第二次決戦
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また場面が切り替わった。
AFOの目を盗んでこっそりと抜け出したであろう遥子さんは赤ん坊のおれを抱えて走っていた。チラホラと雪が降り始めていた。
『……大丈夫…大丈夫だから。伊織の人生を決めるのは伊織だけ。おじいちゃんの好き勝手させないから。お母さんが絶対に守るから。大丈夫』
遥子さんはさっきから逃げながら何かを探している。
『どこかに交番か警察署があれば……。スマホは怖くて持っていけないから置いてきたし……ごめんねお母さんのせいで……本当に……』
おくるみの中の赤ん坊はこの状況を理解してないのか遥子さんの頬を軽く叩きながら、ご機嫌に笑っていた。
『顔は私似みたいだけど、笑い方はお父さんにそっくり。生きてたら、きっと親バカになってたかもしれないね。将来、彼氏とか連れてきたら大騒ぎしそう』
お父さんって、おれの実の父親?
『あれは一途というか、猪突猛進な男だったなぁ。お父さんとお母さんね、高校の時に駅のホームで会ったの。会ったというか、話し掛けられた。
電車待ちしてる時に
“工業高校に通う紙間
ってでかい声で言われた。で、断った』
もしやおれの猪突猛進っぷりって……遺伝ってすげえな。
『アプローチ流していくうちに、結局絆されてお付き合いする事になったんだけど。ちっともタイプじゃないのになんか気になって放っておけなくて気付いたら……人生って不思議ねぇ。
……卒業後は県外で働きたいってあの人達から逃げるように出ていって…。忙しさを理由に連絡を少しずつ時間をかけて経った』
遥子さんと楮三郎さんは二人で働きながら、小さなアパートで慎ましく暮らしてた。そんなある日、楮三郎さんが事故で帰らぬ人となってしまった。その日はひどい大雨で視界不良だった。遥子さんはショックを受けて何もやる気が起きなかったが、数日後楮三郎さんの子を身籠ってることが分かると少しずつ生きる気力を取り戻すようになった。
『嬉しかったけど、これからどうしようか不安でたまらなくて。彷徨っていたら……あの人に拾われて……良い人だって思ってたのに……そうじゃなかった。多分、ううん私達は逃げてもきっと追い付かれるかもしれない。〝個性〟づわりで暫く控えていたから、久しぶりだけど上手く行くかな』
遥子さんはメモに何かを書いて、おくるみに捩じ込む。あれは、おれが捨てられた時に一緒についてた紙だ。あの数字はやっぱりというか、誕生日だったんだな。急いで書いてたから月と日が抜けちまったのか。
『せめて伊織だけでも遠くに……』
近くの店に向かい、手動タイプのドアに触れ〝個性〟を発動させて開けるや否や赤ん坊のおれを放り投げた。
『離ればなれになっても、お母さんは伊織をずっと大好きであいしてるから。元気でね』
遥子さんは橋の上で暮れ行く夕焼けを見ていた。泣きたくなるような夕焼けだった。
『ここにいたのか遥子。伊織はどうしたんだ?』
『言わない』
『ひどい母親だ。子供を捨てるなんて』
『なんとでも。私は伊織が幸せに暮らしていけるならいい。お父さんの手が届かない所でね』
『そうか。残念だ』
AFOの手が遥子さんに伸ばされる。
「かあちゃん!!!」
▽▼▽
「!!」
目が覚める。ここは……皆の戦う音が聞こえる。そうだ群訝山荘跡地だ。
「痛゛ッ!!」
右側の肩、二の腕をやられていた。ザクザクと引っ掻きやがってあの金○ジジイめ。
「……ん?」
指に何かあたる。おれが着けていたターコイズブルーの石がついたヘアゴムだ。ゴムの部分が切れている。右側の髪がざっくりと短くなってた。まぁ、いいや石は壊れてないみたいだし。
おれはゴムが切れたヘアゴムをポーチにしまう。
あの夢を…過去を見てわかった事がいくつかある。
遥子さんはおれを捨てたワケじゃなく、守ろうとしてた。
声がどこかで聞いたことあるのは、神野やおれが熱を出した時に聞こえてきた謎の声と同じだったから。
かつておれは事故物件に住んでいた。視えないけど、時々聞こえてきたりする方だ。もし、そうなら恐らく既に……もう……。