さんさん

さんさん


　頭上より降り注ぐのは、惜し気もなく放出される太陽の光。
　足元の海に光がきらりと反射して、まるでCGのように輝いている。



(あっつい……)



　キラキラの輝きに不満はないが、強いて言うのなら、この暑さ。
　夢の中でも太陽の熱波を感じるなんて、今までなかった経験かもしれない。
　大抵目が覚めると、夢は覚えていないか曖昧で朧気だ。
　しかし、なぜだろう。今はリアルに暑さを体験し、その真夏の如く暑さには、不快指数が上がるばかり。
　こんな夢は初めてだと思いつつ、歩みを止め、そのまましゃがみこんで、海に触れる。
　海から数センチ浮いて静止している、なんとも夢らしい状況で、手を伸ばし海に触れる。


「おお……冷たい……」


　触れる海は期待通り冷たく、塩の香りが強かった。
　しばらく冷たさを堪能して、また歩き出す。


(それにしても……)


　はたして私は何処へ向かっているのだろう。
　我が夢ながら、予測がつかない。
　これから進展が無いまま目を覚ますのか、はたまたしばらく海上散歩が続くのか。
　水が出てくる夢って、何か深層心理の影響があるのだろうか。


(まさかおねしょとか……いやいやいや、流石に無い)


　いい年した大人が、まさかそんなこと。
　流石に無いはずだ。もし夢から覚めた時にそんな大惨事になってたら目も当てられない。
　ぞっとしない考えを振り払い、ただただ歩き続ける。


(そろそろ何かあってもいいんじゃないの)


　夢の中なのに、欠伸が出てきて思わず笑ってしまった。





(彼女が走り出すまであと31秒)