仮面の下に咲いた花
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ドクタケ領。
薄曇りの空の下、
町は静かにざわめいていた。
名前は、
古びた屋根の上に身を潜めながら、
目を細めた。
(……間違いない。)
張り込みを始めて三日目。
名前の視線の先、
ひときわ目立たない小さな建物──出会茶屋
忍びたちが密かに集まる場所。
普通の商人や旅人を装いながら、
裏の顔を持つ者たちが情報を売買する。
そして。
(……不審人物も、
あそこに出入りしている。)
名前は、
昨日から動向を追っていた男が、
再び出会茶屋に消えていくのを見届けた。
(さて──どうするか。)
潜入するべきか。
だが、
ひとりの女があの場所に入れば、
いやでも目立つ。
(まずいな……)
名前は、
眉間に皺を寄せた。
(別の手を考えないと──)
思考を巡らせていると、
ふいに視界の端に動く影。
──黒ずくめの忍装束。
包帯に覆われた顔。
(……!)
名前は、
反射的に息を止めた。
(雑渡──昆奈門。)
なぜ、ここに。
名前の心臓が、
一瞬強く脈打った。
──
(まずい。
何をしに……)
名前は、
思わず身を低くした。
しかし、
次の瞬間。
すっと──
屋根の上からこちらを見上げる鋭い視線。
名前の隠れていた場所を、
雑渡が真っ直ぐに見上げていた。
(……見られた?)
名前は、
すぐに身を引こうとした。
だが、
雑渡は
特に追うそぶりもなく、
ただ無言で目を細め、
そのまま暗闇へ消えた。
(……なんで。)
この場所で、
なぜ雑渡昆奈門が動いているのか。
偶然──
ではない。
名前の本能がそう告げていた。
──
数刻後。
名前は、
茶屋の裏手に回り込んでいた。
潜入するしかない。
目立つのは避けられないが、
ためらっている場合ではなかった。
(行くか──)
そのとき。
背後に気配。
「女ひとりで、
ここに忍び込むつもりか。」
低い、聞き覚えのある声。
名前は、振り返った。
──雑渡昆奈門。
「……何の用です。」
包帯の奥で笑ったような気配を見せる。
「用があるのは、
お互い様だろう。」
(……何を考えてる。)
名前は、
手を腰に添えながら静かに睨んだ。
雑渡は、
茶屋をちらりと見てから、
再び名前を見た。
「お前だけでは、目立つ。
──手を貸してやる。」
「……は?」
名前は、
思わず目を見張った。
雑渡は、
わずかに目を細めた。
「心配するな。
お前を邪魔する気はない。」
「……。」
「それとも、
他に妙案が?」
名前は、
言葉に詰まった。
確かに──
今の状況、
雑渡がいた方が目立たないのは事実だ。
(でも──)
相手は、
タソガレドキの組頭。
信じるべきか。
(──私が、選ぶしかない。)
名前は、
静かに視線を上げた。
「……わかりました。」
雑渡は、
満足げに頷いた。
「では、行こう。」
そう言って、
歩き出す。
名前は、
わずかに肩の力を抜きながら、
その後に続いた。
(……何を考えてるの、雑渡昆奈門。)
心の奥に、
わずかな不安を抱えたまま。
