仮面の下に咲いた花
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夜。
学園は、すっかり静けさに包まれていた。
昼間の賑やかさが嘘のように、
廊下を吹き抜ける夜風の音だけが響いている。
名前は、
眠れずに外へ出ていた。
(──落ち着かない。)
(あの言葉が、
頭の中で何度も繰り返される。)
──血も、土も、君のものだ。
(そんなの、当たり前だ。)
そう思っているのに、
心の奥に刺さった棘は、うまく抜けないままだった。
ふと、
足音が聞こえた。
(……誰か来る。)
振り返ると、
土井半助が、ゆったりと歩いてきた。
「──名前先生、
眠れないんですか?」
名前は、
少し驚きながらも、
微笑みを作った。
「先生こそ、こんな時間に。」
土井は、
肩をすくめる。
「仕事が溜まってて。ちょっと気分転換に。」
言いながら、
名前の隣に立った。
ふたり並んで、
しばらく無言のまま夜風に吹かれる。
土井は、ふと横目で名前を見る。
「何か、
ありましたか?」
名前は、
少し目を伏せた。
(……言うべきじゃない。)
(巻き込みたくない。)
それでも。
「──何も。」
静かに首を振る。
土井は、
深く追及しなかった。
ただ、
静かに言葉を置いた。
「何もないなら、
それでいいです。」
「……。」
「でも、
何かあるなら。」
名前は、
そっと顔を上げた。
土井は、
穏やかな声で続けた。
「……先生が話したいと思ったときに、
聞かせてもらえれば。」
(──知らないほうがいいんです。)
そう言いたかった。
でも、
その言葉は喉の奥で消えた。
土井は、
名前が何も言わないのを見て、
ふっと笑った。
「焦らなくていいです。
ここは、急ぐ場所じゃない。」
名前は、
小さく息を吐いた。
夜風が、
少しだけ暖かく感じた。
──
しばらくして、
土井が口を開く。
「そろそろ、
戻りましょうか。」
「……はい。」
ふたりは、
並んで歩き出した。
静かな夜。
けれど、
その沈黙は、
どこか心地よかった。
