている。よっぽど今日が楽しかったってことなのだろうか。そうだったら嬉しい。
「家まで荷物持ってもらって、本当にありがとう」
店が見える角までやってくると、〇〇さんはそう言ってきた。本当は夜ご飯も一緒に、と思ったが、明日の仕込みもあるらしく、今日は夕方でお別れすることになった。少しだけ名残惜しいが、今日一日過ごせた時間を思い出せば、以前の関係性よりずっと進んだ気がするし、今度は動物園でもと約束したのだ。問題ない。
「むしろ僕の方こそ、〇〇さんと出かけられて光栄やった。声かけてくれてありがとう」
そういうと〇〇さんは少しだけ赤くなって、あ!あ!と思い出したように声をあげる。
「あの、渡したいものがあるの。少しだけ店の前で待っててもらってもいいかな?」
すぐだから!そういうが早いか、彼女は駆け出し店の鍵を開けてするりと店内に滑り込む。僕は言われるがまま、店先で彼女が出てくるのを待っていた。僕の右腕にはまだ彼女のために買った人形がぶら下がっており、つぶらな瞳を袋の間から覗かせていた。
「お前はええの。〇〇さんとおって」
この人形は今後、僕よりもそばで彼女のことを眺める生活が待っとるんやろなぁとかしょうもないことを考えながら待っていると、ドアのベルが鳴り、小さな箱を抱えた〇〇さんが出てきた。
「お待たせしてごめんなさい。あの、今日は本当にありがとうございました。一緒に出かけてくれて、本当に嬉しかったです」
モンブラン、作ったの。そう言いながら、その小さな箱を差し出してきた彼女は少しだけ気恥ずかしそうにしているが、僕は一瞬思考が停止した後、ノロノロと言葉を繋いでいく。
「僕の、ために、作ったん?」
「和栗のモンブラン、この間試食してもらったときにもう少しリキュール抑えてもいいって言ってたので、作ってみました。お口に合えばいいんだけど」
彼女が、僕のために、作った、モンブラン。
この特別感あふれる出来事をどう飲み込めばいいんだろうか。体の内側から、ぶわわと湧き上がるこの気持ちをそのまま行動に移すとしたら、きっと彼女を抱きしめてお礼を言う、なのだがそれは彼女を驚かせてしまうし、せっかく近づいた距離感を壊しかねないので、理性で止める。気持ちを落ち着かせるために、小さく息を吸って、吐いて。
「めっちゃ嬉しい。ほんまありがとう。大事に食べるわ」
彼女の手から小さな箱を受け取りお礼を述べる。彼女は受け取ってもらえてほっとしたような表情を浮かべていて、僕があなたがくれた物、受け取らないわけないやろ。と心の中でつぶやいた。
「大事にしすぎて食べられへんかったらどうしよ」
「く、腐る前に食べてね?」
「もちろん。それくらい嬉しいってことや」
そう言って笑顔を向けると、彼女も嬉しそうに笑い返してくれて。
「あ、荷物持たせててごめんなさい」
「これくらいかまへん。人形、大事にしたって」
「大事にする。ありがとう」
別れを惜しむように言葉を交わしてから、それじゃあまた、と彼女が手を振る。僕も手を振りかえし、彼女が店の中に入るまで見送ってから歩き出した。
今日を振り返ると、彼女とデートをして、お土産にケーキまでもらって、とてもよい一日だったと思える。今日の夜はトレーニングをして、書類整理でもしようと考えてたから、書類整理の時にでも食べようか。
僕のために作ってくれたモンブランを食べる楽しみを抱えながら基地への帰り道を進んだ。
僕だけの味
(保科さんのお口に合うといいんだけどな)
(めっっっちゃうま…)
今日は一日水族館を見て回った。最初はショーから始まり、次は館内。館内にある通常展示と、季節展示、それからお触りコーナーに、物販店。一度軽めのお昼を挟んでから外に設けられてるいるペンギンやシロクマをみて、アザラシのショーなんかみていたらあっという間に3時になっていた。
2人でパンフレットに視線を落とし、一通り水族館を体験したことを確認してから、立川駅まで戻ることにしたのだ。
「こんなに水族館を満喫したの、久しぶり。すっごく楽しかったなぁ」
程よい疲労感を噛み締めながら、隣に立つ保科さんを見る。保科さんの腕には私が欲しいと思ってみていた白いアザラシの人形が入った袋が下げられている。お土産コーナーを見ていたところ、年甲斐もなく可愛らしい人形に目を引かれ、買うかどうか睨めっこしていたところを保科さんに見つかり、誘ってもらったお礼だからと買ってもらったのだ。加えて、ちゃんとお店に送り届けるまで持ってたる。という好意も受け取り、保科さんが荷物持ちをしてくれることになったのだった。
私の視線に気づいた保科さんは腕にかけられた袋を見てから、にこりと笑った。
「〇〇さん、めっちゃはしゃいどったもんな。意外やったわ」
「そうかな?私結構、水族館とか動物園とか好きだから、かも」
「そうなん?ほな、今度は動物園でも行こか」
さらっと告げられた誘いの言葉に、一瞬言葉が詰まる。嫌?と少し悲しそうな顔で見てくる保科さんに、嫌じゃないです。嫌じゃないですけど、と言葉を返してから、ちらりと視線を車内に向けた。
先ほどから、保科さんにちらちらと視線を向ける若い女性がいる。水族館を歩いていた時も振り返る女性がいたし、つまりは保科さんは有名人であり、モテるのだ。
「私なんかが、またご一緒してもいいんですか?」
「なんで敬語?それになんかが、なんてことない。〇〇さんだから誘ってるんや」
「こ、光栄です…」
もごもごと返事を返しながら少し照れてしまう。今日1日で保科さんとだいぶ仲良くなったが、それと同時に照れもせずにこちらが嬉しくなるようなことをぽんぽん言ってくる人だということがわかった。あと、ナチュラルにレディーファーストっぽいところも。それはもう、こちらが勘違いしそうになるくらいだった。
「ほな、約束。今度は僕と動物園行こな」
ほら、また。
「…うん」
なんだか気恥ずかしくて、保科さんの顔を見れそうにない。
今日一日、彼女と一緒にいてだいぶ仲良くなったと思う。イルカショーでどえらい水をかぶったが、それがきっかけで〇〇さんも僕への緊張が解けたみたいだった。
隣を歩く彼女を盗み見ると、鼻歌を歌いながら歩いている。よっぽど今日が楽しかったってことなのだろうか。そうだったら嬉しい。
「家まで荷物持ってもらって、本当にありがとう」
店が見える角までやってくると、〇〇さんはそう言ってきた。本当は夜ご飯も一緒に、と思ったが、明日の仕込みもあるらしく、今日は夕方でお別れすることになった。少しだけ名残惜しいが、今日一日過ごせた時間を思い出せば、以前の関係性よりずっと進んだ気がするし、今度は動物園でもと約束したのだ。問題ない。
「むしろ僕の方こそ、〇〇さんと出かけられて光栄やった。声かけてくれてありがとう」
そういうと〇〇さんは少しだけ赤くなって、あ!あ!と思い出したように声をあげる。
「あの、渡したいものがあるの。少しだけ店の前で待っててもらってもいいかな?」
すぐだから!そういうが早いか、彼女は駆け出し店の鍵を開けてするりと店内に滑り込む。僕は言われるがまま、店先で彼女が出てくるのを待っていた。僕の右腕にはまだ彼女のために買った人形がぶら下がっており、つぶらな瞳を袋の間から覗かせていた。
「お前はええの。〇〇さんとおって」
この人形は今後、僕よりもそばで彼女のことを眺める生活が待っとるんやろなぁとかしょうもないことを考えながら待っていると、ドアのベルが鳴り、小さな箱を抱えた〇〇さんが出てきた。
「お待たせしてごめんなさい。あの、今日は本当にありがとうございました。一緒に出かけてくれて、本当に嬉しかったです」
モンブラン、作ったの。そう言いながら、その小さな箱を差し出してきた彼女は少しだけ気恥ずかしそうにしているが、僕は一瞬思考が停止した後、ノロノロと言葉を繋いでいく。
「僕の、ために、作ったん?」
「和栗のモンブラン、この間試食してもらったときにもう少しリキュール抑えてもいいって言ってたので、作ってみました。お口に合えばいいんだけど」
彼女が、僕のために、作った、モンブラン。
この特別感あふれる出来事をどう飲み込めばいいんだろうか。体の内側から、ぶわわと湧き上がるこの気持ちをそのまま行動に移すとしたら、きっと彼女を抱きしめてお礼を言う、なのだがそれは彼女を驚かせてしまうし、せっかく近づいた距離感を壊しかねないので、理性で止める。気持ちを落ち着かせるために、小さく息を吸って、吐いて。
「めっちゃ嬉しい。ほんまありがとう。大事に食べるわ」
彼女の手から小さな箱を受け取りお礼を述べる。彼女は受け取ってもらえてほっとしたような表情を浮かべていて、僕があなたがくれた物、受け取らないわけないやろ。と心の中でつぶやいた。
「大事にしすぎて食べられへんかったらどうしよ」
「く、腐る前に食べてね?」
「もちろん。それくらい嬉しいってことや」
そう言って笑顔を向けると、彼女も嬉しそうに笑い返してくれて。
「あ、荷物持たせててごめんなさい」
「これくらいかまへん。人形、大事にしたって」
「大事にする。ありがとう」
別れを惜しむように言葉を交わしてから、それじゃあまた、と彼女が手を振る。僕も手を振りかえし、彼女が店の中に入るまで見送ってから歩き出した。
今日を振り返ると、彼女とデートをして、お土産にケーキまでもらって、とてもよい一日だったと思える。今日の夜はトレーニングをして、書類整理でもしようと考えてたから、書類整理の時にでも食べようか。
僕のために作ってくれたモンブランを食べる楽しみを抱えながら基地への帰り道を進んだ。
僕だけの味
(保科さんのお口に合うといいんだけどな)
(めっっっちゃうま…)