仮面の下に咲いた花
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夜。
忍術学園の敷地は、昼間の賑わいが嘘のように静まり返っていた。
建物の輪郭は闇に溶け、風に揺れる草木の音がわずかに耳に残る。
名前は宿舎の窓辺に腰を下ろし、冷たい夜気に身を晒しながら、静かに外を見つめていた。
教室も、廊下も、生徒たちの寝息さえも、すべてが遠く感じられる。
手には、昼間に伊作が丁寧に巻いてくれた包帯。その下にあるのは、小さなかすり傷
──雑渡昆奈門。
その名を胸の中で呼ぶたびに、昼間のあの気配が鮮明に蘇る。
言葉少なに、ただそこに“在った”男。
だが、その沈黙の奥にあったのは、容易には触れられない気配。
まるで、鋼のように張り詰めた静けさ。
(伊作くんは“悪い人じゃない”って言っていた)
名前は、そっと目を伏せた。
確かに――昆奈門は生徒たちに害を与える気配もなく、無闇に威圧するような様子もなかった。
その所作も、態度も、むしろ静かで抑制されていた。
だが──名前は知っている。
本当に危険なものほど、牙をむかない。
静かに、目立たず、ただ“在る”。
それだけで空気を変える存在。
(……あの気配。間違いない)
あれは、戦場の気配だった。
血の匂いを知り、幾度も死線を越えてきた者。
そして、それを隠すことすらせず、平然と沈黙の中に身を置く者。
名前は包帯に包まれた手を、そっと握りしめた。
──私は、あの男を見逃すわけにはいかない。
たとえ学園長が黙認していても。
たとえ伊作たちが、あの男を信じていたとしても。
あの静けさの奥にあるものを、見過ごしてはいけない。
名前は目を開けた。
外には夜の闇が広がっている。
風に乗って、遠くの葉が揺れた。
その闇のどこかに、あの男が潜んでいる。
そう思えてならなかった。
