仮面の下に咲いた花
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春。
新学期を迎えた忍術学園。
まだ冷たさの残る風が、渡り廊下の障子をかすかに揺らしていた。
名前は教科書を抱えながら、ゆっくりと歩いていた。
朝の授業準備。
新任教師として迎える、少しずつ馴染み始めた日常の一コマ。
──そのときだった。
ふと、背後に視線を感じた。
足を止めて振り返る。
けれど、廊下には誰の姿もない。
あるのは、春の陽光に包まれた静かな渡り廊下だけ。
(……気のせい?)
歩き出そうとした足が、わずかに止まる。
背中を撫でる感覚。それは──
戦場で、死線を越えてきた者にしかわからない、“視られている”という確信。
確かに、そこに“何か”がいた。
だが、痕跡も、気配も、完璧に消されていた。
名前はしばらく無言で廊下を見渡した。
静寂。
鳥の声も風の音も、今だけは遠くに感じる。
だが、確かに胸の奥に、何かが引っかかっていた。
(──違和感)
それをどう言葉にすればいいのか分からないまま、名前は再び歩き出す。
気にしても、どうしようもない。
そう自分に言い聞かせるようにして。
だが、その背後。
渡り廊下の梁の上――
陽の差す天井近くに、薄い影が身を潜めていた。
雑渡昆奈門。
全身を包帯に覆ったその男は、完全に気配を消したまま、じっと名前の背を見つめていた。
息づかいすら感じさせない静けさ。
音もなく、言葉もなく、ただ“存在”だけがそこにある。
春の陽が、彼の影だけを細く、静かに伸ばしていた。
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