仮面の下に咲いた花
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
日が傾き、
山あいの道に長く影が落ちていた。
雑渡昆奈門は、
無言のままその道を歩いていた。
後方には、
尊奈門をはじめとする数名のタソガレドキ忍軍の姿。
誰も言葉を発しない。
乾いた土を踏む足音だけが、淡く残響する。
──その静けさを破ったのは、尊奈門だった。
「……本当に、引き抜くつもりだったんですか」
抑えた低い声。
だが、そこには隠しきれない動揺がにじんでいた。
雑渡は、歩みを止めることなく応える。
「どうだろうね。」
曖昧に笑うような声色。
だが、そこには明確な意図があった。
「私は反対です」
尊奈門の声は硬い。
「忍術学園の人間は、私たちの敵です。
──たとえ、どれほど優れていようと。」
雑渡は、前を向いたまま言葉を重ねた。
「敵、ね……」
ひとこと、低く繰り返す。
「……お前にとっては、まだそうだろうね」
それは責めでも叱責でもなかった。
ただ、事実として告げられた言葉。
尊奈門は、眉間に皺を寄せ、
だがそれ以上何も言わずに続いた。
雑渡は、包帯の奥で静かに目を細める。
「……だが、あの女は──」
「……?」
「お前の何倍も強いよ」
さらりと投げられたその言葉に、
尊奈門の顔が一気に赤く染まった。
「組頭っ!」
苛立ちと羞恥が入り混じった声が、夕暮れの空に跳ねた。
だが昆奈門は振り返らない。
ただ、一定の歩調で進み続ける。
「いくら強くても……!
優れていても……!
敵は敵です。それを認めるなんて、私は──」
その声を、
雑渡は肩越しに静かに受け止める。
包帯の奥の瞳に、微かな揺らぎが宿る。
だがその意味を、尊奈門はまだ掴めない。
「……いずれ見える」
「何が、ですか」
「優秀な者は、どこにいようと変わらない」
尊奈門は、歯を噛み締めた。
その言葉が、何より自分の心を揺らすから。
足を止め、
西の空を仰ぐ。
茜色に染まる山の端。
沈みゆく陽光が、包帯の奥に微かな影を落とした。
「──それに」
低く、静かな声が重なる。
「いずれ、選ぶだろう」
尊奈門は、言葉を失った。
その意味を問いたくても、問いきれなかった。
雑渡は再び歩き出す。
「必要なら、迎え入れるだけさ」
そして、ほんの僅かな間を置いて──
ぽつりと、加えた。
「……土井半助も欲しいがな」
その名に、尊奈門は反射的に叫んだ。
「それは──!」
一歩、前へ出る。
真っ直ぐに、感情をぶつけた。
「それはもっと反対です!!」
夕陽が、ふたりの影を長く引き伸ばしていく。
その間に、どこかしら温度の異なる沈黙が横たわった。
雑渡は、振り返らない。
ただ歩き続ける。
包帯の奥で──
ほんの少し、笑ったような気配を残して。
