レモンセントの約束
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『ヒーロー。いいね!私が君のファン一号になるよ。なんなら今のうちにサインとか貰おっかなー』
『えっ。笑わないの』
『どこに笑う要素があるの。優しくて面倒見がいい俊ちゃんなら、きっとヒーローになれる!』
俊典は面倒見がいい。施設の下の子供たちと一緒に遊んだり、自分のおやつを分けてあげたりするなど。
また気遣い屋でもあるため、困ってる人を見過ごしておけなかった。
『でも……〝無個性〟の僕にヒーローになんて……』
『〝個性〟持ちしかなれないんだったら、俊ちゃんが史上初の〝無個性〟ヒーローになるんだよ。それに今じゃ当たり前にあるけど、ヒーローって一昔前までは
“常識から1ミリでもいいから一歩踏み出せ”って。
そうだ、勇気が出るおまじないをあげよう』
菜月は徐にポケットから何かを取り出した。
『皆には内緒だよ。はい、レモンミルク飴。私、レモン好きなんだよねー』
甘酸っぱいレモンと優しいミルクが舌の上で転がる。心が楽になった気がする。
『ところで、なつ姉ちゃんの夢って?』
『好きな男と結婚して家族を持つ。まだ相手いないんだけどね。そんでヒーローになった俊ちゃんを家族で応援する。元気と勇気と愛があれば友達と何でも出来る!』
『なんか色々と混ざってない?』
お互いに夢を叶えようと二人は小指を絡ませた。
それから7年後。
俊典は中学生になった。
菜月は高校卒業と同時に施設を出て、小さなアパートで一人暮らしをしている。
だがこうやって時折に俊典が勉強を教えてほしいと菜月の所へ訪問してくるので、土日どちらかは家庭教師をやっている。
菜月は懐いてくる俊典の事を
(弟がいたらこんな感じかな)
と内心嬉しく思っていた。
『いやー、今回もフラれました!』
菜月は今年で24歳になるのだが未だにあちこちとアルバイトをして食い繋いでいるフリーターである。
その理由としては就職活動で面接の度に〝個性〟の話題が振られ、〝無個性〟だと知るや否や面接官の興味が削がれてしまうのだ。〝個性〟がハンデとなってなかなかどうして決まらない。
『これで35連敗かー。フフッ……連続新記録更新……』
どんよりとしながらレモンティーを飲む。
俊典はオレンジジュース。
『なんだか落ち込みがいつもよりひどいね?何かあったの?』
『………まー、くっだらないけど個人的には真剣な悩みなんだけどね私、今年で24になるのよ。一度も彼氏できた試しないんだよねェ。バイト先で彼氏いる子の話聞いてて いいなー って。私も彼氏ほしいし、キスとかしてみたい』
『ン゛ヴッ!!』
俊典は飲んでいたジュースを噎せた。
多感な中学生男子になんて事を暴露するんだこの人は。
『それで言うと俊ちゃんはどうなの?いるの?』
『……………………さぁ』
『何その反応。めっちゃ気になるんだけど。さてはいるな?吐け!どこのクラスの娘だ!』
菜月は俊典にヘッドロックをかける。菜月は試合に見に行くほどプロレスが大好きである。
『なっ……ちょ……近ッ……』
菜月はE70。そして着痩せするタイプだ。
『いません!!(学校に)好きな人なんて!』
『なーんだ』
俊典を解放した菜月はふとカレンダーを見る。6月。
『もうすぐ俊ちゃんの誕生日だね。もう13歳になるのか。なにか欲しいものある?』
『……………………な』
『な?』
『なっ……なつ……』
『夏?』
『………………………え……映画!映画観たい』
『映画か。オッケー。俊ちゃん本当映画好きだね。あとなんかでっかい木』
『屋久杉です』
(夏って何だろう。夏休みどっか遊びに行きたいとか?それなら夏休みになったらどっか連れてってあげよう。あ、でももし、海やプールに行きたいって言ってきたらどうしよう。私、泳げないんだよねえ…)
(あああ…言えなかった…僕のヘタレめ!)