正体
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耳を疑った。
目の前の光景を疑った。
きっと悪い夢でも見てるんだと、今すぐにでも起きたかった。
思わず握りしめた拳に爪が食い込んだその感覚に、これは紛れもない現実だと認めざるを得なかった。
「…なるほど。〝個性〟を与えてもらい……支配されるに至ったと……」
視聴覚室には1-Aの皆とオールマイト、プレゼント・マイク、校長と警察関係者。
皆の視線は視聴覚室の真ん中で拘束されているそいつに集まっていた。
おれはつい、さっき知らされた真実を理解しようと何度も頭ン中で反芻する。
……分からねェよ。余計、頭がぐちゃぐちゃになる。
仮免試験の時を思い出す。
内通者の疑いをかけられた事を。
だけどまさか、本当にいるとは思わねえだろ。しかもそれが苦楽を共にしたクラスメイトだったなんて。
――青山が、AFOの内通者だったなんて。
しかも緑谷と同じ元〝無個性〟。
息子の将来を案じた青山の両親は噂を辿ってAFOを頼り、ネビルレーザーという〝個性〟を貰った。
AFOはその対価として雄英に入らせて、情報を流させた。USJも合宿も全て青山が。
今回も指示を受けた青山だったが、罪悪感に苛まれ、自分と周りに偽る日々にとうとう限界が来てしまった。両親に共に自首を促そうと説得してる所を葉隠が目撃してしまい、今に至る……という。
事情を把握した塚内さんが淡々と述べる。
「付与は約10年前か……。今、無事という事はナガンの様な裏切ったら爆発する仕掛けは無いようだが……」
ハッとした。ナガンは今も入院している。身体中にヒビが入っていて酷い大火傷で、下手したら死んでいたかもしれないという重傷だったと聞く。
青山達もそうなっていたかもしれないとゾッとした。
「できれば…君たちは下がっていなさい」
校長がそう言うが、おれ達は誰一人そうしなかった。
「下がってられる…」
「道理がねェよ……!」
動転して言葉を失う者、ショックで涙を浮かべる者。
「……葉隠さんが見つけてなかったから……何するつもりだったんだ……!!」
「青山……!!嘘だって言えよ……!!」
尾白と切島が問い詰めても青山は俯いたまま、一言も答えなかった。いつもの眩しいほどのキラキラっぷりは消え失せていた。
「……てめェも元〝無個性〟だとは……世の中、狭ぇな」
爆豪がポツリと呟く。それを隣で聞いていた緑谷は何を思ったのか。
その境遇はひとつ違えば、お互いの立場が変わっていたかもしれない。
…それはおれにも言える事だ。〝個性〟の有り無しに関係なくあのままずっと、AFOの元で育っていたら内通者が青山じゃなくておれだった可能性がある。
塚内さんがAFOの詳しい情報を更に聞こうと青山の父ちゃんに協力を求めるが、ガタガタと震え 「知らない」 と涙ながら訴えた。
「私たちはただ……頼まれたら実行するだけだ。失敗すれば、殺される。嘘をついても……殺される」
「どうやって?」
「…………見せられた」
自首、逃亡、失敗、欺き。
自分の思い通りにならない人間は消したり潰したりするなど惨い仕打ちをして、それを青山一家に見せつけ恐怖でコントロールしてきた。
「優雅は知らなかった……!ただ、誰にも勘付かれてはいけないとだけ……!!悪いのは、私たちだ……!!」
息子が大切で守りたくて背中を押してあげようと、そんな親心から始まった。なのに、こんな事になるとは思いもしなかっただろう。
「自分が…」
誰に何を聞かれても一向に口を開かなかった青山が弱々しく口を開いた。
「殺していたかもしれない人たちと僕は、仲間の顔して笑い合った……笑い合えてしまったんだよ。同じ元〝無個性〟で、AFOと戦う重圧を背負った彼を知って……僕らの夢を守るために自分の夢を諦めようと身を引こうとした紙間くんの覚悟に、自分の惨めさに絶望した。……怖いと誰かに相談出来る君が羨ましかった」
青山はどんな気持ちでおれの話を聞いていたんだろう。
「青山優雅は……根っからの敵だったんだよ」
「やめろ!!」